先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発した。米ドルの買い戻しや米国株高を背景に、週初は売りがやや優勢となった。トランプ米大統領は12月27日夜、総額9000億ドル規模の追加経済対策法案に署名した。同氏が主張していた世帯への現金給付増額の要求は通らず、翻意した結果、早期成立が実現した。

米国で新たな財政出動が決まったことを受け、将来的なインフレヘッジとしての側面から金が買われ、一時1,900ドルの節目を突破する場面もあった。また米議会下院は12月28日、追加経済対策に関して、世帯への現金給付額を増額する法案を賛成多数で可決した。こうした新たな財政出動への期待が高まったことも金買いを誘った。

その後も対ユーロでの米ドル安を背景に金が買われた。年内最後の取引日(12月31日)は3日続伸し、1896.48ドルで引けた。年間ベースでは25.01%上昇し、2010年以来10年ぶりの大きさだった。米ドルがユーロに対して弱含み、米ドル建てで取引される金は割安感から買われやすくなった。

12月31日に発表された米新規失業保険申請件数は 2週連続で改善し、市場予想に比べて少ない水準にとどまった。しかし、年末で市場参加者も少なく、金相場は小動きで推移した。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は12月24日の1167.53トンから、12月31日には1170.74トンに小幅に増加した。ようやく減少に歯止めがかかった格好である。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、12月21日時点で27万8196枚となり、前週から6,612枚増加した。買いポジションが9,260枚増加し、売りポジションも2,648枚増加しており、強気と弱気な見方がある中で、買いが優勢だったことが確認できる。

円建て金相場は小幅に下落した。円高が影響したと言える。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:1,900ドル超えに再挑戦

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価動向と資金フロー
・米ドル相場との関係
・円建て金相場は底固めへ

2020年の金相場は新型コロナウイルスの世界的大流行を受け、安全資産としての需要が増加した。世界的な金融緩和や大規模な財政出動の流れが強まる中、将来的なインフレ高進を見込んだ買いも加わり、8月には史上初めて2,000ドルの節目を突破した。まさに歴史的な年になった。

2021年も高値更新を見込んでいるが、それは投資家の行動次第だと考えられる。市場では、将来のインフレを見込む向きが増えている。しかし、実際にインフレを経験している投資家や市場関係者の多くは60歳以上である。その意味では、ほとんどの現役の市場関係者は真のインフレを経験したことがないことになる。

これは非常に大きなリスクであると私は考えている。著名投資家の重鎮は、将来のインフレリスクを指摘している。しかし、そうなってからでは遅い。すぐにインフレになるわけではないが、将来に備えておくべきであると考えている。

金相場は2020年末にかけて上昇基調が続いた。年明けは1,900ドル超えに再挑戦する動きになろう。また、2021年は2020年8月の高値である2,072.49ドルを超えて、史上最高値更新の動きになるかどうかに注目したいところである。

金相場は年末にかけて高値圏を維持した。節目の1,900ドルが上値になっていることから、これを上抜けると大きく上昇することになろう。今は材料不足の展開だが、値動き自体の方向性は上向きである。年初の早い段階で1,900ドルを明確に上抜いてくると、金市場への関心が再び高まり、強い相場が戻ってくる可能性は十分にある。

将来のインフレがいずれ重要視され、実際にインフレ率が高まることで金相場が上昇していくとの見方はこれまで通りで変わらない。インフレに関しては、以前も解説したデータが役に立つだろう。

米CPI(消費者物価指数)が1.5%以下の時に金に投資しておくと、2年後には20%のリターンを得ることができていたのが過去の経験則である。米国のCPIが1.5%以下で推移する期間はそれほど長くはない。したがって、今のように米CPIが1.5%を下回っている状況で、金を仕込んでおけば、相応のリターンが見込めると私は考えている。つまり、低インフレの時に金を仕込んでおくことが重要なのである。

このような視点を持って市場を見ておけば、現在の歴史的な金相場の上昇基調が一過性のものではないことが理解できるだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、2023年まで利上げを検討しないとしている。実際にインフレ率が上昇しても、すぐに利上げを実施しないとも言明している。

こうなると、実質金利が低下する可能性があり、金利そのものが上昇しても、理論的には金相場は水準が切り上がっていくことになる。FRBのインフレへの対処は遅れることになり、結果的に金相場は2027年まで上昇していくものと考えられる。

このような考えに基づけば、今後も金に対するスタンスを維持しながら、徐々にポジションを積み上げることが肝要であろう。無論、下落した場合にはしっかりと押し目買いを入れ、長期的に保有し続けるスタンスを維持することが肝要である。

今後も急落・急騰場面がみられることになろうが、それでもスタンスを変えないことが重要である。今後は株価の上昇との共存が続くことになるだろう。そのような状況でも、少なくとも2027年までは金への投資も継続することを考えたいところである。

円建て金相場は小幅に下げている。節目の6,400円を再び超えられなかったことで、再び6,200円を試す展開にある。円高が上値を抑えているが、ここで下げ止まり、ダブルボトムを形成すれば、再び上昇に転じることになろう。

