先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落した。連休明けは、5月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)が改善したことに加え、米国債利回りも上昇したことから、金の投資妙味が後退した。ただし、一時1,916.40ドルと、1月8日以来の高値を付ける場面も見られた。その後は反落した。

米金融緩和縮小への警戒感や米ドル高を受けて、利益確定の売りが膨らんだ。この日発表された一連の米雇用指標は顕著な改善を示す内容で、金融緩和策の早期縮小懸念が強まった。

米長期金利が上昇し、ユーロ売り・米ドル買いが活発化し、一時1,864.39ドルまで値を下げた。ただし、安値圏では押し目買いも入った。週末6月4日には5月の米雇用統計で就業者数の伸びが市場予想に届かなかったことを受け、約2週間ぶりの安値から反発した。ただし、一時5月19日以来の安値となる1,855.59ドルを付ける場面も見られた。

非農業部門就業者数が予想を若干下回ったことを受けて、金相場は穏やかに上昇した。市場関係者は大幅な増加を見込んでいたが、その通りにはならず、金利が低下したことで米ドルが下落し、金相場にはポジティブな材料がそろった。

5月の非農業部門就業者数は前月比55万9,000人増と、市場予想の65万人増を下回る伸びとなった。一方、米10年債利回りも低下したことで、米ドル指数は3週間ぶりの高値から下落し、他通貨保有者にとってドル建てで取引される金が割安になった。ただし、節目の1,900ドルを割り込んで週末の取引を終えた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は5月28日の1,043.21トンから、6月4日には1,043.16トンに減少した。投資家の買いが続かない状況にある。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、6月1日時点で21万3,701枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が941枚縮小した。買いポジションが560枚増加したものの、売りポジションが1,501枚増加したことで、ネットポジションの買い越し幅が縮小した。ただし、投機筋の強弱感は交錯しているように見える。

円建て金相場も反落した。ドル建て金価格の下落と円高基調が上値を抑えた。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:テーパリング先送り観測で支えられるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・インフレ指標への関心
・FRBの金融政策スタンス
・円建て金相場は不安定な動きに

金相場は急落後に大幅反発するなど、値動きが大きくなっている。金利にかなり敏感に反応していると言える。しかし、このような動きはあくまで短期的なものである。当面は金利が上昇すれば金相場は下落し、金利が低下すれば金相場が上昇するという、いたって単純な値動きになるものと思われる。これをこなした上で、次の上昇相場に入っていくのだろう。

先週末の金相場は大きく上昇したが、これは単純に米雇用統計に対する反応である。この反応が正しいのかどうかについては、私自身はかなり懐疑的である。無論、後にならないとわからない面があるが、金利低下はおそらく間違った反応をしたのではないかと考えている。

今回の米雇用統計に関する市場の反応にはやや不可解なところがある。労働者が戻っていないということは、供給圧力がかかる可能性があることを意味するだろう。

一方で、ワクチン接種で需要は戻りつつある。日常生活や経済活動の正常化が進めば、需要は回復する。その結果、需給ギャップが拡大すれば、インフレ圧力がかかることになる。市場はこの点を織り込んでいないのではないかと考えられる。

また、債券が買われているが、金利上昇を織り込んでショートしていた向きが買い戻しを余儀なくされているのだろう。そうであれば、これもただのショートカバーであり、金利上昇はただのポジション需給の問題の結果に過ぎないということになる。

ロスカットの買いが入っただけであれば、継続性はない。いずれ金利は上がっていきそうである。また、この日のテック株の上昇は、金利低下の恩恵を受けたものであろう。しかし、これもあくまで目先の金利低下を受けたものであり、本質的な動きではないと見ている。

次の山場は5月の米消費者物価指(CPI)が発表される6月10日である。この日が転換点になり、6月は金融市場の調整が起きる可能性が低くないと考えている。

また、6月15-16日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えている。日柄的にもこのあたりはきわめて重要なポイントになる。金利上昇圧力が強まれば、目先は金相場も売られることになる。結果的に一旦は下値を試すものと考えている。その場合には、1,800ドル程度までの調整を見込んでおきたい。

