先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発しました。11月30日には一時5ヶ月ぶり安値に下落しました。この結果、11月は月間としては4年ぶりの大幅な下落率を記録しました。

開発中の新型コロナワクチンが早期に実用化されて景気が回復するだろうとの楽観的な見方から、安全資産としての金の投資妙味が損なわれ、一時、2020年7月2日以来安値の1,764.29ドルを付けました。

12月1日以降は反発に転じました。米ドルが下落する中、米追加経済対策に期待感が高まったことでインフレヘッジ手段としての金の魅力が増しました。ドルインデックス(ドル指数)は約2年超ぶりの低水準近辺で推移し、他の通貨保有者にとって金が割安になりました。

週末、金相場は下落しました。それまでの上昇に対する利益確定売りが出ました。ただし、米追加経済対策への期待がインフレヘッジとしての金の魅力を支え、週間ベースでは4週間ぶりに上昇し、週末は1,837.61ドルで引けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、11月27日の1,194.78トンから、12月4日には1,182.70トンに減少しました。投資家が保有してきた金を引き続き売却し、株式に資金をシフトしている様子がうかがえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の12月1日時点のポジションは26万314枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万6412枚増加しました。買いポジションが4,020枚増加し、売りポジションが1万2392枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。新規のロングが増え、ショートが減少しており、投機家が買い戻しや新規買いを進めていることがうかがえます。

円建て金相場も反発しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:1,850ドルを回復できるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価上昇と資金フロー
・投資家の金への興味
・円建て金相場は反発へ

前回コラムでは、節目の「1,800ドルを早期に回復できるか」を注目ポイントとしていましたが、先週さっそく値を戻してきました。とは言え、新型コロナワクチン開発の進展を背景に、投資家の「株価上昇に賭け、金を売る」動きは変わっていないようです。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)によると、12月2日までの1週間で株式ファンドに97億ドルが流入しました。一方で、安全資産とされる金のファンドからは過去3週間で90億ドルが流出しました。

新型コロナワクチン開発の進展を受け、2021年は各国経済が正常な状態に近づくとの期待からリスク志向が高まったことで、安全資産と見なされる金を手放す動きが加速しているようです。

新型コロナワクチンにより2021年は経済が迅速に回復するとの期待から、株価は11月に月間ベースで過去最大の伸びを記録し、12月の米国株価は過去最高値を更新する展開にあります。

BofAは世界の国内総生産(GDP)が2021年に5.4%増と、約5年ぶりの大幅な伸びとなると試算しており、投資家の楽観度合いがさらに強まっているようです。

このような見方を反映するかのように、株式ファンドへの流入額は過去4週間で1150億ドルと、過去最高水準に達しました。BofAは過去10ヶ月間の特徴について「史上最速の株価急落、史上最大の政策混乱、史上最大の米国株の上昇が見られた」としています。

大規模な政府支出や中央銀行による景気刺激策を背景に、過去10年間低迷してきた物価が上昇し始めるとの見方も出ているようです。インフレ指数連動債(TIPS)ファンドには12月2日までの週に20億ドルが流入し、週間ベースで過去2番目に多い水準に達しています。

一方、BofAはドル指数が90を下回れば、米ドルが急落し、米国債利回りの急騰やビットコインの投機的な需要増加につながる可能性があると指摘しています。

ドル指数は12月4日時点で90.567となり、米ドルは2020年の夏以降、大幅に下落しています。一方でビットコインが急上昇し、年初来では約170%上昇し、過去最高値の水準にあります。これらの投資マネーの動きには非常に興味深いものがあります。

しかし、短期的に偏りすぎたマネーフローの動きは、あくまで一時的なものでしょう。米国株の長期的な上昇基調の継続は疑いようがないと言えますが、これから5-6年は金価格も同様に上昇する相場展開であると考えています。

私は金相場は12年間の上昇サイクルに入ったと考えており、今回の上昇相場は2027年ごろまで続くと考えています。つまり、過去の長期サイクルから、2026年までは株式と金が同時に上昇する期間が続くとの見立てです。そして、2027年には株価が大きく調整する一方、金価格が真の史上最高値を付けると考えています。個人的には、これはかなり確度の高いシナリオであると考えており、このシナリオを信頼して長期の投資戦略を組んでいます。

