先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落しました。12月21日には、米与野党が9000億ドルの追加経済対策で合意に達したとの報道を受けて、一時1906.46ドルまで上昇する場面もありました。しかし、新型コロナウイルスの変異種への警戒感から金融市場が動揺し、投資家らが米ドルを買い求めたことが上値を押さえました。

感染率の高い新型コロナウイルスの変異種への警戒感が英ポンドやユーロを押し下げ、ドルインデックス(ドル指数)が数年ぶりの低水準から1週間超ぶりの高水準に跳ね上がったことが金相場の重石になりました。

その後も新型コロナウイルスの変異種に対する警戒感から、安全資産である米ドルを買う動きが強まり、米ドル相場が上昇したことが影響し、金相場の上値は抑えられました。

一方、11月の米個人消費支出(PCE)が7ヶ月ぶりにマイナスに転じ、米新規失業保険申請件数も80万件超と高水準にとどまり、米ドルは底堅く推移しました。しかし、トランプ米大統領が議会が可決した総額9000億ドル規模の追加経済対策法案について、「現金給付額が少なすぎる」との不満を表明したことが材料視され、下げ渋りました。

トランプ米大統領が署名を拒否した場合でも、議会が再可決すれば同法案は成立するため、将来的なインフレ高進を見込んだ金買いが再燃しました。

その後は、クリスマスを控えて薄商いとなったものの、米国の景気刺激策への楽観的な見方が維持されたほか、英国とEUの貿易交渉の妥結を受け、米ドルが下落したことが金の下値を支えました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は12月18日の1167.82トンから、12月24日には1167.53トンに小幅に減少しました。ただし、減少が止まりつつある様子がうかがえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋のポジションは、クリスマス休暇で公表されていません。

円建て金相場も小幅に下落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:横ばいからの次の動きを確認する

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価上昇と資金フロー
・米ドル相場との関係
・円建て金相場は底固めへ

金相場は横ばいで推移しています。節目の1,900ドルを試すものの、これを超えられずに上値を打たれています。その結果、1,875ドルを挟んだ水準で横ばいにて推移しています。

私はこれまで長きにわたって金相場を見てきていますが、金相場の場合に75ドルという水準がポイントになることが多いように思います。普通であれば、50ドルや100ドル台が意識されやすいですが、金相場の場合には75ドルという数値が節目になることが多いように感じます。ピンと来ないかもしれませんが、このような点を意識したうえで、金相場の節目のポイントを認識しておくと、気づくこともあるでしょう。

さて、金相場は米追加経済対策法案の議会可決を主な支援材料として、6週間ぶり高値を付ける場面もありましたが、この水準は維持できませんでした。まだ上値を買う投資家は少ないようです。

しかし、金については、やはり長期的な視点で見るようにしたいと考えています。米追加経済対策やFRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和策もあり、いずれインフレ懸念が高まり、金相場は上値を試していくと考えています。

ただし、市場では2021年も米ドル相場が下落し、金融緩和政策が維持されるとの見通しが大勢を占めているようです。株高予想も同様です。このように、市場の予想が一方向に傾いているときは要注意であると考えています。

金相場は過去2回の長期的な上昇場面で、12年間上昇しました。私はこれを「12年サイクル」と認識しています。ちなみに、今回の金相場の上昇基調の起点は2015年12月です。したがって、今回の上昇サイクルでは、金相場は2027年から2028年ごろまで上昇する可能性があるとみています。

水準に関しては、現在の価格の3倍から5倍になるポテンシャルがあると考えています。もちろん、このような展開になる保証はどこにもありません。しかし、私はこのサイクルは非常に信頼性が高いと判断しています。このサイクルを重視するのであれば、そのような上昇率になる可能性は十分にあると考えており、取り組んでみる価値はあるとみています。

したがって、今は安易に売ることをせず、じっくりと取り組むのが良いでしょう。金相場が下げに転じた場合でも、1,800ドルで下げ止まれば、基調は維持されると判断できそうです。この水準まで下げた時は、押し目買いのチャンスになりそうです。そのうえで、金が持つ株式投資のリスクヘッジとインフレヘッジの2つの役割を無駄にせず、資産を守るために金をしっかりと保有しておきたいところです。

短期的に注意しておきたいのは、株価が調整した場合に、金相場が売り込まれるのか、逆に買いが入るのかです。どちらの可能性もありますので、今は安易な予想はせず、まずは押し目買いの機会を待ちたいと考えています。

2021年のゴールド相場の見通し

2020年の金相場は12月18日までで23.6%も上昇しています。金相場の歴史の中でも非常に大きな上昇率を見せた年となりました。2021年はどのような相場になるのでしょうか。2020年の反動的な動きがみられる可能性もありそうですが、ひとまず現時点では上昇基調は続くとみておきます。

そのうえで、様々な材料で変動する動きを確認しつつも、長期的な上昇を見込んでおきたいと考えています。今後も米国の新政権の動向や米中貿易戦争、中東情勢の不透明感、さらに新型コロナウイルスの感染拡大などの材料が気になるところでしょう。また、今は想像もつかないような材料が飛び出すこともあるかもしれません。

しかし、そのたびに一喜一憂しても仕方がありません。これは金投資だけでなく、あらゆる投資においても同じことが言えます。景気は循環し、それに先んじて株価は変動し、コモディティ価格もそれらの影響を受けるでしょう。将来を予想しながら投資戦略を練ることは重要な作業ですが、単年度ベースでの予想はほとんどのケースで外れるように思います。

しかし、長期的なサイクルはそれほど大きく外れることはないでしょう。上述のように、2027年まで金相場が上昇する可能性があるとすれば、あと6年間も上昇相場が続くことになります。各国の財政出動や中央銀行による金融緩和策が少なくともあと数年間続くのであれば、目先の上下の変動を気にせず、長期的な視点で見ていきたいところです。

