先週のゴールド:小幅続伸の展開

金相場は小幅に続伸しました。11月3日の米大統領選投票日を前に、米国の追加経済対策について与野党が合意するとの見方が、インフレヘッジとしての金の魅力を支えました。現地時間10月22日に開催されたトランプ米大統領と民主党候補のバイデン前副大統領による最後の米大統領選テレビ討論会の市場への影響はほとんどありませんでした。

週末、金相場は下落しました。米ドルの下げ幅縮小が重石になりましたが、米大統領選に対する不透明感から下値は支えられ、1,900.79ドルで週末の取引を終えました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は10月16日の1272.56トンから、10月23日には1263.80トンに減少しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の10月20日時点のポジションは24万9604枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が8,933枚拡大しました。買いポジションが1万3220枚増加し、売りポジションも4,287枚増加しました。

円建て金相場は続落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:底固めから上昇の動きを想定

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米大統領選前の投資家行動
・米長期金利の動向
・円建て金相場は底値探りの展開

金相場は年初から堅調な推移となり、8月には一時2,000ドルを超える上昇となりましたが、その後は調整が続いており、この期間が長くなってきています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う景気低迷を下支えするため、世界中で前例のない規模の景気刺激策が実施されていることが金相場上昇の主因となっています。しかし、この材料はかなり織り込まれてきた感もあります。

目先は1,875ドルと1,930ドルのレンジを抜けたほうに動きそうですが、現在はそのような動きを誘発する材料待ちと言えるでしょう。市場では、米長期金利の上昇に注目が集まっています。特に米30年債利回りの上昇が顕著になっており、投機筋は先物市場で過去最大級の空売りを行っています。これは、将来の金利上昇を見込んで、債券先物を売っている可能性を示唆していると言えます。

先物市場でもポジションは最終的には買い戻されますので、一時的に金利が低下する可能性があります。しかし、長期的な金利上昇見通しは、将来のインフレ懸念を反映しているのかもしれません。現在の米国の巨額債務は、最終的にインフレによって解消されるものと考えていますが、一部の市場参加者もそのあたりを想定しているのかもしれません。

ロイター調査によると、2021年の金価格は平均で2,000ドルに届かないとの見通しが示されました。値上がりの勢いが鈍っていることが背景にあるようです。ただし、一時的に最高値を更新する場面はあると予想されています。2019年半ばに1,300ドル前後だった金相場は2020年8月に2,072.50ドルの過去最高値をつけました。10年前の世界金融危機以降で最も急速な上昇となっています。

その背景にあるのは、新型コロナウイルスのパンデミックと経済低迷に対応した主要中央銀行の積極的な金融緩和です。これらにより債券のリターンが低下し、インフレ懸念が強まり、金の相対的な魅力を高めています。ただし、その後は米国債のリターンと米ドルが落ち着くと、金を買う動きは弱まり、1,900ドル近辺に下押しています。

42人の市場関係者に聞いた今回の調査では、金価格の予想中央値は2020年が1,788ドル、2021年が1,965ドルとなっています。3ヶ月前の1,713ドルと1,800ドルからは大きく切り上がっており、強気の見方が続いていると言えそうです。

繰り返し述べている通り、今後の経済対策の中心は、これまでの金融操作から財政操作になっていくでしょう。金融政策はすでに限界が来ており、今後は財政出動が中心になるしかないと考えています。世界規模で財政出動が行われていますが、米国の規模は桁違いであり、これが米ドル安を招くことはもはや不可避でしょう。

そうなれば、当然のように米ドル安・金相場の上昇にならざるを得ないと考えています。私は将来の超インフレを予想しています。財政出動の拡大を背景とした借金の積み上がりを、超インフレで解消する可能性があると考えているわけです。このような動きになれば、金相場が過去の主要資産のバブル化の基準となる10倍高に向かい、2025年から2030年までに1万ドル超えとなる可能性も否定できないのではないかと考えています。

