先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落した。世界的に株高や債券安が進む中、安全資産とされる金には売りが出た。景気回復への期待から米ドル相場が上昇する一方、米長期金利の上昇を受けて下落し、2ヶ月超ぶりの安値となった。

1兆9000億ドル規模の米経済対策への楽観やインフレへの期待の高まりが、米国債利回りを押し上げ、それにより米ドル相場も高水準を付けており、これが圧迫要因になった。米国債利回りの上昇により、金利を生まない金を保有する機会費用が増えるため、インフレヘッジ手段としての金の地位が損なわれた。

株価が調整する場面では安値拾いの買いが入る場面もあったが、その後も売り圧力が強い状況が続き、2月19日には一時1,759.29ドルと、2020年7月2日以来の安値を付けた。週間ベースでは1月初旬以来の大幅安となり、1,782.31ドルで週の取引を終えた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は2月12日の1,142.22トンから、2月19日には1,127.64トンに減少した。金市場からの資金引き揚げの動きが継続している。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、2月16日時点で23万4969枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万6438枚縮小した。買いポジションが5,743枚減少し、売りポジションが1万695枚増加した。手仕舞い売りと新規売りが確認されており、弱いパターンとなっている。

円建て金相場は下落した。直近安値を下回り、下落基調になっている。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下値を固めることができるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と金市場の関係
・投資マネーフローの動向
・円建て金相場は下値固めへ

金相場は再び下落しており、弱い展開にある。前週はこれまでの重要なサポートである1,775ドルを割り込み、さらに長期的なトレンドを示す移動平均線も下回り、基調は極めて弱いと言える。

ただし、テクニカル指標を見ると、売られすぎの水準にあることが示されている。このような指標が意識されるようであれば、下値は支えられる可能性があるだろう。今の市場では、堅調な株式市場への投資マネーの流入があり、その資金の一部は金市場から流出したものである可能性が極めて高い。したがって、金市場に資金が戻ってくる可能性があるとすれば、株価が軟調になり、資金が金市場に回帰することが不可欠となる。その可能性があるのかと言われれば、私は「十分にある」と考えている。

普段はファンダメンタルズからのアプローチの考え方を解説することが多いのだが、今回は少し観点を変えて考えてみたい。過去の経験則から見れば、米大統領選挙の翌年や、末尾に「1」がつく年の米国株は、2月中旬以降に調整しやすい傾向があり、そのトレンドは3月末まで続くケースが多く見られる。3月は値を戻すことがあっても、2月の高値を超えることができず、軟調な値動きが続くことが多い。逆に、それまで軟調に推移していた金相場は、2月中旬以降に上昇し、3月以降はより上昇トレンドが明確になる傾向が鮮明に見られる。

このようなシーズナリティは必ずしも将来を正しく示すものではない。しかし、少なくとも2021年のこれまでの株式・金の値動きは、過去データが示すシーズナリティにおいてかなり明確な傾向を示している。

このようなデータは、価格動向とファンダメンタルズの関係を示すものではないのかもしれないが、少なくとも過去にそのような傾向があったことを理解しておいてもよいだろう。その上で、これらの傾向を投資判断に利用することもぜひ検討したいところである。

これらの傾向通りになれば、早晩株価調整と金相場の反発がセットになり、3月末にかけて株安・金高の動きが明確になってくる可能性があると考えられる。実際にそうなるかは誰にもわからない。しかし、今の金価格の水準で金を手放すのは得策でないように感じられる。

相場に絶対はないが、その確率は極めて高いのではないかと私は考えている。これまでの軟調地合いが転換するのであれば、今のタイミングではないかと思う。逆に言えば、ここで金相場の転換に失敗すれば、相当弱い相場になるだろう。

さらに言えば、これまでの上昇相場が終了する可能性さえある。今の状況は、それくらい重要な局面にあると考えられる。したがって、これから1ヶ月程度の金市場の動きをよく見ておくようにしたい。

市場では、将来的なインフレの可能性を感じ始めているようである。金利も上昇し始めている。現在の各国政府による財政出動と金融緩和政策は、いずれインフレをもたらすだろう。それが最終的に金市場のサポート要因になるとの考えに変わりはない。

長期的な視点で考えれば、金を保有しておく意味があることは言うまでもない。株式の購入時に同時に金を購入しておけば、ポートフォリオのリスク分散になる。株式市場に対して強気であるならば、なおさら金を保有しておくべきであろう。

以前から繰り返し述べているように、米消費者物価指数(CPI)の前年比が1.5%以下のときに金に投資しておくと、2年後には20%程度のリターンを得ることができていたのが過去の経験則である。あくまで過去データではあるが、このようなデータを重視することもまたリターンを上げる上で重要であると考えている。ぜひ参考にしていただきたい。

円建て金相場はトリプルボトムの底値を割り込み、軟調地合いが続いている。6,100円を割り込み、6,000円を試す可能性も見えている。まずはサポートを見極めることが肝要であろう。ただし、上記のように、ドル建て金相場の下値リスクは小さい可能性がある。したがって、まずは今の安値で少しでも買うことを検討したい。想定通りに反発するのであれば、今の安値が、今後数年間の最後の安値になる可能性もあると私は考えている。この点は念頭に置いておいてよいだろう。

