先週のゴールド:続落の展開

金相場は大幅続落しました。11月23日以降の週にて週初から大きく値を下げ、4ヶ月ぶりの低水準に沈みました。

11月の米製造業購買担当者景況指数(PMI)が予想を上回ったことが嫌気されました。複数の新型コロナワクチンが臨床試験(治験)で有望な結果を示したことから、早期の景気回復に対する期待も相場の押し下げ要因となりました。

他の通貨に対して米ドル指数が上昇したことも、金の魅力を下げる要因となりました。さらに、米政治懸念の低下も安全な逃避先の必要性を低下させました。

週末も下落しました。新型コロナワクチンによる早期景気回復への楽観ムードの高まりと、円滑な米政権移行を背景に米国株が最高値を更新する中、金相場は心理的節目の1,800ドルを割り込みました。

一時7月6日以来の安値となる1,773.10ドルまで下落しました。週間ベースでは約4%超の下落で、9月25日以来の大幅な下落率となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は11月20日の1220.17トンから、11月27日には1194.78トンに減少し、1200トンの大台を割り込みました。投資家が金を売却し、株式に資金をシフトさせている様子がうかがえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の11月17日時点のポジションは25万1270枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万1534枚増加しました。買いポジションが1万1182枚増加し、売りポジションが352枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。新規のロングが増えており、投機家が改めて買い姿勢を強めていることが確認できます。ただし、その後の金価格は下落しており、最新データで投機筋の対応を確認したいところです。

円建て金相場も大幅続落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:1,800ドルを早期に回復できるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価上昇期待の継続
・投資家の資金シフトの動向
・円建て金相場は底値探りの展開に

金相場は下落基調がさらに強まり、節目の1,800ドルを割り込みました。新型コロナワクチン開発の進展を背景に、投資家は株価が上昇することに賭けるため、金を売っています。ワクチンのような力強い基礎的な要因があることを踏まえると、1,750ドル程度までの調整になってもおかしくはないでしょう。

しかし、今のように株式を買うために金を売るような動きが見られれば、それはミニバブルとも言えるような状況でもあり、いずれ調整せざるを得ないというのが私の基本的な考え方です。

現在のように、株式と金を同時に買わない投資家が多くなっていることは、株式が過剰に買われていることを意味するでしょう。したがって、株価の調整はいずれかなり近い時期に起き、投資家は金を保有しておくことの重要性を再認識させられることになると私は思います。無論、賢明な長期投資家は今こそ、金の買いを積み増すべきでしょう。

現在の株式市場と金市場の動きは、明らかに危険な動きに見えます。本欄で繰り返し解説していたように、「株式を買う際には金も同時に買うべき」というのが私の持論です。この「同時に」というのが非常に重要です。

株価の上昇で気が大きくなり、安全資産は不要とばかりに金を売却し、株式に集中的に資金を投じては、これまで何度もみられた暴落に耐えることができません。株価の大きな下げが来れば、結局投資家は株式を投げることになります。その際に、最も堅調に推移するのが金なのです。これもすでに何度も経験していることです。そして、今まさにこのようなことが起きようとしていると私は見ています。

株式を買う際に金も同時に買うことでリスクヘッジが可能になります。この基本的な考えを無視し、リスク管理を怠れば、株価急落時に資産が大きく目減りし、それに慌てて株式を安値で売却することになりかねません。

特に今の株価上昇で、レバレッジをかけて株式を買う投資家が増えていることが、データでも明らかになっています。したがって、株式投資に傾倒しすぎた結果、安く売られた金の押し目をしっかりと買っておくことが、資産保全につながることを再確認しておきたいところです。

無論、このまましばらく金価格が下げ基調を続ける可能性もあります。今の基調が続けば、1,720ドル程度までの下落となる可能性がありそうです。ただし、ここで下げ止まれば、長期的なトレンドは依然として維持されると考えます。そこまでの押し目買いは継続したいところです。

