先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸しました。トランプ米大統領が追加経済対策協議を米大統領選後まで停止すると発言したことで米ドル高となり、売られる場面もありました。しかし、その後に米航空会社への新たな賃金支援を示唆したことが金相場を下支えしました。

また、米大統領選を巡る不透明感に加え、新たな景気刺激策がインフレを促し、リスク資産への投資意欲をそぐとの見方が広がり、金市場への関心が高まりました。ただし、トランプ米大統領が新たな景気刺激策に言及したことで、米主要株式指数は1ヶ月ぶりの高値に上昇する一方、金の上値は抑えられる場面もありました。

週末は上昇し、1929.43ドルで引けました。米ドルが約3週間ぶり安値に下落したほか、米国の追加経済対策の実現を見込む向きが増えたことで、投資家は起こる公算が大きいインフレへのヘッジとして金に買いを入れました。

包括的な新型コロナウイルス経済対策に関する民主党との協議を今週停止したトランプ米大統領は、業績不振にあえぐ航空会社の支援策を含む、要点に絞ったスリムな経済対策案を提示しました。

また、米大統領選でバイデン前副大統領が支持率でトランプ米大統領との差を広げていることで、追加刺激策の見通しが高まり、金の魅力が高まりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は10月9日に1271.52トンとなり、10月2日時点の1275.6トンから小幅に減少しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の10月6日時点のポジションは24万8587枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が4,928枚拡大しました。買いポジションが4,816枚増加し、売りポジションが112減少しました。投機家は2週連続で買い越し幅を拡大させており、強気スタンスを維持しています。

円建て金相場は米ドル建て金相場の上昇を背景に値を上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:上昇基調の継続を想定

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・下値確認からの上値トライの展開
・投資家の買い姿勢が継続
・円建て金相場は上昇基調継続へ

金相場は底打ちを確認し、上向き基調に入りました。これで1,940ドルにある重要なチャート上のテクニカルポイントを超えると、投機筋などの買いが入り、さらに上向くと考えています。金市場には言うまでもなく、世界的な興味が注がれています。

世界的に前例のない政府や中央銀行の景気刺激策に支援され、金は年初来で24%上昇しています。経済、政治に不透明感が広がる中、インフレヘッジや資産の逃避先と見なされています。今後も堅調な推移が続くでしょう。

ただし、高値を付けたことで、売っている主体もいます。ロイターの記事「世界の中銀、8月に金売り越し1年半ぶり=WGC」で記載の通り、ワールド・ゴールド・カウンシル(以下、WGC)は10月7日、世界の中央銀行による8月の金売却量が12.3トンとなり、購入量を上回ったと発表しました。

月次での売り越しは約1年半ぶりで、急上昇した金価格の抑制につながりました。コロナ禍を受け、金相場は2020年初の1,500ドルから8月上旬には2072.50ドルに上昇し、史上最高値を更新しました。その後、1,900ドル前後まで調整しております。なお、中央銀行の金保有量は約3万5000トンで、2兆ドルに相当します。

また、WGCによると、ウズベキスタンが31.7トンを売却し、インド、キルギス、トルコなどが小規模な購入をしたとのことです。中央銀行の2018年の購入量は656トンと、過去50年で最多でした。2019年の購入量は650トンでした。WGCは、「2020年は備蓄ペースが鈍化し、8月には売り越しとなったものの、中央銀行は年初来で200‐300トンを備蓄しており、2020年も引き続き買い越しになる」と予想しています。結局のところ、政府・中央銀行は金保有を増やすことになるでしょう。

一方、WGCは、金を投資対象とする上場投資信託(ETF)が2020年1-9月期に時価600億ドルに相当する1,003トンの金を買い越したと発表しました。WGCによると、ETFは9月には金を68.1トン買い越したとのことです。1-9月期の買い越しは2019年1年間の実績を大きく上回っています。

WGCが調査している120本余りのファンドが保有する金は、合計で2350億ドルに相当する3,880トンとなりました。2020年初に1,500ドルだった金価格は、新型コロナウイルスの世界的大流行により買い上げられ、8月上旬には過去最高の2072.50ドルまで上昇しております。

しかし、その後はETFの買いが減速し、宝飾用金の販売が低調にとどまったことや、中央銀行が金を市場に放出したため、金価格は1,900ドル割れの水準に下落しました。中央銀行は近年、金の主要な買い手となっていましたが、WGCは8月には金を売り越したとしています。しかし、その安値を投資家が買い上げたと言えます。ちなみに、2020年の世界の金需要は年間で4,000-4,500トンとみられています。

目先の金相場は直近高値を更新し、反発基調に入ったようです。これで1,940ドルを明確に上抜けると、再び上値を試す展開になるでしょう。もちろん2,000ドル超えも視野に入ってくるでしょう。

