先週のゴールド:大幅続落の展開

金相場は急落し、大幅続落となった。先週の流れを引き継ぎ、6月14日(月)の週明けから下落した。6月15・16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和縮小に向けた道筋の概略を示す可能性が警戒された。

一時5月17日以来の安値となる1,848.49ドルまで下げた。6月15日に始まるFOMCを前に14日から手仕舞い売りが出始めた。翌6月15日も下落。米ドルが上昇したことに加え、FOMCを前に動きづらい展開となった。

6月16日も下落。この日まで開催されたFOMCで、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者らが新型コロナウイルスのパンデミック後初となる政策金利引き上げの予想時期を2023年に前倒ししたことから売られた。

一時5月14日以来の安値となる1,833.65ドルを付けた。FRB当局者らはFOMC後の政策声明で、現在の雇用回復軌道を後押しするために、当面は景気支援的な金融政策を維持する姿勢を示した。しかし、同時に公表されたFRB当局者らの政策金利見通しでは18人中11人が、2023年末までに最低2回の0.25%利上げを予想した。

6月17日も前日までの流れを受けて続落。一時5月3日以来の安値となる1,766.29ドルを付けた。FOMCの今後の指針を受け、米ドルが2ヶ月超ぶりの高値となったことも、米ドル建て金相場の割高感につながった。

週末6月18日も続落。この日は荒い値動きとなった。一時1,796.86ドルまで戻す場面もあったが、引けは1,763.34ドルと、週間では5.7%安となり、週間の下落率は1年超で最大となった。

FRBの利上げを志向する「タカ派的」見通しによる米ドル高を嫌気して売られた。この日は米セントルイス連邦準備銀行のジェームズ・ブラード総裁が、インフレは予想を上回る強さで、金融政策のより早期な引き締めは「自然な対応」だと言明したことで、金相場は大きく下落した。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、6月11日の1,044.61トンから、6月18日には1,053.06トンに増加した。金価格は下落したが、投資家が保有量を増やしたことがわかる。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは6月18日に発表予定だったが新たな祝日制定の関係で、週明け6月21日に延期された。6月8日時点では20万9,387枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が4,314枚縮小した。買いポジションが45枚減少し、売りポジションが4,269枚増加したことで、ネットポジションの買い越し幅が縮小した。

円建て金相場も大幅続落した。ドル建て金価格の下落が大きく影響した。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:米ドル高継続で下押し圧力が続く

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米ドル相場の動向
・FRBの姿勢
・円建て金相場は下値模索へ

金相場は大きく崩れている。これまでの上昇基調は明らかに反転した。結果的に1,900ドルを明確に超えられなかったことに加え、米ドル高基調が鮮明になったことが背景にある。

米ドル指数の週間上昇率はここ約9ヶ月で最大であり、米ドル以外の通貨所持者にとって米ドル建ての金の魅力が減退している。ただし、ゴールドマン・サックスやコメルツ銀行は、金相場は回復に向かうとの予想を示している。

コメルツ銀行は2021年末時点の予測を2,000ドルで維持している。また、短期的には売り圧力がさらに強まる可能性があるものの、歴史的にインフレ高進は貴金属にとっては買い材料になるため、今回の下げは買いの好機とみなされ、どこかの時点で安値拾いが入るとの指摘もある。

しかし、それは金融市場が落ち着かないと難しいだろう。実際に貴金属相場は軒並み大崩れである。特にひどいのがプラチナとパラジウムである。このような相場になると、持ち直しには時間がかかる。長期投資を考える場合でも、慌てずに底値を確認してからゆっくりと拾うほうが良いだろう。

それにしても、今回の金相場の下げはまさに「急落」というにふさわしいだろう。値動き的には1,875ドルを割り込んだあたりから相場自体は下げ始めていたのだが、これがFOMCをきっかけにまさに大崩れといった様相である。

そして、1,815ドルにあった重要なサポートも割れたことで、中期的なトレンドは崩れたと言える。これで3月のダブルボトムの形成が否定され、もう一度底値を探る展開も想定される状況にになっている。

今回の下落は米ドル高が影響しているが、そのきっかけとなったFOMCでのFRBの見通しは、金融政策方針の明らかな変化を示している。結局のところ、FRBは「インフレは一時的」と繰り返すものの、公式な経済のリスク評価はタカ派色が強まっていることは確かである。インフレ警戒であれば、金利が上昇しても実質金利が低下し、金価格が上昇することになる。しかし、それも起きていない。むしろ、米長期金利は低下している。

