先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発から上昇に転じる動きとなった。週初は下落し、9ヶ月ぶりの安値を付けた。米ドル相場と米国債利回りの上昇が続き、利息を生まない金は売られる形となり、一時1,676.10ドルと、2020年6月5日以来の安値を付けた。しかし、その後は反発に転じた。

米国債利回りの低下と米ドル安が材料視された。その後も、米消費者物価指数が低い数値を示したことを受けた米10年債利回りの下落や、それに伴う米ドルの上値の重さが材料視された。3月11日には一時1,739.63ドルまで上昇する場面も見られた。米新規失業保険申請件数が予想を上回る改善を示したことから米国債利回りが上昇し、金の地合いを圧迫した。

週末は小幅高だった。米債券市場での利回り上昇が弱材料となったが、ドルインデックス(ドル指数)がやや低下したことなどがこれを打ち消した。米10年債利回りは、一時1年超ぶりの高水準となる1.642%まで上昇した。

一方、ドル指数は上げ幅を削った。バイデン米大統領は3月11日、1兆9000億ドル規模の追加経済対策法案に署名し、同法が成立した。バイデン米大統領は7月4日の独立記念日までに生活の正常化を目指すと表明した。これらの動きが、将来のインフレにつながるとの見方が下値を支えた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は3月5日の1,069.26トンから、3月12日には1,052.07トンに減少した。金市場からの資金流出の動きが止まらない状況にある。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、3月9日時点で17万5163枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万4,475枚縮小した。買いポジションが1万694枚減少し、売りポジションが3,781枚増加した。手仕舞い売りと新規売りの動きが続いており、先物市場でも投機筋による金離れの動きがみられる。

円建て金相場は上昇。ドル建て金価格の上昇と円安基調が押し上げ要因となった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:反発のきっかけを探る

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と投資マネーの流出
・米金利上昇ペースとドル高の動き
・円建て金相場は反発へ

金相場は反発したが、この動きが持続的なものになるかを探る展開になるだろう。3月12日は下げそうな雰囲気もあったが、辛うじて下げ止まった。まだ反発基調に入ったとは言えない状況ではあるが、ひとまず底割れは回避されたと言えそうである。

今の時点で投資家が金への関心を高めるようには見えない。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の週間調査によると、3月10日までの1週間で投資資金が金・債券から株式にシフトした。株式投資に315億ドルが流入する一方、金からは18億ドル、債券からは154億ドルが流出した。依然として安全資産が売られ、リスク資産が買われる動きが続いていると言える。

しかし、週末は米金利が上昇するなかでも、金相場は下げなかった。この点は注目に値するだろう。筆者がウォッチしているセンチメント指標をみると、金や債券などの安全資産は売られすぎとの判断が出ている。投資家がリスク資産への資金シフトを進めすぎていることが、このような結果をもたらしていると言える。

今後も米金利は上昇することが確定的と考えているが、ポイントは市場がこれを理解し、この状況に慣れていくことができるかどうかである。今のように、米国債利回りの上昇を嫌気し、米連邦準備制度理事会(FRB)が追加的な政策を催促しているようでは話にならない。

これから金利は上昇していくと私は考えている。1981年以降、40年にわたり低下してきた米金利は、2020年に底打ちしたように思われる。これからはインフレに対処すべき20年間になるだろう。この点を理解せずして、金融市場を見ていくことは非常に危険である。

FRBも今後の金利上昇は必然であることを、表現を変えて示唆している。市場の多くはこの点に気づいていないようである。そもそも、FRBの金融政策の目標は、インフレ率2%の達成である。まだそこまでにも至っていない中で、金利上昇に懸念を示すはずもない。まして、インフレ率が2%を超えても、これが平均的に2%超になるまでは利上げをしないと説明している。したがって、FRBが利上げを示唆するのはまだかなり先である。

