先週のゴールド:大幅下落の展開

金相場は大きく下落しました。欧州で新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、景気悪化の懸念が再燃し、米ドル買い・ユーロ売りが進行したことで、米ドル建てで取引される金は割高感から売られました。

また、欧米の株価が大幅下落する中、換金目的の金売りも出ました。9月22日には、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が議会公聴会に出席し、米経済の先行きは依然として不透明であり、必要に応じてFRBはさらなる手段を取る考えを示しました。しかし、市場では材料視されませんでした。その後も下落を続け、2ヶ月超ぶりの安値を付けました。

米国の経済支援に向けた景気刺激策実施への不透明感が米ドル買いを促し、金相場の下げにつながりました。週間ベースでは4.4%安と、下落幅としては過去6週間で最大となりました。米ドルが週間ベースで4月上旬以来の上げ幅を記録したことが影響しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、9月25日は1266.84トンとなり、18日の1246.99トンから増加しました。21日には1278.82トンまで増加する場面もありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の9月22日時点のポジションは21万9060枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が2万1917枚縮小しました。買いポジションが1万5497枚減少し、売りポジションが6420枚増加しました。投機家はこの3週間は買い越し幅を拡大させていましたが、金価格の一段の下落を受け、一転して売りを出しています。

円建て金相場は米ドル建て金相場の下落を受けて、大きく値を下げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下げ止まりを待つ

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米ドル高基調の転換と株価の下げ止まり
・テクニカル面での売られすぎ感
・円建て金相場は底値を確認へ

金相場は米ドル高基調を背景に値を下げています。しかし、市場の中身を見ると、投資家は金上場投資信託(ETF)に押し目買いを入れる一方、投機筋も売り込んでいる状況ではありません。したがって、今の下げは、投資家・投機家が主導するものではなく、現物に絡む売りが背景にある可能性がありそうです。

このような売りは、いったん止まればその後は沈静化します。そうなると、次の出番は安くなった価格に対して、投資家が動き出すかどうかにあります。つまり、押し目買いを入れるかどうかがポイントになります。これまでは価格の上昇局面でも積極的な買いを入れていましたが、最近はあまりそのような動きは見られません。

株価が上昇する中でも金ETFの購入を続けてきた投資家の動きがやや鈍っていることが、最近の金価格の低迷の背景にあると考えられます。したがって、今後株価が上昇し、ポートフォリオに占める金の割合が低下すれば、金はポートフォリオ調整の一環で再び買われる可能性があるでしょう。

チャートを見ると、1,850ドル前後にきわめて重要なサポートラインがあります。先週後半にはこの水準まで下げましたが、週末時点では辛うじて維持しています。この水準を維持できれば、再び上向く可能は十分にあるでしょう。

もっとも、2020年の金価格の上昇はスピードが速すぎたようです。短期間で一気に2,000ドルまで上昇しましたので、今はその上昇に対する調整的な動きにあると考えています。超長期的な視点に立てば、1,650ドル程度まで調整したとしても、今回の上昇基調は維持されていると判断できるでしょう。

当面はまだまだ不安定な動きになりそうですが、長期的な視点で見ていくことが肝要でしょう。米財政拡大とFRBによる低金利政策とインフレ政策を考慮すれば、米実質金利が低下しやすい地合いが続くことが考えられます。このような状況では、金相場は上昇しやすくなると言えます。FRBは2023年まで低金利政策の継続を示唆しています。この点も十分考慮したうえで、金投資を考えていく必要がありそうです。

香港政府統計局が発表した統計によると、香港経由の中国の金の純輸入量は8月が1.184トンと、前月の1.395トンを小幅に下回りました。一方、香港経由の金の総輸入量は6.127トンと、7月から約57%増加し、3月以来5ヶ月ぶりの高水準でした。過去数ヶ月と比較して、中国が輸入を再開し、前向きな変化があることを示しています。

ただし、年ベースでは、純輸入量が前年同月比90%超の減少で、総輸入量は前年同月の15.66トンを61%下回っています。これまで中国の金購入は、新型コロナウイルスの感染拡大や金価格の上昇などを背景に大きく減少していました。

しかし、最近は経済指標の改善が顕著であり、特に小売売上高が8月に前年同月比でプラス圏に浮上してきました。このような回復基調が続けば、今後は中国の金購入の動きが強まり、それが金需給の改善から金相場の上昇につながることも想定されます。金価格の動向と併せてみていきたいところです。

円建て金相場は直近のダブルボトムとなっていた6,600円の水準を割り込んだところから大きく値を下げており、6,300円まで下げました。7月後半以降に金相場が急伸した際には、この6,300円を超えてから明確な強気相場に入った経緯があります。そのため、今回はこの水準で下げ止まるかが重要なポイントになります。これを割り込むと、下げ基調が強まり、相場は崩れることになりそうです。

