先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸した。週初は米ドル安と米国債利回りの低下によって投資妙味が高まった。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和策を続けるとの見方から、米ドル安と米国債利回り低下が進んだことが支援材料となった。

5月の米消費者信頼感指数が低下したことを受け、FRBのハト派的な姿勢は長く続くとの見方が広がり、ドル指数が4ヶ月半ぶりの安値となった。また、米国債利回りが2週間ぶりの低水準を記録する中、金保有の機会コストが低減したことが材料視された。

5月26日には節目の1,900ドルを割り込む場面も見られた。米ドル高と米国債利回りの上昇で、金への投資妙味が一時的に薄れた。ただし、FRBが金融政策のハト派的スタンスを維持するとの見方が根強いため、下げ幅は抑えられた。また、この日は一時1,912.50ドルと、1月8日以来の高値を付ける場面もあった。

5月27日も1,900ドルを下回る水準で横ばいとなった。米国経済の順調な回復を示すデータが得られたものの、米国債利回りの低下がこれを打ち消した。米国経済は堅実な成長軌道に乗っており、インフレに関する議論はやや弱まった。

米新規失業保険申請件数が予想を下回る一方、1-3月期の米GDP成長率は加速した。米10年債利回りが下落したことで、金利を生まない金を保有する機会コストは低下した。

週末5月28日の金相場は上昇した。一旦は下落したが切り返し、節目の1,900ドルを上回って引けた。この日発表された4月の米個人消費支出(PCE)物価指数が大幅に上昇したことで、インフレヘッジとしての金の魅力が高まった。

金相場は週刊で1.1%高となり、週間で4週続伸となった。4月の米PCE物価指数は前年同月比3.6%上昇と、伸びが加速。変動が大きい食料品とエネルギーを除いたコア指数も3.1%上昇し、FRBが目標とする2%を大きく上回った。

一方、4月の香港経由の中国の金輸出入は差し引きで52.821トンの輸入超だった。純輸入量は2018年6月以来の高水準となり、3月の16.545トンから大幅増加した。前年同月は、新型コロナウイルス感染拡大関連の規制で市場が圧迫され、少なくとも2011年以来初めて輸出超過となった。

4月の香港を経由した中国の金輸入総量は55.699トンで、3月の21.766トンから増えた。春節以降、需要が好調となっている。2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴う大量の需要の蓄積に加え、国内のインフレに対する懸念も買い材料になっている。


世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は5月21日の1,042.92トンから、5月28日には1,043.21トンに増加した。一時は5月25日に1,046.12トンまで増加する場面もあったが、週末にかけて売られている。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、5月25日時点で21万4,642枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万5,753枚拡大した。買いポジションが2,001枚減少したものの、売りポジションが1万7,754枚減少したことで、ネットポジションの買い越し幅が拡大した。利益確定売りが出る一方、金価格の上昇で売り方の買戻しが進んでいることが確認できる。

円建て金相場は続伸した。ドル建て金価格の上昇と、円安基調が水準を押し上げた。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:インフレ警戒の買いが続くか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・インフレ指標への関心
・FRBの金融政策スタンス
・円建て金相場は高値圏で推移へ

金相場は高値圏を維持している。一時1,900ドルを割り込む場面もあったが、週末に切り返してこれを維持して引けている。このまま1,900ドルを固め、さらに一段高になるかに注目することになる。

FRB当局者は、相次いでインフレ懸念を打ち消す発言を行っている。また、現行の金融緩和政策は維持されるとの考えを繰り返し表明しており、これが金相場を支えている面がある。市場は、インフレがFRBの現在の見立てよりも根強いと感じており、金などのインフレヘッジ資産に資金が流れ始めている。

市場では、金相場は2021年下半期に2,000ドルに達するとの予想も出始めている。数人のFRB関係者は、ハト派的スタンスを維持する姿勢を改めて示している。クラリダ米FRB副議長は5月25日、景気回復を妨げない形で発生するインフレは抑制可能とした。

市場では、投資家のインフレ警戒が続く中、数ヶ月にわたる資金流出があっても、貴金属への機関投資家の関心は高まり続ける可能性が高く、当面はテーパリングへの懸念を打ち消す力になるとみられている。

5月28日に発表された米PCEデータが若干上向いたことは、少なからず市場におけるインフレ警戒の姿勢を強めることにつながったと言えるだろう。インフレ的な状況が金相場を支える構図が徐々に見え始めている。