一方で、「コモディティ王」と呼ばれるデニス・ガートマン氏の見方にも注目しておきたいところです。ガートマン氏は、金とポートフォリオについてのスタンスを示しています。ガートマン氏は、「少なくともポートフォリオの5%、おそらく10%を貴金属で持つべきである。大手のヘッジファンド運用者が25%持つべきとしているが、これは少し行き過ぎである。私は現時点で10、15、20%を越えて持つつもりはない」としています。「株式、金、現金の3分割法」を唱える私の考えはあっさりと否定されてしまいました。

とは言え、ガートマン氏は、金を含む貴金属に対して引き続き強気スタンスであるとしています。銀については、「金/銀レシオで見て銀が割安なのは明らか」としながらも、銀の高ボラティリティが自身の70歳という年齢には合わないとしています。なかなかユニークな説明です。その上で、「金の方が銀よりもはるかに入りやすく、合理的で、低ボラティリティである」としています。ここでの言われている「入りやすい」という表現は、「ポジションを持ちやすい」という意味です。

ガートマン氏は、金について強気である理由を3つ挙げています。それは、(1)地政学的な混乱、(2)国内政治の混乱、(3)ほとんどの先進国における拡張的な金融政策です。中でも、各国の金融緩和が最も重要な要因としています。

いつかは米国も諸外国もインフレになるとし、それが金価格にプラスに働くと見ているようです。特に米国については、FRB(米連邦準備制度理事会)が2%の物価目標を「平均物価目標」に変更したインパクトが大きいとしています。この点では、私と意見が一致しています。これは、インフレを2%にするのでなく、ある期間のインフレの平均を2%にするというものです。

ガートマン氏は、「パウエルFRB議長が言うように、平均で2%のインフレを実現したいのであれば、今後2-3年は3-4%のインフレが必要になる。これは金価格にプラスである」としていますが、これはまさに私がこれまで解説してきたシナリオです。とは言え、このような状況がすぐに起きるとは考えていません。長期的な視点で、将来のリスクの1つとして考えておきたいと思います。

ちなみに、私は「株式・金・現金」の3分割法を推奨しています。これも本欄で常々申し上げていることです。株式を購入するときに同時に金を買うことで、資産の分散とリスクヘッジが可能になります。これは個人投資家にとって非常にシンプルで理にかなったやり方だと思います。その上で、株価や金が下げたときに、現金を利用して買い足せばよいと思います。

今は債券投資に妙味がありません。しかしリスク回避先として、金を利用したほうが良いとの立場は全く変わりません。また、長期的に金に対する買い姿勢も変わりません。過去の統計から、11月から翌年2月までの上昇確率は8割を超えています。10月の安値を買うことで収益化できる可能性が高い点も再確認しておきたいところです。

円建て金相場は6,600円が重い状況が続いています。これを超えると強い動きになると考えられますが、今はまだそこまでの強さはないようです。まずは6,400円台での下値固めが必要と言えそうです。この時期をクリアできれば、徐々に値を上げていく動きに移行すると考えています。

毎回繰り返し述べている通り、金は本来、キャピタルゲインを狙って投資するものではありません。しかし、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えています。

また、資産運用の王道である株式投資のリスクを軽減するためにも、長期的な視点で金に投資することは不可欠と考えています。金価格が押した場面では、時間と資金を分散しながら、ゆっくりと買いポジションを構築したいと考えます。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。重要なサポートの850ドルを維持し、週末にかけて上昇し、10月23日には一時917.68ドルまで上昇しました。週末は901.50ドルと、節目の900ドルを超えて引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の10月20日時点のポジションは7,825枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,086枚縮小しました。買いポジションが476枚増加しましたが、売りポジションも1,562枚増加したことから、買い越し幅が縮小しました。ここ数週間は買い越し幅の縮小傾向が続いています。

プラチナ相場は節目の900ドルを超えてきました。850ドルを下値とした動きが続いていましたが、徐々に上値を試しそうな雰囲気になってきました。これで905ドルを超えるようですと、節目の950ドルを試し、さらに1,000ドルの大台を試すのではないかと感じるような雰囲気があります。