株高で米ドル安になると、金相場が上がりやすくなってきます。以前のような、「株高=リスクオン=金売り」の構図ではなくなっています。こうなると、金は株式投資のリスク回避先にはなりづらいのですが、それはあくまで一過性のものでしょう。

もっとも、基本的な方針は変わりません。これまで通り、押し目を買い続けることが肝要だと思います。また、株式投資をしている場合には、株式と同額のポジションを保有するとよいのではないでしょうか。

それは、過去のデータからも極めて有効であることが示されています。さらに、11月から翌年2月までの上昇確率は8割に達します。10月の安値を買うことで収益化できる機会が増えるでしょう。できれば一度大きな押し目が欲しいところです。

ところで、スイスの著名投資家であるマーク・ファーバー氏が、金・銀・プラチナの買いを推奨しています。ファーバー氏は、「中央銀行が貨幣を増発すると、現金の購買力が低下する。特に多くの欧州諸国のようにマイナス金利の場合ではそのようになる。急激に増やせない、あるいは、はるかにゆっくりしか増やせない資産が金・銀・プラチナで、これらは上昇する傾向がある。したがって、資産の約25%を金などで保有することを奨めたい」としています。

最近の著名投資家は、私が提唱している「株式・金・現金」の3分割法に同意するかのような発言を行っています。世界的にこの動きや発言が増えていることは、非常に興味深いと言えます。ファーバー氏が、ポートフォリオの4分の1を金など貴金属で保有するよう奨めているのは、各国の大規模な金融・財政政策により法定通貨が減価し始めるとのシナリオが背景にあります。これも、私が指摘し続けていることと同じです。

ファーバー氏は、米ドルの主要準備通貨の地位が終わる可能性にも言及しています。「世界中の無知な政府の官僚や中央銀行家であっても、米国がもはや世界の準備通貨の信頼のおける発行者ではないことを理解・認識しなければいけない。いつかはわからないが、5年のうちに米ドルが準備通貨でなくなる可能性がある。金本位制に戻るかもしれない」としています。このように見ている世界の著名投資家は少なくないようです。

いずれにしても、将来のインフレに備えて、金を保有しておくことは一定の意味があると考えています。私はT-Bond先物のショートの積み上がりに注目しています。これは、投機家が長期金利の上昇を見込んで、債券を先物で売っていることを意味します。

このショートの水準はデータが入手できる1986年以降で最大になっています。それだけ、金利はすでに底打ちし、これから上がるしかないと考えている投資家が多いということです。また、保有している債券の下落リスクをヘッジしている投資家も多いと言えます。いずれにしても、金利はすでに底打ちしたと言えるでしょう。

このように、徐々に将来のインフレへの懸念が高まる可能性が高まってきているのかもしれません。その動きが加速し始めると、FRB(米連邦準備制度理事会)は利上げができない中、インフレのコントロールができず、金融市場は暴発する可能性があります。そうなる前に、投資家はインフレへの備えをしておくべきででしょう。

そのためには、株式投資もよいのですが、やはり金に投資をしておくことが肝要です。今の時点でここまで想定しているのは、著名投資家か富裕層くらいでしょう。その意味では、市場は波乱の可能性を含んでいると言えます。

ユーロ・パシフィック・キャピタル社CEOで著名投資家のピーター・シフ氏も、米ドルの大幅安を予想しています。シフ氏は「追加刺激策が実施される可能性はもちろんあるが、その刺激策は経済を助けはしない。経済の産出量を増やすことはない。市場を刺激し、株価を押し上げるだけだ」としています。まさにその通りであると私も考えています。財政出動は実体経済を助けることはなく、金融市場を利するだけです。むしろ、米経済を大きく損なう可能性もあるのではないでしょうか。

私も繰り返し述べていますが、財政刺激策が生み出すのは「貨幣の価値低下」であり、「ドルの減価」です。シフ氏は、政府の財政悪化と中央銀行の貨幣増発が米ドルの価値低下につながるとの指摘しています。シフ氏は長年同じことを主張してきていますが、コロナ禍で皮肉にもシフ氏の主張は市場のコンセンサスになりつつあります。この点は私も言い続けてきたところとなります。

シフ氏は、米大統領選でいずれの候補が勝利しても今の傾向は続き、「バブルの火に油を注ぐことになる」と予想しています。それ以外のシナリオはないのではないかとさえ思います。米国の金融資産の構造を考えると、そうならざるを得ないと考えています。そのためにも、早いうちに、金投資を始めておくことが肝要です。

円建て金相場は6,300円で下げ止まりから、6,600円を目指す展開です。これを上抜けると大きく上昇しそうです。今週はそのような動きになるかを確認します。超えていけば、100円単位で節目を確認することになるでしょう。押しても6,300円が堅そうです。そのため、買い遅れないように、徐々に買いポジションを積み上げていきたいところです。

