先週のゴールド:大幅続落の展開

金相場は大幅続落した。週初はインフレヘッジなどで買われる場面もあり、心理的な節目である1,800ドル台を約1週間ぶりに回復した。

バイデン米大統領が掲げる1兆9000億ドル規模の経済対策については、今週末にも成立するとの見方が広がった。大型財政出動により景気回復が早まり、将来的なインフレ高進観測が浮上する中、インフレヘッジ目的での金の買いが活発化し、2月23日には一時1815.63ドルまで上昇する場面があった。米ドルが対ユーロで下落し、ドル建てのコモディティに割安感が生じたことも金買いを促した。

しかし、その後は下落基調に転じた。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が議会証言で、「米経済の改善は一様でなく完全な状態には程遠い」と発言し、低金利の維持と債券購入継続の方針を示したことを受け、軟化していた米ドル相場が持ち直したことが要因となった。

その後も、米10年債利回りの上昇で、金はインフレヘッジ資産としての魅力が減少し、圧迫された。週末には大幅下落し、8ヶ月ぶりの安値を付けた。2月は月間ベースで2016年11月以来の大幅安となった。

米ドル高と米国債利回りの上昇が、金利を生まない金の魅力を大きく低下させた。一時は2020年6月以来の安値となる1,716.85ドルをつけた。米国債利回りは年初来で50bp上昇しており、インフレヘッジ手段としての金の地位を損なっている。米国債利回りの上昇で、金利を生まない金を保有する機会費用が高まったことが売りにつながっている。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は2月19日の1,127.64トンにから、2月26日には1,093.54トンに減少した。金市場からの資金引き揚げの動きがさらに加速している。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、2月23日時点で21万5733枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万9236枚縮小した。買いポジションが1万9502枚減少し、売りポジションも266枚減少した。手仕舞い売りが加速し、弱いパターンが継続している。

円建て金相場は下落した。直近安値を下回り、下落基調になっている。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下値模索の展開に

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向とマネーフロー
・米金利上昇の影響
・円建て金相場は下値模索へ

金相場は大きく値を下げ、これまで重要なサポートだった1,775ドルを明確に下回り、相場としては崩れ始めている。米金利上昇を市場が嫌気する展開になっており、株式市場からも資金が流出し始めている。

これまで金融市場は、低金利状態の長期化を大前提に、様々な資産への投資を進めてきた。その結果、米国株は史上最高値を更新し、金相場も堅調さを維持してきた。しかし、ここにきてコモディティ価格の上昇を背景としたインフレ懸念が高まり、米長期金利が上昇し始めたことが嫌気される形で株式に売りが出始めている。

こうなると、投資家はいったんポジションを軽くするために、手仕舞い売りを加速させる可能性がある。その場合、いわゆる「リスクパリティ戦略」によるポジション調整が加速し、様々な資産に売りが出る可能性がある。金もその対象になっており、今後も不安定な値動きになる可能性があることを念頭に置いておきたい。

チャートの形状が崩れると、先物市場でも売りが出やすくなる。投機筋は手仕舞い売りを加速し始めており、明確な下落トレンドにある中で、ポジションの調整をさらに進めると考えられる。

そのため、価格の調整が長期化する可能性もある。今のトレンドが続けば、金相場は1,650ドルから1,675ドル程度までの調整となることも想定される。したがって、ここからはかなり慎重に見ていく必要がある。米国株はシーズナリティの面から、ここから3月中旬程度まで下げやすい傾向があることも、株価の下落を想起させ、これが実現すれば金にも売りが出ることが想定される。

金はシーズナリティの面では、ここからむしろ反発する傾向がある。しかし、今は米金利上昇によるマネーフローの影響を大きく受けており、これが沈静化するまでは金相場の底打ちは先になりそうである。この点も念頭に置いておく必要がある。

市場に降って沸いた米金利上昇の影響だが、これまでの市場がいかに低金利を頼りにしてきたかを表している。ただし、景気が回復していけば、金利の上昇はきわめて当然のことである。しかし、金利の上昇に慣れていないことが、今の市場をややパニック的な動きにさせていると私は思う。

したがって、金利上昇が穏やかなものになり、市場がそれに慣れていけば、いずれ株式市場は安定し、金相場も将来のインフレを織り込む形で回復基調に戻るだろう。ただし、市場がそのような対応ができるかがすべてであり、まずは市場が落ち着きを取り戻すかを確認することになるだろう。

現時点での米実質金利から見た金相場の理論値は1,500ドル台前半である。したがって、これまでついていたプレミアムがはげ落ちる可能性もある。この点も念頭に置いておくべきであろう。

