先週のゴールド 大幅反落の展開

金相場は大幅反落しました。11月9日からの週初は新型コロナワクチンの後期臨床試験(治験)で初めて高い有効性が確認されたとの報道を受け、投資資金の安全な退避先である金を売り、リスク資産を買う動きが強まりました。

一時は米ドル相場の下落や米大統領選でバイデン前副大統領の勝利が確実になったことに伴う追加経済対策への期待に押し上げられ、約2ヶ月ぶり高値となる1965.33ドルまで上昇しましたが、その後大幅な下げに転じました。

その後は、前日の大幅下落分の一部を取り戻しました。世界経済の回復への懸念に加え、今後一段の財政・金融刺激策が見込まれることが安全資産とされる金を支援しました。しかし、米ドル高や新型コロナワクチンへの楽観的な見方で早期の景気回復への期待感が高まり、投資家のリスク選好意欲が改善したことで、上値の重い展開が続きました。

一方で、新型コロナワクチン候補の流通への懸念が金相場を押し上げました。さらに新規の財政・金融刺激策への期待感も安全資産とされる金を支援しました。

週末は上昇しました。世界的な新型コロナウイルスの感染者数の増加で経済的打撃への懸念が強まったほか、新型コロナワクチン候補の供給に対して懐疑的な見方が出たことが金相場を押し上げました。米ドル安も押し上げにつながりました。週末は1888.03ドルで引けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は11月6日の1260.30トンから、11月13日には1234.32トンに減少しました。

円建て金相場も大幅反落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:反発に転じるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・バイデン米政権の政策
・新型コロナワクチン開発の進展
・円建て金相場、今は底値固めの状態

金相場は前週までの上昇基調が一転して下げました。これはすべて、新型コロナワクチン開発に伴う株価の上昇や楽観ムードが売りにつながっていることによります。米製薬大手ファイザーは11月9日、独製薬ベンチャーのビオンテックと共同開発中の新型コロナワクチン候補について、臨床試験(治験)で9割以上の確率で感染を予防する効果があったと発表しました。月内にも米当局に緊急使用許可を申請するとしています。

市場では、経済活動の正常化への期待が広がり、株式に買いが膨らむなど、リスクオンの動きが加速しました。また米金利が上昇し、米ドルが上昇したことも金相場を圧迫しました。前週までは上昇基調を回復するような雰囲気が高まっていただけに、この材料は金相場には痛手となりました。

もっとも、本欄で繰り返しているように、金相場の動きに一喜一憂する必要はありません。あくまでリスク資産のヘッジ先と考えれば、株高と同時に金相場が下げるほうが健全です。

これまでは、株高の際に金も買われるような動きが見られ、金自体がリスク資産のような動きになる場面も多く見られていました。しかし、今はそのような動きは沈静化しており、わかりやすい動きになっているとも言えます。

したがって、従来の通り、株式を購入する際には、リスク回避先として同時に金も購入することを継続し、ポートフォリオの健全性を維持しておきたいところです。

株価が上昇すると、どうしても投資家は株式に多くの資金を振り分けがちです。その結果、一時的に評価益は膨らむことが多いのですが、一転して株価が下落すると評価損が大きくなります。その際に、金に少しでも資金を振り分けておくと、そのような状況は回避できる可能性が高いと言えます。

これは、リーマンショックや今回のコロナショックの際にも確認できたことです。資金を上手く配分することを覚え、それを実行することができるようになれば、これらのようなショックやその後の株価の戻りにも上手く対応することができます。ぜひ実践していただければと思います。

重要なことは、相場の方向性を当てることではありません。まして、今回の米大統領選のようなビッグイベントで、だれが大統領になるかを当てることでもありません。当てたところで、資産運用が上手くいくとは限りません。

私自身はトランプ米大統領の勝利をかなり前から予想していましたが、このままいけばバイデン氏が大統領になりそうですので、予想は外れたことになります。

しかし、私自身の投資については米国株の上昇に上手く乗れていますし、今回の上昇相場では収益が出ています。無論、株式を買うと同時に金も購入し続けています。このように、目先の材料ではなく、長期的な目線で市場を見ておけば、ポートフォリオを上手く調整しながら資産を増やすことが可能です。

イベントに目を奪われると、目先の材料に振り回され、相場に翻弄されて資産を減らすことにつながりかねません。ぜひ注意したいところです。

目先の話に戻すと、金相場は1,850ドル前後にある重要なサポートを維持してます。ここを維持できれば、相場としては「上向き基調が維持されている」と判断できます。

また、過去の統計から金相場の季節性を確認すると、11月から翌年2月は最も好調なパフォーマンスになりやすい期間であることは本欄で毎週繰り返し述べている点です。

過去データを重視すれば、今は売ってはいけない期間と言えます。いずれにしても、長期的な視点からも金を常に保有しながら、価格水準にとらわれず、徐々に買い増していきたいところです。それが、最終的に資産を守ることになることは言うまでもありません。

