先週のゴールド:続伸の展開

金相場は反発した。ただし、上値は抑制された。米国の好調な経済指標を受け、早期の景気回復への期待感が高まり、株価が上昇したことで週初は上値の重い展開だった。その後は上昇した。米ドル安や米国債利回りの低下が支援要因となった。また、その後は下落した。

米国の好調な経済指標を受け、早期の景気回復への期待が高まり、金の投資妙味が薄れた。3月に実施された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨によると、米連邦準備制度理事会(FRB)は引き続き新型コロナウイルス感染拡大のリスクが続くことに慎重で、景気回復が一段と確かになるまで金融政策による支援が必要との姿勢をみせた。

しかし、市場の反応は限定的だった。その後は一時約1ヶ月ぶりの高値を付けた。米ドル安と米国債利回りの低下が好感された。また、FRBが改めてハト派的な姿勢を示したことで、金の投資妙味が高まり、一時3月1日以来の高値となる1,758.45ドルまで上昇した。

週末4月9日の金相場は、米国債利回りの上昇と米ドル反発に圧迫され、前日に付けた3月1日以来の高値1,758.45ドルから下落。ただし、週間ベースでは3週間ぶりの上昇となった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は4月1日の1,032.83トンから、4月9日には1,026.07トンに減少した。投資家の金離れの動きは続いている。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、4月6日時点で18万9,509枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2万1,981枚拡大した。買いポジションが1万2,250枚増加し、売りポジションが9,731枚減少した。買いポジションが膨らむ一方で売りポジションの整理も進んでおり、状況は変わり始めている可能性がある。

円建て金相場は高値圏でのもみ合いとなった。ドル建て金価格は小幅に上げたが、為替相場の上値が重くなったことで、横ばいでの推移となった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:インフレ懸念が台頭するか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米金利動向とインフレ懸念
・米ドル相場の動向
・円建て金相場は上昇基調継続へ

金相場は戻りを試しているものの、まだ本格的に上昇する動きには入っていない。現時点では、米ドルと米国債利回りの動きに翻弄されている。いまだ金市場は、短期材料に振り回されていると言える。

しかし、市場では短期的には強気な声が聞かれる。今週は10年および30年物の米国債入札や消費者物価指数(CPI)統計が控えている。これらへの警戒感が米国債利回りを下支えしており、これが金相場の上昇を抑える要因となっている可能性がある。

一方、3月の米卸売物価指数(PPI)は市場予想を上回る上昇率となり、前年同月比で9年半ぶりの高い伸びとなった。新型コロナウイルス感染拡大で停滞していた経済活動の再開に伴い、インフレが進むとの予想を裏付けた。

4月13日に発表される米CPIの数値も上昇が想定され、前年同月比2%の大台を回復する可能性がある。こうした潜在的なインフレ環境は、一般的に金相場の支援材料と見なされる。しかし、現時点ではそこまでの機運は盛り上がっていないように見える。

パウエル米FRB議長が4月8日、FRBが現状の景気支援策を続ける方針を示唆し、コロナ感染者数の増加が景気回復を遅らせる恐れがあると警告したことは、安全資産としての金への投資妙味を高める可能性がある。また、冴えない米雇用関連の指標も一段高を支援している。

週間の米新規失業保険申請件数はいまだに70万件を超えており、コロナ前の20万件台を大幅に上回っている。米雇用統計では、非農業部門雇用者数が91万人も増加し、雇用情勢の改善の可能性が示唆されたが、実際の中身は良くない。これらの状況も、FRBにより緩和的な政策の長期化を想起させる。

チャート面では、金相場はすでにダブルボトムを付けており、下値リスクはかなり低下している。チャート上の重要な節目である1,750ドルを上回っているため、上昇継続を示唆していると言える。

したがって、反発に向かう準備はできているように感じられる。もっとも、短期的には買われすぎ感が強まっている。1,765ドルにあるレジスタンスを超えるのは、一定の調整の後になりそうである。ただし、その調整は長期的に見ればわずかなものにとどまるのではないかと考えている。

