先週のゴールド:続伸の展開

金相場は上昇した。週初は米長期金利の上昇が重石となり、金利の付かない金は売られやす地合いとなった。その後は1週間ぶりに安値から反発した。

4月13日に発表された3月の米消費者物価指数(CPI)が大幅な伸びを示したのを受け、インフレヘッジ資産としての金の投資妙味が高まった。米CPIは前年同月比2.6%の上昇となり、市場予想の2.5%上昇を上回った。2020年の3月は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で物価が低下していたが、2021年に入りその反動が大きく出た。とはいえ、インフレ懸念が高まったことは、少ならからず金市場への関心を高める結果となったと言える。

一方、インフレ懸念の台頭で、米ドル相場が圧迫されたことも金相場を押し上げた。また、米疾病対策センター(CDC)と米食品医薬品局(FDA)が米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製の新型コロナウイルスワクチンの使用を一時中止するよう求める決定をしたことも、安全資産とされる金の買いにつながった模様である。

ただし、4月14日は米長期金利の上昇が重石となり反落した。この日の米長期金利は1.6%台前半で小幅に上昇する動きだった。金利を生まない金の魅力が低下し、売りが先行した。ただし、1,730ドル台に値下がりした後は、手掛かり材料に乏しく、動意薄の展開となった。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は4月14日のオンラインイベントで、米景気は成長と雇用拡大への「転換点」にあるなどと発言したが、想定内の内容と受け止められ、金相場には影響しなかった。

4月15日の金相場は一時約1ヶ月半ぶり高値付近に上昇。予想を上回る米経済統計にもかかわらず米国債利回りが低下したことが材料視された。一時は2月26日以来の高値となる1,769.37ドルまで上昇した。

4月16日の金相場は上昇し、約1ヶ月半ぶりの高値を付けた。米ドル相場の軟化と前日の米国債利回りの大幅低下が支援材料だった。一時は2月25日以来の高値となる1,783.55ドルまで上昇した。週間ベースでは2%高と、2020年12月中旬以来の大幅高となった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は4月9日の1,026.07トンから、16日には1,019.66トンに減少した。投資家の金離れの動きが止まらない状況である。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、4月13日時点で18万874枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が8,635枚縮小した。買いポジションが6,190枚減少し、売りポジションが2,445枚増加した。再び買いが増えるかと思われたが、売り姿勢の強さがみられている。ただし、週末にかけて上昇しており、その後に買い姿勢が強まっているかを確認したい。

円建て金相場は週末にかけて急伸した。ドル建て金価格の上昇と為替相場の円安水準での推移が相場を押し上げた。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:金利抑制で上昇へ

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米金利動向とインフレ懸念
・米ドル相場の動向
・円建て金相場は上昇基調継続へ

金相場は上昇基調に入りつつある。これまでの米金利の上昇とドル高いう金相場にとって最悪のマクロ経済環境が改善しており、これが金相場を支援している。今週はこのまま1,800ドルの節目に向かって上昇するかを見ていくことになる。

米国債利回りはテクニカル要因で一旦ピークを付けた可能性が高い。ドル指数も軟化する可能性が高く、その場合には金相場は当面の間、上昇しやすくなるだろう。また、テクニカル的にも上昇余地が残っている。まずは1,800ドルを超えられるかを見極めたい。

金相場を抑制してきた米金利は低下している。今後もしばらくの間、抑制される可能性がある。米金利低下の背景には、金利の上昇で高い利回りに魅力を感じる債券投資家が買いを例れたことが背景にある。また、日本の投資家が、新年度に入って米国債に新規の買いを入れてきたことも背景にあるとみられている。

このような債券買いの動きが続けば、当面は米金利の上昇が抑制される可能性がある。このような動きを受けて、これまで上昇基調を続けてきた米ドルの上値も抑制されている。2020年までの米ドル安基調から一転し、2021年は米ドル高基調が鮮明だったが、ドル金利の頭打ちの動きは米ドル上昇を抑制する。これが金相場にはポジティブな材料となる。この点も材料視されやすい地合いになっているように思われる。

