将来に向けて「なんとなく貯金」をしている人は多いかもしれません。しかし低金利が続き、貯金だけでお金を増やすのは難しいのではないでしょうか。また、コロナ禍や自然災害などの影響で先行きの不透明感が強まっています。何が起こるか分からない世の中において、様々なリスクに備えるためにも「投資」という選択肢を考えてみませんか。今回は、マネックス証券 チーフ・アナリストの大槻奈那(以下、大槻)に、投資の考え方や初心者向けの資産運用について聞きました。

「預貯金は安心」という古い時代の呪縛を手放そう

――なんとなく預貯金や節約をしているという方が多いですが、生涯の資産形成として、投資という選択肢もあります。しかし、投資に関しては「お金がある程度貯まってから始めるもの」などと考えてしまい、躊ちょする方も多いかもしれません。投資についてどういった考えを持つべきなのでしょうか。

大槻:足元はデフレが進んでいますが、日本経済は緩やかなインフレで、モノの値段が上がっています。今、大手銀行の普通預金金利は年0.001%、定期貯金でも0.01%です。預金をしているとお金が貯まっていくイメージがあるかもしれませんが、モノの価値は上がっているので、確実に預金は目減りをしているということになります。

ですので、まずは「預貯金しているから安心」ではなく、「預貯金だけでは不十分かもしれない」という感覚を身につけることが大切だと思います。

【図表】預金と積立のシミュレーション
出所:マネックス証券作成 
※年利3%で複利計算。試算結果はあくまでもシミュレーションであり、将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。

お金を増やすための選択肢の1つとして検討したいのが投資です。上のグラフをご覧ください。青い線は25歳から月3万円ずつ積立投資をしていた人です。65歳には4,000万円を超えるお金が貯まっている計算になります。

一方、緑色の線は25歳から月3万円を預金した場合で、65歳時点での預金額は1,500万円弱です。双方を比べると、およそ3倍という非常に大きな差がついてしまっています。

45歳から同額で積立投資を始めた場合(赤色の線)では、65歳時点の預金額は1,250万円くらいです。できるだけ早い時期から投資をはじめると有利であることが分かります。

――投資を始めるための元手となる資金は、どのように考えればよいでしょうか。

元手の資金については、「お金を貯めてから始めよう」と考えていると時間はどんどん過ぎていきます。まずは少額で投資をはじめ、やりながら考えていくのがよいと思います。例えば1日1杯のコーヒー代金を、投資に充ててみてはいかがでしょうか。金融機関によっては、投資信託(投信)の積立なら月々100円からはじめることもできます。投信は、ファンドマネージャーと呼ばれる投資のプロが運用してくれるので、値動きや株を分析するなどの手間や時間をかけずに運用することができます。長期で運用することで一時的な株価の乱高下や大きな景気変動の影響を受けにくくなります。

――現状では様々な働き方がありますが、働き方に合った投資スタイルがあれば教えてください。

毎月固定の収入がある場合と収入が変動する場合、全体のうちのどのぐらいの割合を投資に振り向けることができるのか、どのくらいリスクをとれるのかによって考え方は分かれると思います。固定収入があり、ある程度のリスクをとることができ、積極的に増やしたいと考えている人は、リスク・リターンともに高めの株式投資に目を向けてもいいと思います。
収入の変動幅が大きい人は、まずは少額で始められる投信の積立などの投資スタイルを選ぶのがよいのではないでしょうか。

柔軟な働き方で時間的に余裕がある方は、その時間をぜひ投資やお金について学ぶことに使ってみてください。勉強しながら、少しずつリスク許容度が高い投資を検討することも可能になると思います。

すぐに現金化したいお金と投資に使うお金は分けて考える

――初心者にお勧めの運用方法を教えてください。

大槻:まず、「すぐに使う予定がある必要資金」と、「投資に使う資金」を分けて考えましょう。仮に今年の夏に旅行を予定しているとしましょう。投資のお金をその旅費に回すとなると、その時点で保有している株式を売却しなければいけません。その時に株価が下がっていると損失を被ることになります。

ですから、投資は中長期的な目標に向けて運用していくのがよいでしょう。例えば子育てをされている方であれば、お子さんが幼いうちから積立投資をして高校や大学進学などの資金を準備しておくことなどに向いていると思います。

また、会社勤めの方の中には、長期的な老後資金づくりのため給料天引きで財形貯蓄をされている方が以前は多かったように思います。最近では働き方に関わらず活用できる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA」などの税制優遇される制度が整ってきています。

iDeCoは私的年金制度で、積み立てた掛金の全額(個人の属性によって掛金に上限があります)が所得控除となります。つみたてNISAは、積立投資を少額からスタートでき、投資した年から最長20年間は投資によって得られた配当金や分配金、運用益は非課税になります。どちらも節税メリットのある制度ですので、利用しない手はありません。

節税という点では、ふるさと納税もありますね。応援したい自治体に寄付をすると、所得税の還付と住民税の控除が受けられます(控除の上限は年収や家族構成などで異なります)。その地域の名産品などを返礼品としてもらえるのも魅力だと思います。

投資は災いやインフレなど、想定外の出来事へのリスクヘッジ

――コロナ禍の状況下で、投資をどのようにとらえれば良いでしょうか。

大槻:「投資は怖い」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、仕組みさえ理解できればリスクはある程度回避できます。コロナ禍のような災いやインフレに対し、リスクを分散することができるのが投資だと私は考えています。

現在、実態経済はよくありませんが、日経平均株価は好調です。これには要因があります。金融緩和が続いていること、コロナ禍は一時的なものであり、値下がりした割安株を買い時だと判断している投資家もいること、コロナ禍の中でも景気のよい業種や銘柄も世の中にはあるということです。

就労による収入が1業種の場合、ご自身の実業が不況時には影響を受けてしまいます。しかし、投資をすることにより、他業種にリスクを分散させることができダメージを軽減することができるかもしれません。

今回のコロナ禍で、私自身は、投資でリスクを分散しておいてよかったと実感しています。新しい時代において、多様な収益源を考えるという意味でも、「投資」は1つの選択肢として有効でしょう。先々まで見据えた豊かなライフプランのために、少額からでも投資を始めてみてはいかがでしょうか。

――ありがとうございました。


本インタビューは2020年12月24日に実施しました。