先週のゴールド:大幅反発の展開

金相場は大幅反発しました。11月2日からの週初は米大統領選を控えて先行き不透明感が広がる中、「安全資産」としての買いが優勢となりました。さらに、株高基調の中で安全資産である米ドルが下げたことで金が買われる動きが加速しました。

一方、米国の連邦議会選が接戦となり、野党・民主党が上院を掌握するのが難しい見通しとなったことで、大規模な追加経済対策への期待が後退したことが嫌気される場面もありました。

また、激戦の米大統領選について、開票中にもかかわらずトランプ米大統領が不誠実な勝利宣言をし、米ドルが好ましい安全資産として浮上したことも、金相場の上値を抑える動きにつながりました。

バイデン氏が米大統領選を制する可能性が高まる中、民主党が上院で過半数を占めるのは難しい見通しが強まりました。その後は反発し、週末には一時1960.13ドルまで上昇し、1ヶ月半ぶりの高値を付ける場面がありました。

米大統領選でバイデン氏が勝利するとの観測が広がり、大規模な追加経済対策への期待が高まったほか、FOMC(米連邦公開市場委員会)の政策発表を受けて米ドル安が進みました。週間ベースでは7月以来の高い上昇率となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は10月30日の1257.67トンから、11月6日には1260.30トンに増加しました。久しぶりに明確な形で増加に転じています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の11月3日時点のポジションは24万2909枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が5,725枚減少しました。買いポジションが4,265枚減少し、売りポジションが1,460枚増加したことで、買い越し幅が縮小しました。

円建て金相場も大幅反発しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:上昇再加速につながるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・バイデン米政権の政策
・株高・米ドル安と金相場の関係
・円建て金相場は反発基調継続へ

金相場は再び上昇基調が強まりそうな雰囲気になっています。8月に2,000ドルを超えて史上最高値を更新しましたが、その動きが想起されるような展開になりそうです。まずは、現在の上昇相場の持続性を確認することになるでしょう。

今の金相場の最大の関心事は、やはりバイデン米政権の政策でしょう。米大統領選でバイデン氏は勝利宣言をしましたが、トランプ氏は依然として敗北を認めていません。しかし、周囲はすでにバイデン氏の大統領就任を前提に動き始めています。したがって、現時点ではこの状況を優先して考えておくことにします。

金市場にとって米大統領選は極めて大きなターニングポイントになるでしょう。バイデン米政権が推し進める拡張的な財政政策と、FRB(米連邦準備制度理事会)の独立性を重視する政策で、結果的に米ドル安の進行とインフレの高進のパッケージで、金相場が歴史的な上昇相場に移行していくものと考えています。

バイデン氏の勝利を市場が織り込む過程で、追加経済対策の決定がいずれ行われ、本格的なインフレへの動きが静かに始まるでしょう。その結果、金を保有していない投資家は資産価値の大きな目減りに見舞われ、極めて厳しい状況に陥ると考えています。

バイデン氏は、コロナ禍で傷ついた米経済の再生を急ぐ必要があります。しかし、共和党が議会の上院を制すると、政権との「ねじれ」が生じることになり、大型財政政策を目指す「大きな政府」の軌道修正を強いられる可能性があります。格差是正に向けた増税といった看板公約が骨抜きにされ、超大国の経済政策がとん挫するリスクが高まります。

市場関係者の中には、「ねじれたほうが株式市場には良い」とする向きも多いようですが、1901年以降の大統領と議会の組み合わせで、「大統領=民主党、上院=共和党、下院=民主党」のパターンは一度もありません。したがって、過去データがないため、経験則が通用しません。感覚的な市場関係者の発言が多々聞かれますが、そのような発言には要注意です。

バイデン氏は、製造業振興や環境インフラ投資、低所得者への医療保険加入補助など7兆ドル規模の政府支出計画を掲げる方針のようです。「米国第一」の保護主義的な産業政策が継続されるようであれば、トランプ米政権と何も変わらず、これが世界経済の足かせになる可能性も否定できません。無論、対中経済政策も大いに注目しておく必要があります。

一方、市場が懸念するのは、財政出動を支えるための増税です。バイデン氏は、トランプ米政権下の大型減税を「富裕層優遇策」と断じ、高所得者への増税を主張しています。また、法人税率も21%から28%への引き上げを明言しています。コロナ禍での不況で浮上した人種間の経済格差を税制改革によって是正するとともに、大規模な財政出動で成長加速と雇用創出を図る考えのようですが、そう簡単にはいかないでしょう。