毎回繰り返し述べている通り、金は本来、キャピタルゲインを狙って投資するものではありません。しかし、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えています。また、資産運用の王道である株式投資のリスクを軽減するためにも、長期的な視点で金に投資することは不可欠と考えています。押し目の場面では、時間と資金を分散しながら、ゆっくりと買いポジションを構築していきたいと考えます。

プラチナ:小幅続伸の展開

プラチナは小幅に続伸しました。10月6日には一時846.50ドルまで売られる場面もありましたが、その後は金相場の上昇につれる形で上昇に転じ、週末は886ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の10月6日時点のポジションは8,595枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,229枚縮小しました。買いポジションが71枚増加しましたが、売りポジションが1,300枚増加し、買い越し幅は縮小しました。投機家は上値の重さを嫌気しているようです。

プラチナ相場は10月6日に急落しましたが、重要なチャート上のサポートを維持して反発したことで、目先の底割れの動きを回避しました。週末10月9日には896ドルまで上昇しましたが、節目の900ドルを超えられず、さらに重要なチャート上のレジスタンスを超えることができず、上値を抑えられています。

したがって、890ドルから900ドルの水準を上抜けると勢いがつき、まずは915ドルを試すことになりそうです。その上で、上昇基調が続けば、950ドル前後までの上昇が見込めそうです。

これまでも繰り返し述べてきたように、プラチナ独自の材料に明確なものがなく、ファンダメンタルズ材料を背景に値動きがみられることは想定しづらいと言えます。したがって、目先はやはり金市場の動向を確認することが重要でしょう。その上で、上記のチャートポイントを確認しながら対処することになりそうです。

また、前述のように、ファーバー氏が金とともにプラチナの買いも推奨しています。多くの著名投資家が金投資を進め始めていますが、プラチナも出遅れ感から買われやすくなる可能性があると言えます。

繰り返すように、ファンダメンタルズ面や生産コスト面から見れば、プラチナ相場が上昇し続けることは考えにくいのですが、いったん投資マネーが流入し、上昇し始めると、この動きを利用して収益を上げようとする短期投資家の参加が相場を押し上げる可能性は十分にあるでしょう。

その際には、ファンダメンタルズとの乖離が生じることになりますが、そのような展開の際にはある程度割り切って市場に参加することも重要です。ただし、下落に転じた場合には、できるだけ早く見切りを行うことも重要です。

円建てプラチナ相場は横ばいの展開です。ただし、節目の3,000円を維持して反発しており、これで3,200円を超えるようだと上昇に勢いがつきそうです。そうなると、3,400円から3,500円までの上昇も視野に入るでしょう。

米ドル建てプラチナ相場が直近安値を下回らずに反発していることから、目先は下げにくいと考えられます。円建てプラチナ相場も同様の動きになっており、まずは上値を試すでしょう。少量でもプラチナのポジションを保有しておけば、上記のような背景から上昇相場で収益を上げることができると考えられます。3,200円超えでは、その流れに乗って買いポジションを積み上げたいところです。ただし、引き続きボラティリティの高い動きが想定されます。リスク管理をしっかりと行いながら対処したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅続伸の展開

シルバーは大幅続伸となりました。10月6日には一時22.83ドルまで下落する場面がありましたが、その後は反発し、週末には一時25.16ドルまで上昇しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の10月6日時点のポジションは4万1257枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が527枚拡大しました。買いポジションが727枚増加し、売りポジションが200枚増加しました。投機筋は売りポジションを小幅に拡大させましたが、全体的に買い姿勢は維持しています。

銀相場は10月6日につけた安値水準が底値になり、反発しています。この水準は長期的な上昇トレンドのサポートに相当する水準だっただけに、割り込まずに反発したことは非常に大きな意味があると言えます。

目先は底打ちを確認した格好であり、このまま上昇基調が続く可能性が高まったと言えます。反発基調が続き、26ドルを超えるようだと再び基調が強まることになりそうです。引き続き銀独自の材料はありませんが、金相場の動向を見ながら、銀相場の値動きを確認するようにしたいところです。

一方、反落に転じた場合には、23.50ドル水準が重要なサポートになりそうです。これを下回ると、基調が崩れることになります。この点も念頭に置きながら、少し強い動きを想定しておきたいと考えます。

円建て銀相場は続伸しました。前回コラムでは「85円を超えてから買いを検討するのがよさそうです」としましたが、そのような動きになってきました。この勢いで行くと、節目の90円から95円まで上昇する可能性もありそうです。

勢いがつけば、比較的短期間で変動するのが銀相場の特徴です。そのような動きになった場合には、乗り遅れないようにしたいところです。逆に、再び75円を割り込んだ場合には、安易な買いは避け、いったん手仕舞い売りを行い、下値を確認することを優先したいところです。

その場合、80円程度で下げ止まれば、大きな下げにならずに、比較的早い段階で反発に向かいそうです。また、銀相場はボラティリティが高いため、ポジション管理をしっかりと行うようにしたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券