先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発した。米国の景気刺激策への期待を背景に買いが入った。1月18日には1,809.90ドルまで下落する場面もあったが、この水準がこの週の安値となり、その後は上昇した。米ドルが対ユーロで下落し、ドル建てで取引される金は割安感から買われやすかった。

また、バイデン米大統領が打ち出した総額1兆9000億ドル規模の追加経済対策案を背景としたインフレ高進観測からのインフレヘッジ目的の金買いも、引き続き相場を支えた。1月19日には米次期財務長官に指名されているイエレン氏の指名承認公聴会が開かれたが、金相場への影響は限定的だった。

1月21日にはこの週の高値となる1,874.86ドルまで上昇する場面があった。しかし、その後は利益確定売りが出た。週末(1月22日)は下落した。米ドル高と幅広い市場での売りが重石となった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は1月15日の1,177.63トンから1月22日には1,173.25トンとなった。投資家の買いが伸び悩んでいる様子がうかがえる。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、1月19日時点で24万6638枚となり、前週から411枚増加した。買いポジションが5,710枚減少し、売りポジションも6,121枚減少した。売り手も買い手もポジションを縮小させており、方向感を見出しにくいと判断している可能性がある。

円建て金相場は上昇したが、週末に大きく値を下げている。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券  

今週のゴールド:1,850ドルを維持できるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と資金フロー
・米ドルの方向性
・円建て金相場は再度下値模索へ

金相場は戻りを試す展開だったが、上値は抑えられている。1,875ドルを明確に超えると状況が改善する可能性が高かっただけに、この水準で打たれたのはあまり良い動きとは言えない。テクニカル的には1,875ドルのレジスタンスと1,850ドルのサポートという、きわめて狭いレンジでの方向性を探る展開にあり、短期的にはこれらを抜けたほうに動きそうである。

金市場への関心も徐々に低下しており、投資家の買いも細り始めている。現状では米ドル売りもやや沈静化していることもあり、通貨の面からも押し上げが期待しづらくなっている。

このような状況になると、大きく売られることはないにしても、上値は明らかに重くなってくるだろう。株価が調整した場合でも、米ドルが上昇すると、安全資産として金が買われる動きは限定的になりそうである。したがって、短期的には1,800ドル近くまでの下げも念頭に置いておくべきであろう。

もっとも、下げた場合でも、1,765ドル前後に長期トレンドが控えており、ここがきわめて重要なサポートとして機能するだろう。

また、これまでも繰り返してきたように、安値で金を手放すことはやってはいけない投資行動の1つであろう。過去の統計から金相場の季節性を確認すると、1月から2月に向けて金価格は上向き、高値を付けるケースが多く見られる。2020年から2021年はコロナ禍の影響でやや異例の市場環境にあるが、基本的にはこのようなシーズナリティから値動きが大きく外れることはないと私は考えている。

一方、1月20日に米大統領に就任したバイデン氏が掲げる経済対策は、将来の金相場の支援材料になるとの考えも変わらない。金は、巨額の景気刺激策により引き起こされる可能性のあるインフレや通貨下落のリスクヘッジとみられている。長期的なスパンにはなるが、この見方を維持しておく。

繰り返し述べている通り、米消費者物価指数(CPI)が1.5%以下の時に金に投資しておくと、2年後には20%のリターンを得ることができていたのが過去の経験則である。このようなデータも、今の水準より下を売り込んでもあまり意味がないことを示している。

また、これから中国の春節の時期になる。しかし、2021年はコロナ禍の影響もあり、例年のような金買いは入りづらいだろう。それでも、一定の買いは入ると思われ、これが間接的な金相場の下支え要因になるだろう。

過去の経験則から見れば、ここから下げる動きは異例とも言える。これらから2月にかけて上昇するとの見方を維持しておきたい。

金についてはできるだけ長期的な目線で投資することが肝要である。時間・資金の分散を図り、押し目でしっかりと買っていくことが肝要である。

円建て金相場も下落する可能性があるが、基本は押し目買い戦略と考えている。

米ドルが2月はやや強くなるとみているが、これはシーズナリティの面からの見方である。2月は比較的米ドル高になりやすい傾向がある。もしそうなれば、ドル建て金相場は上がりづらくなるだろう。一方で、米ドル/円は円安になるため、円建て金相場の下げは限定的になる可能性がある。このような面もあり、円建て金相場は下げにくくなるだろう。

ちなみに、前回コラムでも述べたように、筆者は今後3年程度は円安になるのではないかと考えている。これは米ドル/円のサイクルと米金利の将来の動向に基づくものである。

円安になれば、円建て金相場はその分だけ支えられるだろう。米ドル高と金相場の上昇が共存する可能性はゼロではない。なぜなら、実質金利が低下すれば、金相場は金利水準が上昇したとしても、上昇してよいからである。むしろ、上昇すべきということになる。

インフレ率の上昇ペースが名目金利よりも早く、大きければ、このようなことが起きると考えられる。6月まで米CPIは3.5%程度まで上昇する可能性がある。ここまで見ておけば、金相場の下落はむしろ想定しづらいと思われる。