また、FRBが資産購入のペースダウンや利上げについて積極的な姿勢を見せていないことも、金利の付かない金にとっての支援材料である。したがって、このまま1,900ドルの水準を維持できれば、地合いは変わっていく可能性があるだろう。

また、米バイデン政権は5月28日、2022会計年度(2021年10月-2022年9月)の予算教書を議会に提出した。歳出は6兆ドル規模で、インフラ、教育、気候変動対応への予算を増やす。この点も、将来の米国のインフレを想起させる可能性がある。

巨額の財政出動が決まるかは不透明ではあるが、米バイデン政権の姿勢は少なくともインフレを押し上げる材料になる。このような材料も金買いの機会とみなされる可能性がある。米経済が素早く回復し、インフレ加速が続けば、金需要はさらに高まるだろう。

実際に、投資家は金投資を増やし始めているようである。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の週間調査によると、5月26日までの1週間は、キャッシュファンドや金ファンドなど安全資産に資金が流入している。インフレの進行と金融緩和の縮小に対する懸念が広がっていることが浮き彫りとなったと言える。

マネーマーケットファンド(MMF)には2020年4月以降で最大となる680億ドルが流入した。金ファンドにも過去16週間で最大の26億ドルが流入している。ただし、株式ファンドにも179億ドルが流入しており、投資家は依然として株式にも投資する姿勢を継続している。

しかし、これまで資金流出が続いていた金ファンドへの投資が継続されているところが、1ヶ月前とは大きく異なる点である。BofAは今後3~6ヶ月で株式投資のリターンが低下したり、マイナスになる可能性があると警告している。

株式ファンドには2021年に入り、約5,000億ドルが流入し、流入額は過去12年間の合計流入額を上回っている。これ自体が、今後の株価の上値を抑える要因になるとは言い切れないが、相当額がすでに株式市場に流入していることは確かである。

つまり、今後はBofAが指摘するように、株式投資のリターンがやや低下する可能性は十分に考えられる。一方で、余剰資金が現金ファンドや金ファンドなどに振り向けられれば、金相場の押し上げにつながる可能性がある。これらのマネーフローの動きにも注目しておくと良いだろう。

もっとも、米ドル高になれば簡単に下げる点には留意しておきたい。短期的にはすでに買われすぎの水準であり、簡単には上げづらい水準にあることは理解しておく必要がある。

また、株価の動きにも影響を受けるだろう。株安になった場合、投資家が現金化を急ぐことで、当初は金も一緒に売られる可能性が高い。さらに、6月前半は金相場は下げやすい傾向がある。これが株高を意味するのかは不明だが、金相場は当面は上がりづらい傾向があることを理解しておきたい。

もっとも、これはあくまで短期的な話である点にも注意が必要である。と言うのも、金相場は7月以降は上昇しやすい傾向がある。これらのデータから、目先は調整した場合でも、売らずにいかに保有し続けておくことが重要であると言える。

その上で、株安で金が一緒に売られた場合でも、売らずにむしろ買い増しをしたいところである。株式は6月後半と9月に下げる可能性がシーズナリティから指摘できるが、金はむしろ、9月は上げやすく、安全資産として買われる可能性が高いだろうと考えている。

今はまだインフレを意識した買いが本格化していないが、そのような動きになると、金は相当の強気相場に入ることになるだろう。現在はインフレ相場の端緒にも至っていない。これからがインフレ相場の本番であろう。

1,900ドルを固め、2,000ドルを目指して上昇する時がいずれくるだろう。その結果、2021年末までに史上最高値を更新する可能性もあると考えている。

円建て金相場は6,600円を割り込まずに上昇し、6,700円も超えてきた。こうなると、あとは上値のめどは見えなくなってくる。このような状況では、ますます買いづらくなる。しかし、「買いにくい相場ほど上がりやすい」傾向がある。今の相場はまさにその典型であるとも言えそうである。

ドル建て金相場が1,900ドルを固め、さらに明確な上昇基調に入ると、円建てでは円安傾向もあり、ますます買いづらくなるだろう。だからこそ、これまで指摘してきたように、時間と資金を分散し、徐々に積み立てておくことが肝要なのである。

今後も時間と資金を分散し、ゆっくりと買っていくようにしたい。また、「押し目買い待ちに押し目なし」の状況になる可能性が高まっているため、少しでも押し目があれば、その機会を逃さずに買っていくことも重要である。

金を保有していない場合には、少しでも早く金を保有することを検討したい。また、保有している場合には、このままゆっくりと時間を分散して保有量を積み増していけば良いだろう。