円建て金相場も小幅に下げています。節目の6,400円を超えられずに調整しており、まずは6,200円で下げ止まるかを確認することになるでしょう。

もっとも、金投資については、長期的な視点で徐々に買っていくのがよいと考えています。長期的な視点でポジションを保有しながら、押し目が来たら追加のポジションを積み増すことで、徐々に買いポジションの量を増やしていくと良いでしょう。

株式投資で行われているような積立型の投資も非常に有効であると私は考えています。そのうえで、株式を買うときに金も買うことが肝要です。

株式と同額の金を買うのは多すぎると考える場合は、少なくとも半分の金額を買うようにして、資産ポートフォリオの変動を抑制するようにしたほうが良いでしょう。

このような押し目買いをするために、現金を保有しておくことです。そうすれば、安心して取り組むことができます。

私は常々現金を3割持つことを勧めています。多すぎると思えば、2割でもよいでしょう。そうしておくことで、2020年の11月のときのように、市場が投げ売りしているときに買うことができます。金相場が下押した場面では、時間と資金を分散しながら、徐々に買いポジションを増やしていきたいところです。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。週初に968.52ドルと、一時節目の1,000ドルを割り込む場面もありました。しかし、その後は徐々に下値を切り上げ、週末は1,023.52ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋のポジションは、クリスマス休暇で公表されていません。

プラチナ相場は節目の1,000ドルを一時割り込みましたが、再び回復しており、1,000ドル以下では買いが入っているように感じられます。もちろん、金相場が堅調に推移していることも、下値を支える動きにつながっているように思われます。

さらに、これまでの本欄で解説してきたように、2021年以降の世界的なテーマとして「脱炭素」、「再生可能エネルギー」、「クリーンエネルギー」などが、きわめて重要になりそうです。これらのテーマを材料に、プラチナ需要が長期的に増えるとの期待が高まる可能性があります。

繰り返すように、プラチナは燃料電池車(FCV)などに使用されるため、新たな需要先として注目されやすいでしょう。これまでの主要需要先のディーゼル車の自動車触媒向けは期待しづらいと言えます。市場参加者がこれらの材料に目を向けることで、視点が変わると2021年以降のプラチナ相場は想像以上の上昇につながる可能性もありそうです。

2020年のプラチナ相場は12月18日までに6.3%上昇しましたが、同じ貴金属の金の23.6%、銀の44.9%、さらに同じ白金族系メタルのパラジウムの21.0%と比較すると、上昇率はかなり低いと言えます。

そのため、2021年はこれらの上昇率に追いつくかのように大きな上昇になるのではないかとの期待もあるようです。そのようになるには、投資家の買いが入ることが不可欠でしょう。

最近は投資マネーがプラチナ市場にも入り始めているとの指摘があります。この動きが持続的なものになれば、他の貴金属のような高い上昇率を達成する可能性も高まりそうです。

円建てプラチナ相場も反落しました。一時3,400円割れ目前まで下げましたが、辛うじて維持して反発し、3,500円を回復して引けています。今は3,600円が重くなっていますので、これを上抜けると地合いが大きく好転することになりそうです。そのような動きになった場合には、その流れに乗って買いを入れていくと良さそうです。

また、再び3,400円まで押した場合でも、そこで支えられれば2番底を確認することにより、押し目買いを検討できるでしょう。いずれにしても、上記のように新たな材料が相場を押し上げる可能性が高まっています。金とともにプラチナにも注目しておきたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅に続伸しました。12月21日には一時27.38ドルまで急伸する場面がありました。しかし、その後は大きく反落するなど、激しい値動きとなりました。週末は25.85ドルと小幅な上昇となりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、クリスマス休暇で公表されていません。

銀も次の展開をうかがう状況にあると考えられます。今は下値が切り上がり、短期的な上昇基調が維持されている状況です。そのため、26ドルを超えてくると上昇に勢いがつき、7月後半の高値である29ドル台を試し、さらに節目の30ドルを超える可能性も出てくるでしょう。

将来的な銀相場の上昇を後押しするのは、やはり「環境問題」や「再生可能エネルギー」などの新しいテーマでしょう。銀の場合には太陽光発電関連が材料になる可能性があることは、本欄で何度も解説したとおりです。投資家がこのようなファンダメンタルズ面にも目を向け、買いを入れてくるようですと、大相場に発展する可能性もあるでしょう。

2020年の銀相場は12月18日までに44.9%と大きく上昇し、主要資産の中で石炭に続いて2番目に高い上昇率となりました。まさに投機的な上昇を見せることがある銀相場の面目躍如と言えそうです。このような動きになるからこそ、投機筋も常にウォッチし、値動きを利用して投資するのだろうと思います。

銀のボラティリティの高さは相変わらずですが、そこには収益性があるとも言えます。2021年も同じように高いボラティリティの中で、激しく変動するでしょう。しかし、トレンドが出た時の動きは非常に興味深いものがあります。2021年も銀相場に注目しておきたいところです。

円建て銀相場も一時急伸し、92円まで値を上げました。しかし、その後は調整し、86円をサポートしたものの、戻りは88円で抑えられています。今後は88円を超え、これをサポートするようになれば、上昇基調に向かいやすくなりそうです。まずはそのような動きになるかを確認したいところです。

もっとも、前回コラムでも指摘したように、今は86円あたりが押し目買いのポイントです。押し目があれば、買いを入れてみたいところです。そのうえで、88円を明確に超えてくれば、その流れに乗って買いを積み上げるのも良いでしょう。

繰り返すように、銀相場は他のメタルよりも値動きが激しいため、リスク管理には十分に注意し、ポジションは金やプラチナに比べて少なめにしておきたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券