もっとも、現在市場で起きていることは、これまでとは大きく違う。それは、短期金利が上昇した点である。FRBが行っている金利調整は短期金利である。したがって、今回のFOMCを受けた短期金利の変動は、まさにFRBの変貌ぶりを素直に反映していると言える。米短期金利の上昇が、米ドル高に直結し、その結果、金も売られているというわけである。金利が上昇しても、インフレ率が上昇し、実質金利が低下すれば、金相場は上昇することになる。

しかし、今は市場はそのあたりをほとんど見ていないことになる。つまり、米ドル高を金売りの材料としているわけである。2013年のテーパリングの際の金相場の動きを振り返れば、利上げの前に議論されるであろうテーパリングが金相場を抑制することは明白であろう。したがって、米ドル高基調とテーパリングの議論が進むうちは、金相場は上昇しづらい期間が続く可能性がある。

さらに言えば、当時の金相場が明確に底打ちし、反転して上昇に転じたのは、実際に利上げが開始されてからである。利上げ開始は2015年12月だったが、これまでの金相場の上昇基調の起点はまさにこの時点である。したがって、今回もそのような可能性もあることを十分に理解した上で、今後の金相場を見ていく必要があろう。

つまり、次に明確に金相場が上昇に転じるのは、2023年に入ってからになる可能性もあるということである。それくらいの時間軸で見ていったほうが良いだろう。もっとも、将来的なインフレ基調は変わらないだろう。また、下げてくると、「バーゲンハンター」である中国・インドなどのアジア勢が買ってくるだろう。これらの買いは、一定の下支えになるはずである。無論、この中には日本の投資家も含まれるだろう。

今後は米ドル高基調が続く中、米短期金利の上昇圧力もあり、金相場は上値の重い展開が続きそうである。現物需要の減退と投機筋の手仕舞い売りおよび新規売りで、金相場は一段安となる可能性があると考えておくと良い。

相場がここまで崩れてしまうと、商品投資顧問業者(CTA)やマネージド・フューチャーズなどのテクニカル指標を重視して投資判断を行う投機家が売り込んでくる可能性も十分にある。実際にそのような投資行動をすでにとり始めているものと思われる。

そうなると、1,700ドル程度までの下げも十分にあり得るだろう。もっとも、長期投資家は株式のヘッジや将来のインフレに備える意味でも、これまで通り粛々と押し目を拾っていけば良いだろう。ただし、時間分散と資金分散は必須である。

円建て金相場は6,600円のサポートを割り込み、下落基調に入っている。当面は厳しい状況が続きそうである。米ドル建て金相場が底打ちし、反転するまでは慎重に見ていくべきであろう。

6,000円まで下落する可能性も十分にあり得るだろう。もっとも、長期的に金を保有することを目的とする投資家にとっては、今回の下落は格好の買い場になってくるだろう。ただし、それでも一度に買わないようにしたい。底値がどこになるかは誰にもわからないからである。

まずは6,000円まで下げても問題ないように資金を十分に分散し、購入するタイミングも十分に分散した上で、ゆっくりと買い下がっていくようにしたい。ポートフォリオヘッジの観点から、金を買い増しておくことは重要である。

また、株式市場も不安定になっている。急落の可能性が高まっているが、反転する際には金の方が先に戻ることが多い。、ポートフォリオヘッジの観点から、金を保有しておく意味があることも理解しておくと良いだろう。

いずれにしても、今後10年間は、金が極めて重要な資産になるだろう。2027年ごろまで金相場は長期的に上昇するとの見方も全く変わらない。今こそ長期的な視点を失わないことが肝要である。

プラチナ:大幅続落の展開

プラチナも続落した。週初の6月14日こそ上昇する場面があったが、1,175ドルの重要なレジスタンスで上値を打たれ、その後は週末まで一貫して下落した。週末には一時1,033ドルまで下落し、1,034ドルで引けるなど、ほぼ安値引けとなった。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、6月18日に発表予定だったが、新たな祝日制定の関係で、週明け6月21日に延期された。6月8日時点では2万164枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,881枚縮小していた。買いポジションが1,346枚減少し、売りポジションが2,535枚増加した。

プラチナの下げは極めて厳しい状況である。5月下旬に1,200ドルを割り込んだあたりから徐々に上値が重くなり、その後は上値が切り下がる中、今週に入ってからの米ドル高で一気に水準を切り下げた格好である。