米金利は1980年から40年間にわたり、下落基調が続いてきた。しかし、そのトレンドは2020年で終わり、2021年からは金利上昇の局面に入ったと考えられる。今後20年程度はそのようなトレンドになるだろう。市場がそれを理解し、対応できるかが今後株価が持続的な上昇を維持できるかの最大のポイントになると思われる。

私は、それは十分に可能であり、株価は2040年程度まで上昇基調を続けると考えている。インフレ率の上昇のスピードが金利上昇よりも速ければ、実質金利はマイナスで推移することになる。実質金利の低下は、言うまでもなく金相場にとって追い風となる。金相場は将来のインフレを織り込む形で、いずれ上昇に転じざるを得ないと考えている。

目先は投資マネーフローの影響を受け、調整場面が続かざるを得ないだろう。しかし、それがいったん落ち着けば、いずれ資金は戻ってくるだろう。

現在の米金利上昇の背景には、インフレ懸念がある。インフレに強い金が売られるのは本来おかしな動きである。このように、おかしな動きになり、下げているときに仕込んでおくことが肝要である。その後に市場が正常化したときには、上昇しやすくなるからである。

したがって、目先の下落に惑わされず、長期的な視点で金を安値で仕込んでおくことが大切だ。ただし、当面は大きく下げるリスクがある。したがって、徐々に分散しながら対処したほうがよいだろう。

2月後半の米国株の下落は想定通りだったが、これに金相場も同時に売られるのは想定外だった。しかし、株価と金が大きく下げた後は、金のほうが早くに回復する傾向がある。したがって、株価が反転する前に金を仕込んでおくことが肝要であると私は考えている。

2021年は様々なコモディティが主要資産の上昇率の上位を占めている。2020年最も売り込まれた石油関連銘柄が2021年は大きく上昇すると2020年から指摘してきたが、まさに2020年のリターン・リバーサルの動きがみられており、想定通りの展開になっている。

この状況は今後も経済の回復に伴い、より明確になっていくだろう。つまり、景気回復で需要が回復していけば、コモディティ価格の上昇は継続するだろう。それに伴い、今後はさらにインフレが強まってくるだろう。

2020年は新型コロナウイルスへの警戒感や低金利、空前の規模となった景気刺激策に支援され、上昇率がここ10年で最大となっていた。ただし、追加経済対策を含めて、金相場を支える要因は多い。

インフレ懸念はいずれ金相場の最大のテーマになるだろう。これまで10年超にわたって低迷していたコモディティ相場は、今後10年程度は上昇する可能性があると思われる。今後の最大の注目テーマになっていくだろう。無論、それがインフレを想起させることは言うまでもない。

目先の金相場は米金利上昇に見事に打たれている。単純な構図だが、今は投資家の金への興味が薄いのだろう。債券利回りの上昇と米ドル高で金への圧力はこれまで以上に強くなっている。債券市場が反転しない限り、状況の改善を予想するのは難しい状況になりつつある。

市場参加者の多くがそのように考えていると言え、これではなかなか反転するのは難しいだろう。当面は軟調な動きを想定せざるを得ない。さらに、株安で金にも換金売りが出ている可能性があり、これも金の上値を抑えやすい。

こうなると、しばらくは我慢である。重要なサポートの1,775ドルも割り込んでいる。今の下げが一時的なものに留まらなければ、かなり下げる可能性もある。したがって、ここからの買いは慎重に進めていくことをお勧めする。

今後もFRBの低金利政策は継続され、さらに財政出動でインフレ懸念が強まるだろう。これらは金相場を支える材料だが、今の市場はこの点を現時点では材料視していない。現金化を急ぐ動きを見せており、これが金相場の上値を抑える期間が当面続くだろう。

しかし、これもいつか来た道である。このように金は売却された後、必ずと言ってよいほど値を戻している。先述の通り、金は株価よりも先に値を戻す傾向が見られる。したがって、金が反発していけば、それは近い将来の株価の底打ちを示唆すると言えるのではないだろうか。

当面は安全資産への買い意欲は見られないかもしれないが、これまでのスタンスを継続し、粛々と押し目を徐々に買っていくようにしたい。

円建て金相場は前週にトリプルボトムの底値を割り込んだあと、戻りを試した。しかし、戻り高値を更新できずに下落しており、今後も軟調地合いが続きそうである。

現時点ではドル建て金相場の下落を円安がサポートしており、下げ幅は限られている。したがって、円安がドル建て金相場の下げを吸収する形で下げにくくはなるだろう。それでも、ドル建て金相場の下落が止まらないと、やはり厳しい状況は続くだろう。目先は6,000円の節目を試す可能性がある。

