先週のゴールド:週初の安値からの反発の動き

金相場はわずかに下落した。3月30日には前日から2%超下落し、2週間ぶりの安値となる1,678.40ドルをつけた。

米ドル高と米国債利回りの上昇、米景気回復加速への期待で、安全資産である金の妙味が薄れた。米10年債利回りは1年2ヶ月ぶりの高水準に上昇した。

バイデン米大統領が数兆ドル規模になるとみられるインフラ投資計画の発表を3月31日に控える中、成長とインフレ率の加速予想が利回りを押し上げた。

3月31日には上昇。ただし、一時は3月8日以来の安値となる1,677.61ドルを付ける場面もあった。この日は米ドル安が支援材料となった。とは言え、米国債利回りの上昇が引き続き重石となり、四半期ベースでは9.99%の下落と、2016年10-12月期以来の下落幅となった。債券利回りが安定し、米ドルが最近の高値から引き戻される中、金市場では安値を離れる動きが継続した。

4月1日は上昇した。米ドル安や米国債利回りの低下に押し上げられた。米新規失業保険申請件数の予想を上回る増加で景気回復の先行きが不透明になったことも、安全資産とされる金の投資妙味を高めた。バイデン米大統領が3月31日に2兆ドル規模の成長戦略を発表し、インフレ懸念が高まったことも金相場を支援した。米ドル指数は前日に付けた5ヶ月ぶり高値から反落した。

ロシアの2020年の金生産量は340.17トンと、前年の343.54トンから減少。また、3月のインドの金輸入は急増し、前年同月比471%増の160トンとなり、過去最高となった。輸入税の引き下げや価格下落を受け、小売部門が積極的に購入した。

インド政府は2月、小売り需要の拡大や密輸防止に向け、金の輸入関税を12.5%から10.75%に引き下げた。一方、金価格は2020年8月に2,072ドルと過去最高値を付けた後、17%近く下げている。

金価格の下落は輸入増を促す可能性がある。ただし、金輸入の急増でインドの貿易赤字は拡大し、通貨ルピーの相場は圧迫される可能性がある。金額ベースでは、3月の金輸入額は84億ドルと、2020年3月の12億3,000万ドルを大幅に上回った。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は3月26日の1,036.62トンから、4月1日には1,032.83トンに減少した。投資家の金離れの動きは続いている。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、3月30日時点で16万7,528枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が6,539枚縮小した。買いポジションが679枚増加し、売りポジションが7,218枚増加した。買いと売りの双方のポジションが増えているが、売りポジションが大きく増えており、投機筋の多くは下落を見込んでいると言える。

円建て金相場は上昇した。ドル建て金価格は小幅に下げたが、為替相場が円安水準となったことが、円建て金相場の上昇要因となった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

 
今週のゴールド:インフレ懸念は金買いにつながるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と投資マネーの動き
・米金利動向とインフレ見通し
・円建て金相場は上昇へ

金相場はダブルボトムを形成した可能性がある。ひとまず、1,670ドル台で底値を付けたように見える。こうなると、直近高値を超えると上昇しやすくなる。まずは、3月18日の高値である1,755.25ドルを超えるかを注視したい。

その次は1,775ドルが上値のめどになるだろう。これも超えてくると、本格的な反発基調に入る可能性がある。そのような展開になるのかを見ておきたい。無論、価格が上昇するには材料が必要なのは当然なのだが、まずは売られすぎたポジションの巻き戻しが入るのを待つことになりそうである。

3月30日時点のCOMEX金先物市場における投機筋のネットロングポジションは、2019年6月以来の低水準である。当時の金価格の水準は1,340ドル程度であり、それだけ今の相場は売り圧力が強いということである。

また、最近は買いポジションが積み上がる一方で、売りポジションの増加が多いことが、ネットロングポジションの縮小につながっている。つまり、投機筋の中には割安と感じて買いポジションを積み上げている向きもいることになる。売り一辺倒ではないことを理解しておく必要があるだろう。

金はコモディティではあるが、一方で通貨や資産としての側面もある。特に資産としての価値を認めるのであれば、株式と同じように逆張りで買うことは可能である。株式市場が活況となる中、株式へ資金を振り向けたくなる気持ちはわかるが、このような考え方は長期的な投資スタイルには危険な発想である。いかにリスクを分散しながら、リスク資産と安全資産のバランスを取るかが重要である。

以前から繰り返し解説しているように、株式と金のバランスが取れなくなれば、調整をするのがポートフォリオ運用のセオリーである。これができれば、強気相場でも強欲にならずにバランスを保ちながら、長期的な運用ができるようになるだろう。

今の金相場の動きを見ていると、過去のデータを信じることができないだろう。しかし、20年を超えるとデータでは、金と米国株のリターンは遜色がない。その一方で、両者には相関関係がほとんどない。また、株式が急落したときに、金価格はむしろ上昇するという明確なデータもある。ここまでデータが揃っていても、投資家は目先の市場の動きに目がくらみ、株式にのみ資金を振り向け、そして株価が調整したときに「やはり金を購入しておけば良かった」ということになるのである。

このような相場展開は、過去に何度も見られているのだが、それでも投資家は学習しない。だからこそ、我々には収益機会がある。このコラムの読者は、非常に幸運であろう。安定した運用をしたいのであれば、株式と金に同時に投資し、ポートフォリオの健全性を保つことは不可欠である。

さて、市場ではバイデン米大統領の大規模で構造的な景気刺激策がインフレ懸念につながる可能性が指摘されている。しかし、いつそのような状況になるかはわからない。いずれインフレになるだろうが、それを大前提で金を買うわけではない。いつ何が起きるかわからない。だからこそ、金を購入しておくのである。