また、拡張的な財政政策を志向する「大きな政府」の実現性にも不透明感があります。米大統領選と同時に行われた米連邦議会選で、共和党が上院議席の過半数を維持する可能性が残り、勢力の最終確定は2021年1月になるからです。

共和党は減税や規制緩和を重視する「小さな政府」の考え方が強いことはよく知られているところです。政権と議会の支配勢力が異なる「ねじれ」となれば、増税や社会保障拡充といった左派色の強いバイデン米政権の看板公約が揺らぐことになります。

また、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」復帰を前提とした温室効果ガスの削減計画も崩れることも想定されます。つまり、トランプ米政権の全否定どころか、かなり近い政策になりかねないリスクもはらんでいます。

バイデン氏は11月6日の演説で、「我々の経済政策は力強い景気回復に焦点を当てている」と強調し、「多くの懸案で意見対立があるのは確かだが、礼節を重んじることでは一致できる」と、共和党に団結を呼び掛けています。しかし、これまでの両党の関係や、支持者の暴動まがいの行動を見る限り、バイデン氏が国民に呼びかけても、米国民が一致団結して前に進むような体制を構築するのはほぼ不可能のように思います。

政策が停滞すれば経済再生が遠のき、日本や世界の景気にも打撃を与えることになります。すでに分断された米国を再生するのは極めて困難であることも念頭に置いておくべきでしょう。

また金融政策では、FRB(米連邦準備制度理事会)に対し露骨に利下げを迫ったトランプ米大統領の路線を踏襲せず、独立性を尊重する可能性が高いとみられます。バイデン米政権下の2022年に任期を迎えるパウエルFRB議長の再任が焦点となるでしょう。

国際情勢に関しても、大きく変わることになるでしょう。私の見方を一言で言えば、2021年からは「東洋の時代」になるという考えです。米英同盟がトランプ氏の失墜で破綻し、ジョンソン英首相を選んだ英国も同じ船に乗っているため、米国とともに沈没していくだろうと見ています。

そして、中国と日本が台頭し、東洋の時代に戻るわけです。西洋と東洋の位置づけは、ある一定期間をもって交互に到来していることは、歴史が証明しています。2021年からはアングロサクソンの文化が沈滞し、東洋の時代がやってくるでしょう。この点については、また別の機会に詳しく解説できればと思います。

金相場に話を戻すと、過去の統計から金相場の季節性を確認すると11月から翌年2月は最も好調なパフォーマンスになる期間であることは本欄で毎週繰り返し述べている点です。早速、そのような動きになってきています。このまま上がり続けるかは誰にもわかりませんが、トレンドはしっかりしています。

また、過去データを重視すれば、今は売ってはいけない期間と言えます。上記のような理由からも、長期的な視点からも金の買いを検討すべきであると考えています。あまり価格水準にとらわれず、できるだけ早く行動に移すことが、資産を守る上で肝要でしょう。

私は「株式・金・現金」の3分割法を推奨しています。これも本欄で常々申し上げていることです。株式を購入するときに同時に金を買うことで、資産の分散とリスクヘッジが可能になります。個人投資家にとって非常にシンプルで理にかなったやり方だと思います。その上で、株価や金が下げたときに、現金を利用して買い増せばよいと思います。

今は債券投資には妙味がありません。リスク回避先としては、金を利用したほうが良いとの立場は全く変わりません。また、長期的に金に対する買い姿勢も変わりません。

円建て金相場は結果的に前週安値の6,300円を割り込まずに反発し、6,500円まで上げてきました。これで6,600円を超えると上昇に勢いがつくでしょう。前回コラムでは「今は長期的な視点で金のポジションを増やすべき期間であると考えています」としていました。今は基調が再び上向きそうな気配です。そのため、早めに買いを検討する時期にあると考えています。

もっとも、毎回の繰り返しですが、金は本来、キャピタルゲインを狙って投資するものではありません。しかし、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えています。
また、資産運用の王道である株式投資のリスクを軽減するためにも、長期的な視点で金に投資することは不可欠と考えています。金価格が押した場面では、時間と資金を分散しながら、ゆっくりと買いポジションを構築したいところです。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。週初から上昇に転じ、週末にかけてさらに値を上げ、週末には一時911.53ドルまで上昇する場面がありました。引けは889ドルちょうどでした。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の11月3日時点のポジションは9,763枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が288枚縮小しました。買いポジションが1,182枚減少し、売りポジションが894枚減少しました。