さらに、インフレ高進の兆しが感じられている。今後、記録的とみられる水準のインフレが始まると予想される中、市場は徐々に金への関心を高め始めているように見える。

米ドルが対主要通貨で下落し、ドル指数は一時4週間ぶり安値まで下落した。米10年債利回りの低下も、利子を生まない金の投資妙味を高めている。

しかし、問題は、今後も金利が低下するかである。実際にはいずれ下げ止まるだろう。したがって、今後重要なことは、むしろインフレ率の動向であろう。

パウエル米FRB議長は、米国経済は春までに回復ペースが加速したとの認識を示している。パウエル議長や他のFRBメンバーは、経済の先行き見通しの強さや一時的なインフレ高進は金融政策に影響しないものと考えており、FRBは新型コロナウイルス危機が終わるまで支援策を続ける方針を示している。

しかし、実際にインフレ率の上昇が持続的なものになれば、政策変更を検討するとしている。この点を理解しておく必要がある。ただし、量的緩和策の縮小後になる点も理解しておくべきであろう。

つまり、実際の利上げはかなり先になるということである。FRB関係者は、目先のインフレ率の上昇は、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きく、一時的なものにとどまるとの見方を崩していない。この姿勢が変わらないとすれば、今後インフレ率は低下する可能性があると言える。

もっとも、一部のFRB関係者は、2020年末時点でインフレ率は2%を超えるとの見方を示している。その程度のインフレ率の上昇はすでに想定されていることになる。4月の米CPIはおそらく3%を超え、4%近い数値になる可能性もある。しかし、その後はある程度沈静化するだろう。しかし、それでも2%を超える水準が続く可能性がある。そう考えれば、今後のインフレ率の高まりは十分にあり得ることになる。

FRBが4月14日公表した全米12地区の連銀経済報告(ベージュブック)によると、経済活動が2月下旬から4月初めにかけて「緩やかなペースへと加速した」と判断された。そのような持ち直しが強まる一方、サプライチェーン障害が回復の足かせになっている様子が報告された。

新型コロナウイルス対策の財政出動やワクチン普及が個人消費を押し上げ、回復が出遅れていた旅行や娯楽が改善。ニューヨーク連銀は「コロナ危機以来、初めての強い回復」と評価した。

自動車や住宅販売も好調さが伝えられた。製造業は「一段と拡大」したものの、各地でサプライチェーンの障害が報告された。クリーブランド、ダラス両連銀などは「景気回復を抑え、コスト上昇圧力を招いている」と報告した。金属や燃料価格の上昇が目立ち、「調査先企業は短期的に価格上昇が続くと見ている」という。

ただ先行きに対する楽観的な見方が広がっており、大半の地区で雇用は緩やかに拡大した。配達や小売りなどの業種で人手不足が報告された。このような状況は、将来のインフレが強まる可能性を示唆している。

また、米国の主要経済指標は軒並み堅調であることも、インフレ率の上昇を想起させる。3月の米輸入物価は前月比1.2%上昇し、市場予想の1.0%上昇を上回る伸びとなった。石油製品の値上がりと供給網の混乱が押し上げ要因だった。経済再開に伴い物価上昇率が加速している新たな兆しと言える。

ちなみに、米輸入物価は5ヶ月連続で伸びている。3月の前年同月比は6.9%上昇し、12年1月以来の大幅な伸びだった。2月の3.1%上昇から加速している。また、4月10日までの1週間の米新規失業保険申請件数は57万6,000件と、前週の76万9,000件から大幅に改善し、2020年3月中旬以来、約1年ぶりの低水準となった。新型コロナウイルスワクチン接種の加速や政府の財政出動が追い風になっている。雇用情勢の改善傾向は今後も続く見通しであり、これもインフレを想起させる。

さらに、3月の米小売売上高は前月比9.8%増と、前月の2.7%減からプラスに転じ、2020年5月以来10ヶ月ぶりの大幅な伸びを記録した。新型コロナウイルス追加経済対策の一環で実施された国民への現金給付や新型コロナワクチンの普及が消費押し上げに寄与したとみられている。

また、前年同月比では27.7%増と大きく上昇した。2020年が新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受けていたということもあるが、それにしても大幅な改善である。

一方、センチメント指標も極めて強い。4月のNY州製造業景況指数は26.3となり、3月(17.4)から上昇。2017年10月以来の高水準となり、新型コロナウイルスのワクチン普及などを背景に、経済活動が順調に回復している現状を示した。6ヶ月先も39.8と、前月の36.4から上昇した。また、米フィラデルフィア連銀が発表した4月の第3連邦準備地区の製造業景況指数は総合で50.2と、3月の44.5(改定)から上昇。約50年ぶりの高水準となった。