もっとも、1,900ドルを超えてくれば、相場は息を吹き返す可能性もある。今の段階では両方の可能性を念頭に置きながら金相場の動向を見ていくことになるだろう。

しかし、実際には1,800ドル前後まで調整したほうが、その後は上昇しやすいとの考えは変わらない。3月のダブルボトムを付けたところからの反発相場は一旦終わらせ、日柄調整した後で最終的に上げていくほうが、持続的な上昇相場の形成には良いだろう。

調整に入った場合には、1ヶ月程度は調整期間が続くと考えておきたい。無論、長期投資家にはこの押し目は絶好の買い場になることは言うまでもないだろう。長期的にはインフレリスクが徐々に高まっていく。そして、金利も上昇していくだろう。この金利上昇は将来のインフレ懸念を織り込むものであり、結果的に実質金利はいずれ低下するだろう。そうなれば、金利水準が高くても、金価格は理論上は上昇できることになる。この点を理解しておく必要がある。

米10年債の利回り低下で金相場が上昇する姿は、決して本質的な上昇を意味するものではない。あくまで目先のものに過ぎない。金相場が本当の意味で上昇するのは、インフレになったときである。

金利低下局面での上昇は、所詮は一時的なものである。景気回復に伴う需要増加が供給圧力を上昇させ、その結果としてインフレが起きるのであれば、まさに理想的である。無論、コントロールできないようなインフレになると困るのだが、現在のサプライチェーンの問題やコモディティ相場の上昇は、米製造業の成長性を制限する恐れがある。

一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は雇用市場の指標を注視している。米ドルの下落と高インフレは金相場の下支えとなるが、実際に高インフレの状況になれば、投資家も反応せざるを得ず、2021年後半には2,000ドルに到達する可能性は十分にあるだろう。

グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏が、非情に興味深い強気予想を出している。マイナード氏は、金・銀・金鉱株・米国株・米国債について強気のようである。

マイナード氏は、暗号資産から資金が流出し、「投資家はインフレヘッジを求め始めている」とし、「こうなると、金・銀はより良い投資先になる。市場規模がはるかに大きく、たくさんの金が世界に存在するため、金がモメンタムを得るにはしばらく時間がかかる可能性があるが、金は最終的に指数関数的局面に入る」と予想している。

このように、マイナード氏は貴金属に対して強気スタンスを継続している。暗号資産に対しても比較的好意的な見方を続けているが、現時点で推奨しているのは暗号資産ではなく貴金属である。その上で、「金相場は5,000-10,000ドルまで上昇する可能性がある」としている。かなり強気だが、そのような声は少なくないのが実態である。

一方、銀は金に遅れて上昇すると示唆している。また、銀や金鉱株への投資も妙味があるとしている。どうやら、マイナード氏の強気姿勢は、今後金利がさらに低下するとの予想に基づいており、今回もその見方を継続している。

また、インフレに関しても、それほどポジティブではない。このような見方がまだ残っているのだが、この見方は本質的には実現しづらいと考えられる。今後、金相場が上昇するときは、金利の上昇も伴うだろう。それがインフレ時代へ転換する重要なサインと言えるのである。

円建て金相場は6,800円を超えられずに反落し、6,700円も割り込んだ。こうなると、しばらくは調整の可能性を念頭に置いておいた方が良さそうである。私自身も、常に強気な見方をしているわけではない。調整するときは無理をしないことも重要である。ドル建て金相場が1,900ドルを回復できなければ、その可能性はさらに高まるだろう。

円建て金相場は6,600円を維持できるかが目先は重要なポイントになることは理解しやすいだろう。もっとも、将来のインフレに備え、押し目は買っていきたいところである。もちろん、時間と資金を分散し、徐々に積み立てておくことが肝要である。

下手な予想をするよりも、ポートフォリオのヘッジの観点から、インフレと将来の株安局面に備える意味でも、金を買い増しておくことは重要だろう。今後10年間は、金がきわめて重要な資産になると見ている。

