先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落した。株価の戻りもあり、安全資産である金は買われにくくなっている。また、個人投資家によって投機的取引が行われていた銀相場が高値から下げて大幅安になる場面があり、これも金相場の押し下げにつながった可能性がある。米国債のイールドカーブの傾きが急になり、株式相場が上昇したことで金相場は圧迫されたとの指摘もある。

2月4日の取引では、金相場は1日で2%超下げ、心理的節目の1,800ドルを割り込んだ。米ドル相場や米国債利回りが上昇し、金の投資妙味が低下した。一時1,784.76ドルと、約2ヶ月ぶりの安値を付けた。

この日発表された前週の米新規失業保険申請件数が減少し、経済状況への不安が緩和したことや、米ドルが約2ヶ月ぶりの高値を付け、ドル建てで取引される金が割高になったことも下落につながった。

さらに、米長期国債利回りは、大型経済対策や労働市場の安定化への期待を背景に上昇しており、これらが金相場の重石になった。週末2月5日の金相場は反発し、心理的節目の1,800ドルを回復した。米ドルの下落に加え、米国の雇用の回復が予想より遅いことが統計で示され、追加の景気刺激策の必要性が浮き彫りになったことが金相場を支援した。

ドルインデックス(ドル指数)は0.6%下落し、他通貨の保有者にとって金が割安になった。1月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が増加に転じたが、大きな伸びではなかった。また、12月の就業者数の減少幅は当初発表から拡大された。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は1月29日の1,160.13トンから、2月5日には1,156.51トンに減少した。投資家の買いは引き続き手控えられている。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、2月2日時点で25万7126枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が420枚縮小した。買いポジションが820枚増加し、売りポジションも1,240枚増加した。明確な傾向がみられない状況にある。

円建て金相場は下落した。ドル建て金相場の下落に連れた格好である。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下値を固めの展開に

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と金市場の反応
・テクニカル主導の反発
・円建て金相場は下値固めから反発へ

金相場は下落基調が続いているが、ひとまず先週末は1,775ドルのサポートで下げ止まった格好である。ここには288日移動平均線が位置している。

あまりテクニカル分析のポイントを利用して金の値動きを説明することはないのだが、ここは2020年3月のコロナショックで金が売られた時も支えられたポイントである。したがって、このトレンドを維持できるかどかは、今後の金相場を占う上で、極めて重要であると判断している。

ひとまず先週末はここを維持している。したがって、まずはこのまま反発に転じることができるかを確認することになろう。逆にこれを割り込めば、当面は弱い相場にならざるを得ないだろう。

それだけ今は金市場にとって極めて重要な局面にあると考えられる。今後の動きを注視したい。金相場はサポートされたとは言え、まだ基調は下向きである。今後も買いが入るかは投資家の行動次第であり、少し長い目で見ていく必要がある。

先週は週間ベースで1.9%安となり、1月第1週以来の大幅下落となったが、米国債利回りの上昇が一因である。利子を生まない金を保有する機会費用が増えるため、金利上昇には弱い。

投資家の注目が米国経済の見通しに移り、高リスク資産が視野に入る中、金は短期的には下落する可能性があるとの見方もある。

一方、米下院は2月5日、予算決議案を可決した。これによって民主党は、バイデン米政権が打ち出した1兆9000億ドル規模の経済対策案を、共和党の支持が得られなくても議会を通過させることが可能になるとみられている。

金は景気刺激策が引き起こす可能性が高いインフレや通貨下落を、ヘッジする手段という見方もある。したがって今後はこのテーマに目が向くかが最大のポイントになると考えられる。市場がこの点に目を向けるようであれば、下値も固まってくるだろう。

今回の下落で下げ止まったとすれば、今後は反発が想定される。長期トレンドが維持されたとの判断が広がれば、押し目買いの興味も出てくるだろう。先週は個人投資家による銀相場の変動に金相場も振り回される場面があったが、その銀相場もそろそろ落ち着きを取り戻すだろう。そうなれば、金相場も本来の値動きになるものと思われる。

もっとも、米国債のイールドカーブのスティープ化は、金を保有するコストの上昇につながる可能性がある。この点を嫌気する投資家もいるだろう。また、米国や世界の景気が回復基調にあるとの一般的な考えに反応して金相場がさらに低下し、調整局面に入る可能性も否定できない。