今後は将来に向けて押し目買いを継続したいところだが、あくまでゆっくりと時間をかけて、資金も分散しながら購入することが大切であろう。資産価値のブレを抑制するため、さらに長期的に安定した運用を継続するためにも、常に金を持つようにしておきたい。

当面は株価の調整が続く可能性があり、金相場も厳しい状況が続く可能性がある。将来の安定した資産運用を継続するためにも、株式投資と同時に金投資も継続したいところである。

プラチナ:大幅反落の展開

プラチナは反落した。金融市場全体が不安定になる中、プラチナにも売りが出た。節目の1,200ドルを割り込み、週末には一時1,165ドルまで下落する場面もあった。週末は1,188.72ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、2月23日時点で3万4967枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,610枚縮小した。買いポジションが1,334枚縮小し、売りポジションが276枚増加した。買い手がポジションを縮小させており、この流れが継続するかを確認したいところである。

プラチナも金融市場の不安定さから逃れられなかった。金相場も大きく下げており、こうなると手仕舞い売りが出るのは避けられないところであろう。これまでかなり堅調に推移していたこともあり、売りが出ると大きく値を下げやすいとも言える。

先物市場でもかなりポジションが積み上がっていることもあり、当面は調整を余儀なくされるだろう。まずはどの水準で下げ止まるかを確認したいところである。1,120ドル前後にサポートがあるが、ここで下げ止まれば、長期的なトレンドが崩れずに維持できると判断できる。しかし、これも割り込むようだと、状況は悪化することになろう。

また、当然のように、プラチナも金利上昇には弱いと言える。投資家が金利上昇に慣れることが、相場反転から上昇継続のポイントになるだろう。また、プラチナを取り巻くファンダメンタルズ面にも引き続き注目しておきたい。2021年も需給バランスは供給不足になる可能性があり、将来の需要増加も想定されている。

目先は市場の混乱で調整が続く可能性があるが、いずれ下値を固め、値を戻すものと考えられる。その結果、過去最高値である2,299ドルを超える場面もみられると私は考えている。

円建てプラチナ相場は高値からの調整が鮮明になっている。こうなると、当面は下げ基調が続く可能性を念頭に置いておくべきであろう。

まずは下げ止まるのを確認したいところである。そのうえで、押し目買いのチャンスをうかがいたい。まずは節目の4,000円がターゲットになろう。

いずれにしても、今は下落トレンドである。下げ止まりを確認したうえで、徐々に買いを積み上げていくことを考えたい。プラチナは今後注目される銘柄であり、少しでも保有しておくと、その後の上昇でキャピタルゲインを得られるチャンスがあると思われる。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続落の展開

シルバーも値を下げた。2月23日には一時28.31ドルまで上昇したが、軟調な金に連れる形で高値から値を下げた。週末には大きく値を下げ、一時26.12ドルまで下落する場面があった。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、2月23日時点で4万7643枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,181枚縮小した。買いポジションが2,938枚減少し、売りポジションも757枚減少した。投機筋がポジションを縮小していることが確認できる。

銀相場も金とプラチナの下落に連れるかたちで調整している。ただし、両者と比較すると下げ幅は限定的であり、中期的な上昇基調も維持されている。しかし、今後も金相場が調整した場合には、銀相場もその影響から逃れるのは難しいだろう。

まずは26.35ドル前後にある重要なサポートを維持できるかを確認したい。そのうえで、これを維持できれば上昇基調は維持されたと判断できるだろう。

ただし、これを割り込むと基調は大きく崩れることになる。その場合には、25ドルから23ドル台に下げることが想定される。22ドル程度で下げ止まれば、トリプルボトムを形成し、反発に転じることができる可能性があるだろう。

いずれにしても、金融市場が混乱しており、その影響がどの程度になるかを確認する必要があろう。そのうえで、市場の落ち着きと相場の安定度を見ながら、買い場を探ることが大切であろう。

需給面に関しては、2021年の世界銀需要は10億2500万オンスと、8年ぶりの高水準となる見通しであり、需給面は堅調になるとみられている。この点も念頭に置きながら、今後の銀相場を見ていくようにしたい。

円建て銀相場もやや軟調な値動きにある。上値が重くなっており、下げ基調に入る可能性がある。まずは92円前後で下げ止まるかを確認したい。

他の貴金属銘柄が不安定であり、銀相場もその影響を受ける可能性がある。したがって、押し目買いは慎重に行いたいところである。そのうえで、下げ止ったところから徐々に買いを検討したいところである。節目の90円は重要なポイントになりそうである。

銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションも大きくせずに、慎重に投資したいところである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券