先週のゴールド:大幅上昇の展開

金相場は大幅上昇した。週初から上値を試す展開で、米長期金利の低下や対ユーロでの米ドル安に支えられた。

米10年債利回りは一時1.60%を割り込むなど前週末から低下。金利を生まない金は買われやすい地合いとなった。米ドルが対ユーロで下落したことも、ドル建てで取引される金の割安感を強めた。

堅調な経済指標が相次ぎ、インフレ懸念がくすぶっていることもインフレヘッジ資産とされる金買いを促した。その後は、米金利上昇の可能性を示唆したイエレン米財務長官の発言をきっかけに売りが強まる場面もあった。イエレン財務長官がバイデン米政権の成長戦略について「きわめて緩慢な金利上昇につながる可能性がある」と発言したことが伝わると、金利先高感から売りが台頭し、1,795ドル近辺から一時1,770ドル前後まで一気に値を下げた。

しかし、その後は米金利低下やドル安背景に再び買われ、5月6日には心理的節目の1,800ドルを回復した。5月7日には大幅続伸となった。4月の米雇用統計で就業者数の伸びが市場予想に反して大幅に鈍化し、米ドル相場と米10年債利回りが下げたことが買い材料となった。週間では3.5%高と、2020年11月以来、6ヶ月ぶりの高い上昇率になった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は4月30日の1,017.04トンから、5月7日には1,025.15トンに増加した。これまで投資家の金離れの動きが止まらなかったが、4月29日の1,017.04トンを底に増加し始めている。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、5月4日時点で17万741枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が122枚拡大した。買いポジションが523枚減少し、売りポジションが645枚減少した。ただし、週末にかけて金相場が急騰しているため、買いポジションが増加しているかに注目しておきたい。

円建て金相場は急伸した。ドル建て金価格の大幅上昇を受けた動きとなった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:金利低下と米ドル安が続くか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米金利の低下と米ドル安
・インフレ懸念
・円建て金相場は高値圏で推移へ

金相場は突如として上昇した。無論、金そのものの材料で上げているわけではない。外部要因が金相場の上昇につながるような状況になったからである。

4月の米雇用統計が予想外の弱い内容になったことは、金相場を押し上げるには十分だったと言える。非農業部門雇用者数が98万人増の予想に対し、26万6千人増にとどまったことはネガティブサプライズである。しかし、市場はこの材料を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が緩和策を続けると解釈したようである。その結果、株式市場と金市場がポジティブに反応するという、非常に興味深い値動きとなっている。

これは、インフレを想起させる値動きだろう。2021年に入ってから、コモディティは株価以上に上げている。金相場は一旦上がり始めると12年間上がる傾向があることを以前のコラムでも解説したが、今がその動きにあることは言うまでもない。

しかし、最近は市場の反応が極めて鈍く、投資家も株高に目を向ける形で金投資から手を引き、金を売却して大量の資金を株式市場に振り向けてきた。

事実、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金上場投資信託(ETF)からの資金流出は4月も続いている。年初からの流出量は194トンに達した。これで、2020年11月からの半年間で月間でネット流出となったのは5ヶ月に及んでおり、投資家の売り姿勢が鮮明であることがわかる。

しかし、ここにきて金利の上昇が抑制されていることで、米ドルが下落しており、これが金相場の押し上げにつながっている。地合いの変化が見られ始めているが、これが本格的な上昇につながるのか、注意深く見ていく必要があるだろう。

最近の金利抑制の動きの背景には、投資家の債券買いにある。株式市場にも相変わらず資金が流入しているが、一方で債券にも同様に資金が入っている。投資家はこれまでほどには株式のみに資金を振り向けておらず、債券も買っている。これが金利の抑制につながっている。したがって、投資家が債券を買い続けるかどうかで金利動向が決まり、その結果、金相場が上昇できるかが決まることになる。これはきわめて重要なポイントである。

一方で、インフレ率の上昇懸念が高まることも、金相場を押し上げる要因になる。米10年物の物価連動債の動きを見ると、実質金利が低下している。これはインフレを想起させ、金相場を押し上げる材料になる。2021年に入ってからのコモディティ価格の上昇が徐々に浸透し、投資家もインフレの気配を無視することはできなくなりつつある。

コモディティ価格は上昇し始めると、最低でも4年、長期間になると8年程度上昇する。今回の上昇相場が2016年から始まったとすれば、2024年ごろまで上げていく可能性がある。そうではなく、2020年から始まったとカウントすれば、最長で2028年ごろまで上昇基調が続くかもしれない。いずれにしても、長期的な視点でみれば、インフレリスクが台頭する可能性がきわめて高い。そのため、今のうちから徐々に金のポジションを積み上げておくと良いという考えは全く変わらない。

また、金投資は株式投資のヘッジであることを忘れないことである。長期的に積み立てで、ゆっくりと買っていく方針は継続すると良いだろう。短期的には、1,850ドルを超えるかに注目しておきたい。これを超えると、上昇に相応の勢いがつくだろう。しかし、そうなることを期待するのではなく、より長期的な視点に立って、じっくりと取り組むことが重要である。

円建て金相場はこれまでレジスタンスとなっていた6,300円を明確に超えてきた。6,500円が視野に入っているが、これを超えると上値がない。ドル建て金相場が上昇基調を続けると、米ドル円相場は円高に傾く可能性はあるものの、円建て金相場も上値を試す動きに入るだろう。今のような動きになると、押し目買いの機会を逃したように感じられるが、高値を買わないようにすることも重要である。少しでも押し目があれば、その機会を逃さないことである。