とは言え、やはり長期トレンドの重要なサポートである1,775ドルをひとまず維持して反発していることを考えれば、まずは押し目買いを検討したいところである。その後1,850ドル台を回復できれば、再び上値を試す状況が整うことになろう。

一方、インドのシタラマン財務相は2月1日、金と銀の輸入関税を12.5%から7.5%に引き下げる方針を示した。インド政府は2019年7月に関税を12.5%に引き上げていた。このような材料も、主要金消費国であるインドの買いを促す可能性があり、下値を支える要因になるだろう。

円建て金相場は円安基調が下値を支えるだろう。その間にドル建て金相場が反発の動きを強めることができれば、円建て金相場も上昇に向かうことになろう。まずは6,100円でダブルボトムを形成できるかどうかに注目しておきたい。

いずれにしても、長期的な金相場の上昇基調は維持されると考えている。押し目は逃さず、しっかりと買っておきたいところである。

今一度、金投資の意義を考えることも重要であろう。株式投資と同時に金を購入しておけば、ポートフォリオの価値のブレを抑制できることがわかっている。

したがって、今のように株式市場が堅調なときこそ、株式投資とのバランスを取るために株式を少し利益確定し、金に資金を移しておくとよいだろう。そうすれば、ポートフォリオ運用のリスク分散が可能になり、長期的に安定した運用を継続することができるだろう。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。先週の下落の流れが反転し、戻りを試す展開となった。一時1,132.50ドルまで上昇する場面もあったが、直近高値の1,151.50ドルを超えることはできず、週末は1,123.58ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、2月2日時点で3万210枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が672枚拡大した。買いポジションが2,065枚増加し、売りポジションも1,393枚増加した。売り手と買い手が引き続きポジションを拡大させており、今後の相場の展開次第では投機筋のポジションの巻き戻しで変動が大きくなる可能性がある。

プラチナ相場は高値圏での推移が続いている。トレンドは堅調であり、上向き基調が鮮明である。徐々に強気相場に移行しているように見える。下値は1,050ドル前後が目先のサポートレベルになろうが、この水準を維持できればさらに上値を試す可能性が十分にあるだろう。

前週は金相場の下落にもかかわらず、プラチナ相場は堅調である。この点は、プラチナ相場がこれまでの軟調な地合いから抜け出し、いよいよ割安感からの脱却を目指す展開に移行し始めている可能性を示唆しているようにも見える。そうであれば、現在の金相場の水準との差を埋めるような買いも入りそうである。

これまで投資家がプラチナにあまり目を向けてこなかったこともあり、買われる余地が大きいことも材料視されやすい。また、これまでも解説したように、プラチナは燃料電池車の電極の原材料に使用されることもあり、新たな需要の創出という極めて重要なファンダメンタルズ面の材料もある。

これらを総合すれば、プラチナ相場の上昇のポテンシャルはかなり大きいように思われる。直近高値を超えてくると、相当の大相場になる可能性を秘めている点を指摘しておきたい。

円建てプラチナ相場も堅調さを維持している。高値圏での推移が続いているが、現在の上値となっている3,900円を超えると大相場に発展する可能性も十分にあるだろう。そうなれば、その動きについていく形で早めにプラチナを買っておくことが肝要である。無論、下げた場合でも、3,600円を割り込まなければ、押し目買いの好機になろう。

いずれにしても、買い場は近づいていると言えそうである。相場に大きな変化がみられそうな地合いにある。少量でも保有しておくと、その後の上昇でキャピタルゲインを得られるチャンスは十分にあると考えている。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:乱高下の展開

シルバーは乱高下した。2月1日には一時30.03ドルまで上昇したものの、その後は急落し、2月4日には25.87ドルまで値を下げる場面があった。しかし、週末(2月5日)にはやや値を戻して26.82ドルで取引を終えた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、2月2日時点で5万1409枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,051枚縮小した。買いポジションが3,810枚減少し、売りポジションも759枚減少した。買い手の手仕舞い売りが出ており、高値からの下落場面でも売りが出ている可能性がある。ただし、その後は落ち着いた値動きになっており、その後の投機筋の動向を確認したいところである。

