先週のゴールド:上昇の展開

金相場は上昇し、1ヶ月ぶりの高値を付けました。米追加経済対策の協議進展への期待などを受けて買いが膨らみました。新型コロナワクチンの接種が米国内で12月14日から始まった一方で、新型コロナウイルスによる死者数の増加に歯止めがかからない状況も金相場には支援材料となったようです。

一方で、米連邦公開市場委員会(FOMC)の内容も金相場を支える見方につながりました。米連邦準備制度理事会(FRB)が米経済への資金供給を増やし、政策金利を低く維持する方針を表明したことを受けて米ドルが値下がりし、金相場を押し上げました。

12月17日には一時1ヶ月ぶり高値の1895.81ドルを付けました。米政府機関の一部閉鎖を回避するための期限が12月18日に迫る中、与野党は9000億ドル規模の追加経済対策案の合意に向けて協議したと報じられ、米ドルが数年ぶりの安値に下落したことも金相場を押し上げました。

事実上のゼロ金利が続く中、FRBは米景気回復が確実になるまで金融市場への資金供給を維持する方針を表明したことも、金相場を支えました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は12月11日の1175.99トンから、12月18日には1167.82トンに減少しました。小幅ではありますが、投資家が引き続き金を売却していることが確認できます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の12月15日時点のポジションは27万1584枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,364枚拡大しました。買いポジションが2,339枚増加し、売りポジションが25枚減少しました。新規のロングが増える一方で売りが出ておらず、投機家は強気な姿勢を維持していると言えます。

円建て金相場も反発しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:1,880ドルを明確に超えるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価上昇と資金フロー
・米ドル安との関係
・円建て金相場は反発へ

金相場はようやく上げてきました。1ヶ月ぶりの高値を付けたことで、再び投資家の関心が金に向かうかどうかに注目しています。ただし、株価が依然として堅調なだけに、金市場に投資マネーがすぐに戻ってくるとは考えにくいでしょう。

それでも、金相場は徐々に値を回復しており、一部の投資家や投機家は買い始めていると言えます。逆に、今よりも安い水準で金を売ったのは、現在株式を積極的に買っている投資家たちでしょう。

前回コラムでも解説したように、投資家は11月に金関連ETFを大量に売却しました。自らの売りが、金相場の水準を押し下げたわけです。このような一方通行のマネーフローが確認されたときには、その後の動きにぜひ注目しておきたいところです。「その後何が起きているか」を見ておけば、今後の投資判断の参考になるでしょう。他人の投資行動を参考にすることによって、学べることもあると思います。

金相場はこれまでなかなか上値追いにはなりませんでした。また、ドルインデックス(ドル指数)が数年ぶりの低水準で推移していても、ほとんど材料視されませんでした。その一方で、金相場が上がってくると、財政出動やFRBの政策が上昇理由として取り上げられました。しかし、その状況はすでにかなり前から起きていたと私は見ています。

米国で初の新型コロナワクチンの供給が加速しているとの報道を受け、感染拡大の潮目が変わり始めるとの期待感が浮上しています。これが株式市場のセンチメントを押し上げていますが、それでも金相場が上がるのは説明がつきません。しかし、相場とはそういうものなのかもしれません。

投資家が散々売った後に戻り始める、といったことは、相場ではよくあることです。指摘してきたように、これまでの投資フローを理由に下げていたときに、しっかり買っておけば、後で上昇することがあると思います。

今回のFOMCではハト派的な姿勢が示されました。今はとてもではありませんが、出口戦略などを語ることができるような状況ではありません。とにかく、株価を支える必要があると考えられます。少なくとも、パウエルFRB議長からは、利上げや量的緩和策の縮小などの発言は当面出てこないものと思われます。無論、このような中央銀行の姿勢は、株高と金相場を支えるでしょう。

一方で、米バイオ医薬品企業モデルナの新型コロナワクチンが有効性や安全性に問題がないとして、米食品医薬品局(FDA)から緊急使用の承認を得られたことは、金相場の上値を抑える材料になりやすいでしょう。とは言え、このような材料は、所詮は目先のものです。長期投資家はあまり気にする必要がないでしょう。

私自身は、金は2027年まで上昇すると見ています。現在の水準の3倍から5倍になるポテンシャルを持っていると考えています。したがって、長期目線を失わずに、じっくりと取り組むのがよいと考えています。

円建て金相場も上昇しています。目先はやや円高基調ですが、これは米ドル安の裏返しでもあります。ドル建て金相場が上昇していますので、あまり気にしなくてもよいでしょう。

前回コラムで指摘していた6,200円で下げ止まり、反発してきました。この水準での押し目買いがよいタイミングでした。これで直近高値の6,300円をより明確に超えてくると、上昇に勢いがつきそうです。そうなると、6,400円、さらに6,600円と水準を切り上げていきそうです。目先はむしろ、株価が調整したときのほうが、換金売りで下げやすいかもしれません。そのような動きに注意しましょう。

いずれにしても、長期的な視点でポジションを保有しながら、追加のポジションを積み増しするタイミングを常に考えておきたいところです。そして、急落したタイミングを逃さずに買い下がっていくことで、保有コストを下げることも重要です。