もっとも、金投資については、長期的な視点で徐々に買っていくのが良いという考えは変わらない。相場展開や材料に振り回されず、長期的な視点でポジションを保有しながら、押し目が来たら追加のポジションを積み増すことを考えたい。その結果、徐々に買いポジションが積み上がっていけば、インフレヘッジや株価の下落リスクを回避できるだけでなく、いずれキャピタルゲインも狙えるだろう。

また、金投資についても、株式や投信などでも行われているような積立型の投資も非常に有効であると私は考えている。さらに、金相場が下押した場面では、時間と資金を分散しながら、徐々に買いポジションを増やしていくようにすると良いだろう。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸した。一時は1,081.50ドルまで上昇し、年初来高値を更新する動きを見せた。年末は1065.94ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、12月21日時点で2万4705枚となり、前週から371枚減少した。買いポジションが1,133枚減少し、売りポジションが762枚減少した。売り手と買い手が両者ともポジションを縮小させる中、やや売りが優勢だったことがわかる。ただし、その後は年末まで上昇基調が続いていることもあり、投機筋の直近のスタンスを再確認したいところである。

2020年のプラチナ相場は、年間で10.75%の上昇となった。金や銀に比べると上昇率は劣るものの、コロナショックで付けた3月の安値である558ドルからは93.81%も上昇し、きわめて大きな戻りを見せ、年末には2016年以来の高値水準にまで戻している。

2021年は2016年8月に付けた1,193.30ドルの高値を試す展開を想定している。1,200ドルを超える動きになれば、1,500ドルまでの上昇も狙えそうである。そのためには、これまでも繰り返し解説しているように、やはり需給面のサポートが必要である。

2021年以降は「脱炭素」、「再生可能エネルギー」、「クリーンエネルギー」などがきわめて重要かつ世界的なテーマになるだろう。これらのテーマを材料に、プラチナ需要が長期的に増加するとの見方が浸透すれば、様々な市場参加者がプラチナへの関心を高め、結果的にプラチナ相場が上がっていくだろう。

プラチナは燃料電池車(FCV)などに使用されるため、新たな需要先として注目されやすいことは、今後の相場展開を占ううえできわめて重要な材料になる。これまでは金に対して割安感が強かったものの、2021年はこの差を埋めるような値動きを想定している。

市場規模がそれほど大きくないこともあり、投資家の買いが入ると大きく値を上げることも想定される。そうなれば、他の貴金属を超える上昇率となる可能性も十分にあると考えている。2021年はプラチナ相場にも注目しておきたい。

円建てプラチナ相場も年末にかけて上昇した。3,600円まで上昇し、年初来高値の水準にまで上げている。3,600円を明確に超えると、大きく上昇する可能性が高まるものと考えられる。そのような動きになった場合には、早めに買いを検討したいところである。

また調整した場合でも、3,500円から3,400円程度で下げ止まれば、再び上値を狙えるものと思われる。材料面からも今後はプラチナへの期待が高まるものと思われる。早めにポジションを仕込むことをぜひ検討したいところである。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続伸の展開

シルバーは続伸した。12月31日には一時26.69ドルまで上昇し、年末は26.35ドルで引けた。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、12月21日時点で5万7289枚となり、前週から7,777枚増加した。買いポジションが9,784枚増加し、売りポジションも2,007枚増加した。売り手と買い手が両者ともポジションを増やしているものの、買いが優勢であり、買い越し幅は急激に拡大している。投機筋の強気なスタンスがうかがえる。

2020年の銀相場は47.83%上昇し、主要資産の中で石炭に続いて2番目に高い上昇率となった。大きく上昇したナスダック総合指数の43.64%を超える上昇率となるなど、きわめて大きな上昇だったと言える。

2021年も同様に高いボラティリティの中、高値を狙う動きになると考えている。まずは、2020年8月に付けた29.83ドルを超えるかどうかに注視しておきたい。これを超えると、節目の30ドルを超え、2013年以来の高値水準を試すことになる。そうなると、節目の35ドル、40ドルなどが視野に入るだろう。最終的には2011年4月につけた高値の49.51ドルが視野に入ってくるだろう。

ここまですぐに上昇するとは考えていないが、今後インフレ率の高まりが意識されるようだと、過去の高値を意識する動きが強まるだろう。2021年も引き続き銀相場に注目しておきたいところである。

相場が上昇するには、相応の材料が不可欠であることは言うまでもない。銀に関しては、これまでも解説したように、環境問題への意識の高まりが材料になろう。特に「再生可能エネルギー」といったキーワードは、現在の市場において意識されやすいテーマである。

銀の場合には太陽光発電関連が材料になることはすでに解説したとおりである。銀現物需要に占める太陽光発電関連の需要は徐々に増加しており、今後は投資家がこの材料に関心を向けるかがポイントになるだろう。市場の関心が高まる前に、しっかりと仕込んでおくことをぜひ検討したいところである。

円建て銀相場も堅調である。前週の高値である92円を超えることはできなかったものの、上昇基調が維持されている。下落した場合でも88円で下げ止まれば、再び反発するものと考えられる。また、92円を超えるようだと、大きく上昇する可能性がある。下値が切り上がっており、基調は上向きである。その意味では、早めに徐々にポジションを積み上げたいところである。

繰り返し述べているように、銀相場は他のメタルよりも値動きが激しいため、リスク管理には十分に注意するようにしたい。そのうえで、2021年も銀市場に大いに注目したいところである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券