先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発した。米国の大規模な景気対策が期待され、インフレリスク回避資産としての金の投資妙味を高める動きがみられた。イエレン米財務長官が2月7日、議会で審議している1兆9000億ドル規模の経済対策案を承認すれば、「2022年には完全雇用に戻るだろう」との認識を示したことも材料視された可能性がある。

また、米ドル安に加え、米国の追加景気対策への期待感で、インフレヘッジとしての金の投資妙味が高まり、2月10日には一時1,848.40ドルまで上昇した。ただし、これがこの週の高値となり、その後は下落した。米ドル安の一服を受けて上値が重くなり、1,823.46ドルで同週の取引を終えた。ただし、週間ベースでは辛うじて上昇した。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は2月5日の1,156.51トンから、2月12日には1,142.22トンに減少した。投資家は金市場から資金を引き出す動きを続けている。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、2月9日時点で25万1407枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,719枚縮小した。買いポジションが5,026枚減少し、売りポジションが693枚増加した。やや弱いパターンとなっている。

円建て金相場は小幅に上昇した。ただし、トレンドは下落基調であり、強い動きではない。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下値を維持できるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と金市場の反応
・投資マネーフローの動向
・円建て金相場は下値固めへ

金相場は上値が切り下がっている。値動き自体は、あまり良い状況ではない。前回コラムで指摘していた1,775ドル前後にあるサポートを維持し、反発したものの、上値の重さが顕著である。先週の動きを見る限り、戻りいっぱいとなった可能性がある。

また、短期的な買われすぎ感もあるため、目先は下値を試すと考えられる。その場合、長期トレンドが位置する1,780ドル前後の極めて重要なサポートを維持できるかがポイントになる。これを割り込めば、これまでの長期トレンドがいったん終了することになるだけに、極めて重要である。

金相場の動きを見る限り、市場は引き続きマクロ経済要因が金相場を動かしているようである。今は米実質利回りが低水準またはマイナスにとどまっており、これが金相場の下値を支えている。米経済対策の規模と時期、インフレ見通し、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展などが引き続きポイントになるだろう。

その意味で、注目しているのは米実質金利である。インフレ率はいずれ上昇するだろう。1月の米消費者物価指数は前年比1.4%上昇だったが、4月以降には2.5%から3.5%程度に上昇するとみている。この場合、金利の上昇が鈍ければ、実質金利が低下し、それが金相場を支える可能性がある。市場がこのような視点で金市場を見ることができるかがポイントになりそうである。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)が公表した週間調査によると、2月10日までの1週間に世界株式ファンドに過去最大の581億ドルが流入したようである。投資家が現金ファンドから資金を引き揚げる一方、債券ファンドへの投資比率も低下しているようである。世界株式指数(ACWI)は過去最高値を更新しているが、企業業績や景気の回復見通しが投資家心理を好転させており、これが投資マネーを株式市場に引き付けていると言える。

このような状況下で、投資家がポジションを変更しているようである。株式に振り向ける比率は63.1%と、過去最高となった一方、債券比率は19.1%で過去最低を記録した。BofAによると、資金の大半は米国株に流入し、その額は363億ドルと、過去最高だった。うち大型株ファンドへの流入が251億ドルだったという。

大型ハイテク株への買い意欲が旺盛なことも、最近の際立った特徴となっているという。ハイテク株ファンドには、これまで過去最高だった先週の42億ドルを上回る54億ドルが流入した。BofAのブル・ベア指標は7.7を付け、「極端な強気」の水準に迫っている。リスク選好ムードの高まりで、現金や金からは資金が流出し、流出額は現金ファンドからが106億ドル、金は8億ドルとなった。債券ファンドには131億ドルが流入しているという。

このように、現時点では金や現金が嫌われ、米国株が選好されている。特にハイテク株には再び資金が入っており、ハイテク株信仰は根強い。このように、結局は投資マネー次第で株価が決まる。無論、金相場も決まってくる。この動きが変わるまでは、金市場への関心は高まりにくいと言える。

しかし、今のように金が無視されているような状況のときに、押し目を少しずつでも拾っておくことが肝要である。以前から解説しているように、米消費者物価指数が1.5%以下のときに金に投資しておくと、2年後には2割程度のリターンを得ることができていたのが過去の経験則である。

今の米消費者物価指数は1.4%プラスである。したがって、今、金投資のチャンスが来ている可能性があると私は考えている。

米金利は1980年以降、40年間低下し続けた。しかし、2020年に底打ちし、すでに反発し始めている。2040年頃まではこの傾向が続くと考えているが、それを後押しするのがインフレ率の上昇である。

