先週のゴールド:小幅続伸の展開

金相場は小幅に上昇した。週初は米金利上昇を背景に売られた。

米10年債利回りは1.60%近辺と、前週末終盤の1.58%台から上昇。米ドルは前週末に引き続き対ユーロで下落し、金相場の下値を支えたが、金利を生まない資産として金利上昇を嫌気した売りが優勢となった。その後は米長期金利の低下を背景に買われて反発。ただし、米金利の動向などを眺めたレンジ取引となった。

一方、米ドルが対ユーロで小幅上昇したことが重石となった。その後も米10年債利回りは1.60%を割り込み、米ドルが下落したことで、金利が付かない金を保有する機会費用が減少したことで買いが入った。

4月22日には米ドル高や米雇用の復調を背景に売られた。米ドルが対ユーロで上昇し、ドル建てコモディティの割高感から金は売りが優勢となった。4月17日までの週の米新規失業保険申請件数が2週連続で改善し、新型コロナウイルス危機後の最低を更新したことも圧迫要因となった。一時1,797.67ドルまで上昇したが、高値を維持できなかった。

週末4月23日の金相場は下落。米ドル安に加え、米国債利回りが抑制された水準で推移したが、週末の利益確定売りが出た。4月の米製造業購買担当者景況指数(PMI)は4月前半に米製造業の活動が一層拡大したことを示し、3月の新築一戸建て住宅販売件数は2月の落ち込みから盛り返し、予想を上回ったことなども売り材料視された。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は4月16日の1,019.66トンから、23日には1,021.7トンに増加した。

これまで投資家の金離れの動きが止まらなかったが、ようやく止まったと言える。米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、4月20日時点で18万1,498枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が624枚拡大した。買いポジションが6,472枚増加し、売りポジションが5,848枚増加した。買いと売りのポジションが増加しており、投機筋の強弱感が分かれる展開になっている。

円建て金相場は小幅に下落した。ドル建て金価格の小幅上昇を円高が相殺した。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:金利上昇に耐えられるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米金利の動向インフレ懸念
・米ドル相場の動向
・円建て金相場が高値もみ合いに

金相場は1,800ドルを試したものの、前週の段階では超えることができなかった。ここまでは米金利の上昇抑制と米ドル高是正の動きに助けられる形で金相場は反転・上昇してきた。

また、新型コロナウイルスの感染拡大による安全資産への資金流入、インフレ率上昇の可能性、低金利の長期化、テクニカル要因が金相場の上昇の理由になってきた。しかし、1,800ドルにあるテクニカル面で重要なレジスタンスが打たれており、これを超えないと次のステージには向かうことはできない。

前回のコラムでは「このまま1,800ドルの節目に向かって上昇するかを見ていくことになる」と解説したが、少なくとも前週末時点では打たれている。今週も引き続き1,800ドルを超えられるかを見極めたいと考えているが、すでに買われすぎ感が強まっていることもあり、現時点ではその可能性はあまり高くないと考えている。

金相場を押し上げてきた米金利の上昇抑制は、債券投資家による高い利回りを探すイールドハンティングの中、米国債が買いのターゲットになったことで起きた現象である。投資家による債券買いが止まれば、金利の上昇抑制は止まることになる。

つまり、自然体でいけば金利は上がりやすくなるだろう。金利が上昇し、米ドルが買われることになれば、金保有のコストが上昇する。したがって、今週は米金利の上昇と米ドルの反転のリスクを念頭に置きながら見ていきたいと考えている。

4月27、28日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。市場では、特段の政策変更はないとみているが、声明発表後の連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の会見に注目が集まるだろう。

ただし、これまでの発言が大きく変化する可能性はほとんどないだろう。つまり、低金利政策は継続され、利上げは現在の緩和策の解除後に検討され、それはデータをベースに判断されるというコメントを繰り返すことになるだろう。この点は、市場に安心感を与えるのではないだろうか。まさか不規則発言をするとは思えないが、万が一市場がパウエル議長の発言の捉え方を間違えると、市場が混乱するリスクはゼロではない。

私が懸念するのは、世界の株式市場に流入する資金量である。2020年11月の「ワクチン相場」が始まってからの5ヶ月間に株式市場に流入した金額は、金融危機後の過去12年間に流入した金額を超えているとの調査がある。これは異常ともいえる流入額である。その動きがいまだに止まっていないことが、複数の調査でも報告されている。

