先週のゴールド:反落の展開

金相場は小幅下落した。米ドルの上昇や米国の追加経済対策への期待を背景に、米国債利回りが上昇したことが圧迫要因になったとみられる。

1月11日には一時1,816.53ドルと、2020年12月2日以来の水準に値を下げる場面もあった。その後も安値圏で推移した。ただし、米消費者物価指数(CPI)の上昇やバイデン次期米政権による追加経済対策でインフレが加速するとの観測が下支えになった。

また、低金利環境が維持されるとの見通しを示したパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言も下値を支える格好となった。パウエルFRB議長は利上げについて「当面ない」とし、FRBが近く国債買い入れの規模を縮小するのではないかとの臆測を打ち消した。

ただし、週末には再び下げ圧力が強まり、金相場は2週連続での下落となった。バイデン次期米大統領が1兆9000億ドル規模の追加経済対策を打ち出し、インフレに対するヘッジ資産としての魅力が高まっていた。しかし、米ドルの継続的な上昇が打ち消した格好となった。

また、ドルインデックス(ドル指数)は週間ベースで2020年10月以来の大幅な上昇となり、米ドル以外の通貨の所有者にとって金が割高な状況になった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は1月15日には1,177.63トンとなった。2020年末は1,170.74トンだったことから、わずかに増加したことになる。ただし、2021年に入ってからは1月4日に1,187.95トンに増加していたことから、その後は徐々に減少していることになる。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、1月12日時点で24万6227枚となり、前週から3万3091枚減少した。買いポジションが3万6729枚減少し、売りポジションも3,638枚減少した。これまで買いポジションを積み上げてきた投機筋が買いポジションを大きく縮小させている点は要注意と言えそうである。

円建て金相場は小幅に下落した。ドル建て金相場の下落が影響した。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:再び下値確認の動きに

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と資金フロー
・米ドルの上昇の影響
・円建て金相場は下値模索へ

前週に1,959ドルまで上昇した金相場だが、上昇の勢いは続かなかった。まだ金市場への関心が盛り上がっていないようである。また、投資家の注目度が高まっていたビットコインも高値から下げるなど、目先の高値を付けた後は冴えない値動きとなっている。

一方で、株式市場のほうは相変わらず堅調で、投資家の資金流入が続いているようである。バンク・オブ・アメリカ(BofA)が1月15日に公表した週次ファンドフローデータによると、1月13日までの1週間に268億ドルの資金が株式ファンドに流入したようである。

一方、市場ではインフレ期待が高まっているもようであり、インフレ指数連動債(TIPS)には18億ドルの資金が流入し、過去3番目の大きさだったという。株式市場では、2021年に入ってインフレ資産がデフレ資産をアウトパフォームしているようである。アウトパフォーマンスの程度は2006年以降で最大という。どうやら地合いが変わってきた可能性が高そうである。

ファンドの資金フローで注目されるのは、新興国株式に70億ドルが流入し、過去6番目の高水準になっていることである。新興国株式の動きは、将来の金利動向を見極めるうえで重要である。

例えば、新興国株式をS&P500で割ったレシオと米10年債利回りを比較すると、レシオが半年ほど先行して変動している。このレシオはすでに底打ちして上昇し始めており、将来の米金利の上昇を示唆しているように見える。

また、米国のインフレ率を予想するうえでは、原油価格の変動も参考になる。私がいつも行っている分析の中に、WTI原油の前年比と米消費者物価指数(CPI)を比較するというものがある。両者の相関関係は0.77と高いこともあり、WTI原油の動きを見ると、将来の米CPIの動きがおおむね予想できる。

それに基づくと、2021年4月から6月には、米CPIは2.5%から3.5%に上昇しそうである。こうなると、米10年債利回りは現在の1%台から上昇する可能性がある。この際に、FRB(米連邦準備制度理事会)がどのようなスタンスで市場に対峙するかが非常に興味深い。利上げもできず、市場金利の上昇を放置するのだろうか。

いずれにしても、4月から6月には株式市場にも少なからず影響が出るだろう。また、このような事態に備える意味でも、金市場への関心を持ち続けるべきであろう。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金を裏付けとする上場投資信託(ETF)の金保有高は2020年12月に2ヶ月連続で減少したようである。11月には過去最大の売りが出ていたが、12月にも売りが出たのは、株式市場が活況となり、投資資金が金から株式に移動したからであろう。

ちなみに、ETFの金保有高は11月に109トン、12月に40トン、それぞれ減少している。もっとも、金ETFへの投資は、2020年通年で過去最大の伸びを記録している。新型コロナウイルスの感染拡大初期に、投資家による金買いの動きが広がったことが背景にある。

WGCによると、金ETFが保有する金の残高は2020年1年間で876トン増加している。これは世界の年間生産量の約4分の1に相当する。年間の増加幅としては、これまでの最高記録だった2009年の646トンを大きく上回っており、以前に比べると投資家の金に対するスタンスは徐々に変わっているように思われる。ちなみに、投資家による2020年末の金ETF保有高は3751トン、金額にして約2250億ドルとなっている。

このように、投資家による金ETFの購入動向が金価格に大きな影響を与えるようになっており、現物需給の価格への影響は以前に比べるとかなり低下している。したがって、今後も投資家行動を見極めながら、金市場の動向を見ていくことになろう。

今は高値挑戦に至らなかった後だけに、まずは底値を固める展開になるだろう。当面は上値が重くなることを覚悟しておくが、シーズナリティからすれば、今の時期に金価格が安いというのは非常に興味深いと言える。投資家の行動次第とはいえ、過去の統計から金相場の季節性を確認すると、これから2月に向けて本来であれば価格は上昇しやすい傾向がある。このような点からも、安値で売り込まないことが肝要である。