このような動きになると、実需の買い支えだけでは値を維持するのは難しくなる。もっとも、その実需の買いももともとそれほど強いわけではない。したがって、投機的なポジションを組んでいた投資家は、一気に手仕舞いに走り、下げが助長されやすいとも言える。

従来より、プラチナ市場は金に比べるとはるかに流動性が低い。この点も下げに拍車をかけやすいと言える。また、同じ白金族系メタルであるパラジウムも暴落といえるような急落となっている。つい先日まで2,700ドルを維持していたが、6月17日に2,800ドル台から一気に2,500ドルを割り込む水準にまで下落している。まさに「暴落」と呼ぶべき下げになっており、プラチナ相場もこの影響を受けた可能性が極めて高い。

また、米ドル高により、プラチナの最大の生産国である南アフリカの通貨ランドが急落している。これまで堅調に推移していたが、その中でもプラチナ相場は上昇していなかった。いま振り返れば、それだけプラチナ市場の状況が芳しくなかったということになろう。

いずれにしても、米ドル高基調が反転し、金相場などが持ち直すまでは、厳しい状況が続くだろう。当面は下値模索が続き、節目の1,000ドル割れの可能性も視野に入れておきたい。1,000ドルを割り込むと、950ドル、900ドル、850ドルといった具合に、50ドル刻みでの値動きになりやすい点も念頭に置いておきたい。つまり、大きな変動になりやすいということである。

円建てプラチナ相場も大きく崩れ、重要なサポートとしていた直近安値の4,100円水準をも割り込んでいる。こうなると、下値がどの水準になるかをまずは見極めることになる。米ドル建てプラチナ相場が反転し、4,100円を回復できれば買いやすいのだが、これが短期間で達成されるかと言われると、それはかなり難しいと言わざるを得ないだろう。

もっとも、長期的には将来のインフレに備える上で、金とともに少しでもポジションを保有しておきたいところである。現在のような安い水準で、時間と資金を分散しながら買いを徐々に検討していきたい。

繰り返すが、一度にすべての資金を投入せず、徐々に買い下がることが重要である。底値はどこになるかはわからない。当面は下落基調が続く可能性があり、その中で買い下がるのは厳しいところだが、じっくりと買い下がっていけば、いずれ反発に転じたときに分散による買いが効果を発揮すると考えている。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーも下落した。金やプラチナが軟調な展開となる中、週末には25.73ドルまで下げる場面が見られた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、6月18日に発表予定だったが、新たな祝日制定の関係で、週明け6月21日に延期された。6月8日時点で4万9,806枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,289枚拡大していた。買いポジションが1,022枚減少し、売りポジションが3,311枚減少した。

銀相場は下げてはいるものの、相対的に堅調である。とは言え、相場としてはすでに崩れている。まずは3月安値の23.75ドルで下げ止まるかを確認することになろう。その上で、米ドル高基調が止まるか、さらに金相場が反転するかなどを見極め、慎重に対処することになろう。

銀相場には主体性があまりない状況であり、周辺材料に影響を受けやすいと言える。一方で、銀相場は投機的な動きになりやすい傾向がある。これまで買いこんできた欧米の投資家などが売りに回ると、大きく下落するリスクもないとは言えない。したがって、慎重な対応が不可欠となる。

もっとも、安くなれば、このような投資家が銀を購入する可能性もある。金相場が下値を確認すれば、投資家の買いが押し上げることも十分に考えられる。いずれにしても、まずは底値を確認することになろう。その上で、投資家が買いを入れてくるかを確認したいと考える。上昇に転じるには、少なくとも26.50ドル以上は必要であろう。

円建て銀相場も急落している。米ドル建て銀相場の下落が効いている。重要なサポートレベルだった98円を割り込んでおり、地合いは大きく悪化している。まずは底値を確認することになろう。94円水準で下げ止まるか、あるいはそれ以下にまで売り込まれるかをまずは見極めたい。

4月以降の上昇基調の起点となった87円レベルまでの下落も可能性としてはゼロではないだろう。したがって、長期的な視点で買い下がる場合でも、かなり慎重に進めるようにしたい。

もっとも、底値を当てることはできない。この点を重視するのであれば、資金と時間を分散し、ゆっくりと買い下がることも検討したいところである。94円、92円、90円、88円といった具合に、2円刻みでゆっくりと買い下がっていけば、その後の反転で収益化することも可能になろう。

また繰り返すように、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。その上で、とにかく時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券