とは言え、今後はインフレ率の上昇は確定的であり、その状況に慣れる必要がある。さらに言えば、金利の上昇ペースにも目を配る必要がある。年内にインフレ率は最大で4%から5%にまで上昇する可能性がある。米長期金利は2.5%~3%程度にまで上昇するだろう。

これがメインシナリオである。このようなシナリオを想定できないようだと、今の市場動向についていけないだろう。株式市場もこの程度のインフレ率を許容しなければならない。年内の株価は堅調に推移するとみているが、インフレ率の上昇は実質金利の低下をもたらし、金相場の上昇を後押しすると私は考えている。

インフレ率が3%を超えると、金投資のリターンは大幅に大きくなることは過去のデータからわかっている。今はインフレ率がいまだ2%を下回っている。

今こそが、今後数十年間の金投資のラストチャンスになると考えられる。FRBは短期金利を低い水準にとどめる一方、長期金利は放置するだろう。市場ではツイストオペなどに期待を寄せているようだが、それは無駄な期待であろう。

FRBは日銀が失敗した金融政策をよく分析している。マイナス金利は導入しないことを言明しているのは当然であり、長期金利の調節にも消極的なのはそのためであろう。

米追加経済対策は、将来のインフレにつながる可能性がある。ただし、筆者がそれ以上に注目しているのは、将来の米中関係である。これは今後数年間の最大のテーマになるだろう。

1940年代後半から1950年までの戦時下において、米政府債務と実質金利がどのような動きになったかを今から理解しておいたほうがよいだろう。中国の習近平国家主席は全人代で、軍事体制の強化を指示している。すでに世界はその方向に進んでいる可能性がある。想定外のことが起きるのは世の常である。

私自身は一般的に想定外とされるシナリオを前提に将来の戦略を考えているが、この点においても金は保有すべき資産の必須アイテムにならざるを得ないと考えている。この最悪のシナリオが示現すれば、インフレ率は20%などの水準に跳ね上がるかもしれない。馬鹿げたことを言っているように聞こえるかもしれないが、最悪のシナリオを想定しておくことが、資産運用において極めて重要である。

このシナリオの実現性はともかく、現実となった場合の極めて大きなリスクに備え、今から金をしっかりと保有しておきたいと考えている。

円建て金相場は、ドル建て金相場の反発と円安が下値を支えている。この構図は今後も続くだろう。目先はひとまず5,900円割れを回避して反発している。まずは戻りがどこまであるかを試すことになるだろう。そのうえで、下落トレンドを上抜けると上昇に勢いがつくだろう。そのためには、まずは6,100円を明確に超えていくことが不可欠である。短期的にはこのような点を見ておけばよいだろう。

もっとも、将来のインフレと資産運用におけるリスク分散の観点から、今後も継続的に金への投資を継続すべきと考えている。投資家の多くは、目先の株高と金価格の下落により、株を買い、金を売る。しかし、本来は逆である。資産の配分バランスが崩れるほど株価が高くなりすぎ、金が下げすぎた場合には、株式を売却し、その資金で金を買い増すことで、バランスを維持しなければならない。これがポートフォリオ運用のセオリーである。

その意味では、今の投資家行動は、かなり行き過ぎているとも言える。このような資産配分のリバランスをできれば四半期に1度程度は行い、リターンの向上を目指すとよいだろう。そのうえで、株式投資と同時に金投資を継続すれば、自然と資産は拡大していくものと私は考えている。

プラチナ:大幅反発の展開

プラチナは大幅に反発した。前週は直近高値からの下落が続き、安値で引けたが、先週は底値からの反発が続いた。3月11日には一時1,227ドルちょうどまで値を戻し、週末(3月12日)は1,204.81ドルと、節目の1,200ドルを回復して引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、3月9日時点で2万8037枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,496枚縮小した。買いポジションが1,964枚縮小し、売りポジションは532枚増加した。買い手がポジションを縮小させる動きが続いている。