プラチナ相場は引き続き特段の強材料がない中、金相場の動向次第になっているように見えます。その金相場が反発に転じており、プラチナ相場もその方向についていく展開にあります。

節目の900ドルを超えると心理面の好転から、さらに値を上げる可能性も出てきそうです。まずはそのような展開になるのか、週初からの値動きを確認したいところです。

プラチナの最大の需要先であるディーゼル車向けの自動車触媒需要の動向を見る上では、やはり欧州の自動車生産・販売動向がポイントになるでしょう。

ドイツ連邦自動車局(KBA)によると、10月の新車登録台数は前年同月比3.6%減の27万4303台でした。9月には2020年になって初めて登録数が増えましたが、再び減少に転じました。ただし、補助金の対象となる電気自動車(EV)の登録は約4.6倍、プラグインハイブリッド(PHV)は約3.6倍と堅調でした。

一方、ドイツ自動車工業会(VDA)の乗用車統計によると、10月の生産台数は前年同月比2%減の38万2300台となりました。13ヶ月連続で減少しましたが、減少ペースは大幅に失速しました。輸出台数も同じく2%減少し、27万6600台となりました。国内の販売台数(新車登録台数)は4%減の27万4300台で、8%増加した前月から再び減少に転じました。1-10月累計は、生産台数と輸出台数はいずれも前年同期比30%減少しました。国内販売は23%減でした。

このように、主要な需要先であるドイツの自動車業界の状況は芳しくありません。また、欧州では新型コロナウイルス感染拡大の第2波によるロックダウンの影響も懸念されます。

これらの点も念頭に置きながら、プラチナ相場の動向に注目しておきたいところです。まずは節目の900ドルを超えられるか、さらに980ドルから節目の1,000ドルを試すかを注視しておきたいと考えます。

円建てプラチナ相場も反発しました。為替相場が円高基調になっていましたが、ドル建てプラチナ相場の上昇がそれを補いました。前回コラムでは「2,900円を割り込まずに反発した場合には買いやすいと言えます。そのような動きになれば、買いを検討したいところです」としましたが、まさにそのような値動きになりました。

これで3,100円を超えると上昇に勢いがつきそうです。その場合には、その流れに乗って買い増しを検討してもよさそうです。ドル建てプラチナ相場の値動きを注視しながら対処したいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅反発の展開

シルバーは大幅に反発しました。週初から週中はややもたつきましたが、11月5日に急伸し、6日には一時25.82ドルまで上昇する場面がありました。週末は25.59ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の11月3日時点のポジションは4万5341枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が710枚拡大しました。買いポジションが4,136枚減少し、売りポジションが4,846枚減少しました。投機筋は売り手と買い手の両者がポジションを縮小させている状況にあり、全体的に市場から撤退している状況がうかがえます。

銀相場は結果的に9月24日の安値である21.64ドルを割り込まずに反発に転じたため、地合いの悪化が回避され、一転して上向き基調に転じています。今後は8月7日につけた29.83ドルを超えるかを注視したいところです。そのためには、金相場の上昇は不可欠でしょう。

銀相場そのものに特段の材料があるわけではないため、引き続き金相場の動向を注視したいところです。ファンダメンタルズ面の材料を探すとすれば、今後は環境問題に対する「再生可能エネルギー」への注目度が高まる可能性もありそうです。バイデン米政権がこの点を重視するとの思惑も、再生可能エネルギーの発展への可能性を想起させます。

今後のこの分野の先導役になるのは太陽光発電になる可能性が指摘されています。太陽光発電では、シルバーを利用するため、今後のシルバーの総需要に占める太陽光発電向けの需要がさらに拡大することが想定されます。

ちなみに、2019年のシルバーの総需要に占める太陽光発電向けのシェアは10%、量にして3,000トンの規模になっています。今後はこれがさらに伸びていくことが想定されており、需要の増加が期待されています。目先の材料にはなりにくいと考えられますが、長期的な材料として念頭に置いておきたいところです。

円建て銀相場も反発しました。直近安値の76円を割り込まずに反発したため、目先の底割れは回避されました。さらに、直近高値の89円水準を超えると、反発基調がさらに明確になり、強い相場になりそうです。そのような動きになれば、その動きに追随する形で買いを検討したいところです。

銀相場は今後も引き続きボラティリティが高い状況が続きそうです。ポジション管理をしっかりと行いながら、収益機会をとらえたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券