目先の金相場は1,850ドルの重要なテクニカル水準を前に、先週末は利益確定売りが出たと言えます。一方、12月4日の弱い内容となった米雇用統計の発表を受け、金は売り優勢となっており、値動きの背景はやや複雑とも言えます。追加経済対策への期待が強まったことが株高を想起させ、これが金の売り材料となったのでしょう。

しかし、このような理由はあくまで後づけであると言えます。実際に、逆の解釈も可能です。緩和策や経済対策は米ドル安、マイナス金利、インフレ懸念につながりますが、これは本来金の買い材料でもあります。市場で聞かれる市況解説は、所詮は後づけでしかないと私は考えています。

いずれ金融緩和政策下における一段の財政刺激策に対する期待が、金相場の上昇につながるでしょう。これらの政策が新型コロナワクチンの提供とウイルスの鎮静化後、いつまで続けられるかが、むしろ重要なポイントです。

それによって、株価や金価格の上昇のペースが鈍化する可能性もあるでしょう。それでも、長期的な株式と金の上昇基調は変わらないと考えています。いずれインフレ指標への注目度が高まり、株式以上に金への関心を高めざるを得ない時期が来ると考えています。

このようなシナリオもあり、私は「株式・金・現金」の3分割法を推奨しています。株式を購入するときに同時に金を買うわけです。海外の著名ヘッジファンドマネージャーの中には、「株式、債券、金、現金」に25%ずつ投資することを勧める向きも出てきました。

これまでこのような分散投資の考えを示したことがない著名ファンドマネージャーが、私と同様の方法を提案してきたのは非常に興味深いと考えています。しかし、私はこのポートフォリオは債券の配分が大きすぎるため、あまり好きではありません。私であれば債券は外し、その分で株式、金、現金の配分を増やすでしょう。実際、自分のポートフォリオはそのようにしておりますが、今のところ非常に上手くいっていると言えます。

今は米ドルが2年半ぶり安値付近の水準で推移し、他通貨の保有者にとって金の魅力が増しています。また、今の市場環境では、金は景気刺激策の恩恵を受けやすいと言えます。刺激策によって起こりうるインフレと通貨下落のヘッジ手段と見なされていることが背景にあります。

金相場は想定していたように1,800ドルを回復し、足元を固める動きから反発基調に入りました。もともと過去の統計から金相場の季節性を確認すると、11月から翌年2月は上昇しやすい傾向があります。

その11月の下げは格好の押し目買いの場面だった可能性が高まっていると言えます。これまでも繰り返し押し目買いを勧めてきましたが、これで相場水準が回復してくれば、非常に良い買い場だったということになりそうです。

円建て金相場も反発基調にあります。これで6,200円を固める動きになれば、さらに上値を試す展開になりそうです。6,300円を超え、さらに6,400円を超えると、直近高値である6,600円が視野に入るでしょう。これを超えると、6,700円が視野に入り、新たなステージに入ることになります。

すでに押し目買いの好機が到来し、購入できた場合には、長期的な視点でポジションを保有し、さらなる上昇を待ちたいところです。前回コラムで指摘したように、「市場が投げ売りしているときに買う」ことが今回の下げでできていれば、今は非常に安いコストのポジションを保有できているでしょう。

現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いとの考えは変わりません。株式投資におけるリスクを軽減するためにも、長期的な視点で金に投資しておきたいところです。無論、金相場が押した場面では、時間と資金を分散しながら、徐々に買いポジションを増やしていきたいところです。

プラチナ:急伸の展開

プラチナは急伸しました。月替わりの12月1日に大きく上昇し、その勢いを週末まで維持し、週末の12月4日に一時1,079.38ドルまで上昇しました。週末は1,054.51ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の12月1日時点のポジションは、2万2026枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,261枚拡大しました。買いポジションが3,017枚増加し、売りポジションが244枚減少しました。投機家がショートの買い戻しを行う一方で、新規買いを増やしており、さらに買い姿勢が鮮明になっています。

プラチナ相場はとうとう節目の1,000ドルまで上昇し、それも超えてきました。前回コラムでは「軟調な展開の金相場とは対照的な動きにあります」としました。それが、金相場も上昇し始め、貴金属相場全体が堅調な値動きになる中、先導して上昇していたプラチナ相場の強さが際立つ展開にあります。

これまでプラチナは、金相場の上昇に大きく劣後してきました。その背景は、本欄でも何度も指摘したように、主要な需要先であるディーゼル車の販売の低迷への懸念がありました。ディーゼル車の自動車触媒の原料となるプラチナは、ディーゼル車の販売不振で需要が伸び悩むとの見方が大勢でした。

