先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸した。米国債利回り上昇が一服し、投資家の間では今後の金融政策の手掛かりを得ようと米連邦公開市場委員会(FOMC)待ちとなる中、利回りが落ち着いたことで、最近の金相場の落ち込みに対する割安感から買いの好機と捉えられた。

米10年債は1年以上ぶりの高水準から低下し、保有していても金利を生まない金への関心が一部で再び高まった。3月17日はFOMCの結果を受けて、米国債利回りの上昇が抑制され、ドル高が是正されたことから買われた。ただし、3月18日には一時3月1日以来の高値となる1,755.25ドルを付けたが、米国債利回りの上昇やドル高が重石となり、反落した。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は3月17日、インフレ率が2021年、目標の2%を突破したとしても、景気回復のため事実上のゼロ金利を維持する方針を改めて示した。パウエル議長の金利に対する発言は、金相場にとってはプラスだが、米10年債利回りの上昇が続いていることで上値は限られた。3月19日は上昇し、週間ベースで2週続伸となった。米国債利回りが低下し、ドルが高値から軟化したことで買われた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は3月12日の1,052.07トンから、19日には1,051.78トンに減少した。17日には一時1,048.28トンに減少する場面もあった。投資家の金ETF保有高は依然として低水準であり、金への関心は低いままである。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、3月16日時点で18万196枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,033枚拡大した。買いポジションが1,398枚増加し、売りポジションが3,635枚減少した。今度は一転して新規買いと売り方の買い戻しが入っており、投機筋による安値圏での買いの動きがみられている。

円建て金相場は上昇。ドル建て金価格の上昇が押し上げ要因となった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

 
今週のゴールド:金利動向に左右される展開が続く

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と投資マネーの動き
・米金利上昇の影響とインフレ懸念
・円建て金相場は反発基調継続へ

金相場は反発基調が続いている。しかし、このまま回復し続けることができるかは依然として不透明である。金市場を取り巻く環境は厳しさを増している。金相場の動きを支配しているのは、やはり金利である。米金利の上昇が、金相場の上値を抑える展開は変わっていない。

3月8日に1,676.10ドルの安値を付けた後は、反発基調が続いているが、ここまで下げるとさすがにやりすぎだったと言える。この水準は2020年4月や6月の反落時の底値になっており、重要な水準とみていたが、ここで下げ止まっているということは、まだ相場は完全に崩れていないと判断してよいだろう。無論、これを割り込めば、厳しい展開になることは言うまでもない。崩れてしまえば、2020年3月の安値1,450.98ドルまでの下げになる可能性があることは念頭に置いておく必要がある。

もっとも、その可能性は低いとみている。投資判断をする際には、最悪のケースを念頭に置きながら行うものであり、上記の水準は念頭に置いておくものの、そこまで下げるような状況ではないだろう。とはいえ、金融市場全体がいまや金利動向に振り回されていることを考えると、今後何かの拍子で金利が上昇した場合、金相場が急落する可能性は否定できない。

したがって、金そのものを相場としてみていく場合には、金利動向をよく見ていくしかない。とはいえ、金利が今後上昇していくことはほぼ確定的であると私は考えている。そうであれば、金相場は上昇しないことになりそうである。しかし、重要なことは、これまでも解説したように、実質的な金利水準である。これが上昇するのかどうかが、今後の金相場を支配することになるだろう。

米実質金利は、計算上は名目金利から期待インフレ率を引いたものである。簡便的には、市場金利とインフレ率から計算すればよいだろう。その実質金利が低下するのであれば、理論上は金相場は上昇することになる。

今の実質金利はそれまでのマイナス圏からほぼフラットになっており、これが金相場を抑制していると解釈できる。現在は米10年債利回りが1.7%台に入る一方、米消費者物価指数(CPI)の前年比も1.7%である。

したがって、今後は市場金利が上昇しても、CPIが上昇するかがポイントになる。ただし、これは2021年4月以降、一時的に跳ね上がる可能性が高い。このときに市場がどのような反応をするのか私は注目している。2021年4月~6月の米CPIは3.5%程度まで上昇すると考えている。また、年末までに最大5%近くまで上昇するリスクも念頭に置いている。

そうなると、米実質金利はマイナス2%を超える可能性もある。その場合の金相場の理論値は1,850ドルから1,900ドル程度になるだろう。相場として勢いがつけば、この水準に達した後は、さらに上値を切り上げることも想定されるだろう。