もっとも、そのための明確な背景があるわけではありません。あくまで値動きを見たうえでの見方です。これまでプラチナは金の値動きに大きく出遅れており、価格差も1,000ドルに達しています。

これまでも繰り返し述べている通り、プラチナと金には代替性がなく、価格差を論じてもあまり意味がありません。しかし、それにしても希少性から見れば、この差はかなり大きくなっている印象があります。これがプラチナ相場の上昇の理由になるとは言いませんが、投資先として選別される動きが少しでも出てくれば、徐々に差を埋めるような動きに移行するのではないかと考えています。

ロイターの調査によると、自動車の触媒に利用されるプラチナは、コロナ禍で落ち込んでいた自動車生産の回復に伴い、価格が上昇するとの見通しが示されています。ただし、上値は重いと見られています。

市場関係者32人の予想中央値によると、プラチナの2020年の平均価格は876ドル、2021年が950ドルとなる見通しです。3月には2002年以来の安値である558ドルまで落ち込みましたが、現在は900ドル前後で推移しています。この予想通りなら、プラチナの年平均価格は2020年に9年ぶりに上昇に転じることになります。

需給見通しを示したアナリスト5人中、3人が供給過剰の継続を予想し、2人は供給不足に転じるとの見方を示しています。プラチナ需給がひっ迫する状況は想定しづらいのですが、先週解説したような水素社会の拡大に伴うプラチナ需要の拡大への期待が高まれば、それを先取りする動きから買いが入ることもあり得るでしょう。このような材料も念頭に置きながら、プラチナ市場を見ていきたいところです。

円建てプラチナ相場は、週末に大きく値を上げました。結果的に節目の3,000円を維持して上昇しており、これで3,200円を超えると大きく値を上げる可能性がありそうです。その場合には、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。

前回コラムでは「徐々に買いを積み上げていきたいと考えます」としましたが、さっそくそのような動きになってきました。こうなると、金に対して価格水準が低いことに着目した買いが入り、金よりもキャピタルゲインが大きくなる可能性も十分にありそうです。少しだけリスクを取りつつ、買いを積み増していきたいと考えます。ただし、3,000円を割り込むようであればいったん手仕舞いしたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反発の展開

シルバーは反発しました。ただし、値動き自体は小幅であり、10月21日に25.27ドルの高値を付けた後は週末にかけて上値を切り下げ、週末は24.58ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の10月20日時点のポジションは4万4726枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が3,938枚拡大しました。買いポジションが26枚増加し、売りポジションが3,912枚減少しました。投機筋は再び買い姿勢を強めてきているようです。

銀相場は強い動きとは言えませんが、少なくとも下値を切り上げる動きになっており、徐々に上放れる準備をしているようにも見えます。もっとも、銀独自の材料があるわけではなく、引き続き金相場次第の展開になりそうです。24ドル台を維持できていれば、いずれ大きく上昇する場面が来そうな雰囲気です。そのうえで、25.70ドルを超えてくると、そのような展開になると考えています。

ロイター調査によると、銀価格の2020年の予想中央値は20.50ドル、2021年は26ドルとなり、3ヶ月前のそれぞれ17.50ドルと20.03ドルから引き上げられました。2019年半ばに15ドル前後だった銀相場は、2020年に入って一時7年ぶり高値の29.84ドルまで買い進まれ、金を超える上昇ぶりを見せています。もっとも銀需要のおよそ半分は工業用であり、世界経済のさえない成長が上値を抑える可能性は残ります。

円建て銀相場は反発しました。引き続き狭いレンジでの推移が続いており、84円と88円のレンジのどちらに抜けるかを確認することになりそうです。88円を超えると大きく上昇することになりそうです。そのような動きになった場合には、その動きについていくとよいでしょう。

一方で、84円を割り込むと下げが加速する可能性があります。その場合には、手仕舞い売りを行い、下値確認を優先したいところです。

今後は米大統領選を控える中、ボラティリティが高まりそうです。収益機会が拡大する一方、リスクも高まります。銀相場はもともとボラティリティが高いことから、それに合わせてポジション管理をしっかりと行いながら、収益機会をとらえたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券