今後、インフレ率が12年間上昇し、その後、12年間下げ続けた原油相場が再び上昇し、コモディティ価格が上昇に転じる可能性がある。そうなれば、過去10年間で最も上昇している金への関心も高まらざるを得ないだろう。このような大局観を持って金市場を見ていきたい。市場はまだ気づいてないようである。今のうちに、金投資を検討し、実際に行動したいところである。

円建て金相場はトリプルボトムを形成できるかがポイントになろう。徐々に上値が切り下がっており、チャートの形状は良くない。したがって、まずは6,100円台で下値を固めることができるかに注視しておきたい。ここでサポートされれば、再び上向きやすくなる。

円安基調は下値を引き続き支えるだろう。その間にドル建て金相場が反発の動きを強めることができれば、円建て金相場も上昇に向かうことになろう。上記のように、金投資のチャンスが来ている可能性がある。株式投資のリスクヘッジとしても、金を購入しておくことは重要であると考えている。

今のように株式市場が堅調なときこそ、株式投資とのバランスを取るために、金に資金を投入しておくとよいだろう。株価が上昇していることで、ポートフォリオにおける株式の比率が高くなっているはずである。少しでも現金化し、それを金に移しておくとよいだろう。

そうすれば、ポートフォリオ運用のリスク分散が可能になり、資産価値のブレを抑制することができるだろう。長期的に安定した運用を継続するためにも、このような発想が必要である。ぜひチャレンジしていただければと思う。

プラチナ:急伸の展開

プラチナは急伸した。大きく値を上げ、一時1,268.88ドルまで上昇し、2015年1月以来の高値を付けた。週末までの動きでも高値を維持し、1,252.55ドルで取引を終えた。週間ベースでの上昇率は10%超に達した。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、2月9日時点で3万6200枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,990枚拡大した。買いポジションが7,278枚増加し、売りポジションも1,288枚増加した。売り手と買い手の両方がポジションを拡大させたものの、買いのほうが優勢だった。

現在の貴金属市場では、投資家の関心はプラチナ市場に向かっているようである。プラチナはこの1週間で150ドル上昇した。プラチナは自動車の排ガスを浄化するための触媒コンバーターに使われるが、基本的にディーゼル車に搭載される。一方、ガソリン車に搭載されるパラジウムも同時に堅調さを取り戻しており、いわゆる白金族系メタルに注目が集まっている。

市場では、プラチナの需給引き締まりが不安視されているという。プラチナ相場は極めて堅調である。トレンドが非常に強いと言える。一方で買われすぎ感も強まっており、短期的には手仕舞い売りなどで下げる可能性もあるが、この上昇トレンドは長期化する可能性が高まっているように感じられる。

これまで相場が低迷し、投資対象からも外されてきたプラチナだったが、ここにきて急速に注目度が高まっている。やや投機的な動きにも見えるが、このように短期間で上昇することもある。また、これまで低迷していたこともあり、いったん注目度が高まると、大相場に転じる可能性もある。したがって、少量でもポートフォリオに入れておくとよいだろう。

投機的に買われる動きが強まり、金相場との価格差が縮小するとの指摘が聞かれるようになれば、そのような見方に乗る形で投資マネーが流入する可能性もあるだろう。市場流動性は金と比較するとかなり低いという点は気になるが、逆に上がり出すと上昇しやすくなる。ぜひ注目しておきたいと考える。

今後は投資マネーの動きに注目が集まるだろうが、やはりコモディティである以上、需給面にも目を向けておきたい。貴金属大手のジョンソン・マッセイ(JM)はプラチナの需給動向について、2021年は3年連続で供給不足になる可能性があるとの見方を示している。

JMは、2020年はプラチナ、パラジウム、ロジウムなど自動車エンジンの排気フィルター(触媒装置)に使用される金属が全て供給不足だったとしている。ちなみに、プラチナは39万オンスの供給不足で、2019年の不足幅である30万1000オンスを上回ったという。また、パラジウムは60万6000オンスの供給不足で、2019年は89万3000オンスの供給不足だった。

これらの供給不足を背景に、プラチナ取引価格は6年ぶりの高値をつけ、パラジウムは過去最高値に迫っている。JMは、2021年もパラジウムの供給不足は続くと予想しており、そうなるとパラジウムは10年連続で不足する見込みとなる。また、プラチナについては、2021年で3年連続の供給不足になると予想しており、市場の関心を集める可能性がある。

一方、自動車各社は環境規制の強化を受け、車両1台当たりのプラチナなどの使用量を増やすことを余儀なくされているという。プラチナについて言えば、宝飾や投資用の需要も大きく、新型コロナウイルスの感染拡大が沈静化し、景気が回復すれば、需要は増えやすいと言える。