一方、中国の国有銀行を含む銀行大手は11月27日、貴金属商品の投資用の取引口座について11月28日から新規開設を停止すると発表しました。世界的に価格変動が激しくなっていることを要因としています。

中国工商銀行(ICBC)は、11月28日から金や銀、その他の貴金属商品の新規取引口座の開設業務を、店頭だけでなく、スマートフォン経由などオンラインを含めて全て停止すると発表しました。同行は「世界的な感染拡大、国際的な政治経済などから影響を受け、貴金属価格は大きな変動を示し続けており、市場のリスクや不確実性が拡大している」と指摘しています。

また中国銀行も、上海金取引所に関連する個人向けサービスを停止するとしています。さらに、中国交通銀行は11月28日午後から、中国建設銀行は11月30日から新規口座をそれぞれ停止する方針です。各行は、投資家に対して市場と価格変動リスクに十分に注意を払うよう警告しました。そのうえで、投資取引を慎重かつ合理的に行うよう呼び掛けています。

一方で、既存の口座での取引に影響はないとしています。また、招商銀行、中国農業銀行も11月28日から開設停止する方針を発表しています。世界的にも金取引が活発な中国でこのような動きがあることは懸念されます。今後の動向に注目しておく必要があるでしょう。

円建て金相場は続落し、安値を更新しました。こうなると、保有している金を手放す動きが出てくる可能性があります。しかし、長期的な視点で投資している投資家は、このような下げを利用して金のポジションを積み上げていきたいところです。

投資で成功する秘訣の一つに、「市場が投げ売りしているときに買う」というのものがあります。投資家が下げ相場に対して我慢できずに投げ売りを行っているときに買うと、その後のリバウンドで大きな収益を上げることができるケースは少なくありません。これは金投資でも同じことが言えるでしょう。

金は本来、キャピタルゲインを狙って投資するものではありませんが、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えています。

また、株式投資におけるリスクを軽減するためにも、長期的な視点で金に投資することは不可欠と思われます。

金相場が押した場面では、時間と資金を分散しながら、徐々に買いポジションを増やしていきたいところです。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸しました。11月23日以降の週にて週初から勢いよく上昇し、週末11月27日には一時969.25ドルまで上昇する場面がありました。週末は963.56ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の11月17日時点のポジションは1万6172枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が4,573枚拡大しました。買いポジションが2,517枚増加し、売りポジションが2,056枚減少しました。徐々に投機家の買い姿勢が鮮明になっています。その後も買いが続いているかを確認したいところです。

プラチナ相場は堅調さを維持し、軟調な展開の金相場とは対照的な動きにあります。最近では非常に珍しい値動きです。プラチナが金から離れ、いよいよ一本立ちしたというのであれば、それは注目すべき状況であると言えます。実際にそのような動きになるかは、今週以降の値動きを見て確認することができるでしょう。

特にこれまで上値抵抗となってきた節目の1,000ドルを超え、さらに2020年1月につけた高値である1,045.05ドルを超えるようですと、上昇は本物と言えそうです。少なくとも、今は上昇基調にあります。上目線で相場動向を見ていくのがよいでしょう。

一方、ファンダメンタルズ面では、興味深い報道がありました。ドイツのアルトマイヤー経済相は11月24日、「欧州連合(EU)加盟各国は電気自動車(EV)用バッテリーの生産で協力を強化しており、こうしたアプローチを水素技術といった新しい産業分野にも広げるべきだ」としています。同相はベルリンで開かれた経済会議で「欧州におけるバッテリーの完全なバリューチェーンの構築をわれわれは支援したい。これは原材料の加工からバッテリー生産やリサイクルまでだ」としています。

ドイツ政府はアジアのサプライヤーへの依存度を下げるため、30億ユーロ(36億ドル)を投じてバッテリーのローカル生産を支援しています。

アルトマイヤー経済相は、「将来的に最も創造的で環境にやさしいバッテリーが欧州から生まれるようになるべきだ」としました。また、欧州委員会の「重要な欧州共通利益プロジェクト(IPCEI)」スキームによって可能となったバッテリーでの協力拡大については、「水素技術などその他欧州産業プロジェクトにとっての青写真となるべきだ」と付け加えました。

