先週のゴールド:上値を切り下げる展開

金相場は下落した。堅調な米国株や米ドルの上昇などが重しとなった。

米国債利回りは落ち着いた動きとなったが、ほとんど材料視されなかった、また、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、事実上のゼロ金利政策を維持する方針を改めて示したものの、安全資産の金への関心の高まりは確認できなかった。

週末は小幅高となったが、結局は特段の材料もなく、3週間ぶりの下落になり、下落率は0.8%となった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は3月19日の1,051.78トンから、26日には1,036.62トンに減少した。投資家の金ETF保有高は一段と減少しており、金への関心は著しく低下している。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、3月23日時点で17万4,067枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が6,129枚縮小した。買いポジションが6,537枚増加し、売りポジションが1万2,666枚増加した。安値とみた買いが入る一方、売り方がポジションを積み増しており、投機筋の多くは下落を見込んでいるように見える。

円建て金相場は小幅に下落した。ドル建て金価格の下落が押し下げ要因となった。

 

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:投資家の興味がいつ戻るか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と投資マネーの動き
・米金利上昇の影響とインフレ懸念
・円建て金相場は底値固めが続く

金相場は上値を切り下げる展開にある。材料も不足しており、積極的に買おうという動きは見られない。1,730ドルから1,740ドル水準での推移が続いているが、まさに膠着状態である。このような状況もあり、投資家の金への興味は著しく低下しているように感じられる。

相場が上げている時には、それに食いつくように群がり、買いが買いを呼んで上昇し続けた。特に2020年7月後半から8月前半に2,069.21ドルまで上昇した時の動きを思い出すと、現在の弱い動きは全く別の市場を見ているかのようである。

投資家は所詮、上げているものに群がるものである。そして、上がらなくなり、興味がなくなれば一気に手を引く。当然、相場は崩れていくことになる。

結局、金相場は2020年8月の高値を回復することなく、徐々に上値を切り下げる形となり、現在に至っている。長期的に見れば、まだ完全には崩れていないのだろうが、基調は明らかに弱い。この弱い動きを払拭するだけの材料は、いまのところ見当たらない。短期的には、引き続き下落圧力を受けやすい状況が続くだろう。

とはいえ、今はこのような短期的な話をしていても仕方がない状況である。毎回の繰り返しで恐縮だが、今こそ金投資の基本を理解しておく必要があるだろう。

金投資の目的は、将来のインフレヘッジおよび資産運用におけるリスクヘッジである。金投資をキャピタルゲイン狙いに切り替えると、投資の目的が変わってしまうだろう。これは避けなければならない。過去20年間で見れば、金投資と株式投資のリターンはほとんど同じである。

しかし、両者にはほとんど相関関係がない。さらに言えば、株価が大きく下落した場合でも、金価格の反応はむしろ逆相関となり、保有しておくと資産保全につながることが分かっている。

また、インフレ率が3%を超えると、金のリターンは格段に上昇することもわかっている。

インフレが高まり、実質金利が低下すれば、金相場は上昇しやすくなる。現金ではなく、金を保有することが、資産保全につながるのである。これが基本中の基本である。したがって、金融資産の少なくとも3割程度を金で保有していれば、資産保全につながるだろう。

将来、何が起きるかはわからないが、過去に何が起きていたかはわかる。将来は過去の完全な焼き直しではないが、似たようなことが起きるのが世の常である。

この40年間はインフレとは無縁の経済だったが、果たして次の10年もそのような状況が続くのだろうか。それは誰にもわからない。だからこそ、今のような状況のときに金を購入しておく意味はあるだろう。

株価は上下動しながらも、ここまで堅調さを維持している。ダウ工業株30種平均は、3月26日に終値ベースの史上最高値を更新するほどの強さを示している。このまま例年のように、4月相場も堅調に推移するだろうか。その可能性はかなり高くなっているように見える。

しかし、だからといって投資可能な資金の大半を株式につぎ込めば、ネガティブな状況になり株価が下落した時に資産が大きく目減りすることになる。このような状況を避けるためにも、資金の一部は金に振り向けておくことが肝要であろう。ただし、一度に買わず、時間分散を行って購入することが大切である。

今は、米国とユーロ圏の国債利回りに大きな差が見られ、米ドルへの資金流入が増えているため、これがドル高につながっており、結果的に貴金属相場を圧迫している。その結果、金相場の勢いは弱気に傾いている。このため、何らかの持続的な上昇が達成可能であると投資家が自信を得るには、とにかく金相場そのものの反発が必要であろう。

ユーロ圏で新型コロナウイルス感染拡大に伴う新たな制限措置が実施され、金融市場全般のセンチメントは以前に比べて弱体化しているものの、金には買いが入らない。ユーロ相場の軟調さは、金相場の下落要因である。このような状況でもあり、すぐに金相場が反転するのは難しいだろう。

とはいえ、金に関しては長期的な視点を失わず、徐々に押し目を利用して買い増していくことが肝要である。

将来のインフレヘッジおよび資産運用におけるリスクヘッジのために、金を買うのである。この点だけは間違えないようにしたい。概念的な話が中心となったが、金投資に対する考え方は、これまでもこれからも変わらないだろう。

円建て金相場は6,100円を辛うじて維持している状況にある。6,200円から6,300円を超える動きになれば、上昇に勢いがつくのだろうが、それはドル建て金相場の反発と円安の動き次第である。いまは為替相場が109円台後半にまで上昇している。この円安は、円建て金相場にはきわめて強い材料である。