このように理論的に相場が変動することはあまり多くないのだが、今回は米金利の上昇ペース以上にインフレ率の上昇が速まるのではないかと私は考えている。そうなったときに、金相場は理論値を超える水準に上昇しやすくなるのではないか。今の金市場が金利動向に左右されていることは明白な状況なだけに、現時点ではこのように金利動向やインフレ率に目を向けておくことが肝要である。

もっとも、長い目でみれば、これまで繰り返したように、インフレ率の上昇が金相場を押し上げることになるだろう。長期的な視点を失わず、とにかく徐々に買い増していくことが肝要である。今日明日の収益拡大を狙うのではなく、将来のインフレヘッジおよび資産運用におけるリスクヘッジを大前提に、金を徐々に積み増していくことを考えるべきである。

金投資をキャピタルゲイン狙いに切り替えると、目的が変わってしまうだろう。それは絶対に避けなければならない。金は長期目線で粛々と買っていくことが肝要である。株式市場が不安定化しつつあるが、それとは関係なく買っておくことである。

FOMCでは、ハト派的な姿勢が示されている。政策金利の引き上げは、よほどのことがない限り、かなり先になりそうである。今の時代は、政策ミスが起きづらいと考えている。金融政策に加え、財政政策も積極的に行われるだろう。これらはインフレにつながる可能性のある政策である。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、目先の金利上昇を容認する姿勢を示しているが、これは依然としてFRBが目標としているインフレ率2%の水準に達していないからである。金利上昇の容認姿勢は、今後のインフレ率の上昇を想定していることを意味する。この点を正しく理解しておくことが肝要である。

繰り返しになるが、インフレ率が3%を超えると、金のリターンは格段に上昇する。現在の市場はいずれこの点に気づくことになるだろう。したがって、今は目先の動きではなく、長期的なインフレのリスクを念頭に、現在のような相場水準のうちに、徐々にポジションを積み上げておくとよいだろう。

円建て金相場はドル建て金相場の反発と円安が下値を支えている。この構図は今後も続くだろう。ただし、円安に頼ることなく、ドル建て金相場が堅調に推移すれば、6,000円前後の水準を下値に徐々に上向いていくだろう。時間はかかるかもしれないが、将来のインフレと資産運用におけるリスク分散の観点から、今後も継続的に金への投資を継続すべきだと考えている。

投資家の多くは、目先の株価変動や金利上昇に目を奪われており、本来の金投資の目的を忘れているようにも見える。賢明な投資家は、そのような動きに惑わされることなく、株式投資を行うと同時に、金への投資を行うことで、資産価格の変動リスクを抑制し、資産価値の目減りを防ぐようにするとよいだろう。その上で、株式と金の資産価値に差が出た場合には、株式を売却し、その資金で金の買い増しを行い、バランスを維持するとよいだろう。

これがポートフォリオ運用のセオリーであり、資産価値を維持するために投資家が行うべき最も重要な作業である。相場の方向性を的確に見通すのは難しいが、このようなリバランスの作業は、投資家であればそれほど難しいものではない。相場を見すぎて、いろいろ考え、自身の判断で投資をしようとするから難しくなるのである。

金投資では、キャピタルゲインはおまけのようなものであり、本来の目的を忘れないようにしたい。上記のような資産配分のリバランスを四半期に1度程度行い、リスク管理を行うとよいだろう。その上で、株式投資と同時に金投資を継続すれば、自然と資産は拡大していくものと考えている。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。前週までは反発基調が続いていたが、3月18日に1,230.11ドルまで上昇したものの、前週の高値を超えることができず、週末(3月19日)にかけて徐々に値を削った。3月19日には一時1,167.50ドルまで急落する場面もあったが、引けは1,196.50ドルとなった。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、3月16日時点で3万1,443枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,406枚拡大した。買いポジションが1,889枚増加し、売りポジションは1,517枚減少した。このことから、買い手が買いポジションを膨らませているのが分かる。

プラチナは戻りを試したものの、まだ力不足のようである。しかし、需要面でのサポートが、今後のプラチナ相場を支えるとの見方は変わらない。

プラチナの国際調査機関ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)による四半期の需給統計では、2020年の世界のプラチナ市場は、過去45年間で最大の供給不足となった模様である。鉱山生産は大幅減となり、投資需要の増加が目立ったことが主因である。