円建て金相場については、目先は6,200円でサポートされるかがポイントになる。ここで支えられれば、再び反発しやすいだろう。無論、これを割り込んでも、6,100円、6,000円にはサポートがある。ここまで下げても大丈夫なように、資金管理を行ったうえで、分散しながら買い下がっていけばよいだろう。

私は40年間の金利低下局面は2020年で終了したと考えている。今後はインフレの時代に転換するだろう。これは2040年までは続くと考えている。それまでに金相場も高値を目指す展開になると思われる。無論、2020年8月の高値を超えて、さらに大台を狙う展開になる可能性があるものと考えている。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸した。先週末の急落の流れを引き継ぐことなく、上昇トレンドをきれいに支持して値を上げている。1月21日には一時1,151.50ドルまで上昇する場面があるなど、堅調な動きもみられた。引けは1,098.50ドルと節目の1,100ドルを割り込んだものの、上昇トレンドは維持して週の取引を終えた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、1月19日時点で2万7886枚となり、前週から427枚増加した。買いポジションが883枚減少し、売りポジションも1,310枚減少した。売り手と買い手が両者ともポジションを縮小させる動きは前週と同じであり、あまり方向感を見出せていない可能性がある。

プラチナ相場は今のところ、特段の材料が見当たらない状況である。上値を試す動きは続いているが、なかなか1,100ドル台を維持できずにいる。とはいえ、上昇トレンドは維持されており、相場も崩れていない。

したがって、このまま1,100ドル前後を下値に水準を切り上げることができれば、状況は徐々にポジティブになっていくだろう。プラチナ相場は長い低迷の時期を経て、徐々に水準を切り上げてきている。いまだに金価格との差は大きいが、それを埋める動きになりつつある。

プラチナのファンダメンタルズ面については、燃料電池自動車(FCV)などへの新規需要の増加など期待できる分野がある。これは、プラチナ市場にとってきわめて重要な需要サイドの材料である。

このようなパラダイムシフトが起きると、その対象銘柄に資金が入りやすくなる。その結果、金に対する割安感は徐々に払しょくされ、いずれ投資家の資金がプラチナに入ることで、水準を大きく切り上げるときが来るだろう。そうなる前に、仕込んでおくことが2021年のプラチナ相場では肝要であろう。

円建てプラチナ相場も高値圏でのもみ合いである。今は3,700円と3,800円の間での取引になっており、これを抜けたほうに動きやすいと言える。3,800円を明確に超えていけば、上昇に勢いがつくだろう。もっとも、下げても3,600円は固そうである。

押し目買いの機会をうかがいつつも、3,800円を超えて上昇した場合には、早めにその動きについていくことが肝要である。

米ドル高になればドル建てプラチナ相場も下げやすくなるが、円安が下値を支えるだろう。無論、押し目の場面では、その機会を逃さずに徐々に買いポジションを積み上げておきたいところである。押し目は最も下げたとしても3,400円まで見ておけば十分であろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券  

シルバー:反発の展開

シルバーは反発した。1月18日には一時24.17ドルまで急落する場面もあったが、辛うじて上昇トレンドを維持し、その後は反発した。1月21日には26.04ドルまで上昇する場面もあったが、そこでは打たれ、週末(1月22日)は25.40ドルとやや下げて取引を終えた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、1月19日時点で5万2002枚となり、前週から790枚減少した。買いポジションが3,896枚減少し、売りポジションも3,106枚減少した。売り手と買い手が両者ともポジションを減らす状況は前週と同じであり、投機筋は相場の方向性を見極めようとしているように見える。

銀相場も金やプラチナと同様に、上値を試すものの、追い切れずに打たれる展開にある。銀相場に関しては、24.75ドルと26ドルのレンジにあり、これをどちらに抜けるかで目先の動きが決まるだろう。

このレンジを下に抜けると相応の下げになりそうな状況であり、注意が必要であろう。レンジを下抜けした場合には、22.50ドルまでの下げも想定される。その場合には、金相場も相応に下げているだろう。引き続き、金相場の動向にも注目しながら対処することが肝要である。

銀相場の魅力は、動き出すと大きく変動する点である。したがって、収益機会も少なくないが、逆に損失を発生させる可能性も高まることになる。2月は米ドル高になりやすい傾向がある点も、銀相場にはあまり良い材料ではない。このような状況から、目先は慎重に見ておくようにしたい。

逆に26ドルを明確に上抜けると、上昇しやすくなるだろう。この値動きが起きる材料を想定するのはやや難しいが、そうなる可能性も常に念頭に置きつつ、中立に見ておくことが肝要であろう。無論、22.50ドルなどの安値まで下げるようだと、そこは買い場になるものと考えている。

円建て銀相場も上値が重くなっている。戻りを試したものの、88円が重かったもようであり、再び重要なサポートである86円まで下げている。今のところ、この水準で下支えされているものの、これを下回ると84円から82円までの調整となるだろう。

まずは86円で下値を固めることができるかを確認したい。そのうえで、買いを検討することが重要であろう。今は下値が固まるのを待ってから投資を考えたほうが、様々なストレスもないだろう。一方、88円を明確に超え、さらに上値を試すような動きになれば、その動きについていく形で買いを入れていくとよいだろう。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券