先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落しました。週初は小幅に上昇しました。新型コロナウイルスの感染者数増加や米大統領選への懸念が米ドル高の影響を打ち消しました。しかし、その後は下落に転じました。

米国で新型コロナウイルス感染拡大による経済的打撃を和らげるための財政刺激策に早期成立の兆候が見られないことから、米ドルが安全資産として買われたことで値を下げました。その後も米ドル高に加え、米追加経済対策をめぐる与野党協議の先行きが見えないことが売り材料視されました。週末は1,877.95ドルで引けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は10月23日には1263.8トンから、10月30日には1257.67トンに減少しました。最近は小幅ではあるもの、減少傾向が続いています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の10月27日時点のポジションは24万8634枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が970枚減少しました。買いポジションが1万4143枚減少しましたが、売りポジションも1万3173枚減少しており、売り方と買い方がともにポジションを縮小していることが確認できます。

円建て金相場は続落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:底割れを回避できるかに注視

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米大統領選前の投資家行動
・株価と金相場の連動性
・円建て金相場は底割れを回避できるか

金相場は米ドル高基調や株価下落の影響で値を下げています。株価下落の影響で値を下げていることは、投資家が米大統領選を前に保有資産を減らし、リスク回避姿勢が強まっていることを意味します。

新型コロナウイルス感染者数の増加に加え、米大統領選の前に追加経済対策が合意に至らなかったことが嫌気されていると言えます。現在は安全資産としての金買いよりも、保有資産の圧縮と現金化が優先されているようです。11月3日の米大統領選の結果も、すぐには確定しないとの見方も多く、当面は不安定な市場環境が続きそうです。そうなると、金相場もかなり大きく変動し、場合によっては急落する可能性もありそうです。

週末時点の米大統領選に関する調査によると、民主党候補のバイデン氏が共和党候補のトランプ米大統領を上回っており、優位に立っているとの見方が多いようです。しかし、選挙結果を見ないとほとんどの投資家は動けないでしょう。

明確なことは、米大統領選では新型コロナウイルス感染拡大で傷んだ米経済を再生し、雇用回復を実現することが最重要テーマであるということです。トランプ米大統領とバイデン氏ともに、製造業を「雇用の受け皿」と位置づけ、海外移転した企業の国内回帰を促進する方針で一致しています。この点においては、どちらの候補が勝利した場合でも、政策の違いはないと言えます。ただし、「米国第一」の内向きな政治姿勢は、新たな貿易摩擦を生むリスクをはらんでおり、世界経済には懸念材料と言えます。

一方、税制については、両者は対照的な政策を掲げています。市場はこの点を注視する可能性があります。トランプ米大統領は「大幅減税を続ける」と明言し、中間所得層に対する減税を約束しています。これに対してバイデン氏は、トランプ米政権下の減税は「富裕層のための税制だ」とし、高所得者や企業への増税を目論んでいます。税制改革で所得再分配を強化し、格差是正や医療保険の公的支援拡充に取り組む方針ですが、一般的にこの税制は市場では嫌気されています。

しかし、市場はバイデン氏の勝利は最終的に株高につながると解釈し始め、6月以降にバイデン氏の支持率が上昇し始めたころから、投資家のリスク選好が強まってきた経緯があります。しかし、ここ最近になってその動きが転換し始めており、株価が下げ始めるなど、投資家に迷いが生じているように思われます。

第2回テレビ討論会では、バイデン氏の環境・エネルギーに関する発言をトランプ氏が攻撃する場面があり、それがバイデン氏の失言だったと捉えられられている面もあり、選挙に大きく影響する可能性があるとの見方もあります。いずれにしても、現段階で明確なことは言えないというのが実態です。まずは選挙結果を確認し、そのうえで市場の反応を見極めるしかないでしょう。

とは言え、最終的に両者の政策では、財政出動を継続せざるを得ないと考えられます。これが将来のインフレの高まりにつながり、金価格の押し上げにつながるものと思われます。また、別の長期的なシナリオでは、米国の膨れ上がる債務の棒引きのため、政府が極端なインフレを容認する可能性も念頭に入れておく必要があると考えています。