今後は、バイデン米大統領の掲げる2兆3,000億ドルのインフラ投資計画についての動向にも注目が集まるだろう。将来の財政悪化がインフレにつながる可能性がある。3月の米財政収支は6,595億2,900万ドルと、前年同月の5.5倍に急膨張した。新型コロナウイルス危機対応の世帯向け現金給付などが歳出を押し上げている。

これにより、2021会計年度(2020年10-2021年9月)上半期累計は1兆7,062億4,500万ドルの赤字と、同期比較で過去最悪となっている。3月の歳入は前年同月比13.0%増だった一方、歳出は2.6倍に急拡大した。約1兆9,000億ドルの追加コロナ経済対策が発動され、1人最大1,400ドルの現金給付や中小企業支援などの支出が増加したことが背景にある。

また、3月としては過去最悪で、単月では過去3番目の水準となった。米財務省高官は、「新型コロナウイルス経済対策に関連し、高水準の歳出が今後数ヶ月間は続くと想定している」と説明している。2021年度通年の財政赤字は、過去最悪となった2020年度の3兆1,320億ドルを更新する可能性がある。

これらの材料も、今後は金相場を支援することになるだろう。ただし、真のインフレが到来するのはまだかなり先になると考えている。しかし、そうなる前に仕込んでおくことが重要である。インフレ率が高まってからでは遅い。

また、過去20年間の金と米国株のリターンを比較すると、実は金のほうが高い。このことを知らない投資家が多いことに驚く。投資家がこのような事実を理解すれば、本来であれば金への関心はもっと高くても良いはずである。

しかし、投資家は目先の米国株の強さに目を奪われ、相場が軟調な金への関心を高めるそぶりさえ見せていない。だからこそ、安い水準にある金への関心を高めておくべきと言える。株価が不安定化してから金を仕込んでいては遅すぎる。株価が崩れる時には、相関関係が低い金の下げは小さく、また戻りも早い。毎回、このようなことが起きている。しかし、投資家は学習しない。だからこそ、そこに収益機会があるといえる。

とはいえ、金は本来、キャピタルゲインを狙うものではなく資産ポートフォリオの安定やインフレに対するリスクヘッジのために買っておくものである。この点を理解しておけば、投資家がとるべき行動も決まってくるだろう。

また、金相場は上昇すると12年間、上げ続ける傾向があることを再度思い出してほしいところである。2015年末に底値を付けてから基調が変わったことを考えると、2027年末頃までは上昇する可能性があるといえる。利上げがあったとしても、それ以上にインフレ率が高まることで実質金利が低下し、これが金相場を押し上げるだろう。

このような背景からも、金に対して注目度を落とすことなく、日々の積立を行うなど、ポートフォリオに金をしっかりと入れる癖をつけておくのが良いだろう。将来に株価が不安定化することへのヘッジのために、いまからしっかりと買いを入れておきたいと考えている。

円建て金相場は6,200円を挟んでまさに膠着状態にあったが、先週末にこの水準を超えてきた。これで6,300円を超えるとさらに上値を試すことになるだろう。ドル建て金相場も上昇に向かう可能性が高まっており、米ドル円相場が急落しなければ6,300円を超えてさらに水準を切り上げる可能性が高まりそうである。

したがって、早めにポジションを構築し、上昇に備えておくのが良さそうである。また、少額でも徐々にポジションを積み上げ、5月以降の上昇に備えておきたいと考える。株式市場も上昇一辺倒というわけにはいかず、いずれ調整する場面が来るだろう。

それが5月後半に来ると考えておけば、今のうちに少しでも金を保有しておくことで、一定のポートフォリオのヘッジになると考えている。市場が楽観視している時に仕込むのが、賢明な投資家である。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。先週末に急落した流れを受けて、週初は下げ基調が続き、4月13日には一時1,151.86ドルの安値を付ける場面が見られた。しかし、その後は反発に転じ、週末には一時1,203.70ドルまで上昇。終値でも1,203ドルと節目の1,200ドル台を回復して取引を終えた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、4月13日時点で2万4,632枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が8,116枚縮小した。買いポジションが5,731枚減少し、売りポジションが2,385枚増加した。手仕舞い売りと新規売りが入っており、売り姿勢が鮮明になっているが、週末にかけて値を戻している。投機筋が週末にかけての上昇に対してどのような対応をとったのか、最新のデータで確認したいと考えている。

