先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸した。先週末の急伸の流れを受けて、高値圏で推移した。5月7日発表の米雇用統計が予想を下回り、米ドル安となったことに加え、金利が低水準で維持されるとの見方に支えられた。

4月の非農業部門就業者数の伸びは予想外に鈍化し、ドル指数は約2ヶ月ぶり安値に沈んだ。5月11日には世界的株安などを背景に安全資産としての買いが入った。5月12日に発表された4月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.2%上昇と、大幅な伸びとなった。

これを受けてインフレヘッジ目的の金買いが先行した。ただし、米長期金利が上昇し、米ドル高が進行したことで、ドル建て金相場の割高感が強まり、次第に売りに押された。

5月13日は上昇した。米長期金利の低下を背景に押し目買いが入った。米10債利回りは最近の上昇一服で低下の動きとなり、前日に売られていた金はインフレヘッジの買いがやや優勢となった。5月14日は続伸。4月の米小売売上高が増加予想に反して横ばいだったことを材料に米ドルが下落し、米国債利回りが低下したことで金価格が押し上げられた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は5月7日の1,025.15トンから、5月14日に1,028.36トンに増加した。小幅ではあるが、最近は増加傾向が続いており、少なくとも投資家の金離れには歯止めがかかったように見える。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、5月11日時点で19万2,255枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2万1,514枚拡大した。買いポジションが1万1,967枚増加し、売りポジションが9,547枚減少した。新規買いと買戻しが入っており、強気のパターンになっている。

円建て金相場は続伸した。ドル建て金価格の上昇を受けて水準を切り上げた。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:金利低下と米ドル安が支える構図

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米金利低下とドル安基調
・インフレ懸念
・円建て金相場は高値圏で推移へ

金相場は依然として高値圏を維持している。米ドル安と金利低下が材料視されているようだが、これは株価が下げると逆に作用する可能性もある。その際に、金は売られるのか、それとも買われるのかを見極めることになる。

短期的には1,845ドルにあるレジスタンスで上値を抑えられている。これを上抜けるかどうかで、目先の方向性が決まるだろう。今はきわめて重要な位置にあるが、これはあくまで短期的な話である。長期的にはインフレがテーマになることは確実であろう。

したがって、金に対するスタンスは全く変わらない。現在のように実質金利が低下している状況で金が買われていないのは、まだ投資家がそこまで頭が回っていないからだろう。今後の最重要テーマは長期的なインフレである。インフレヘッジに利用される代表的な銘柄である金を今の時点で手放すという選択肢はない。むしろ、これからも徐々に積み増していくことを考えたい。

インフレに関する米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢は変わらないだろう。また、緩和的な政策とインフレで、金はますます上がりやすくなるだろう。金は手放してはならない最も重要な資産の1つである。

コモディティ価格の上昇は、インフレを想起させるには十分である。また、投資家の金ETF売りの動きも止まってきている。売り手がいなくなれば、少なくとも金相場は下げにくくなるだろう。米消費者物価指数(CPI)は非常に強い内容となった。FRBは持続的なものではないとしているが、おそらくそうはならないだろう。2021年末には2%を超える水準のインフレ率になっているのではないか。そうなれば、FRBは「持続的に2%を超える水準になれば」利上げを検討すると発言するだろう。

無論、その前にはテーパリングが議論になる。これは早い段階で始まる可能性もあるだろう。それによって市場は驚く可能性もあるが、インフレ率の上昇は金相場にはポジティブな材料である。一時的な金利上昇に慌ててはいけないだろう。

インフレの原因となるコモディティ価格の上昇だが、目先は一服感が出始めている。これまで短期間で上昇してきたこともあり、調整が必要である。この調整が終われば、再び上値を試すだろう。需給バランスがひっ迫しているコモディティは特に買われやすくなると考えている。

グローバル的な観点から見ると、個人投資家のインフレへの対処はかなり遅れているようである。長期的にはインフレへの対処をできるだけ早く行うことが肝要である。いつも言っていることではあるが、インフレヘッジはインフレになってから始めても遅い。将来のインフレがかなり高い確度で起きる可能性があると考えるのであれば、とにかく早めに対処すべきである。

今の金価格の水準は、米インフレ指標から見ると割安であると判断している。このままインフレの状態が続き、さらに強まれば、ますます割安になる。したがって、少しでも早く金に投資し始めたほうが賢明との判断になる。

欧米の投資家は、最近の下落基調で売り続けてきたが、ようやくその動きも止まりつつあるようである。彼らが価格上昇に乗る形で買いを復活させれば、それらの買いがさらに相場を押し上げ、さらに追加的な買いを誘うことになりそうである。その結果、金価格はいずれ史上最高値を更新し、想像もつかない水準に上げていくことになりそうだ。