前週の銀相場の不安定な値動きは、米国のオンライン掲示板「レディット」などSNS上での呼び掛けに応えて、個人投資家が大量の銀を購入し、価格を押し上げたことが背景にあるとみられている。

レディット内で個人投資家に対し、産銀株と銀上場投資信託(ETF)の裏付けとなる銀現物の購入を推奨する書き込みが広がったのである。これらの書き込みを受けた動きはまだ初期段階で、この先どの程度弾みがつくのかは不透明な情勢にあるとの指摘もある。

また、ファンダメンタルズは良好なため、個人投資家が新たに参加すれば銀にとって追い風になるとの見方もある。最大の銀連動型のETFである「iシェアーズ・シルバー・トラスト」のデータによると、銀保有は1月28-29日だけで3700万口増加した。1口は1オンスに相当する。また、豪ETFセキュリティーズの「フィジカル・シルバー・ファンド」は1日としては過去最高の4000万豪ドル(3060万米ドル)の資金が流入したという。

さらに、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)は、ロンドン市場の銀取引量が1日に10億600万オンスと、ここ数ヶ月の取引水準の3倍になったとしている。銀価格が2013年以来の高値に上昇したことが背景という。

銀市場ではここ数日、小口投資家による取引が殺到している。大量の取引により、銀現物は2月1日に30.03ドルと、1月28日の25ドルから上昇した。LBMAは「2月1日までの5日間の平均取引量は、1日当たり6億6236万オンスだった。これは2020年12月末までの12週間平均の3億2535万オンスの2倍になる」と説明している。

銀相場は通常は金相場に連動するものの、産業用の実需が絡むため、景気動向にも敏感である。米ドル安や世界的な低金利政策下での景気拡大への期待感から、銀相場の上昇を見込む向きもある。

SNS上では、これまでの空売り筋を締め上げる目的で、ヘッジファンドが大量に空売りポジションを保有している株式銘柄をターゲットに買いを誘うような書き込みがあり、それを契機に空売り銘柄をターゲットとした買いが入った。

しかし、銀市場にも同様の働きかけをした投資家は、銀市場の構造をよく理解していなかったのではないかと思われる。銀市場はゲームストップ株など個人投資家がターゲットとした市場よりも規模が大きく、流動性も高いため、個人投資家が動いてもほとんど影響がないと言える。

まして、先物市場での売りポジションの多くは、生産者や現物を保有するトレーダーなどによる売りヘッジであり、価格が上昇しても彼らの資産全体への影響はほとんどない。したがって、価格の上昇自体が市場に何か大きな影響を与えるかと言われれば、通常の投資家のポジションの評価が変化する程度である。むしろ、銀の保有者にはこれらの動きは好都合であるとも言える。

もっとも、このような値動きは健全とは言えない。今後、このような動きがどうなるのか、冷静に見守りたいところである。

もっとも、銀市場が通常の取引状況に戻り、金相場との関係を保ちつつ、真に上値を試す力があれば、28ドルを超えて30ドルを試す可能性も出てくるだろう。今は25ドルのサポートが堅いようにみえる。そのため、多少の株安や金相場の不安定さの影響もそれほど受けないのではないかと考えられる。

無論、相場は水物である。特に銀相場は値動きが従来から相対的に激しい傾向がある。今後もこの点を念頭に置きながら、対処することが肝要であろう。

円建て銀相場も乱高下している。ただし、トレンドは上昇基調を維持している。前週は一時節目の100円を超える場面もあり、今後もドル建て銀相場が堅調さを維持する一方、円安基調が続けば、いずれ100円を超えていくものと思われる。現在は92円から94円が重要な節目になっており、これらの水準を上に放たれていけば、強い相場が示現することになろう。

米国の個人投資家の動きも沈静化するものと思われ、銀市場も通常の値動きになるだろう。そうなれば、これまで通りに押し目を買い、上抜けてきたときにはその動きについていく方針を継続すれば良いだろう。

もっとも、以前から繰り返し解説しているように、銀相場は基本的にボラティリティが高い。したがって、保有するポジションも絞りながら、慎重に対処することが肝要である。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券