もっとも、インフレ率が3%を超えると、金のリターンは格段に上昇する。インフレが高まり、実質金利が低下すれば、金相場は上昇せざるを得ない。4月の米CPI(消費者物価指数)が発表されれば、インフレが現実のものとして意識されることになるだろう。FRB(米連邦準備制度理事会)は、今後のインフレ率の上昇は一時的としているが、果たしてそうだろうか。それは誰にもわからない。したがって、将来のインフレを考慮すれば、安値のうちに押し目を買っておくべきであろう。

また、インドの輸入増は、実需の回復を想起させるため、心強い材料である。金価格が下落したことで、割安感を意識した買いが入り始めているのである。インド国内の金価格は、国際価格に対してプレミアムが付いている状態である。これは、購入意欲が強まっていることを示している。

また、インド準備銀行の買いも増えている。安値と判断し、徐々に買いが増えてきているように見える。このような実需の買いが増えてくると、いずれ金価格は上向いていくことになるだろう。また、中国もおそらく今回の金相場の調整局面で、実需筋が買いを増やしている可能性がありそうである。そのようなデータが出れば、金相場は反発に転じる可能性も十分にあるだろう。4月以降はそのような展開を想定しておきたい。

円建て金相場は6,200円を超えてくると、地合いはかなり好転するだろう。また、ドル建て金相場が反発し、為替相場が円安水準を維持していれば、円建て金相場は上向いていくだろう。最終的には6,500円を超えるような動きになれば、上昇にさらに弾みがつくのではないだろうか。今のうちに、少しでもポジションを積み上げ、目先の相場の動きに左右されないようにしたい。円安基調が続けば、今後はさらに上値を試すことになるものと考えている。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。先週までは下落基調が続いたが、急速に買いが入り、週末は1,209.50ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、3月30日時点で3万606枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が380枚拡大した。買いポジションが103枚増加し、売りポジションが277枚減少した。大きな動きではないが、徐々に買いが入り始めているように見える。

プラチナは目立った材料もなく、目先は判断しづらい状況が続いていた。しかし、先週の動きは下値を切り上げて上昇しており、地合いは悪くないと言える。また、下落が続いてきた金相場が、ようやく反発したこともプラチナ相場には追い風になった可能性がある。

ファンダメンタルズ面は、将来的に期待が持てる状況にあるが、実際に価格に反映されるには時間がかかりそうである。そのため、当面は値動きを見ながら、将来を見据えた対処が必要になりそうである。

一方、プラチナ価格を形成する要素として注視しておきたいのが、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの推移である。ここにきて、再び対米ドルで上昇する動きを見せ始めている。この動きは、ドル建てプラチナ相場の押し上げにつながりやすい。

ドルは主要通貨に対してまちまちの動きにあるが、南アランドに対しては軟調に推移している。この材料だけでプラチナ相場の上昇を想定するのは危険ではあるが、価格の構成要素であることは確かである。ファンダメンタルズ面の材料と合わせてみておくべきであろう。短期的には、3月16日の高値である1,234ドルを超えるようだと、2月16日の高値である1,336.50ドルを目指す展開に発展する可能性もあるものと考えている。

円建てプラチナ相場も反発した。4,200円をサポートに値を戻している。これで4,400円を超えると、上昇に勢いがつきそうである。そのうえで、4,600円も超えると、本格的な上昇局面に入ることになるだろう。そのような動きを前提に、買いを仕込んでいきたい。

ただし、4,000円を割り込んだときは要注意である。崩れる可能性が一気に高くなる。その場合には、安易な押し目買いを避け、まずは下値を確認すべきだろう。いずれにしても、無理はせず、時間と資金を分散して徐々に買いを積み上げていくことが肝要である。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続落の展開

シルバーは続落した。金やプラチナが値を戻す中、3月31日には23.75ドルまで下落する場面があった。週末は24.97ドルと、節目の25ドルを下回って引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、3月30日時点で2万8,970枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,109枚縮小した。買いポジションが3,755枚減少し、売りポジションが1,646枚減少した。投機筋は買いと売りの両方のポジションを減らしており、方向性を見極めようとしているように見える。

銀相場は引き続き戻りが鈍いように見える。4月1日には安値から大きく値を戻しており、大崩れしそうな展開からは回復しているものの、不安定な値動きにあると言える。26ドルを超えてくると、ひとまず安心できるのだろうが、それまでは下落への懸念を持ちつつ、相場を見ていくことになりそうである。

もっとも、短期的には上昇余地はある。したがって、戻した場合にどこまで戻せるかがポイントになるだろう。その水準次第では、再び売り圧力が強くなることも十分にあり得る。今はあまり大きな期待をせずに、まずは方向性を見極めることが肝要だろう。そのうえで、26ドルを明確に超えてきた場合には、少し強気になって、2月23日の高値である28.31ドルまでの上昇を想定しておきたい。弱気相場はそう長くは続かないだろう。戻り局面を逃さないようにしたい。

円建て銀相場は反発した。円安がドル建て銀相場の下落を相殺したといえる。94円から96円水準を回復できれば、地合いも徐々に好転するものと思われる。今は安値を切り下げる動きにあるため、まず96円超えを確認したい。そうすれば、下落基調からの脱却が確認され、高値を目指す展開に移行できるだろう。今は状況を慎重に見守り、戻りを試す動きを確認したうえで、買いを検討したいところである。少なくとも94円から95円水準を超えたことを確認してからのほうがよいだろう。

また、銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションは大きくせず、引き続き慎重に投資するようにしたい。収益が上がるようなときには大きく上昇するため、小さいポジションでも十分である。また、購入の際には、時間と資金を十分に分散させて買うようにすることも忘れないようにしたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券