先週のゴールド:反発の展開

金相場は下落した。米国の経済対策への懸念が重石となった。1月27日には一時1,830.80ドルまで下落する場面もあった。

1月26-27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、事実上のゼロ金利と量的緩和策の維持を決定したが、市場の予想通りで特段の材料にはならなかった。ただし、声明では新型コロナウイルス感染再拡大を踏まえ、「この数ヶ月の景気と雇用の回復ペースは緩やかになった」と指摘し、従来の「改善が続いた」から引き下げた。

週末1月29日には反発し、1,846ドルで1月の取引を終えた。1月としては2011年以来の大幅安となった。一方、2020年12月に香港経由で中国が輸入した金は、2ヶ月連続で増加した。ただし、年間の輸入量は、コロナ禍の影響で需要が減り、約85%減少した。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は1月22日の1,173.25トンから、1月29日には1,160.13トンに減少した。投資家の買いが徐々に細っている様子が確認できる。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、1月26日時点で25万7546枚となり、前週から1万908枚増加した。買いポジションが6,025枚増加し、売りポジションが4,883枚減少した。買い手が新規買いを積み増す一方、売り手はポジションを縮小させており、再び強気なポジションに傾いている。このトレンドが持続するかを確認する必要がある。

円建て金相場は週末に急伸した。米ドル/円相場が円安に傾いていることが背景にある。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下値を固めることができるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価下落の際の金市場の反応
・米ドル高継続と2月のシーズナリティ
・円建て金相場は下値を固める展開に

金相場は1,875ドルが重い展開が続いている。下値も1,830ドル前後で支えられているが、この狭いレンジを抜ける材料に乏しい状況にある。一方で、株式市場が軟調な動きになっており、米ドルが安全資産として買われやすくなっている。このことがドル建て金相場に与える影響に警戒する必要があろう。

2月はシーズナリティの面から米ドル高になりやすい傾向がある。1980年から2019年の平均月間騰落率は0.2%であり、2015年からの5年間では0.6%である。ちなみに、2020年は0.8%上昇している。

このように、2月の米ドル高が金相場にネガティブな影響を与えるかどうかを注視したいところだ。私自身は従来より、2021年以降は米ドル高基調が強まるとしてきたが、米ドル金利上昇などがそのような見方をさらに強化しそうである。

一方、2月はシーズナリティの面で言うと金相場の騰落率も悪くない。特に2015年以降の5年間では1.4%上昇している。2020年は1.0%のマイナスだったが、基本的に2月は下げにくいと考えている。この点は理解しておいたほうがよいだろう。

しかし、上記のデータを見ると、「ドル高と金相場の上昇が共存できるのか」という問題に行きつくだろう。最終的にはインフレ率が高まれば、この問題は解決するものと思われる。実質金利が低下すれば、金利が多少上昇しても、金相場は理論上は上昇して良いことになる。

今のように、米短期金利が低位で推移していれば、その可能性はむしろ高まることになるだろう。したがって、注意すべきは短期金利が上昇したときである。この点には注意しておきたい。

需給面については、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が最新のレポートを出している。WGCによると、2020年の世界の金需要は11年ぶりの低水準へと落ち込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大が市場に大きな影響を与える中、投資家の間で金を保有する動きが広がったが、一方で宝飾品の販売が落ち込んだことや、主要中央銀行による購入が急減したためだ。

これにより、2020年の世界の金需要は前年比14%減の3,759.6トンとなったが、4,000トンを下回るのは2009年以降初めてである。また、2020年10-12月期の金需要は前年同期比28%減の783.4トンと、四半期ベースでは2008年以来の低水準だった。

新型コロナウイルスの感染拡大は、金市場の需給の構成を一変させたと言える。アジアでは宝飾品需要が落ち込んだが、それらの金は投資目的で購入する投資家が多く存在する欧米市場に流れた。現在では、宝飾品需要などの実需よりも、投資家行動がより金相場に影響を与えるようになっている。

投資家が金をこぞって購入したことで、2020年の金価格は25%も上昇した。2020年通年では、宝飾品需要は34%減の1,411.6トンとなった。一方、投資需要は40%増の1773.2トンとなっており、このような見方を裏付ける結果となっている。

また、主要中央銀行などによる需要も59%減の272.9トンとなっており、2020年は投資マネーが金相場を支えた1年だったと言えるだろう。

したがって、今後の金相場は投資家の行動次第となりそうである。目先は株安が進む可能性があり、その際に現金化が進む過程で金に売り圧力がかかる可能性も否定できない。一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策スタンスは変わらず、今後も国債や住宅ローン担保証券を市場から買い上げ、市場に資金を供給し続けるだろう。