長期的に保有する際には、株式であれ金であれ、この方法はきわめて有効です。そのためには、現金を保有しておくことです。そうすれば、安心して取り組むことができます。

私は常々現金を3割持つことを勧めています。多すぎると思えば、2割でもよいでしょう。そうしておくことで、2020年の11月のときのように、市場が投げ売りしているときに買うことができます。金相場が下押した場面では、時間と資金を分散しながら、徐々に買いポジションを増やしていきたいところです。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。先週のもみ合いから一転して値を上げました。12月17日には一時1058.30ドルの高値を付けました。週末は1036.06ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の12月15日時点のポジションは2万5076枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が574枚拡大しました。買いポジションが625枚増加し、売りポジションが51枚増加しました。投機家はわずかではありますが、買い姿勢にあることが確認できます。

プラチナ相場は節目の1,000ドルを固めつつあるように見えます。金相場の上昇に連れる形で堅調さを保っています。下値も切り上がっており、上昇に向かい始めたようにも見えます。

これまでも何度が上値を試しては水準を切り下げる展開になっていましたが、今回の850ドルからの上昇相場はさすがに本物のようにも見えます。この動きが続き、1,100ドルを超えるような展開になれば、相場としては上向き基調が強まりそうです。

そのような動きになるには、市場参加者が強気になり、買う必要があります。彼らが買いたくなるような材料としては、これまで解説してきたような「脱炭素」、「再生可能エネルギー」、「クリーンエネルギー」などの長期的なテーマが挙げられるのではないかと考えられます。

これらのテーマは、最近では連日のようにマスコミで取り上げられており、これから期待できる分野でもあります。その中でも、プラチナは燃料電池車(FCV)などに使用されるため、新たな需要先として注目されやすくなっています。

需要が増えることは、これまでプラチナ市場がもっとも必要としていたものでしょう。従来の主要な需要先である欧州などで主流のディーゼル車の自動車触媒向けは、今後は先細りになるでしょう。また、ガソリン車も含め、化石燃料などを自動車の燃料に使う時代はいずれ過去のものになりそうです。

欧州自動車工業会(ACEA)が公表した11月のEUの新車販売台数は前年同月比12.0%減の89万7692台となり、2ヶ月連続でマイナスとなっています。EUの一部加盟国が新型コロナウイルス封じ込めの制限措置を再び強化したことが響いたようですが、基本的に販売が増えづらい状況にあることは確かでしょう。これで1-11月の累計販売台数は、前年同期比25.5%減の891万1131台となりました。厳しい状況が続いていると言えます。

このような状況でもあり、今は将来を見据えて、新しい需要に目を向けるようにしたいところです。その上で、市場参加者の関心が高まるのを待ちながらも、先んじて少しでもプラチナを保有することを考えたいところです。

金価格に比べて割安というのは、理論的にはあまり説得力がなく、市場もそれだけでは動きません。やはり雰囲気やテーマなどが重要な要素でしょう。これらの点も踏まえて、プラチナ市場にはこれまで以上に注目しておきたいところです。

円建てプラチナ相場も堅調に推移しています。3,500円を挟んだ水準でのもみ合いから上に抜けてきました。これで3,600円を明確に超えてくると、新たなステージに入ることになりそうです。2,900円でダブルボトムを形成し、上昇基調に乗ったあと、初めての押し目となっていますが、これをこなせば次の上昇につながる可能性がありそうです。

3,600円を超える場合には、その動きに素直についていくのがよいでしょう。また、下げた場合でも3,500円で下げ止まれば、それを狙って買いを入れていきたいところです。プラチナに関しても、少しずつ買いを入れていくようにしたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反発の展開

シルバーは反発しました。金相場の上昇に連れる形で値を上げました。11月9日の高値25.98ドルを超え、12月18日には26.12ドルまで上昇する場面がありました。週末は25.76ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の12月15日時点のポジションは4万9512枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,136枚拡大しました。買いポジションが1379枚増加し、売りポジションが243枚増加しました。投機筋は新規買いを積み上げており、買い姿勢のほうが強いと言えます。

銀も金やプラチナと同様に堅調に推移しています。高値を上抜ける展開になっており、徐々に投資家の興味が戻ってきたように見えます。こうなると、投機的な動きをしやすい銀相場にぜひ注目しておきたいところです。

目先は短期間での上昇でテクニカル的に買われすぎ感もあると言えますので、注意が必要です。しかし、本当に強い相場になった場合には、そのような過熱感を吹き飛ばして上昇することも少なくありません。

したがって、当面は現在の堅調相場が続くのかどうかに注目したいと思います。過熱感から手仕舞い売りが出ると、直近高値とほぼ同値ですので、ダブルトップとなり、下げる可能性もありますので、注意しておきたいところです。

もっとも、銀市場に関してもファンダメンタルズ面で新しい動きに注目が集まるときが来るでしょう。銀市場についても、今後のテーマは「環境問題」や「再生可能エネルギー」となりそうです。なかでも、銀の場合には太陽光発電関連が材料になります。

今後は調整して下押しした場合でも、24ドル台で下げ止まれば、そこが格好の押し目場面になりそうです。

円建て銀相場も急伸しました。前週は超えることができず、下げるきっかけとなった水準である84円を今回は超えてきました。これで相場に勢いがつき、88円まで上げてきました。この3ヶ月間のうち、88円に達したのは、今回で3回目です。

これを上抜けるかどうかが、きわめて重要なポイントになりそうです。上抜けた場合には、相応に強い相場になりそうです。その場合には、その動きについていくのがよさそうです。

また、押し目場面では、86円から85円あたりを狙っておきたいところです。すでに堅調な相場展開になっているとすれば、押し目を逃さないようにしたいと思います。

ただし、繰り返すように、銀相場は他のメタルよりも値動きが激しい面がありますので、リスク管理には注意しておきたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券