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に端を発し、世界景気の悪化懸念が広がった。これにより、需要の減少懸念が台頭したことで価格は大きく下落した。また、ディーゼル車向けの触媒需要の減少懸念もあり、プラチナ需給は悪化する可能性が高まった。

しかし、バイデン米政権の誕生で、「クリーンエネルギー」という新たな材料が浮上しており、これが相場を支えるとの見方は根強いだろう。WPICによると、プラチナ需要の約3割を占める自動車触媒向け需要は、それほど大きくは減少していない。2020年のプラチナ需要も、2008年の金融危機時を超えており、需要全体はこの十数年で順調に増えている。

WPICは2021年の世界全体のプラチナ需要は回復するとの見通しを示している。新型コロナワクチン接種の拡大と、主要中銀による金融緩和策の継続による世界経済の回復をその理由に挙げている。これは、プラチナに限らず、多くのコモディティにも言えることである。

このように考えると、プラチナ相場に対する強気な見方は維持してよいと思われる。燃料電池車(FCV)の動力源の電気分解装置向けや、水素製造装置向けなどの新たな需要の創出と増加が、将来のプラチナ相場を支えることになるだろう。

また、このような動きをとらえた投資マネーのプラチナ市場への参入も、プラチナ相場を押し上げる可能性があると私は考えている。今後も上昇トレンドを維持し、いずれ大きく上昇する時が来るだろう。短期的には1,160ドルが重要なサポートになるが、最終的には1,100ドルが最も重要な下値めどになるのではないだろうか。この水準を維持できれば、強気な見方を維持してもよさそうである。

円建てプラチナ相場も反発基調にあったが、やや上値が重くなっている。4,400円で打たれた格好であり、まずは下値を試すだろう。その際に最大で4,000円まで見ておけば、押し目買いのタイミングを計りやすいだろう。

今後はボラティリティがやや高まりそうである。したがって、大きく上下する可能性を念頭に、慎重に押し目買いを行うようにしたい。ゆっくりと押し目買いを入れ、一度にポジションを積み上げることがないようにしたいところである。プラチナは今後注目される銘柄である。少しでも保有しておくと、将来はキャピタルゲインを得られるチャンスがあると考えている。決して無理はせず、時間と資金を分散して徐々にポジションを積み上げていくとよいだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

 
シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅続伸となった。ただし、値動き自体は狭いレンジでの取引となっており、方向感に欠ける展開だった。週末(3月19日)は26.45ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、3月16日時点で3万3,609枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,540枚縮小した。買いポジションが787枚減少し、売りポジションが1,753枚増加した。投機筋による売り姿勢が確認できる。

銀相場は下値は堅いものの、徐々に上値が切り下がっている。したがって、投資家の興味が高まらないようだと、徐々に値を切り下げる可能性がある。25.75ドル前後が短期的なサポートレベルになっているが、目先は特段の材料がないだけに、金相場などの動きに連動することになるだろう。今は値動きが比較的落ち着いているが、これはそれまでの投機的な動きが現在、鎮静化していることが背景にある。

しかし、いったん動き出すと大きく変動するのが銀相場の特徴である。この2週間は比較的動きがなかったこともあり、そろそろ動きが出てきそうであるため、注意してみておきたいところである。銀についても、ファンダメンタルズ面に目が向き、将来の需要増加への期待から買われる場面が出てくるだろう。それまでは、目先の投資家動向次第の動きになるのではないだろうか。

目先は26.65ドルを超えると上昇に弾みがつきやすい。上値を試すことができるかどうか、慎重にみておきたい。

円建て銀相場は小動きとなっている。まずはドル建て銀相場の動きを見極めることになるだろう。その上で、94円を挟んだ動きから放れ、92円と96円のレンジを抜けた方向に動くことになりそうである。

下げた場合には、90円までの下落を想定した上で、慎重に買いを検討するとよいだろう。もっとも、96円を超える動きになれば、大きく上昇することになるだろう。その場合には、その方向についていく形で買いを検討してもよいだろう。

繰り返すように、銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションは大きくせず、慎重に投資するようにしたいところである。押し目買いを行う場合には、時間と資金を十分に分散させることが肝要である。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券