ドル指数は2週間超ぶりの低水準となり、米国債利回りは低下していることは、目先の金相場を支えやすいと言える。しかし、これが持続的なものかはかなり懐疑的である。

一方で、新型コロナワクチンがパンデミックを収束させるとの楽観的な見方も広がっている。いずれにしても、1,730ドル前後で下げ止まり、日柄調整が終われば、再び上値を試す可能性はあるだろう。ただし、ドル高基調が続く可能性が高いことから、大きな上昇は見込みづらいだろう。戻りを試しても、1,800ドルまでの上昇が限界となる可能性もある。

しかし、これらはあくまで目先の話であろう。徐々に水準を切り上げ、ドル高にも抵抗力がつき、一方でインフレ高進に目が向けば、徐々に地合いは変わってくるだろう。

その意味では、金相場の本格的な上昇は、4月の米CPIが発表される5月後半になりそうである。その時には、さすがにCPIは3%を超え、インフレ懸念が台頭することで、金市場への関心が高まっていくだろう。

一部では、新型コロナワクチンがパンデミックを収束させるとの楽観的な見方も広がっている。しかし、FRBはパンデミックは終わっていないとしている。変異ウイルスとワクチンが本格的に戦っており、現状では世界的に変異ウイルスが優位だとの指摘もある。

市場は現時点ではやや楽観的になっているように見える。しかし、これまでの金利上昇に一服感が出ていることは、安全資産である債券への資金シフトが進んでいることを意味する。もっとも、最近の金利上昇の抑制は、債券利回りの高さに着目した投資家の買いが背景にあるとの指摘もできる。

3月のFOMC議事要旨では、FRBが長期にわたり緩和的な姿勢を続けることが判明した。あとは金利の上昇ペースとインフレの加速度次第である。もっとも、繰り返すように、金投資でキャピタルゲインを狙って積極的に投資するのは避けるべきである。あくまで現金の代わりであり、株価変動のヘッジである。この点を間違えなければ、金投資を長期的に継続することで、安心して資産運用ができるだろう。

バイデン米大統領による2兆ドル規模の成長戦略がインフレ加速に対する懸念材料となる可能性があるが、現時点ではまだ市場はそこまでの意識はない。将来的にはこのような刺激策はインフレを誘発し、金相場にとって長期的には強材料となるとの見方が根強い。しかし、実際にそうなるかはわからない。あくまで1つの材料として、念頭に置いておくことが肝要である。

いずれにしても、金利が低下して米ドルが下落していることで、目先は金が買われていると言える。このような動きを見ると、金融市場の方向性は明確には定まっていないように見える。このような時は、長期的な視点を持って金を押し目買いする方針のほうが賢明である。

短期的には買われすぎとなっており、このままどんどん上昇していく感じはしない。まだ時間がかかるだろう。しかし、将来を見渡した時に、現在のもたつきは将来の上昇相場に向けた底値固めであると言えるだろう。今こそ、長期的な視点で金市場を見ていくべきであろう。

円建て金相場は6,200円を挟んでまさに膠着状態にある。つまり、この水準から放れたほうに動くことになるだろう。ドル建て金相場もドル円相場も次の方向性を探る展開にある。それぞれの方向性を見極めた上で、円建て金相場の方向性を確認することが肝要である。

6,300円を超えるような上昇になれば、勢いがつきそうである。ただし、すぐにそのような動きになるとは考えていない。むしろ、6,100円から6,000円の押し目を形成した後に上昇したほうが、大きく値を上げていきやすいだろう。

いずれにしても、徐々にポジションを積み上げ、5月以降の上昇に備えておきたいと考えている。株式市場も上昇一辺倒というわけにはいかないだろう。いずれ調整する場面が来るだろう。それが5月後半に来ると考えて、今のうちに少しでも金を保有しておけば、一定の価格ヘッジになるはずである。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。先週の上昇の勢いが続き、4月7日には一時1,244.50ドルまで上昇する場面が見られた。しかし、その後は買いが続かず、週末には急落して1,198.50ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、4月6日時点で3万2,748枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,142枚拡大した。買いポジションが2,604枚増加し、売りポジションが462枚増加した。買いと売り双方のポジションが増えている中で買いが優勢となっている。ただし、週末に大きく下げていることから、最新週のデータで4月7日以降の動きを確認したいところである。