金はポートフォリオのヘッジになる。株価の調整やインフレに備え、常に保有しておきたい。今後10年間は、金が極めて重要な資産になるものと私は考えている。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。週初は1,159ドルまで下落し、前週の安値を割り込む場面もあった。しかし、その後は下げ渋り、5月26日には一時1,214ドルと、1,200ドル台を回復する場面もあった。しかし、週末にかけて再び下落し、週末は1,177.50ドルと、辛うじて先週末の水準を上回って引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、5月25日時点で2万2,987枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,827枚縮小した。買いポジションが686枚減少し、売りポジションが2,141枚増加した。最近の投機筋は売り姿勢を強めていると言える。

プラチナは節目の1,200ドルを下回っている。英製錬大手ジョンソン・マッセイによると、2021年のプラチナの世界需給は3年ぶりの供給超過となる見通しである。需給が緩むとの見方から売り圧力が強まった面もあるだろう。

このように、いまのプラチナは、金相場の堅調さとは対照的な動きである。また、このところ下落していた同じ白金族系メタルのパラジウムが、安値から切り返して反発しており、この動きとも対照的である。

このように見ていくと、市場はプラチナへの関心を高めていないように見える。もっとも、先週は安値を割り込まずに辛うじて支えられており、崩れているわけではない。

重要なサポートが1,125ドル前後に位置しており、このあたりまでの調整を視野に入れておきたいところだが、下値を維持できれば再び上向く可能性は十分にあると考えられる。いずれにしても、株価動向など外部要因にも注意しながら、状況を冷静に見ていくことになるだろう。

円建てプラチナ相場は上値の重い展開である。ドル建てプラチナ相場につれる形で一時は安値をつけたが、その後は辛うじて維持している。とはいえ、戻りも限定的であり、4,300円を超えられずに下げており、再び直近安値の4,200円水準を試しそうな雰囲気である。

もっとも、この水準を維持できれば、大きく崩れる可能性は低いだろう。また、いずれ投資家のプラチナへの関心が高まる時期が来るだろう。まずは4,200円のサポートで下げ止まるかを確認し、その上で押し目買いのチャンスをうかがいたいところである。

プラチナについても、金と同様に将来のインフレに備えて、少しでもポジションを保有しておくと良いだろう。押し目買いの好機を逃さないことが肝要である。時間と資金を分散しながら、一度に資金のすべてを投入せず、徐々に買い下がっていくと良いだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅続伸した。5月26日には一時28.23ドルまで上昇する場面があったものの、高値を維持できず、その後は小幅に下げて、週末は27.88ドルで取引を終えた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、5月25日時点で5万482枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が499枚縮小した。買いポジションが627枚減少し、売りポジションが128枚減少した。投機筋は気迷いムードであり、次の動きを待っている状況にあると言えそうである。

銀相場は依然としてトレンドは崩れていない。27.50ドル前後のサポートを維持し、上向き基調は保たれている。この水準を維持できていれば、いずれ上向くことが考えられる。ただし、銀市場そのものに明確な材料があるわけでない。

今は金相場がインフレ懸念で買われる流れに支えられていると言える。もっとも、この金相場の上昇基調が続けば、銀相場だけが売られて下落するようなことはないだろう。引き続き、金相場の動向を注視しつつ、銀相場の動向に目を向けるようにしたい。

ただし、27.50ドルを割り込んで下落に転じた場合には、26.50ドル前後までの調整になるだろう。また、引き続き株価動向にも注意が必要である。株価が崩れた場合には、工業用需要が主体である銀は売られやすくなるだろう。その場合には、ボラティリティが高くなり、価格変動も大きくなりやすいと言える。

このような銀相場の特性を理解したうえで対処することが肝要である。その意味では、28.20ドル前後のレジスタンを明確に上回れば、買いの勢いが増し、高値を更新して節目の30ドルを試す可能性も十分にあるだろう。

円建て銀相場は節目の100円前後でもみ合いの状況にある。方向感がないドル建て銀相場の動きを反映している。今は100円からどちらに明確に放れるかを注視しておきたい。

もっとも、現時点でも3月末からの上昇トレンドは維持されている。98円を維持できていれば、基調は保たれていると言える。そのため、押し目買いの機会を探っていきたいところである。

ただし、98円を割り込むと、96円から94円あたりまでの急落となる可能性もある。この点には注意が必要だろう。

繰り返すように、銀相場はボラティリティが相対的に高いため、保有量は金の3分の1程度に抑えたほうが良いだろう。その上で、時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券