しかし、ここにきて、バイデン次期米大統領の政策に注目が集まり始めています。「再生可能エネルギー」、「クリーンエネルギー」というキーワードが今、市場で注目されています。これが将来の水素社会の浸透とそれに伴うプラチナ需要の高まりを想起させており、プラチナ相場を押し上げていると考えられます。

プラチナは燃料電池自動車(FCV)などに使用されるため、新たな需要先として注目されています。世界的にこのような動きが広がれば、プラチナ需要が増加し、需給面の後押しから相場が上昇することが想定されます。

また市場では、世界のプラチナ生産の7割を占める南アフリカで、鉱山大手の工場の稼働が停止し、供給が減少するとの見方も買いを後押ししているようです。プラチナ鉱山最大手のアングロ・アメリカン・プラチナムが11月に、工場の漏水トラブルで年内の稼働を停止すると発表し、これが供給懸念につながったもようです。

さらに、上場投資信託(ETF)を通じた投資マネーの流入も、プラチナ相場を押し上げているとの指摘があります。プラチナETFの残高は増加傾向にあり、世界のプラチナETFが裏付け資産として持つ現物の残高は約80トンと、3月末以来の高水準となったもようです。

これまで金相場との価格差が拡大し、投資家のプラチナ離れが顕著でしたが、ようやくプラチナの需給面に材料が出てきたことで、投資家もそれに目を付けて買いを入れ始めている可能性があります。

このまま上昇基調が続けば、2016年の高値である1,150ドル水準までの上昇も十分に想定されます。これも超えるような動きになれば、金相場を追いかけるように上昇し、プラチナの希少性に目を付ける向きが増え、以前のように金相場の水準を超える可能性が高まるかもしれません。そのような可能性も念頭に置きながら、今後のプラチナ相場を見ていくようにしたいところです。

円建てプラチナ相場も急伸しています。直近高値の3,400円を超え、3,600円も超えました。いよいよ強気相場に入ったかのような値動きです。押し目がない状況ですので、買いのチャンスを逃した向きもあるでしょう。少しでもポジションを持ちたい場合には、今の水準で買いを入れ、その後の押し目が来ればそれを利用することを考えたいところです。その場合には、3,400円前後が買いのターゲットになるでしょう。

一方、このまま上げていった場合には、追随して買いを入れるしかないでしょう。強気相場はついていくのが大変ですが、とにかくついていかないと、相場に乗れないことも考えられます。

少し買いを入れ、ポジションを持つことで見えてくることもあります。まずは今の相場に参加することを考えてみたいところです。その上で、相場展開を見極めるとよいでしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反発の展開

シルバーは反発しました。金相場の上昇につれる形で上昇し、12月4日には24.38ドルまで上昇する場面がありました、週末は24.16ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の12月1日時点のポジションは、4万7892枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,212枚拡大しました。買いポジションが2,252枚増加し、売りポジションが40枚増加しました。投機筋は新規買いを積み上げており、徐々に強気な姿勢に傾きつつあるように見えます。

金やプラチナが値を上げる中、銀も徐々に水準を切り上げる動きに移行しそうです。目先は22ドル割れで底値を確認したような格好になっており、これで25ドルを超えると地合いが好転しそうです。材料不足の状況は変わっていませんが、上値を試す動きを想定しておきたいと考えます。

銀についても、今後のテーマは環境問題に対する「再生可能エネルギー」となりそうです。このテーマは比較的注目度が集まりやすく、さらに人気が出やすいものです。したがって、今後もこのテーマを重視した材料が出てくる可能性があります。

銀の場合には、太陽光が材料になりますが、このテーマも注目されやすいと言えます。したがって、市場がこの材料を注視し、買いを入れてくるかに注目しておきたいところです。そのうえで、25ドルを明確に超えてくれば、大相場に発展する可能性も出てきそうです。

円建て銀相場も反発しました。84円を超えると、再び上昇基調が強まりそうです。その後の直近で超えられなかった88円水準を超えるようですと、地合いが一気に好転するものと思われます。

今は上昇基調です。この基調が続くのかを注視しながら、対処したいところです。現行の82円から84円水準も押し目買いに値するでしょう。その意味では、今は買いを入れ、上昇相場に乗っていくことが肝要です。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券