また、前回コラムでも解説したように、米CPIが1.5%以下の時に金に投資しておくと、2年後には20%のリターンを得ることができていたのが過去の経験則である。米国のCPIが1.5%以下で推移する期間はそれほど長くはない。

ちなみに、直近では2020年12月の米CPIは1.4%上昇である。基準としている1.5%をわずかに下回っている。このような好機を逃さずに押し目を買っておくことが、将来に資産保全につながるだろう。現在のように、低インフレの時に金を仕込んでおくことが重要なのである。

円建て金相場も下落しているが、基本的にドル建て金価格と考え方は同じである。また、円建て金相場を考えるうえで、米ドル/円相場の動向も無視できないだろう。基本的に米ドル安の際にはドル建て金相場は上昇する。しかし、米ドル/円は下落することになり、円建て金相場は円高の分だけ上昇が抑制されることになる。

ただし、筆者は今後3年程度は円安になるのではないかと考えている。これは米ドル/円のサイクルと上記で説明した米金利の将来の動向に基づくもので、円安になれば、円建て金相場はその分だけ支えられることになる。

この点からも、円建て金相場は今後非常に面白い位置づけになるのではないかと考えている。そのうえで、目先は6,200円でサポートされるようだと、下値を固めながら再び上昇しそうである。

いずれにしても、金は押し目買いを継続しておくことが肝要である。それにより、インフレヘッジや株価の下落リスクを回避する一方、いずれキャピタルゲインも狙えると考えられる。

金相場が下押した場面では、今後も時間と資金を分散しながら、徐々に買いポジションを増やしていくようにするとよいだろう。

プラチナ:小幅続伸の展開

プラチナは小幅ながら続伸した。1月15日には一時1,121.75ドルまで上昇したものの、その後は大きく値を下げ、週末は1,073.42ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、1月12日時点で2万7459枚となり、前週から163枚減少した。買いポジションが594枚減少し、売りポジションも431枚減少した。売り手と買い手が両者ともポジションを縮小させる中、やや売りが優勢だった。ただし、相場自体は堅調さを維持しており、週末にかけての投資スタンスを見極めたいところである。

プラチナ相場は高値圏でのもみ合いとなっている。値幅も大きくなっており、徐々に次の動きを見極めるステージにあるように見える。現時点では上昇トレンドは維持されており、引き続き投資家の興味は高いと考えられる。

週末に下げたのは、株式市場が不安定になったことが背景にあるものと思われる。これまでプラチナ相場は苦しい期間が続いていたが、徐々に水準を切り上げ、節目の1,000ドルを下回らなくなってきた。その意味では、市場参加者や投資家が、プラチナに対して価値を見出そうとしているのだろうと思われる。

そのうちの1つが、やはり燃料電池車(FCV)などへの新規需要の増加期待であろう。引き続き金相場の変動にも影響を受けるものと思われるが、徐々に自立していくものと思われる。その結果、これまでのような金に対する割安感も徐々に払しょくされ、2021年は両社の価格差が縮小していくのではないかと考えている。

まずは1,000ドルを維持することが不可欠であり、そこで下値を固めることができれば、1,100ドル超えからさらに上値を切り上げていくものと思われる。引き続き2021年はプラチナ相場に注目しておきたい。

円建てプラチナ相場も足元は高値もみ合いの動きである。3,800円を明確に超えていけば、上昇に勢いがつきそうだが、その前に上昇トレンドを維持できるかを確認することになろう。3,700円から3,600円が重要なサポートレベルであり、調整した場合にこの水準を維持できれば次の展開に期待が持てるだろう。

まずはドル建てプラチナ相場の動向を見極めたうえで、下値が固まるのを待ったほうが賢明であろう。いずれにしても、材料面から今後はプラチナへの期待が高まると思われる。押し目を逃さずに徐々に買いポジションを積み上げていきたいところだ。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーは反落した。1月8日に急落した後は上値が重くなり、週を通して狭いレンジでの推移となった。週末は24.73ドルで引けている。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、1月12日時点で5万2792枚となり、前週から2,759枚減少した。買いポジションが2,872枚減少し、売りポジションも113枚減少した。売り手と買い手が両者ともポジションを減らしているが、相場の下落で買いポジションの解消が進んでいることが確認できる。

銀相場は上昇基調に乗り切れず、下げた後は狭いレンジでの推移になっている。このレンジを維持できるかが今後のポイントになるだろう。24.50ドルを下回るとこれまで維持してきた上昇トレンドが崩れ、22.50ドル前後までの調整になる可能性も指摘できる。

短期的には特段の材料がないこともあり、下支えに失敗すると相応の調整を念頭に置いておくべきであろう。特に株式市場が崩れだしたときには、銀相場もつれて下げる可能性がある。その際に金相場がサポートされるかどうかも非常に重要なポイントになる。

これまでも解説したように、環境問題への意識の高まりが銀にとっても重要な材料になる。しかし、それはある程度先の話であり、目先はすぐに好影響があるわけではないだろう。その意味でも、まずは24.50ドルでサポートされるかを確認することが先決であろう。

円建て銀相場も安値圏での推移となっている。92円から94円水準を維持できなかったことで、水準を大きく切り下げている。ひとまず86円で下支えされているものの、これを下回ると84円から82円までの調整となる可能性もある。まずは86円で下値を固めることができるかを確認することになろう。そのうえで、買いを検討するようにしたい。

86円を割り込んだ場合には、サポートを確認できるまでは慌てずに、しっかりと下値が固まるのを待つのが得策であろう。逆に92円を超えるような強気相場になれば、その流れについていくのが賢明だと思われる。銀相場は他のメタルよりも値動きが激しいため、リスク管理には十分に注意するようにしたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券