金を購入しておけば、ポートフォリオ運用のリスク分散が可能になり、資産価値のブレを抑制することができる。長期的に安定した運用を継続するためにも、このような発想を持つようにしたい。いずれにしても、今は株式のポジションを利益確定し、現金化した資金を使って金を購入することを早く実行することが、将来の安定した資産運用につながるはずである。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸した。前週の大幅高の影響もあり、上昇は限定的だったが、それでも堅調さは維持した。2月16日には一時1,336.50ドルまで上昇する場面もあった。週末は1,274.05ドルで取引を終えた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、2月16日時点で3万6577枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が377枚拡大した。買いポジションが707枚増加し、売りポジションも330枚増加した。売り手と買い手の両方がポジションを拡大させたものの、新規の取引はやや落ち着いた動きとなっている。

プラチナは引き続き今後の注目銘柄と考えている。需給の引き締まりに加え、水素自動車向けの需要の増加も期待されている。南アフリカの供給も不安定な状況が続いているもようであり、供給面も下支え要因になるだろう。

さらに、プラチナのインフレ率との相関は非常に高い。これは意外に知られていないようである。ちなみに、インフレ率との相関性は、プラチナのほうが金よりも高い。したがって、今後のインフレを想定するのであれば、金よりもむしろプラチナを買っておいたほうがよいということになる。

このようなデータからも、少量でもよいのでプラチナをポートフォリオに入れておくとよいだろう。また、このような発想の投資家が増えると、金に加え、プラチナを購入する投資家が増える可能性がある。その結果、プラチナ相場の水準訂正的な買いが入り、金相場の水準に追いつく可能性もあるだろう。

以前はプラチナのほうが金よりも価格が高かったことを知らない投資家も増えているのではないだろうか。両者のファンダメンタルズが異なることや、代替性がないこともあり、必ずしもプラチナのほうが金よりも高くなければならないというわけではない。しかし、希少性や将来の需要増加の可能性などに着目する投資家が増えれば、プラチナ相場も金相場の水準に追いつくことは十分にあり得ると考えている。

ちなみに、プラチナ価格の過去最高値は、2008年3月につけた2,299ドルである。ここまではまだ1,000ドルもある。一方の金相場は2020年8月に過去最高値を付けている。プラチナにその順番が回ってきても、おかしくはないだろう。いずれにしても、今後のプラチナ相場の動きには要注目である。

円建てプラチナ相場が高値から下げているが、上昇基調は続いている。目先は4,300円水準を維持できれば、再び上昇に向かう可能性も出てこよう。まずはドル建てプラチナ相場の動きをよく見ておきたい。長期的な上昇トレンドが継続すると考えておけば、押し目は買いである。したがって、4,200円程度までの押し目があれば、徐々に買い下がっておきたいところである。プラチナは少量でも保有しておくと、その後の上昇でキャピタルゲインを得られるチャンスがあると考えている。ぜひプラチナに注目しておきたいところである。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅下落の展開

シルバーは小幅に下落した。特段の材料もなく、軟調な金に連れる形で上値を切り下げ、軟調な展開だった。ただし、下げ幅も限定的だった。週末には一時26.18ドルまで下げる場面もあったが、最終的には27.21ドルで取引を終えた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、2月16日時点で4万9824枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が281枚拡大した。買いポジションが1,515枚増加し、売りポジションも1,234枚増加した。買いと売りの両方が増えたが、膠着状態だったと言える。

銀相場は、米国のオンライン掲示板「レディット」などSNS上での呼び掛けを背景とした相場の乱高下が沈静化し、値動きに乏しい展開になっている。上値が重い印象があるものの、相場として崩れてはいない。その意味では、金相場に対しては堅調であると言える。26ドル水準にある重要なサポートも維持しており、依然として上値を狙う体制は整っている。

したがって、あとは銀市場への関心が高まるだけであると言えるだろう。今の段階で銀市場への関心が高まるような材料は見当たらない。需給面に関しては、前回コラムでも解説したように、シルバー・インスティテュートが2021年の世界銀需要は10億2500万オンスと、8年ぶりの高水準となる見通しを示している。また、銀は電化製品、太陽光パネルなどに多く使用されるため、新型コロナウイルスの感染拡大が抑制され、世界の経済活動が回復すれば、需要も増加するとみられている。

これらの点から、2021年の工業需要は前年比9%増の5億1000万オンスと、4年ぶりの高水準になると予想している。このような材料も、下値を支えることになりそうである。したがって、現在軟調な値動きになっている金相場が反発基調に入れば、銀相場は再び30ドル超えを試し、大相場に発展する可能性も十分にあるだろう。銀も金とプラチナなどと同様に、インフレに備えて保有しておきたいメタルである。

円建て銀相場もやや軟調な値動きになっている。今は上値を打たれて下げ始めているため、まずは下げ止まりを確認することになろう。その上で、92円前後のサポートを維持できれば、相場は再び上向くことになろう。92円での下値が限定的であれば、押し目買いを行い、その後の反発を想定しておきたいと考える。

以前から繰り返し解説しているように、銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションも大きくせずに、慎重に投資したいところである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券