この動きが止まるようだと、資金流入に支えられてきた株価が調整に入り、市場が一時的に混乱する可能性があるのではないかと懸念している。そろそろ市場では、「Sell in May」の声も聞こえてきそうな季節になってきた。備えだけはしておきたいところである。

万が一、そのような動きになった場合にはこれまでの動きが反転することになる。米ドル相場はシーズナリティの面からも、4月は下落しやすかった。しかし、5月は逆に上昇しやすい傾向にある。これは、株価が調整しやすい季節と合致する。つまり、株安と米ドル高が同時に到来する可能性があることを意味する。

このシーズナリティに合わせて相場が変動するとすれば、5月は株安・金安になる可能性がある。投資家行動から考えると、現金化の動きを進める時には、株式と金の両方を売る可能性がある。そうなると、債券も売られ、金利が上昇することも想定される。最悪のケースを念頭に置くのであれば、このあたりまでは理解しておく必要があるだろう。

ただし、市場が混乱した後に最も値を早く戻すのは、いつも金である。これは統計でも明確に示されている。したがって、株式市場が混乱しても、金は売却せずに、むしろ下げた場合には積み増したほうがよいと言える。

これまでも、目先の相場の動きに惑わされず、長期的な視点で金のポジションを積み上げておくことが肝要であると説明してきた。これは今後も変わらない。上げても下げても積み立てておくことが重要である。金投資の目的は、株式投資のヘッジであり、インフレヘッジである。この点を忘れないことが肝要である。

世界銀行は、コモディティ価格は力強い経済成長を背景に1-3月に回復しており、2021年は現在の堅調な水準を維持するとの見通しを示した。原油相場は平均で前年比約33%高の1バレル=56ドル近辺で推移すると予想されている。また、2022年には60ドルに上昇し、2017-19年の平均とほぼ同水準になるとした。金属相場については30%、農産物は約14%、それぞれ上昇すると予想している。

ただし、世銀は、この見通しは新型コロナウイルス感染拡大の抑止策と、先進国の支援策に大きく依存していると説明した。世界的に景気が回復に向かえば、徐々にインフレの芽が出てくるだろう。すでにその兆候が各国で見られ始めている。これが長期化すれば、これまでのデフレの世界からインフレの世界に移行することになる。40年下げた金利は、今後20年程度は上昇するだろう。すでにそのステージに移行した可能性が高いことを理解しておきたい。

円建て金相場は6,300円で打たれている。ドル建て金相場の上値が抑えられると、上昇は難しいだろう。米ドル円相場の円高基調も上値を抑えている。この関係が反転するかを確認したい。もっとも、6,200円でサポートされれば、基調は維持されていると判断できる。そのような動きになった場合には、押し目買いを検討できるだろう。また、6,300円を超えるとさらに上昇に勢いがつくだろう。

しかし、すぐにそのような状況になるとは考えていない。それ以上に重要なことは、少額でも徐々にポジションを積み上げておくことである。5月以降には上昇する場面があると考えている。キャピタルゲインを狙うわけではないが、そのような動きに備えておきたい。株式市場もそろそろ調整があってしかるべきである。そのリスクに備える意味でも、今のうちに少しでも金を保有しておけば、ポートフォリオへのヘッジになる。市場が楽観している時こそ金を仕込んでおくのが賢明な投資家である。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸した。先週の反発基調の流れが続き、週末には一時1,250.50ドルまで上昇し、4月7日に付けた1,244.50ドルの高値を超える場面もみられた。終値でも1,229.50ドルと節目の1,200ドル台を維持して取引を終えた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、4月20日時点で2万5,685枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,053枚拡大した。買いポジションが675枚減少し、売りポジションが1,728枚減少した。高値にきていることから手仕舞い売りが出る一方で、売り方の買戻しも入っており、売り方がやや慌てて買戻しを行っているように見える。週末にかけて相場は上げており、引き続き買戻しが入っているか確認したい。

プラチナは引き続き目立った材料がないものの、金相場の上昇につれる形で水準を切り上げている。徐々にプラチナに注目が集まり始めているように感じられる。値動きを大局的に見ると、2020年9月から10月の850ドル前後でもみ合った後に固めた安値からの上昇基調が続いていることがわかる。すでに大相場に移行しているのかは不明だが、そのような動きを感じさせる値動きである。