供給面では、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃も受けている。採掘やリサイクルに混乱が生じたほか、産業活動も停滞し、自動車や宝飾品の販売も冴えなかった。特に南アフリカでの大規模な加工工場が数ヶ月にわたって閉鎖されたことが影響している。

JMは2021年の需給見通しについては、感染拡大が抑制されるのに伴い、大きく回復するとの見方を示している。需要の回復が、供給の回復を上回れば、強い相場が続くことになるだろう。需給面のサポートもあり、今後も堅調な推移を想定しておきたいと考える。

その結果、1,300ドルを超えると、1,700ドルから1,900ドルを目指す展開になることも想定される。過去最高値は、2008年3月につけた2,290ドルだが、将来的にはこの水準も視野に入るかもしれない。

円建てプラチナ相場も大きく上昇している。ドル建てプラチナ相場の上昇もあり、今後も強い相場を想定しておきたい。また、為替相場は円安基調にあることも、円建てプラチナ相場には追い風である。すでに直近高値を超えており、目先は明確なターゲットがない。

前回コラムでは「3,900円を超えると大相場に発展する可能性も十分にあるだろう」としたが、すでにそのような値動きになりつつある。したがって、今は上昇のトレンドに追随する形で上値を試す動きについていくのがよいだろう。

前回コラムでも指摘したように、このような銘柄を少量でも保有しておくと、その後の上昇でキャピタルゲインを得られるチャンスは十分にあると考えられる。ぜひプラチナにも注目しておきたいところである。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅上昇の展開

シルバーは小幅に上昇した。上下に変動したものの、下値は切り上がっており、短期的なサポートを維持しながら週末にかけて値を上げ、27.35ドルで取引を終えた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、2月9日時点で4万9543枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,866枚縮小した。買いポジションが501枚減少し、売りポジションが1,365枚増加した。小幅ではあるが、買い姿勢が後退しているのがわかる。

銀相場は、米国のオンライン掲示板「レディット」などSNS上での呼び掛けを背景に、相場が乱高下する展開にあったが、ようやく落ち着きを取り戻している。銀相場は従来より投機的な動きになりやすい傾向があるものの、今回の件で銀相場は簡単に動かせると勘違いする向きも出てくる可能性がある。

1980年には銀相場が50ドルまで吊り上げられる「ハント事件」が起きたが、最終的には取引所の規制などを背景に相場は急落し、銀相場を吊り上げたハント兄弟は巨額の損失を抱えたとされている。

このように、意図的に操作された相場の行く末はいつの時代も同じであると私は思っている。市場を操作することはできないと肝に銘じておくべきである。まして、銀はコモディティであり、現物がある。現物需給の動向が最終的に価格に反映される。この点を無視して相場を見ることはできないと言える。

シルバー・インスティテュートは、2021年の世界銀需要は10億2500万オンスと、8年ぶりの高水準になる見通しを示している。投資家と産業界が買い付けを強化し、価格も上昇するとしている。新型コロナウイルスの世界的大流行をきかっけとして、投資家の間では銀を備蓄する動きが活発化したとの見方を示している。銀は現在、金と同じような安全資産と見なされているとの解釈である。

シルバー・インスティテュートは、現在の上昇基調が続くとし、2021年の銀塊、銀貨の購入額は2億5700万オンスと、6年ぶりの高水準に達すると予想している。

今年に入ってからも銀の備蓄は急増しており、これが価格上昇に寄与しているとの見方がある。銀は、電化製品、太陽光パネルなどに多く使用されているが、新型コロナウイルスの感染拡大が抑制され、世界の経済活動が回復すれば、需要も増加するとみられている。

これらの点を踏まえ、2021年の銀の工業需要は前年比9%増の5億1000万オンスと、4年ぶりの高水準になると予想している。一方、宝飾需要は1億7400万オンスに増えるとみているが、コロナ禍前の水準は下回る状態が続くと予想している。

また、今後の価格については、見通しは非常に良く、年平均価格は46%上昇し、30ドルに達するとしている。1つの見方として、念頭に置いておくとよいだろう。

円建て銀相場もやや値動きは落ち着き始めている。このまま冷静な値動きに回帰すれば、判断しやすくなろう。まずは92円前後にあるサポートを維持できるかを確認したい。

上記のように、基本的には需給面のサポートが期待できるため、相場としては上向きを想定しておきたい。その上で、さらに高値を切り上げていくようであれば、その動きに乗る形で買いを検討したいと考える。下げても92円で下値が限定的であれば、押し目買いを行い、その後の反発を想定しておきたいと考える。

以前から繰り返し解説しているように、銀相場は基本的にボラティリティが高いため、保有するポジションを大きくせず、慎重に投資したいところである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券