先週のゴールド:小幅続伸の展開

金相場は小幅続伸しました。

週初は米国の新型コロナウイルスに対応した追加経済対策が不十分との見通しから、インフレヘッジとされる金の魅力を押し下げました。トランプ米政権は10月10日、下院に対して、追加経済対策の可決を呼びかけましたが、米議会での行き詰まりを背景に米ドル高が進行したことが嫌気されました。また、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しが、これまでの予想よりもやや改善された内容だったことも金売りにつながったとの見方も浮上しました。

その後は上昇しました。米ドル安や米大統領選、世界経済の回復見通しの不透明感から安全資産である金を買う動きが加速しました。

さらに、10月15日には11月の米大統領選までに追加経済対策が議会を通過する可能性を示唆するトランプ米大統領の発言が好感され、買いが入りました。しかし、週末には与野党合意の可能性が薄れたことから売りが出て、1898.97ドルで引けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は10月16日に1272.56トンとなり、10月9日の1271.52トンから小幅に増加しました。10月14日には一時1277.94トンに増加する動きもみられました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の10月13日時点のポジションは24万671枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が7,916枚縮小しました。買いポジションが6,064枚増加しましたが、売りポジションも1万3980枚増加したことで、売り越し幅が拡大しています。

円建て金相場は下落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下値切り上げの動きを想定

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価との連動性
・投資家の買い姿勢は継続
・円建て金相場は底堅い展開に

金相場は明確な方向性が見えないものの、値動き自体はわずかな動きではありますが下値を切り上げています。今はあまり積極的な取引が見られませんが、少なくとも下値を切り上げる動きからは一定の堅調さを感じ取ることができます。

とは言え、今の価格水準は、すでに買っている向きからすれば、積極的に買いを入れたいとは思わないでしょう。やはり、押し目を待って買いたいと考えているはずです。

以前から繰り返すように、金価格は11月から2月が最も堅調に推移する期間です。これを知っている投資家であれば、10月の安いところで買いを仕込み、その後の4ヶ月で収益化しようとするでしょう。私自身もそのタイミングを狙っていますが、なかなか大きく下げてくれません。同じように考えている投資家が世界中にいるとすれば、相場はむしろ下げない可能性もありそうです。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の最新データによると、9月の金上場投資信託(ETF)およびそれに類する金関連の投資商品への投資額は、8月に比べて増加しました。8月は主要地域の中で欧州から売りが出ていましたが、9月は価格が下げたこともあり、すべての主要地域で買いが膨らみました。2020年前半の購入量に比べると少ないといえますが、それでも四半期ベースで買い越しが続いていることは、投資家の金への関心が衰えていないことを示しています。

2020年1-9月の金関連ETF等の購入量はネットで1003.3トンとなり、前年同期比23.7%増となっています。購入量は1040.7トンと、前年同期比346%増、売却量は37.4トンと、同10.9%減となっており、購買意欲の強さを確認することができます。

最大の購買地域は米国で634.0トンと、同29.5%増ですが、日本も6.0トンと量は少ないものの、増加率は27.4%と引けを取りません。2020年1-9月の日本勢の購入量は世界で11番目ですが、金保有の重要性を訴えている私としては、日本勢の金買いがもう少し増えてほしいというのが本音です。

さて、米国は2020年会計年度(9月30日まで)の財政赤字が過去最悪の3兆1320億ドルに達したと発表しました。大規模な新型コロナウイルス対策を導入したことで、これまでの過去最悪だった2009年度の1兆4160億ドルの2倍を超える水準に膨らみました。歳出は前年度比2兆1050億ドル増の6兆5500億ドルでした。増加分のほぼ全てが新型コロナウイルス対策によるものでした。

米財政赤字の対GDP比は拡大の一途ですが、私はこの比率と金価格が非常に似た推移をたどっていることを指摘してきました。これは、今後も米国の財政赤字が悪化すれば、金価格が上昇しやすいことを意味します。

現在の米財政赤字とGDPの関係から試算すると、金価格は少なくとも1トロイオンス=2,500ドル、最大で3,000ドル程度が適正レベルと考えられます。必ずそのような動きになると言うつもりはありませんが、この指標からみれば今の金相場は少なくとも3割は割安です。この点は念頭に置いておいてもよいでしょう。

コロナ禍に苦しむ各国は、今後も経済支援策を継続せざるを得ないでしょう。私は、今後の経済対策の中心は、これまでの金融政策から財政政策になると考えています。すでにその兆候が見られますが、そのように考える根拠として、金融政策がすでに限界に達していることが挙げられます。

インフレ率の引き上げのために実施してきた政策は、その目標に達することなくすでに数年が経っています。そのような状況の中で、コロナ禍がもたらされました。金融・経済支援のため、金融当局と各国政府はいち早く、それも過去にない規模で対応しました。

しかし、金融政策に限界が来ているため、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は財政出動の拡大の必要性をしきりに訴えています。米政権がこのような声を真摯に受け止め、財政出動をさらに拡充するようですと、財政負担の増加で米ドル安は加速することになるでしょう。

また、将来はインフレの可能性も高まると考えられます。こうなれば、米ドル安・金相場の上昇につながるでしょう。私はこのシナリオが実現する確率はかなり高いとみています。その結果、金相場が過去の主要資産のバブル化の最低基準である10倍高となり、2025年から2030年までに1万ドル超えとなる可能性もあり得るとみています。