これが終わるまでは株式や金などの資産価格は維持される可能性がある。特に資金供給の増加はインフレ率の上昇につながる可能性がある。当面は不安定な値動きになる可能性もあるが、基本的に金については、押し目で粛々と買い続けていくことが肝要である。

一方、前述のWGCのデータは、すでに終わった話である。また、第4四半期には中国とインドの需要がかなり回復している。この基調が続けば、2021年に需要が回復する可能性は十分にある。全体の動きも重要だが、実需が戻りつつあることは好材料と言える。

この傾向が続けば、金相場は支えられるだろう。実需筋にとっては、これまで価格水準が高すぎて買えなかった面もあるが、現在の水準にようやく目が慣れてきたのではないかと考えられる。また、価格が下がらないと判断すれば、多少高くても買ってくるのがインドや中国の実需筋の特徴である。このような特徴も理解しておくと良いだろう。

目先は1,830ドルを維持できるかが重要なポイントである。これ割り込むと、節目の1,800ドルから1,775ドル程度までの調整となる可能性も否定できない。しかし、それでも下値を安値と見た投資家の買いが支えるだろう。

ちなみに、1,775ドルは長期的に重要なサポートである。これを割り込むと長期トレンドが崩れることになる。さすがにこの水準はサポートされるのではないかと考えている。一方で、1,875ドルを超えると、一段高になる可能性は十分にある。2021年は大きく上昇しない可能性もあると考えているが、だからこそ長期的な目線で見ていくべきであると考えている。

円建て金相場は円安基調に支えられる可能性がある。私は2021年から3年程度は円安になると考えている。もしそうなれば、多少の米ドル高基調でもドル建て金相場の上値の重さを円安が支えてくれる可能性もある。

目先は6,200円でかろうじて下げ止まっている。このまま6,500円を回復するような動きになれば、上昇に向かいやすくなる。為替の動きは円建て金相場にとってかなり重要な要素であるが、これだけにフォーカスするのは危険である。全体を見ながら、結果として円安が下値を支える程度に考えておくとよいだろう。

やはり重要なのはドル建て金相場の動向である。この点を間違えないようにしたい。そのうえで、押し目で順次買い下がっていけば、最終的には報われるだろう。無論、金は資産全体のバランスを保つためのものである。

キャピタルゲインを得られれば、それは追加収益と考えたほうがよいであろう。私はあくまで金は株式投資とのバランスを取るためであり、ポートフォリオ運用のリスクを分散させるためのツールであると思っている。この点を間違えなければ、長期的に安定した運用を継続することができると考えられる。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。先週の高値を上抜けることができず、全体的に下落基調が続いた。1月28日には一時1,049ドルまで下落する一方、1月29日には1,112ドルへ反発するなど、激しい値動きとなった。結果的には1072.67ドルで1月の取引を終え、上昇しきれずに終了した。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、1月26日時点で2万9538枚となり、前週から1,652枚増加した。買いポジションが2,352枚増加し、売りポジションも700枚増加した。売り手と買い手が両者ともポジションを再び拡大させたが、買いが多くなっており、高値圏でも上昇を見込んでいる向きが少なくないことがうかがえる。

プラチナ相場は1月21日に1,151.50ドルの高値を付けた後、軟調な値動きになっている。このまま上値を追えないようであれば、チャート形状がトリプルトップのような形になり、下げに転じるリスクが高まりそうである。その意味では、今週は1,035ドル前後でサポートを形成し、長期上昇トレンドが維持されるかどうかを確認する重要な週になりそうである。

1,035ドルを割り込むと、節目の1,000ドルを割り込み、さらに950ドルから900ドル前後までの下げになる可能性もある。逆に1,115ドルを超えると再び上昇基調を回復しそうである。そうなれば上昇に勢いがつき、高値を更新することになるだろう。

あとは株式市場次第になりそうである。しかし、これはあくまで短期的な見方である。長期的な上昇基調は変わらないと考えている。

さて、ロイターによる市場関係者への調査によると、プラチナ相場は2021年に長年続いた安値傾向から回復する見通しとなっている。投資家や自動車メーカーの需要増加を背景に、年間平均価格は2010年以来の大幅上昇になると予想されている。