私は「株式・金・現金」の3分割法を推奨しています。これも本欄で常々申し上げていることです。株式を購入するときに同時に金を買うことで、資産の分散とリスクヘッジが可能になります。個人投資家にとって非常にシンプルで理にかなったやり方だと思います。その上で、株価や金が下げたときに、現金を利用して買い増せばよいと考えます。

今は債券投資には妙味がないでしょう。リスク回避先には債券よりも金を利用したほうが良いと考えます。

円建て金相場は6,600円を超えられずに下げており、今は底値堅めの状態です。6,300円を維持していますので、直近安値は維持されています。このまま6,400円前後で推移することができれば、再び6,600円超えを試す可能性もあるでしょう。その結果、上値を試す場面も出てきそうです。

いずれにしても、今は長期的な視点で金のポジションを増やすべき期間と考えています。早めに押し目買いを開始することが肝要でしょう。

金は本来、キャピタルゲインを狙って投資するものではありません。しかし、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えています。

また、資産運用の王道である株式投資のリスクを軽減するためにも、長期的な視点で金に投資することは不可欠と考えています。金相場が押した場面では、時間と資金を分散しながら、ゆっくりと買いポジションを構築したいところです。

プラチナ:小幅反落の展開

プラチナは小幅に反落しました。週初は金相場の下落につれて値を下げ、一時847.95ドルまで下落する場面もありました。しかし、そこがこの週の安値になり、その後は下げ渋る中、週末は888.78ドルで引けました。

プラチナ相場は引き続き特段の強材料がない中、金相場の動向次第で変動しています。11月9日の下げも、新型コロナワクチン開発の報道で金が下げたことにつれているだけであり、プラチナ独自の材料で売られているわけではありません。このような動きを見れば、今のプラチナ相場がいかに金相場次第であるかが容易に理解できます。

新型コロナワクチン開発の進展の材料は、景気回復期待の高まりからむしろ、プラチナ相場にはポジティブな材料であるはずです。しかし、そうはならないのが今のプラチナ相場の状況であり、さらに言えば、プラチナ相場の根本的な弱さとも言えます。

とは言え、現在の水準は9月に825ドルちょうどまで売られたところを底値とするレンジ相場の域を出ておらず、上値も900ドルを少し超えた水準で動きがありません。これらのレンジをどちらに抜けるかを確認することが、次の動きを読むうえで重要なポイントになるでしょう。

金相場次第ではありますが、今の市場を取り巻く環境を考慮すれば、上昇の可能性を見ておきたいと考えています。その場合には、1,000ドル前後までの上昇の可能性も出てきそうです。一方で、825ドルを割り込むようですと、株式市場もかなり崩れた状況になっていることが想定されます。その場合には、節目の800ドルや750ドル程度までの下落となる可能性があることを念頭に置いておきたいところです。

円建てプラチナ相場も上値を抑えられています。現在は3,100円が明確なレジスタンスになっており、これを上抜けるかがポイントになるでしょう。これを超えるようであれば、上昇に勢いがつきそうです。その場合には、その流れに乗って買いを検討したいところです。

一方で、下値は節目の3,000円から2,900円がポイントになりそうです。これらの水準を維持できれば、押し目買いも検討できそうです。今は買いの機会をうかがいたいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅反落の展開

シルバーも大幅に反落しました。週初の新型コロナワクチン開発の材料で金相場が売られた動きにつれて値を下げ、一時23.56ドルまで値を下げる場面がありました。しかし、その後はその安値を下回らずに推移し、週末は24.62ドルで引けました。

銀相場もやはり金相場の動向に振り回される展開になっています。新型コロナワクチン開発の材料はファンダメンタルズで実需が多い銀相場にはポジティブな材料と考えられますが、それでも金相場が下げるとつれて下げてしまいます。これ自体は市場がそのように判断しているということですので、無視することはできません。この点に関しては、引き続き金相場の動向を注視しながら見ていくしかないと言えそうです。

もっとも、ファンダメンタルズ面の材料に関しては、前回コラムでも解説したように、長期的には環境問題に対する「再生可能エネルギー」への注目度が高まるかを見ておきたいと考えます。バイデン米政権が誕生すれば、この点を重視すると考えられます。その際に、再生可能エネルギーの発展が加速する雰囲気が出てきて、この分野の先導役になる可能性がある太陽光発電向けのシルバーの高まりを想起させるようであれば、面白い展開も想定されます。

前回コラムでも解説したように、2019年のシルバーの総需要に占める太陽光発電向けのシェアは10%、量にして3,000トンの規模になっています。今後はこれがさらに伸びていくことが想定されており、需要の増加が期待されています。この点は長期的な材料として、常に念頭に置いておきたいところです。

円建て銀相場も反落しました。ただし、底割れせずに推移し、84円前後での推移が続いています。これで直近高値の89円水準を超えるようですと上昇への転換が明確になり、上向き相場が展開されそうです。そのような動きになれば、その動きに追随する形で買いを検討したいところです。

もっとも、今の銀相場は下値不安もあまりなさそうで、今後も引き続きボラティリティが高い状況が続きそうです。そのため、ポジション管理をしっかりと行いながら、上昇相場に乗り遅れることなく、収益機会をとらえたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券