現時点では想像もつかない世界ではありますが、私はそのようなシナリオを念頭に今の金相場を見ています。

円建て金相場は6,400円を維持して、底堅く推移しています。依然として6,600円は重い状況ですが、これを上抜けるとかなり早い動きになる可能性もあります。今は下値を固める時期と考えていますが、それが完了すれば、いずれ大きく動き出すでしょう。そうなる前に、少しずつ買いを積み上げておきたいと考えています。下押しした場合でも、6,300円は堅いでしょう。

毎回繰り返し述べている通り、金は本来、キャピタルゲインを狙って投資するものではありません。しかし、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えています。

また、資産運用の王道である株式投資のリスクを軽減するためにも、長期的な視点で金に投資することは不可欠であると考えています。今は株式と金は高い相関があり、同じように動くことが多いのですが、これもいずれ修正されるでしょう。

その意味でも、金価格が押した場面では、時間と資金を分散しながら、ゆっくりと買いポジションを構築していきたいと考えます。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。週初は上昇を目指す動きもみられましたが、高値を超えることができなかったことから売りが優勢となり、10月15日には一時837.50ドルの安値をつける場面もありました。週末は860.13ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の10月13日時点のポジションは8,911枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が316枚拡大しました。買いポジションが1,006枚減少しましたが、売りポジションも1,322枚減少したことから、買い越し幅が拡大しました。ただし、買い・売り両方のポジションが減っていることは、投機家のプラチナへの興味の減退を示している可能性があります。

プラチナ相場は結果的に節目の900ドルが重い展開になっています。これを上抜けるには、相応の材料も必要と言えます。幸い、現時点では9月24日につけた直近安値の825.50ドルを割り込んでいません。ここを維持できていれば、反発に向かう可能もありそうです。まずは、865ドルを超えるかを注視しておきます。

繰り返し述べている通り、今は目立ったファンダメンタルズ材料がありません。したがって、引き続き金相場の値動きに注目しておきたいところです。

一方で、欧州では自動車関連の回復もみられています。欧州自動車工業会(ACEA)が公表した9月のEUの新車販売台数は前年同月比3.1%増の93万3987台でした。9ヶ月ぶりのプラスで、コロナ禍後初めて前年を上回りました。

1-9月の累計販売台数は、前年同期比28.8%減の705万8090台と、依然として落ち込んでいますが、9月の回復ぶりは、将来のプラチナ需要の回復への期待につながる可能性があります。欧州の自動車市場の中心は、依然としてディーゼル車ですが、そのディーゼル車の自動車触媒の原材料に使用されるのがプラチナです。したがって、市場は欧州の自動車市場の動向を気にする傾向があります。

また最近では、水素社会の拡大に伴う、プラチナ需要の拡大への期待もあるようです。燃料電池車では、1台につき約100グラムのプラチナが使われていると言われています。燃料電池で電気を起こす際の化学反応を促す触媒にプラチナが使用されています。燃料電池車が普及すれば、相応のプラチナ需要が喚起され、価格の上昇につながる可能性もありそうです。これはやや長期的なテーマではありますが、いずれ材料視されるでしょう。このような視点を持ちつつ、プラチナ相場を見ていきたいと考えます。

円建てプラチナ相場は一時急落しましたが、節目の3,000円をなんとか維持しています。反発し、3,100円を超えて、さらに3,200円を超えるようですと上昇に勢いがつきそうです。そのような動きを想定して、徐々に押し目を買っておきたいと考えます。

一段安になった場合でも、2,900円を維持できれば反発すると考えています。ダブルボトムを形成すれば、むしろ買いやすくなるでしょう。いずれにしても、プラチナについても、徐々に買いを積み上げていきたいと考えます。上昇した場合には、金よりもキャピタルゲインが大きくなる可能性がありそうです。少しリスクを取りつつ、買いを検討してもよいと考えます。ただし、2,900円を割り込むようであれば、いったん手仕舞いし、底値を固めるのを待つのが得策でしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーは反落しました。週初の10月12日には一時25.50ドルまで上昇する場面がありましたが、強い動きは続かず、徐々に上値を切り下げ、週末は24.17ドルで引けました。10月15日には一時23.56ドルまで下げましたが、辛うじてサポートラインを維持しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の10月13日時点のポジションは4万788枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が469枚縮小しました。買いポジションが1,562枚増加しましたが、売りポジションも2,031枚増加しました。投機筋は先週に続いて、売り・買いともにポジションを拡大させましたが、全体的に方向感を見出せていないようです。

銀相場は23.50ドル近辺に位置する重要なサポートを今のところ維持して推移しています。したがって、まだ崩れたわけではありません。しかし、23.50ドルを割り込むと、いったんは22ドル台後半まで下げる可能性があります。そのような動きになる可能性も視野に入れながら、全体の動きを見ていきたいところです。

銀相場も独自の材料がなく、引き続き金相場次第の動きになりそうです。したがって、金相場の値動きもしっかりと把握しておくことが肝要です。その上で、26ドル近辺を試すことができるかを確認したいと考えます。

円建て銀相場は反落しました。前回コラムでは「節目の90円から95円まで上昇する可能性もありそうです」としましたが、わずかに90円を超えることができませんでした。そのため、いったん下げましたが、底割れのような動きになっているわけではありません。

したがって、下げた場合でも、節目の80円を維持できれば、再び上昇の可能性が高まるでしょう。一方で90円を超えると、大幅上昇の可能性も十分にあるでしょう。今はあまり無理をしたくないところではありますが、米大統領選を控える中、ボラティリティが高まることで収益機会が拡大します。銀相場はもともとボラティリティが高いため、それに合わせてポジション管理をしっかりと行いながら、収益機会をとらえたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券