プラチナ:反落の展開

プラチナも反落した。連休明けの6月1日には一時1,206.20ドルまで上昇し、節目の1,200ドルを超える場面もあったが、この水準を維持できず、週末にかけて下落し、6月4日には一時1,139.90ドルまで値を下げる場面がみられた。週末は1,162ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、6月1日時点で2万4,045枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,058枚拡大した。買いポジションが875枚増加し、売りポジションが183枚減少した。ただし、週末にかけて下落しており、売りが増えている可能性がある。最新のデータで確認したい

プラチナはいかにも上値が重い展開にある。英精錬大手ジョンソン・マッセイが、2021年のプラチナの世界需給が3年ぶりの供給超過となるとの見通しを示したことが材料視されている可能性がある。

実需の引き締まりが見られなければ、いまのプラチナには上昇に向かうだけの力はなさそうに見える。金相場が大きく上昇すれば、ある程度は支えられる可能性があるものの、独自の支援材料がない中では、短期的に節目の1,200ドルを大きく超えていくのは難しいのではないだろうか。当面は厳しい状況が続くことをある程度見込んでおくことが必要だろう。

もっとも、プラチナの世界最大の生産国である南アフリカの通貨ランドは、対米ドルで上昇基調を強めている。3月安値からほぼ一貫して上昇しており、この点は少なからず、プラチナ相場の支援材料になるはずである。今は市場はこのような材料をほとんど無視しているように見える。しかし、通貨面のサポートがいずれ効いてくる時が来るだろう。

円建てプラチナ相場も軟調である。直近安値の4,100円水準まで下落しており、この水準を維持できるかはきわめて重要である。ドル建てプラチナ相場が軟調な中で、円建て相場も厳しい状況にある。

また、4,300円を明確に超えられずに下げていることも、チャート上はあまり良くないように見える。ただし、4,100円を大きく下回り、さらに下値を切り下げる状況は想定しづらいと考えている。現状の水準で踏みとどまることができれば、反発の可能性も出てくるだろう。

いずれにしても、これまで通り、将来のインフレに備えて、金とともに少しでもポジションを保有しておくと良いだろう。現在のような押し目買いのタイミングでは、時間と資金を分散しながら、一度に資金のすべてを投入せず、徐々に買い下がっていくと良いだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーも反落した。6月1日には28.54ドルの高値を付ける場面もあったが、その後は徐々に水準を切り下げ、6月3日には一時27ドルちょうどまで値を下げた。週末は27.78ドルで取引を終えた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、6月1日時点で4万7,517枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,965枚縮小した。買いポジションが1,613枚減少し、売りポジションが1,352枚増加した。投機筋はここ最近、売り姿勢を強めており、この傾向が続くかを注視しておく必要がある。

銀相場は上値が重くなっており、崩れそうな雰囲気だ。基調が戻るには、少なくとも28ドル程度を超えてさらに堅調さを見せる必要があるだろう。

今は銀市場そのものに明確な材料があるわけでないことは、これまでも繰り返し解説してきたとおりである。したがって、目先は金相場や米ドル、株価の動き次第と言えそうである。28.50ドル前後のレジスタンを明確に上回れば、買いの勢いが増し、高値を更新して節目の30ドルを試す可能性も十分にある。

しかし、その前に調整が入りそうな雰囲気である。その場合には、まず26.50ドル前後にある重要な節目を維持できるかがポイントになる。調整した場合に、この水準を割り込まずに反転することができれば、再び上値を試す可能性も出てくるだろう。

ただし、割り込んだ場合には、24ドル前後までの調整になり、さらにこれを割り込むと底割れとなる可能性もある。下落リスクが高まっている点には注意しておきたい。

円建て銀相場も下落している。102円で頭打ちとなり、徐々に値を下げている。ダブルトップのようなチャート形状になっており、このまま推移すると下落に転じるリスクも感じる動きである。98円を割り込むと、サポート割れとなり、さらに水準を切り下げる可能性が高まりそうである。

まずはそのような動きになるのか、動向に注視しておきたい。その上で、買いを検討したいと考えている。下げに転じた場合には、94円程度までの急落となる可能性もあることから、安易な押し目買いは避けたいところである。値動きが落ち着くのを待って、徐々に買いを検討したい。

また繰り返すように、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。その上で、時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券