円建て金相場は6,500円まで上げてきた。これを超える上値がないことになるため、買いづらくなっていくだろう。しかし、買いづらい相場ほど上がりやすいのが相場の常である。ドル建て金相場が上昇基調に入ると、米ドル/円相場は円高に傾く可能性はあるものの、円建て金相場はさらに上値を試す動きに入るだろう。時間と資金を分散してもゆっくりと買っていくのが良いのだが、「押し目買い待ちに押し目なし」の状況になる可能性が高まっている。少しでも押し目があれば、その機会を逃さずに買っていくことが肝要である。

また、6,500円を超えて上昇基調がさらに強まった場合には、分散しながら少しずつでも買っていったほうが良いだろう。そうしないと、買い場を待っているうちに高値を更新し続ける可能性もある。いずれにしても、金を保有していない場合には、少しでも早く金を保有することを検討すべきだろう。また、保有している場合には、ゆっくりと時間を分散して保有量を積み増していけば良いだろう。金はポートフォリオのヘッジになる。株価の調整やインフレに備え、常に保有しておくのが良い。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。先週の上昇の流れが一転し、下落に転じた。5月10日には一時1.275.49ドルまで上昇し、直近高値を更新したものの、買いが続かなかった。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、5月11日時点で2万7,267枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が964枚縮小した。買いポジションが156枚減少し、売りポジションが808枚増加した。また、週後半に下落していることから、その後の投機筋の対応に注目しておきたい。

プラチナは高値から下げているものの、前週末時点では上昇トレンドを維持している。現時点では節目の1,200ドルから重要なトレンドラインが位置する1,185ドルがサポートになるだろう。ここを維持できていれば、トレンドは維持されていると判断できる。やや売られすぎになってきており、下値余地は大きくないものと考えられる。

一方、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの上昇がやや一服したことが、プラチナ価格の上昇に歯止めをかけた可能性もある。ランドとプラチナ価格は両者が影響し合っており、どちらが先導役になっているかはその時々で変わってくるが、米ドルがリスクオフで買われたときにはランドが下落するため、プラチナは下げやすくなる点には注意しておきたい。今はランドに下落余地があるだけに、特に注意しておく必要があるだろう。一方、需給面では特段の新しい材料はない。長期的なプラチナの新規需要の動向には今後も注目しておきたい。

円建てプラチナ相場は下落した。一時的に4,500円を超える場面もあったが、維持できずに下げている。直近の高値を更新した後に下げており、もう一度これを超えるか注視することになる。今は上昇トレンドを維持しており、4,300円を維持できれば、再び上値を試すことになろう。

プラチナについても、金と同様に将来のインフレに備えて、少しでもポジションを保有しておくと良いだろう。今は格好の押し目買いの好機と言えそうである。徐々に時間と資金を分散して、買い下がっていくと良いだろう。一度に資金のすべてを投入せず、分散して買っていくことが肝要である。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅反落の展開

シルバーは小幅に反落した。5月10日には一時27.87ドルまで上昇する場面があったが、その後は徐々に水準を切り下げた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、5月11日時点で5万2,843枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が4,976枚拡大した。買いポジションが7,539枚増加し、売りポジションが2,563枚増加した。投機筋は新規買いを積み上げる一方、売りポジションも積み増しており、高値圏で強弱感が交錯している。

銀相場はやや上値が重くなっているが、トレンドは崩れていない。26.60ドル辺りにあるサポートを維持できていれば、基調は維持されていると判断できる。ここを維持できていれば、再び高値を試す機会が到来するだろう。

ただし、短期的には買われすぎ感からの調整が入りやすいタイミングでもある。したがって、当面は横ばいとなる可能性もある。上昇に転じるにしても、日柄調整をこなしてからになりそうだ。今後は、引き続き2月23日の高値である28.31ドル、さらに2月1日の高値30.03ドルを超えるかを見ていくことになろう。

今は銀自身に特段のファンダメンタルズ材料がなく、市場もそれらを材料にして動いているわけではない。したがって、連動性の高い金などの動きをよく見ながら、また株価動向も併せて見ていきながらの対処になるだろう。そのうえで、投機的な動きが入ってくれば、その動きに注視したいところである。その場合には、ボラティリティが高くなり、価格変動が大きくなりながら急激な動きになるだろう。そのような動きについていくことで、短期的な収益を獲得できる可能性もある。特に銀相場の場合には、そのような相場展開になりやすい傾向があるため、注目しておきたいところである。

円建て銀相場は一時99円を超える水準まで上昇したが、高値を維持できずに反落している。ただし、ドル建て銀相場が反発すれば、それにつれる形で再び上値を試すだろう。今は3月末からの上昇トレンドが維持されている状況であり、押し目買いが有利な状況である。最大で95円までの押し目を許容範囲とし、押し目買いのチャンスを逃さないようにしたい。

また、反発して95円を超えていくようであれば、その流れに追随する形で上値を買っておくことも検討したい。押し目を待っていると、買いのタイミングを逃す可能性もある。時間と資金を分散し、少しでもポジションを保有するようにしたい。ただし、繰り返すように、銀相場はボラティリティが相対的に高い。そのため、保有量は金の3分の1程度に抑えたほうが良いだろう。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券