プラチナは引き続き目立った材料がないものの、ひとまず3月25日に付けた安値の1,139.50ドルを割り込まずに反発しており、基調の転換は回避されたと言える。今週は、4月7日につけた直近高値の1,224.50ドルを超えるかを注視することになる。これを超えると、新たな上昇基調に入ることになる。そうなると、2月16日の高値1,336.50ドルも視野に入ってくるだろう。

ファンダメンタルズ面では燃料電池や水素社会に向けた需要増など、プラチナは将来的には大いに期待が持てる状況にある。時間はかかるかもしれないが、プラチナ相場は大化けする可能性を秘めていると考えられる。その可能性に賭ける価値は十分にあると考えている。

一方、欧州自動車工業会(ACEA)が公表した3月のEUの新車販売台数(乗用車)は、前年同月比87.3%増の106万2,446台であり、6ヶ月ぶりのプラスとなった。

新型コロナウイルス対策の規制措置で販売が急減した前年の反動で、大幅な伸びとなった面があるが、回復基調にあることは事実である。今後はディーゼル車向けのプラチナ需要は低迷せざるを得ないが、販売台数の回復はそのペースを一定程度抑制することに貢献するだろう。いずれにしても、プラチナには将来的な上昇のポテンシャルを感じる。

ちなみに、金/プラチナレシオの過去平均は0.9倍である。今の金価格を基準にすれば、プラチナ価格の理論値は1,955ドルとなる。これは、現在の価格の6割以上も上の水準である。それだけ、現在のプラチナ価格が割安に放置されている可能性があるとも言える。

レシオは平均回帰する傾向がある。このような点も、現在のプラチナが買い場であることを示しているのではないかと判断している。

円建てプラチナ相場は続落したが、4,200円で下げ止まり、さらに直近安値の4,100円水準を割り込まずに反発しており、上昇に転じる可能性を示唆している。これで節目の4,500円を超えるような動きになれば、上昇に弾みがつく可能性がある。

さらに4,600円を明確に超えると、高値のめどが切り上がることになり、さらに強い相場に発展することも想定される。いずれにしても、今は4,200円で下げ止まり、反発に向かう動きを想定し、早めに買いを仕込んでおきたいと考えている。ただし、無理はせず、時間と資金を分散して徐々に買いを積み上げていくようにしたい。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続伸の展開

シルバーは続伸した。週初4月12日に一時24.68ドルの安値を付ける場面があったが、その後は金相場の上昇につれる形で上昇し、週末4月16日には26.29ドルまで上昇する場面が見られた。週末は25.95ドルと、わずかに26ドルを下回って引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、4月13日時点で3万6,424枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が4,109枚拡大した。買いポジションが2,184枚増加し、売りポジションが1,925枚減少した。週末にかけてさらに値を上げていることから、投機筋がさらに買い姿勢を強めているかを最新データで確認したい。

銀相場は徐々に水準を切り上げている。テクニカル面では26.15ドルに重要なレジスタンスがあるため、これを超えるかどうかが目先の方向性を決める上で重要なポイントになるだろう。

また、3月18日に付けた直近高値の26.63ドルを超えるかも重要なポイントになる。投資家の銀市場への関心が高まり、買いが入れば、この水準を超えてさらに上値を試す可能性も高まるだろう。

銀自身に特段の材料があるわけではないが、投機的な動きになりやすい素地がある。銀を割安と見た投資家が買いを入れてくる可能性も十分に考えられる。現在の金/銀レシオは過去平均とほぼ同じ水準だが、金相場が上昇すればそれにつれて上げやすいとも言える。

もっとも、銀は工業用の需要が多いため、株価が崩れた時には下げやすいといえる。この点は常に念頭に置いておきたい。いずれにしても、銀は日本人が考えている以上に海外では注目度が高い。また、米国の投資家は、金と並んで銀を選好する傾向が強い。著名投資家も金と同時に銀を投資対象に上げる向きが少なくない。銀に対する投資判断を行う際には、このような市場構造の背景も理解しておくと良いだろう。

円建て銀相場は上昇した。下値を切り上げており、上昇に向かっている。95円を超えるとさらに水準を切り上げる可能性がある。さらに直近高値の98円を超えると、さらに上値を試す可能性がある。今は上昇基調にあるため、早めに買いを検討するのが良いだろう。押し目を待っていると買えない可能性もある。ドル建て銀相場の状況と為替相場を注視しながら、94円を超えたところでは買いの機会を逃さないようにしたいところである。

一方、銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションは大きくせず、引き続き慎重に投資するようにしたい。また、購入の際には、時間と資金を十分に分散させて買うようにすることも忘れないようにしたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券