先週のゴールド:小幅反発の展開

金相場は小幅に反発した。米ドル相場の上昇が一服し、金の投資妙味がやや回復した。前週の6月14日からの週は2020年3月以来の下落率だった。週初は米ドル指数が2ヶ月半ぶりの高値から下落したことで、前週末6月18日まで6日続落していた金に投資家の関心が向かった。

米10年債利回りは4ヶ月ぶりの低水準から上昇し、金利を生まない金を保有する機会費用が上昇したが、あまり材料視されなかった。

6月23日には一時1,794.56ドルまで買い進まれる場面もあった。前日22日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言を受け、早期の利上げに対する過度の警戒感が後退したことも金利を生まない金相場の下支え要因となった。

ただし、6月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が62.6と、市場の低下予想に反して上昇し、足元の景気回復期待を確認する結果となったことで米ドルが対ユーロで持ち直すと、金は上げ幅を縮小した。

また、金融緩和縮小に向けたアプローチに関してFRB高官から様々な見方が示されたことから、投資家が慎重姿勢となったことで、不安定な値動きとなった。

FRBのパウエル議長は、性急な利上げを否定し、インフレだけが政策金利の結成要因でないと発言。6月23日には2人のFRB高官がインフレ高進は予想よりも長引く可能性を指摘し、うち1人は2022年後半の利上げを予測した。また、6月24日も多くのFRB関係者が発言を行った。

一方、米国の新規失業保険申請者数の減少や、1-3月期の実質GDP確定値が年率換算で前期比6.4%増となったことは材料視されなかった。

週末6月25日は反発。米個人消費支出(PCE)物価指数の伸びが事前予想を下回ったことで、FRBが早期に金融緩和を縮小するとの見方が後退し、金は週間で4週間ぶりに上昇した。ただし、FRB高官らが相反するシグナルを発しており、不安定な動きが続いた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、6月18日の1,053.06トンから、6月25日には1,042.87トンに減少した。金価格は上昇したものの、投資家の買いは入らなかった。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、6月22日時点で16万6,214枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2万5,822枚縮小した。買いポジションが2万794枚減少し、売りポジションが5,028枚増加したことで、ネットポジションの買い越し幅が大幅に縮小した。

円建て金相場も反発した。米ドル建て金価格の上昇と為替相場が円安基調で推移したことが下値を支えた。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:急落後に足場を固めることができるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米ドル相場の動向
・FRBの慎重姿勢は継続
・円建て金相場は下値堅めを探る

金相場はひとまず下げ止まっている。しかし、大きく値を上げる雰囲気はない。金融市場が落ち着いていることが理由であろう。今は下値を固めているようにも見えるが、まだ何とも言えない。

米実質金利から見たバリューでは、金相場は1,835ドル前後がフェアであると考えられる。その意味では、現在の水準は割安との判断になる。ただし、実質金利は変化する。今は割安でも、実質金利が上昇すれば、その限りではない。むしろ割高になる可能性もある。この点には留意したい。

今後はテーパリングが開始され、利上げが始まるまで、金相場は上がりにくい状況が続くだろう。前回2013年5月以降のテーパリング示唆から2015年12月の利上げ開始までの金価格の動向をよく理解しておくことが肝要である。

現時点では、FRBの利上げは2023年中に実施されると想定されているが、これを前提にすれば、金相場の膠着状態が2023年まで続く可能性がある。したがって、今後1年半から2年程度は、買い場探しの期間になりそうである。

今後は、市場が想定する以上に早い段階での利上げになる可能性がある。前回は2013年のテーパリング示唆後から2年半後にようやく利上げが始まっている。今の時期のテーパリング示唆から2年半後になると、ちょうど2023年末となる。少なくとも、そのあたりでの利上げは十分にあり得るだろう。

もっとも、そこまでは金相場が低迷する可能性がある。2013年以降の金価格を振り返ると、実際にそのようなパターンだった。今回もそのようなパターンになる保証はなく、また根拠もない。しかし、過去のパターンを知っておくことは、投資判断を行う上での最低限の作業である。したがって、まずはこの点をしっかりと抑えておくべきであろう。

無論、今後は徐々にインフレ的な動きになっていくだろう。その結果、実質金利が低下すれば、結局のところ金価格は上昇するだろう。テーパリングが始まり、実際に金利の引き上げが始まるまでの辛抱である。そして、利上げが始まれば、金価格は自然に上がっていくだろう。

目先はFRB関係者の発言で市場は揺れるかもしれない。しかし、それはまさに「目先の動き」であり、本質的なものではない。パウエルFRB議長やブレイナード理事、NY連邦準備銀行のウィリアムズ総裁など中核のハト派は市場を落ち着かせる一方、地区連銀総裁はそれぞれの地区の実態を背景に、早期のテーパリングや利上げの前倒しなどの発言を繰り返すだろう。

しかし、確度の高いシナリオとしては、2021年末にはインフレ率が2%を超えている可能性が高いというものである。これは、パウエル米FRB議長も認めている。いずれ市場は、インフレを意識する時が来るだろう。

デフレに戻るとの声も聞かれるが、40年続いた金利低下の時代は2020年で終わったと考えている。インフレを意識せざるを得ない期間に入っていることを理解しておくべきであろう。その意味でも、この1年半から2年は金投資の仕込み時と考えておきたい。