プラチナは引き続き目立った材料がない。金相場や金融市場の動向をにらみながらの展開が続いていると言える。

ただし、引き続き地合いは悪くないと考えている。1,200ドルの節目を下回ったとはいえ、相場自体は崩れてはいない。今後もファンダメンタルズ面では、燃料電池や水素社会に向けた需要増など、将来的には大いに期待が持てる状況にある。時間はかかるかもしれないが、大化けする可能性を秘めている。その可能性に賭ける価値は十分にあると考えられる。

一方、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドは、対米ドルで高値を付けた可能性がある。現在、米ドルは主要通貨に対してまちまちの動きにあるが、南アランドは14.4375ランドと、対米ドルでトリプルトップを付けた可能性があり、今後は下落が想定される。

このような材料に、プラチナ相場がどの程度反応するかも確認したいところである。まずは、1,185ドルで下げ止まるかを確認することになるだろう。その上で、再び反発に向かった場合には、直近高値の1,244.50ドルを上抜き、さらに3月16日の高値1,234ドル、そして2月16日の高値1,336.50ドルを目指すかどうかを見ていくことになろう。引き続き強気で見ていきたいと考えている。

円建てプラチナ相場も反落した。節目の4,500円を下回り、下値を試すかのような動きになっている。おそらく、その可能性が高いだろう。4,200円程度で調整が済めば問題ないだろう。さすがに4,000円を割り込むような動きにはならないと考えている。したがって、4,200円で下げ止まり、反発に向かうような動きを想定しておきたい。いずれにしても、無理はせず、時間と資金を分散して徐々に買いを積み上げていくようにしたい。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反発の展開

シルバーは反発した。3月31日に23.75ドルの安値を付けたが、そこからは順調に値を戻す展開となっている。4月8日には一時25.60ドルまで上昇する場面が見られるなど、水準を切り上げる展開となった。週末は25.24ドルと、節目の25ドルを超えて引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、4月6日時点で3万2,315枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,345枚拡大した。買いポジションが743枚増加し、売りポジションが2,602枚減少した。週末にかけて値を上げているため、投機筋がさらに買い姿勢を強めているかを最新データで確認したい。

銀相場は徐々に水準を切り上げているように見える。25ドル前後の水準はきわめて重要な水準であり、ここを維持できるかどうかが次のトレンドを決める上で重要なポイントになるだろう。

また、上昇基調が続いた場合には、26.15ドル前後にあるレジスタンスを超えるかどうかが大きなポイントになるだろう。超えていけば、2月23日の高値28.31ドル、さらに2月1日の高値30.03ドルを試す可能性が高まるだろう。

現在の値動きを見ると、上昇余地があると考えるが、短期的には買われすぎになっている。したがって、次の上昇前に一旦調整する可能性は十分にある。ただし、それはあくまで目先の話であろう。連動性の高い金相場の値動きを見ながら、次の上昇に向けた動きに入ることができるかを注視しておきたい。

銀については、過去から米国を中心に欧米で根強い人気がある。投資対象として金と同時に保有する傾向がある。著名投資家も金と同時に銀を投資対象に上げる向きは少なくない。このような背景もあり、銀相場は日本人が考えている以上に海外市場では注目度が高い。投資判断を行う上で、このような市場構造の背景も理解しておくと良いだろう。

円建て銀相場は横ばいだった。90円と92円のレンジで高値圏での推移が続いているが、92円を上抜けると、2円単位で上値を切り上げていきやすい値動きのパターンにある。

下げた場合でも、88円までで下げ止まるようであれば、反発の可能性は残ると考えられる。基本的には押し目買いで良いと思われるが、ドル建て銀相場の状況と為替相場を注視しながら、92円を超えて上昇に勢いがついたところで買いを検討する方法もあるだろう。

銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションは大きくせず、引き続き慎重に投資するようにしたい。また、購入の際には、時間と資金を十分に分散させて買うようにすることも忘れないようにしたいところである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券