こうなると、現金の価値は著しく低下する一方、株式と金の相対的な価値が大きく上昇する可能性があります。もっとも、それは表面上の価格の話であり、実際にはインフレで相殺されることになります。このような状況は現時点では想像がつかないかもしれません。だからこそ念頭に置いておきたいリスクシナリオであると私は考えています。

最近の金市場では、金融的な側面に注視されることが多く、金現物の動向への関心が低下しているように思われます。しかし、金は現物市場の動向が重要であることを再確認しておきたいところです。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した2020年第3四半期(7-9月期)の世界の金需要は、11年ぶりの低水準に落ち込みました。7-9月期のセクター別の需要を合計した総需要は前年同期比19%減の892.3トンと、2009年7-9月期以来の低水準となりました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、宝飾品や工業品の需要が落ち込んだことに加え、これまで買い手だった中央銀行が四半期ベースで約10年ぶりに売り越しに転じたことが影響しました。

各国中央銀行や国際通貨基金(IMF)など公的機関は、購入量から売却量を差し引いたネットで12.1トンの売り越しになりました。売却が購入を上回るのは2010年10-12月期以来です。過去に大量に購入したロシアなどが購入を止める一方、35トンを売却したウズベキスタンなど新興国による売りが出ました。

宝飾品需要は前年同期比29%減の333トンとなりました。過去最低だった4-6月期からは回復したものの、前年実績は下回りました。コロナ禍による経済悪化を背景とした所得の減少や金価格の高騰が需要を下押ししました。また、テクノロジーセクターも6%減少しました。

一方、投資需要は21%増と堅調でした。個人投資家が購入する地金や金貨の需要は222.1トンと49%増でした。伸びが目立ったのはトルコで、48.5トンと前年の7倍超に増加しました。上場投資信託(ETF)は5%増の272.5トンとなりました。

金価格が調整局面を迎える中でも投資家の持続的な資金流入が確認されました。ただし、ペースは鈍化しました。これまでは実需の減少を補ってきましたが、それができなかったことが大幅な需要減につながりました。

一方、インドの金需要については、10-12月期は祭事シーズンで小売りが増加すると見られることから、前期から回復するとの見方を明らかにしました。1-3月期の金需要は新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンの影響を受けて前年同期比49%減の252.4トンに、7-9月期は宝飾品としての需要が半減したため、30%減の86.6トンに落ち込みました。

インドでは10-12月期にヒンズー教の主要な祭典「ディワリ」や「ダシェラ」の開催や婚礼シーズンを迎え、例年、年末にかけて金の需要が高まる季節になります。ただし、WGCのインド担当者は、金価格が過去最高値に近い水準に高騰していることから、10-12月期の需要は過去最高となった前年同期の194.3トンを下回ると予想しています。もっとも、金価格が下げた場合には買いが入り、下値を支える可能性もあるでしょう。

金相場は先週末時点では辛うじて崩れずにいます。ダブルボトムを形成するのか、反発して1,900ドルを超えるのかを確認したいところです。1,835ドルまでの下げの可能性は残ると見ていますが、下げてもここで止まれば反発に向かいそうです。上昇トレンドが終了したとの判断は、1,690ドルを割り込んだ場合となるでしょう。

米大統領選をきっかけにリスクオフの状況が強まり、すべての資産が売られるパターンになり、ここまで下げる可能性も否定できません。この点を十分に理解しておく必要があります。ただし、そのような下げになれば、長期的な視点でポジションを積み増すタイミングになるでしょう。

また、過去の統計から金相場の季節性を確認すると、11月から翌年2月は最も好調なパフォーマンスになる期間です。つまり、「売ってはいけない期間」と言えます。これまでも「10月の安値は買い」としてきましたが、ここからさらに値を下げるようであれば、長期的な視点から買いを検討すべきであると考えます。

私は「株式・金・現金」の3分割法を推奨しています。これも本欄で常々申し上げていることです。株式を購入するときに同時に金を買うことで、資産の分散とリスクヘッジが可能になります。個人投資家にとって非常にシンプルで理にかなったやり方だと思います。その上で、株価や金が下げたときに、現金を利用して買い増せばよいと思います。