水素社会が拡大すれば、それを進めるためにはプラチナが必要になることは、本欄でも繰り返し解説してきました。このような報道が増えると、投資家の興味が高まり、プラチナ価格が押し上げられる可能性が高まりそうです。今後もこの手の報道に注目しておきたいところです。

プラチナ相場は目先は基調を維持できるかに注目しておきます。900ドルの節目が下値の目処になるでしょう。これを維持できれば、節目の1,000ドルを試す可能性は残るでしょう。目先は金相場の影響を受ける可能性もあります。金相場が軟調に推移しているだけに、注意しておきたいと考えます。

円建てプラチナ相場も堅調さを取り戻しています。週後半にかけて下げていますが、3,300円前後を維持できれば、再び上昇する可能性は残るでしょう。今は上昇を想定しながら、買いポジションを維持しつつ、3,200円までの押し目があればその機会を利用して買いを積み上げることも考えたいところです。

ただし、3,200円を割り込むと、3,100円までの下げになりそうです。ここで下げ止まれば、やはり買いを検討したいところです。まだポジションを保有していない場合には、買いのタイミングを模索していきたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続落の展開

シルバーは続落しました。新型コロナワクチン開発の材料で株価が上昇する中、金相場が売られる動きにつれる形で値を下げ、11月27日には一時22.32ドルまで下落する場面がありました。週末は22.69ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の11月17日時点のポジションは4万5614枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が214枚減少しました。買いポジションが3,088枚増加し、売りポジションが3,302枚増加しました。投機筋は銀相場の調整色がやや強まる中、新規の買いと売りを積み上げており、強弱感が対立しているのがわかります。最新のデータで投機筋の動向を再確認したいところです。

銀相場は金相場の動向に影響を受けています。新型コロナワクチン開発の材料は、経済の回復を想起させ、実需が多い銀相場にはポジティブな材料と考えられます。しかし、今は金相場の軟調さに引っ張られているようです。

投機家は大きく売り込んでいるわけではありませんが、先週の下げを見ると、売り圧力が強まっているように思われます。しかし、テクニカル的にはかなり売られすぎになっています。したがって、そろそろ下げ止まりのタイミングを計ることでしょう。

22.50ドルには長期トレンドのサポートがあります。ここを維持できれば、反発に転じる可能性が高まりそうです。今週はそのような動きになるかを確認したいと考えます。

繰り返すように、銀については環境問題に対する「再生可能エネルギー」への注目度が高まる中、太陽光発電向けのシルバー需要の高まりが意識されています。しかし、この材料がすぐに主体的なものになる雰囲気はまだ見えてきません。しかし、いずれ注目されることになるでしょう。

この点を先回りして買いを検討することも可能ですが、まだ基調が弱いと言えます。今は底値を確認することを優先したほうがよさそうです。まずは重要なポイントである22.50ドルを維持できるかを確認したいところです。

そのうえで、反発に向かうことができれば、再び上値を試す可能性が高まると考えておきます。22.50ドルを割り込むと、20.50ドル程度までの調整となる可能性がありますので、この点には注意しておきたいところです。一方、24.50を超えると、再び上昇基調に戻す可能性が高まりそうです。

円建て銀相場も続落しました。ただし、下げ幅が徐々に小さくなっており、80円前後で下げ止まることができれば、反発に転じる可能性が高まりそうです。まずはそのような動きになるかを確認したいところです。

そのうえで、反発に転じた場合には、その流れに乗って早めにポジションを構築したいところです。82円を超えてくると、上昇に勢いが出てきそうです。ただし、80円を明確に割り込むようですと、基調はさらに悪化する可能性があります。その場合には、押し目買いは慎重に対処すべきでしょう。

今は下げている途中ですので、底値が固まった後に買いを検討したほうがよさそうです。ただし、底値はかなり近いタイミングで確認できるように思われます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券