プラチナ市場は長年、供給過剰が続き、価格が低迷していた。しかし、安全資産を求める投資家の需要を呼び込んだほか、排ガス浄化にプラチナを使用する自動車やトラックの販売も回復しつつある。

このような背景もあり、アナリストの中では2021年のプラチナ相場は1,044ドルと予想されている。これは2020年の平均価格の883ドルを18%上回る水準となる。2022年は1,082ドルになる見通しとされている。しかし、これらの予想価格は現在価格とほぼ同じ水準である。しかし、将来の燃料電池車などの新規需要増を考慮すれば、これらの見通しはかなり控えめと言えるだろう。

円建てプラチナ相場も円安に支えられ、3,600円のサポートを維持している。これで重くなっている3,800円から3,900円の水準を上抜けると、新たなトレンドに入ることになろう。そのような動きになれば、相応に強い基調に転じることになるだろう。

逆に3,600円を割り込むようだと、地合いは大きく悪化することになる。その場合には、押し目買いは慎重に進めたほうがよいだろう。

将来的な上昇を見込む中でも、下げ基調に入ったときには時間と資金を分散させながら、慎重に買い下がっていくことが肝要である。3,400円までを1つの目処として買い下がることを考えておきたい。無論、3,900円を超えて上昇基調が強まれば、追加的に買い上がっていけばよいだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:急伸の展開

シルバーは急伸した。25ドル前後にある上昇トレンドを維持しながら推移していたが、月末の1月29日には一時27.64ドルまで急伸するなど、投機的な動きとなった。1月は27ドルちょうどで取引を終えた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、1月26日時点で5万4460枚となり、前週から2,458枚増加した。買いポジションが435枚増加し、売りポジションが2,023枚減少した。買い手はわずかに買いポジションを増やす一方、売り手がポジションを減らしており、下げにくい地合いにあると言えそうである。また、先週末に急伸していることもあり、投機筋のポジションがどのような状況になっているかが非常に興味深いと言える。

さて、先週末の銀相場の急伸の背景には、個人投資家による投機的な動きがあったもようである。

ここ数日間、米国株式市場ではレディットやツイッターといったインターネット交流サイト(SNS)で、米ゲームソフト小売り大手ゲームストップ株への仕掛け的な取引が呼びかけられた。それに伴って、ヘッジファンドなどのショートポジションの「スクィーズ(玉締め)」に関わる噂が出たことから、一部のトレーダーはショートカバーに動き、同社株が急伸する動きがみられた。

それと同じように、産銀会社の株式や銀関連の上場投資信託(ETF)を買うことによる銀価格引き上げの呼び掛けが行われたようである。その結果、カナダの鉱山会社であるファースト・マジェスティック・シルバーの株価が、30%以上急騰した。銀相場も一時27ドル台まで急伸するなど、明らかに投機的な動きがみられた。

ゲームストップや他のショート筋が買い戻しを迫られたのと同じように、銀相場がターゲットになったとの噂がトレーダーらにショートカバーを促したと言える。しかし、銀市場はゲームストップ株よりも規模が大きく、流動性も高いため、個人投資家が動いてもほとんど影響がないとの見方も示されている。

いずれにしても、このような値動きは健全とは言えない。今後、このような動きがどうなるかを冷静に見守りたいところである。

もっとも、銀市場が通常の取引状況に戻れば、金相場との関係を保ちつつ、真に上値を試す力があれば、28ドルを超えて30ドルを試す可能性も出て来るだろう。今は25ドルのサポートが堅く、「これを何としてでも支える」との強い意志が感じられるような動きである。

したがって、多少の株安や金相場の不安定さの影響もそれほど受けないのではないかと考えられる。無論、相場は水物である。特に銀相場は従来から値動きが相対的に激しい傾向がある。今後もこの点を念頭に置きながら、対処することが肝要である。

円建て銀相場は大きく上昇している。ドル建て銀相場の上昇に加え、米ドル/円が円安で推移したことが影響している。

調整したときには86円でサポートされており、下値を固めたうえで反発している。その結果、直近高値の94円を超えている。ドル建て銀相場はまだ直近高値を超えていないため、安易なことは言えないが、この勢いは非常に興味深いところである。

前回コラムでは「まずは86円で下値を固めることができるかを確認したい。そのうえで、買いを検討することが重要であろう」とした。結果的に86円でサポートされて上昇しており、この見方が正しかったと言える。

あとは、高値圏を維持し、94円でサポートを形成できるようであれば、今回の上昇相場は本物である。無論、94円超が定着するようであれば、積極的に買っていくのが望ましいだろう。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券