もっとも、プラチナの需要は工業用が大半である。経済の動きや株価動向などに左右されやすい点は理解しておく必要があるだろう。ただし、本コラムで繰り返し述べているように、長期的にはファンダメンタルズ面がサポートすると私は考えている。燃料電池や水素社会に向けた需要増は、将来のプラチナ相場の上昇を想起させる材料である。その可能性に賭けるわけではないが、保有しておきたい資産の1つであることだけは確かだ。

また、プラチナはインフレになった時に保有すべき資産でもある。過去のデータを見ると、インフレとの相関関係は金よりもプラチナのほうが高いことが分かっている。したがって、金をリスクヘッジの主軸に置きつつも、プラチナも投資対象に加えておくと良いだろう。

また、これも繰り返し解説している点だが、金/プラチナレシオの過去平均は0.9倍である。今の金価格を基準にすれば、プラチナ価格の理論値は1,970ドル程度となる。これは、現在の価格の6割以上も高い水準である。それだけ、現在のプラチナ価格が過去の金価格との比較から割安に放置されていると言える。このようなレシオは平均回帰する傾向がある。このような点も、現在のプラチナが買い場であることを示しているのではないかと判断している。

円建てプラチナ相場も急伸している。目先は直近高値の4,500円から4,600円を試すことができるかを確認したい。このまま強い動きが続くかどうかは、ドル建てプラチナ相場と米ドル円相場の動向次第だが、その可能性は十分にあるだろう。節目の4,500円を超えるような動きになれば、上昇に弾みがつく可能性がある。そのような動きになれば、それについていく形で買いを検討しても良いだろう。

また、調整した場合でも、4,200円あたりでサポートされれば、押し目買いの好機になるだろう。いずれにしても、プラチナに関しても徐々に買いを仕込んでおくと良いだろう。ただし、無理はせず、時間と資金を分散して徐々に買いを積み上げていくようにしたい。これは投資を成功させるために最も重要なポイントである。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーはわずかに続伸した。上昇基調が続く中、4月21日には一時26.67ドルの高値を付ける場面があった。ただし、週末にかけて上昇基調は続かず、週末は25.99ドルと、わずかに26ドルを下回って引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、4月20日時点で4万1,681枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,257枚拡大した。買いポジションが5,738枚増加し、売りポジションが481枚増加した。ただし、週末にかけてやや調整しているため、投機筋の動きを確認したい。

銀相場は下値を切り上げており、上値を試しているように見える。ただし、金相場も同様に上値を打たれているため、金相場の動きも注視しておいたほうが良いだろう。ただし、調整した場合でも、25ドル台で下げ止まれば、再び上昇しやすいと言える。

今は銀自身に特段の材料があるわけではないものの、投機的な動きになれば再び上値を試す可能性は十分にある。過去にも投機筋は今以上に買いポジションを積み上げたことが多い。投機資金の流入の動きに注目しておきたい。4月21日の高値である26.67ドルを超えると相場に勢いがつき、2月23日の高値28.31ドルを試す動きになるだろう。もっとも、銀は工業用の需要が多いため、株価が崩れた時には下げやすい。この点は常に念頭に置いておきたい。

一方、需給面でのサポートもある。シルバー・インスティテュートが公表した最新のレポートによると、2021年の世界銀需要が2015年以来の高水準になるとの見通しが示されている。新型コロナウイルスのパンデミック後に宝飾品や工業向けの取引が回復し、価格上昇に寄与すると見られている。上場投資信託(ETF)を除く2021年の世界銀需要は10億3,300万オンスで、2020年実績の8億9,610万オンスを上回る見通しである。ただし、2021年の供給量は10億5,600万オンスとなり、2020年の9億7,600万オンスから増加する見込みであり、6年連続で供給過剰となる見通しだ。市場がこの材料をどのように消化するかにも注目しておきたい。

円建て銀相場は続伸した。下値を切り上げており、強い動きにある。ただし、ドル建て銀相場と同じように上値を打たれている。94円を明確に超えるかがポイントになるだろう。超えると上昇に拍車がかかり、大きく値を挙げそうである。その動きについていくのも良いだろう。また、下げた場合には、90円前後で下げ止まるかを確認することになるだろう。

いずれにしても、ドル建て銀相場の状況と為替相場を注視しながら、94円を超えたところでは買いの機会を逃さないようにし、押し目では90円前後を狙って買いを検討したいところである。

ただし、銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションは大きくせず、引き続き慎重に投資するようにしたい。ボラティリティを考慮するのであれば、金の3分の1程度に抑えたほうが良いと考えている。また、購入の際には、時間と資金を十分に分散させて買うようにすることにも引き続き注意しておきたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券