円建て金相場は前週の下落の流れがひとまず止まり、6,300円を割り込まずに反発している。ただし、何度も6,400円を試すものの、これを超えることができていない。これを超えなければ、値動きとしては上向かない。超えていけば、短期的には上昇しそうだが、それが持続するかはわからない。今はドル建て金相場がしばらくは安値圏での変動になる可能性を念頭に置き、深い押しで買うことを考えたい。

その意味では、できるだけ安いところで買いたいところである。6,300円割れから6,000円までの下落となれば、その流れの中で安値を買い下がっていくと良いだろう。長期的に金を保有することを目的に、ここからの安値をしっかりと拾っておくことを優先したい。

6,000円まで下げても資金が枯渇しないように、十分に分散した上で購入するようにしたい。ポートフォリオのヘッジの観点からも、金を買い増しておくことは重要である。いずれにしても、今後10年間は、金が極めて重要な資産になるだろう。2027年ごろまで金相場は長期的に上昇するとの見方は今も全く変わらない。今こそ長期的な視点を失わず、押し目をしっかりと買うことが肝要である。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。週初の6月21日は一時1,019ドルまで下落する場面があったものの、その後は徐々に反発に転じ、週末25日には一時1,115.03ドルまで値を戻し、1,111ドルちょうどで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、6月22日時点では1万2,940枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が7,117枚縮小した。買いポジションが4,915枚縮小し、売りポジションが2,202枚拡大した。

プラチナは極めて厳しい下げになっていたが、ひとまず大崩れせずに踏ん張っている。結果的に節目の1,000ドルを割り込まなかったことで、買戻しが入ったのだろう。

それにしても、値動きが激しいと言える。まずはテクニカル的に重要である1,130ドルを超えるかを核にしたい。その上で、1,180ドルを超えるようだと、再び長期的な上昇基調に回帰できる可能性が高まるだろう。現段階で楽観的な見方はしづらいが、ひとまず安値から反発している動きは素直に捉えたいところである。

また、同じ白金族系メタルで、暴落とも言える下げになっていたパラジウムも、安値から徐々に切り返し始めている。この動きに持続性が出てくれば、プラチナもつれる形で水準を取り戻すことになるだろう。

一方、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドは、対米ドルで下落基調が続いていたが、辛うじて底割れせずに反発し始めている。この動きは、プラチナにとってポジティブである。米ドル相場が新興国通貨に対して極端に上昇しなければ、金相場の持ち直しとともにいったんは戻りを試してもおかしくないだろう。ただし、現段階では楽観的にならずに、慎重に見ていくべきであろう。

円建てプラチナ相場も大きく崩れた後は反発している。下値となっていた4,100円割れでの下落が鮮明だが、逆に4,100円を回復するようであれば、反転する可能性が出てくるだろう。長期的には将来のインフレに備える上で、金とともに少しでもポジションを保有しておきたいとの考えに変わりない。

しかし、今回のような下げになると、慌てる向きも少なくないだろう。だからこそ、一度にすべての資金を投入せず、徐々に買い下がることが重要なのである。

底値はどこになるかはわからない。まだ下落に転じるリスクもある。だからこそ、買い下がるのは厳しい局面の中で、じっくりと買い下がっていけば、いずれ反発に転じた時に分散による買いが効果を発揮するのである。この点を常に忘れないようにし、分散しながら徐々にポジションを積み上げるようにしたい。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反発の展開

シルバーも反発した。金やプラチナが値を戻す中、相対的に下げ幅が小さかったこともあり、戻りもそれほど大きくはない。週末の6月25日は26.07ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、6月22日時点で3万9,871枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万2,193枚縮小した。買いポジションが1万4,750枚減少し、売りポジションが2,557枚縮小した。

銀相場は安値からは横ばいの動きだが、金やプラチナに比べると、崩れ方は小さかったと言える。25ドル台を割り込まずに踏ん張っており、前週末の6月25日は26ドルを回復して引けている。このまま27ドル台を回復できると、早期にトレンドを回復できそうである。

もっとも、何か明確な買い材料があるわけではない。あるとすれば、感覚的に割安と判断した投資家が買いを入れることで水準が切り上がることくらいだろう。また、金相場が持ち直せば、それにつれて上昇することも十分にあり得るだろう。

いずれにしても、主体性のない動きになる可能性が高い。したがって、金の動きには十分に注意したい。26ドルを回復したからと言って、トレンドが上向く保証はない。株式市場の動向も併せてしっかりと見ておきたい。

円建て銀相場も大幅安の後は反発している。とは言え、98円以上で推移していた時間帯が長かったこともあり、まずはこの水準を取り戻すことが不可欠であろう。

もみ合っていた92円を割り込まずに戻している点は、一安心といえる。これで徐々に水準を回復し、96円を超えてくると上昇に転じる可能性も高まるだろう。ただし、92円を割り込んでトレンドが崩れた場合には相応の注意が必要になるだろう。その場合には、押し目買いは慎重に行いたいところである。

前回のコラムの繰り返しになるが、92円、90円、88円といった具合に、2円刻みでゆっくりと買い下がっていけば、その後の反転で収益化することも可能になる。

また繰り返すように、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。その上で、とにかく時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券