モトリーフール米国本社、2021年5月10日投稿記事より

米国議会に提出した予算案で、バイデン大統領はさまざまな分野での予算増額を求めています。

中でも目立つのが医療分野で、国立衛生研究所(NIH)にアルツハイマー病などの難病の治療を支援する新しい機関を創設することも提案に盛り込まれています。

これが実現すれば、米国政府がモデルナの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン開発を支援した時のように、米国だけで約600万人の患者がいるアルツハイマー病の治療薬開発は、劇的に進展するかもしれません。

それによって助けられるのは患者だけでなく、2028年には130億ドルの規模になると予想されている同治療薬市場のプレーヤーも恩恵を受けます。

その中でも注目のデナリ・セラピューティクス(NASDAQ:DNLI)、キャッサバ・サイエンシズ(NASDAQ:SAVA)、イーライリリー(NYSE:LLY)を紹介します。

デナリ・セラピューティクス

デナリはアルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患の治療薬開発に携わっています。

治療薬が脳に働きかけることを阻害する血液脳関門(BBB)に対する同社のアプローチは独特で、トランスポート・ビークル(TV)というBBBの通過性を高める技術を開発しています。

昨年11月、この技術を使った治療薬が、ハンター症候群という難病のフェーズ1/2臨床試験で開始からわずか4週間で目標とする効果を示しました。

また、同社はサノフィと提携しており、2020年には脳の炎症と細胞死を引き起こすたんぱく質の阻害剤DNL788をベースにした治療薬の開発に着手しています。

そのほかワシントン大学と組み、後期発症アルツハイマーに関連する遺伝子を対象として、主な副作用である脳内出血のリスクを抑えつつ治療する方法を研究しています。

キャッサバ・サイエンシズ

人類のアルツハイマー病克服を最大の目標として掲げるキャッサバは、すでにNIHの支援を受けています。

同社の治療薬候補「シムフィラム」は1年間の安全性試験中で、科学面と資金面でNIHにサポートされています。

アルツハイマー病治療薬の多くは脳に沈着して認知症を引き起こすとされているアミロイドというたんぱく質を除去しようとするものですが、シムフィラムは脳にとって重要なたんぱく質の形と機能を正常な状態に戻すことを目指します。

同薬による6カ月間の治療を終えた最初の50人の被験者についての試験結果が今年発表され、認知機能の改善が10%、認知症関連行動の改善は29%で認められています。

同社はフェーズ3臨床試験の開始を今年下半期に計画しており、150人を想定する治験参加者のうち100人は4月の時点で集まったとしています(最新情報は7月または9月に発表予定)。

キャッサバはアルツハイマー病診断に使える簡単な血液検査方法も開発中で、これが完成すれば記憶障害が発生する前から診断できるようになります。

この研究でもNIHの支援を受けており、うまくいけば同検査薬は治療薬とは別の大きな収入源となる可能性があります。

イーライリリー

イーライリリーは最近、同社の治療薬候補「ドナネマブ」が初期アルツハイマー病患者の認知機能低下を遅らせる効果を示したと発表しました。

ドナネマブは患者の脳で機能不全に陥る分子の拡散を抑えつつ、アミロイドを除去しようとするものです。

効果は治験開始からわずか9カ月で認められており、プラセボ薬(偽薬)投与者との比較で、認知機能低下が32%緩和されました。

この治験の参加者数は257名とまだ少なく、本格的な臨床は今年後半に開始する予定です。

普通なら結果が出るのは3年後ですが、政府の支援を受けることができれば大幅に早められるかもしれません。

デナリとキャッサバとは違い、同社には自力でも本格的な臨床試験を行えるだけの経営資源と経験があります。

希望と現実

バイデン大統領が提出した予算案はあくまでも提案であり、決めるのは議会ですが、複数のCOVID-19ワクチンが1年以内に開発されるという奇跡のようなことが、政府の支援によって起こりました。

人類を長年悩ませてきたアルツハイマー病の治療薬候補は、99%が未承認に終わっています。

その主な理由は金銭的リスクが高いために最も有望な治療法以外の可能性を追求しにくいことと、治験参加者が足りないことですが、政府が全面的にバックアップすることになれば両方とも解決できるかもしれません。

 

掲載元:モトリーフール

 

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