今は債券投資には妙味がありません。しかしリスク回避先としては、金を利用したほうが良いとの立場は全く変わりません。また、長期的に金に対する買い姿勢も変わりません。

円建て金相場は6,300円目前まで下落し、直近安値付近での推移となっています。さらに値を下げると新安値になり、値を下げやすくなる可能性があります。手仕舞い売りが加速し、一段安のリスクもあるでしょう。しかし、今は長期的な視点で金のポジションを増やすべき期間であると考えています。急落した場合でも耐えられる範囲で、徐々に買い下がっていきたいと考えています。

毎回の繰り返しですが、金は本来、キャピタルゲインを狙って投資するものではありません。しかし、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えています。

また、資産運用の王道である株式投資のリスクを軽減するためにも、長期的な視点で金に投資することは不可欠と考えています。金価格が押した場面では、時間と資金を分散しながら、ゆっくりと買いポジションを構築したいところです。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。週初から軟調な展開となり、週末にかけて徐々に水準を切り下げる展開となりました。週末には一時840.50ドルまで下落し、849ドルちょうどで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の10月27日時点のポジションは1万51枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,226枚拡大しました。買いポジションが1,052枚増加し、売りポジションが1,174枚減少しました。久しぶりに買い越し幅が拡大しています。

プラチナ相場は引き続き特段の強材料がない中、金相場の軟調な値動きに引きずられるように売りが優勢になっています。このような値動きを見ると、独自の材料で水準を切り上げるのは難しいことがわかります。

プラチナ相場の上昇には、少なくとも金相場の反転が不可欠と言えそうです。このまま値を回復できずに下落し、830ドルを割り込むようですと、直近安値を下回ることになり、大幅安につながるリスクもあります。特に800ドルを割り込んだ場合には相当の注意が必要と言えそうです。

もっとも、水準的にはかなり低いことは確かです。値ごろ感から買いを入れることは通常は危険ではありますが、生産コストや将来の燃料電池車向けの需要拡大の可能性などを考慮すれば、現在の水準は低いとも言えそうです。まずは下値を確認し、金相場が上昇に転じるのを確認した上で、プラチナ相場の方向性を見極めたいところです。

円建てプラチナ相場は下落しました。ドル建てプラチナ相場の下落に加え、米ドル/円相場が円高方向にあることも上値を抑えていると言えます。直近安値の2,900円が視野に入っていますが、これを割り込んだ場合には相応の下げになりそうです。ドル建てプラチナ相場の値動きを注視しながら、慎重に対処すべきでしょう。一方で、2,900円を割り込まずに反発した場合には買いやすいと言えます。そのような動きになれば、買いを検討したいところです。
 

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅反落の展開

シルバーは反落しました。週初から下落基調が続き、10月29日には一時22.56ドルまで下落する場面がありました。週末は小幅に値を戻し、23.63ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の10月27日時点のポジションは4万4631枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が95枚減少しました。買いポジションが294枚減少し、売りポジションが199枚減少しました。投機筋は取引を手控えており、方向性を見い出せていないようです。

銀相場は24.25ドルの重要なサポートを割り込み、トレンドラインを下回ったことから下落基調に転じています。これで9月24日の安値21.64ドルを割り込むようですと、さらに値を下げる可能性がありそうです。

銀独自の材料がないだけに、金相場が崩れると下げやすい地合いにあると言えます。現状の水準で下げ止まることができれば、反発の可能性も高まりそうですが、それも金相場次第でしょう。明確な強材料がないだけに、不安定な動きが続きそうです。しかし過去の統計から銀相場はここから4月までは上昇しやすい傾向があります。この点を念頭に置きながら見ておきたいと考えます。

円建て銀相場も下落しました。重要なレンジ下限の84円を割り込んだことから、下げ基調に転じています。直近安値の76円までの下落の可能性を念頭に置きながら、反発できるかを確認することになりそうです。その上で、反発に転じたことが確認できれば、その時点で買いを検討したいところです。その基準を84円に置いておきたいと考えます。

今後は米大統領選の結果を受けて、ボラティリティがさらに高まりそうです。収益機会が拡大する一方、リスクも高まります。銀相場はもともとボラティリティが高いことから、それに合わせてポジション管理をしっかりと行いながら、収益機会をとらえたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券