また、時間分散で買っていくことで、高値を買うリスクを回避することができる。いずれにしても、今のうちに少しでも金を保有しておけば、ポートフォリオのヘッジになる。株価がいつ崩れても問題ないように、そしてインフレが強くなる前に金を仕込んでおくのが賢明な投資家である。この考えは全く変わらない。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸した。先週後半の調整の動きから反転し、週末には一時1,268.07ドルまで上昇した。終値でも1,249ドルと節目の1,250ドルは維持できなかったが、下値を切り上げる強い動きとなった。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、5月4日時点で2万8,231枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,065枚縮小した。買いポジションが602枚減少し、売りポジションが463枚増加した。ただし、週末にかけて相場は上昇しているため、買いポジションが積み上がっているかに注目しておきたい。

プラチナは引き続き目立った材料がないものの、金相場の上昇が押し上げ要因になっている可能性がある。また、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの上昇にも注目しておくと良いだろう。5月7日時点で1ドル=14.0541ランドに上昇している。現時点では2020年初の水準まで上昇しているが、この水準をさらに切り上げると、ランドは一気に高くなる可能性がある。無論、ランド高はプラチナ相場の押し上げ要因になる。米ドル安基調が強まれば、結果的にランド高が誘発され、ドル建てプラチナ相場が押し上げられていくことになるだろう。需給面と同じように重要なポイントであるだけに、よく見ておきたい。

一方、需給面については、これまで通りに今後のプラチナの新規需要の動向に注目することになるだろう。コモディティの需給は目に見える形で変化を感じることはできない。まして、短期間でそれを把握することもほとんど不可能である。

しかし、需給構造の変化は徐々に広がっていく。特に、プラチナの場合、これまでのディーゼル車の自動車触媒向け需要は減少に向かうことになる。少なくとも、増えていくことは難しい。その一方で、燃料電池や水素社会に向けた需要増への期待は高まる一方である。このような構造変化は、プラチナ相場に大きな影響を与えるだろう。いかに長期的な視点を持つことができるかが、今後のプラチナ投資を上手く活用する上で最大のポイントになるだろう。

円建てプラチナ相場も水準を切り上げている。4,500円が目先の重要なレジスタンスになっていたが、週末では辛うじてこれを上抜けている。このまま上昇基調が続き、4,600円を超えるような動きになれば、相当強い動きになるだろう。

ただし、それに期待するのではなく、将来のインフレや需要増による値上がり益を視野に入れ、徐々に保有量を増やしていくと良いだろう。4,300円程度までの調整があれば、格好の押し目買いの好機になるだろう。無論、このまま上昇基調が続けば、その動きについていく形で買いを増やしていきたいところである。今後も時間と資金を分散し、徐々に買いを積み上げていくようにしたい。これは投資を成功させるために最も重要なポイントであることは言うまでもない。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅続伸の展開

シルバーは大幅に水準を切り上げた。前週は膠着状態だったが、週が明けると強い動きになり、週末にかけて上昇基調が続いた。5月7日には27.66ドルまで上昇し、週末は27.43ドルの高値で引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、5月4日時点で4万7,867枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,026枚拡大した。買いポジションが2,478枚増加し、売りポジションが2,548枚減少した。投機筋は新規買いを積み上げる一方、売りポジションを買い戻しており、強気なポジションに傾けつつある。週末にかけて相場が上昇しており、さらに買い姿勢を強めているかを確認したいところである。

銀相場は下値を切り上げており、上値を試しているように見える。今回は押し目が25ドル台後半で形成されたが、そこには重要なテクニカル面でのサポートが集中していた。結果的にこの水準を割り込まずに上昇していることになる。

このように、銀相場は下値を固めて徐々に下値を切り上げているため、トレンド追随型のCTA(商品投資顧問)などの投機筋やヘッジファンドは、さらに上値を買っていきそうな雰囲気である。実際にそのような動きになれば、2月23日の高値である28.31ドル、さらに2月1日の高値30.03ドルを試すことになりそうである。いまは銀自身に特段のファンダメンタルズ材料があるわけではないが、投機的な動きになれば再び上値を試す可能性は十分にある。

そもそも、コモディティ市場で目に見える形でファンダメンタルズ材料が飛び出し、急激に価格が動き出すことはあまりない。前回のコラムでも解説したように、需給面の材料に関しては、シルバー・インスティテュートが公表した最新のレポートで、2021年の世界銀需要が2015年以来の高水準になるとの見通しが示されている。

このような材料も織り込みながら、上場投資信託(ETF)への買いが膨らみ、先物市場でも買いが優勢になることで価格水準を切り上げていくことになるだろう。

コモディティ市場全体が上昇基調にあるが、銀相場もその流れに乗りながら、高値を更新する可能性を念頭に置いておきたい。30ドルを超えるような動きになれば、長期的には2011年につけた40ドル台到達も十分にあり得ると考えている。

円建て銀相場は大幅続伸した。ドル建て銀相場の上昇に連れる形で上げており、98円まで上昇している。前回高値の水準まで回復しており、これを超えるとこれまでとは違う相場になることは容易に想像がつくだろう。値動きを見ると、非常に激しく、投機的に見える。実際に銀相場はきわめて高いボラティリティが特徴的である。したがって、値動きには細心の注意が必要である。

とは言え、今はトレンドに追随する形で買いを入れていくほうが良いだろう。買い場を待っていると、なかなか押し目が来ない可能性がある。少しのポジションでも早めに構築することを考えたい。無論、押し目が来れば、95円までの調整をめどに買っていきたいところである。ただし、銀の保有ポジションは大きくせず、引き続き慎重に投資するようにしたい。ボラティリティを考慮すれば、金の3分の1程度に抑えたほうが良いだろう。また、購入の際には、時間と資金を十分に分散させて買うようにすることにも引き続き注意しておきたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券