無論、その分はドル高になっており、これがドル台金相場を抑制することになるが、今はその影響よりも円安が価格押し上げにつながっている。

今後も円安基調が続けば、このようなパターンで下値は支えられることになるだろう。その上で、ドル建て金相場が上昇し、その結果、6,500円を超えるような動きになれば、上昇にさらに弾みがつくことになるだろう。

今は徐々に金のポジションを積み上げていくことを優先し、目先の相場の動きに左右されないようにしたい。

また、株式の資産配分が多くなりすぎている場合、3月末は四半期末ということもあり、リバランスを行うとよいだろう。つまり、大きく値上がりした株式を売却し、その分で金を買うことで、当初のポートフォリオの配分に戻すのである。

これはポートフォリオ運用のセオリーであり、資産価値を維持するために投資家が行うべき最も重要な作業である。金投資におけるキャピタルゲインはおまけのようなものである。

まずは、株式と金の健全なバランスを維持することに注力すべきであろう。その上で、粛々と金のポジションを増やしていくことが肝要である。

いずれ到来するであろう株価の調整場面で、金保有をしておいたことが資産価値の急減を抑制してくれるだろう。いずれにしても、株式を購入した際には、できれば金も同時に買うとよい。そうすれば、自然と資産は拡大していくものと私は考えている。

プラチナ:続落の展開

プラチナは続落した。前週までは高値を狙う可能性もある展開だったが、前週は下落が続いた。3月25日には1,139.50ドルまで下落する場面があるなど、軟調な展開だった。3月26日には反発したものの、1,184.50ドルで引け、水準の回復には至らなかった。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、3月23日時点で3万226枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,217枚縮小した。買いポジションが1,771枚減少、売りポジションも554枚減少した。買い手も売り手もポジションを縮小させているが、この時点で投機筋の買い意欲は高まっていないと言える。

プラチナは高値を目指す相場材料があるものの、投資家がまだプラチナを本格的に買い上げる動きにはなっていないと言える。しかし、それはあくまで目先のものであろう。

「脱炭素社会」におけるプラチナ需要の増加の可能性を示す内容の報道が徐々に増えている。実際に需給面が引き締まるほど材料への関心が高まれば、プラチナ相場は自然と上向いていくことになるだろう。

ただし、現段階では、まだ市場はそこまでプラチナに関心を寄せていない。だからこそ、価格が低迷していると言える。しかし、それもいずれ杞憂に終わることになると私は考えている。

水素製造装置や燃料電池車(FUEL CELL VEHICLE=FCV)の動力源の電気分解装置向けの需要の増加が材料視される時がくるだろう。

投資需要の高まりがみられるかは、今後のプラチナ相場を占う上で非常に重要なポイントになる。プラチナ市場における投資需要のシェアは、2015年には需要全体の3.8%だったが、2020年には20%に拡大している。

2020年のETF購入量は、前年比3%減だったが、バー・コイン需要は同6%増となっている。2020年の投資需要全体も前年比で4%増えており、ファンダメンタルズ材料に目が向けば、今後も投資需要の拡大がプラチナ需給を引き締める可能性があるだろう。

円建てプラチナ相場も下落している。4,200円に絡んだ動きになっているが、まずは4,000円割れを回避することができれば、4,400円超えから一段高になる可能性は十分にあると私は考えている。

円安も相場の押し上げにつながる可能性がある。将来の上昇を見込みつつ、徐々に買いを入れを始めるとよいのではないだろうか。

一度にポジションを積み上げることがないように注意しながら、無理はせず、時間と資金を分散して徐々に積み上げていくことが肝要である。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーは反落した。26.50ドル前後の水準が重く、これを上抜けることができなかったことから下げに転じ、3月25日には一時24.39ドルまで下落する場面があった。週末(3月26日)は25.04ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、3月23日時点で3万1,079枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,530枚縮小した。買いポジションが401枚減少し、売りポジションが2,129枚増加した。投機筋の売り姿勢が続いている。

銀相場はここにきて軟調な動きになってきた。それまでは比較的堅調さを維持していた印象だが、25ドル台半ばを大きく超えられなかったこともあり、買いの意欲は低下していると言える。

また、金相場の下落も相応に影響していると言そうである。24.75ドルには200日移動平均線が控えており、これを終値ベースで下回るような動きになると、22ドル台にまで下落しかねない展開である。銀そのものに買いが入るには、ファンダメンタルズ材料が飛び出すことが肝要であろう。

しかし、今はそれも大きくは期待しづらいだろう。まずは24.75ドルでサポートできるか、さらに25.80ドルのレジスタンスを超えることができかを確認することになるだろう。短期的には売られすぎ感が強いため、買い戻し主導での反発になる可能性があることを、念頭に置いておきたい。

円建て銀相場は急落し、一時90円を下回る場面もあった。まずはこの水準で下げ止まることができるかを確認したい。その上で、反発していけば買いやすくなるだろう。そこから94円を超えていけば、大きな動きになる可能性があるのではないか。

今は慎重さが求められる状況だが、少額でも少しずつ投資しておくと、いずれ反発したときに収益化できる可能性があるだろう。将来的にはファンダメンタルズ面で買われる可能性もあり、その点では保有しておく意味は十分にあると私は考えている。

銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションは大きくせず、引き続き慎重に投資することが肝要である。その上で、時間と資金を十分に分散させて買うようにしたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券