プラチナもひとまず底割れは回避し、反発している。前週は1,100ドル割れ目前まで売り込まれ、重要なトレンドラインを下回る可能性もあったが、辛うじてそれを維持したことで、反発につながったと言える。しかし、1,215ドル前後には重要なレジスタンスが控えており、これを超えることが本格的な反発への第一歩であろう。

その意味では、プラチナ相場が実際に水準を回復することができるかどうかは、今週の動きにかかっているとも言える。今はプラチナ相場そのものの材料では動きづらくなっている。そのため、金相場の動向をよく見ておくことが大切である。米長期金利やドル相場の動向がポイントになるだろう。

また、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドは、対ドル相場で下落基調にあったが、底割れを回避して上昇に転じている。これも材料としてみておくとよいだろう。
直近安値を下回らずに反発しており、14.40ランドを超えるようだと、さらに勢いがつくだろう。その場合には、プラチナ相場も上昇しやすくなると考えておきたい。

いずれにしても、まずは金相場の動向を確認し、そのうえでファンダメンタルズ材料や南アフリカランドの動向を見極めるようにしたい。1,215ドルを上抜いてくれば、2月16日に付けた高値の1,336.50ドルを試す可能性も出てくるだろう。

円建てプラチナ相場も安値からの反発基調にある。直近高値と安値の半値水準まで戻した格好であり、今後は一段の上昇がみられるかがポイントになる。4,400円を超えると、方向性としてはさらに上値を試しやすくなるだろう。そのうえで、4,600円を超えてくれば、上昇に弾みがつくだろう。

まずは反発基調が継続するかを確認したうえで、徐々に買いを進めていくとよいだろう。ファンダメンタルズ面では、プラチナは今後注目されやすい銘柄であり、少しでも保有しておくと、将来はキャピタルゲインを得られるチャンスがあると考えている。決して無理はせず、時間と資金を分散して徐々にポジションを積み上げていくとよいだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反発の展開

シルバーも反発した。ただし、金やプラチナと比較すると下げ幅が大きくなかった分、戻りもそれほど大きくはなかった。3月11日には一時26.45ドルまで上昇する場面があったが、週末(3月12日)は25.91ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、3月9日時点で3万6149枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,467枚縮小した。買いポジションが3,480枚減少し、売りポジションも13枚減少した。投機筋の手仕舞い売りによるロングポジションの解消が進んでいる。

銀相場も全般的に軟調な展開にあると言えるが、重要なサポート水準だった24ドルを割り込まずに反発しており、目先は値崩れが回避された状態にある。

とは言え、大きく上昇するわけでもなく、目先の動きはまだまだ脆弱である。投資家の銀への関心が薄れていると言えるだろう。一時期はSNSを通じた個人投資家による短期的かつ投機的な取引を背景に、価格が乱高下する場面も見られたが、今は比較的落ち着いている。

そのため、ひとまず投機的な動きは鎮静化したと言える。今は200日移動平均線が24.36ドルに位置しており、これを維持しているうちは、大局的には上昇基調が継続していると判断してよいだろう。

もっとも、金などの動向次第では、崩れるリスクもある。今は乱高下のリスクを十分に念頭に入れたうえで、現在の値動きを見ていくようにしたい。いずれ銀市場のファンダメンタルズ面に目が向き、将来の需要増加への期待から買われる場面も出てくると私は考えている。目先では26.65ドルを超えてくると、上昇に弾みがつき、高値を試す場面も出てくるものと思われる。

円建て銀相場も反発した。ただし、ドル建て銀相場と同様に、戻り高値からは反落している。しかし、今の動きは次の上昇に向けた下値堅めであろう。節目の90円前後で下げ止まっているように見えるが、これを割り込まなければ反発の可能性が高まるのではないか。

そのうえで、94円を超えてくるとさらに上昇に弾みがつくだろう。その動きを確認したうえで、新規の買いを検討しても遅くはないだろう。銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションも大きくせずに、引き続き慎重に投資するようにしたいところである。押し目買いをする際にも、時間と資金を十分に分散させることが肝要である。

 

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券