もっとも、その場合でも、6,200円で下げ止まれば反発の可能性は残るでしょう。まずは下値を確認したいところです。その上で、反発に向かえばその時点で買いを検討できるでしょう。

一方、長期的な視点に立てば、金はリスクヘッジのためにも常に保有しておきたい資産です。株式投資を行う際には、できれば同額の金を購入することを強くお勧めします。そうすれば、保有資産のリスクとリターンのバランスを適度に保つことができます。株式投資だけでは、保有資産の価値は大きく変動し、心理的に良くないだけでなく、正しい判断ができなくなる可能性さえあります。そのような事態を避けるためにも、株式の購入と同時に金を買うことは理にかなっていると言えます。

金は本来、キャピタルゲインを狙って投資するものではありません。しかし、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えています。この点も念頭に置きながら、長期的な視点で金に投資することを検討したいところです。特に押し目の場面では、時間と資金を分散しながら、ゆっくりと買いポジションを構築していくことが肝要です。

プラチナ:大幅反落の展開

プラチナは大幅反落しました。9月24日には一時825.50ドルまで下落する場面がありました。週末は847ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の9月22日時点のポジションは1万260枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が9,177枚縮小しました。買いポジションが4,749枚減少し、売りポジションが4,428枚増加しました。投機家の売り姿勢が継続しています。

プラチナ相場は9月16日に戻り高値の984.50ドルまで上昇しましたが、その後の下げは極めて大きなものになっています。金相場が下げに転じたこともあり、プラチナ独自の材料がない中、下げ止まるのが難しかったと言えます。

850ドル前後の水準は、これまでも重要な節目になっており、ここを維持できるかどうかは、今後の相場転換を占う上できわめて重要なポイントであると言えます。相場反転のきっかけになるのは、やはり金相場の動きでしょう。

繰り返すように、プラチナ独自のファンダメンタルズ材料では、価格上昇につながる要因に乏しく、期待感がほとんどありません。その意味でも、プラチナ相場の上昇には、金相場の上昇は不可欠といえます。また、プラチナの生産コストの低下も、プラチナ価格の上値を抑える要因になる可能性があります。

Metals Focus社が発表した試算によると、2019年のプラチナの生産コストは世界平均で628ドルだったもようです。ちなみに、2017年は909ドル、2018年は763ドルであり、この3年で大幅に低下しているのが確認できます。生産コストはプラチナを含むコモディティのフロアプライスとして意識されやすいこともあり、下値の目処になる一方、コストの低減は上値を抑える要因にもなり得ます。

生産コストの低減の背景には、プラチナを生産する際の副産物として生産されるパラジウムやロジウムなど他の白金族系メタルの価格上昇があるとの見方もあります。ちなみに、パラジウム価格は2017年から2倍超上昇し、ロジウム価格は同様に約15倍にまで上昇しています。ちなみに、プラチナ価格はほぼ横ばいでした。

このように、プラチナの生産コストは、副産物の価格が上昇したことが背景にある可能性があり、そうであるとすれば、今後は副産物の価格変動次第で、プラチナの生産コストが変動する可能性があるため注意が必要です。やはり、最終的には需要サイドの回復がなければ、上昇しづらいと言えるでしょう。

短期的には、先週末の850ドル前後がサポートレベルになると考えられます。テクニカル面では売られすぎ感も強まっており、目先は反発が見込まれます。そのような動きになった場合、直近高値水準の985ドルから節目の1,000ドルを超えるかを確認することになりそうです。

その上で、2020年1月の高値1,041ドルを明確に超えると、新たな相場展開に移行することになりそうです。逆に850ドル水準を大きく下回ると、直近安値の780ドルから750ドル、さらにコロナショックの際の700ドル割れの水準も視野に入りそうです。ただし、その可能性は低いと考えています。

円建てプラチナ相場は急落しました。まずは2,900円を維持できるかを確認したいところです。その上で、反発すれば、買いを検討したいところです。再び3,000円を超えるようですと、買いやすいと言えます。ただし、2,900円を割り込むと大きく水準を切り下げることになりそうです。その場合には、押し目買いは避け、まずは下値を確認することを優先したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅続落の展開

シルバーは大幅続落となりました。9月24日には一時21.64ドルまで下落する場面がありました。週末は22.86ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の9月22日時点のポジションは3万8947枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が598枚拡大しました。買いポジションが1,995枚減少し、売りポジションが2,593枚減少しました。投機筋は売り・買いともにポジションを縮小させており、買い手の損失覚悟の売りと売り手の利益確定の買い戻しが入ってるのがわかります。

銀相場は8月7日に29.83ドルまで上昇しました。その後は高値を更新できずに横ばいでの推移にありましたが、直近のサポート水準だった26ドルを割り込むと、売りが優勢となりました。テクニカル要因で下げた可能性が指摘できる値動きです。

そもそも銀相場は投機的な動きになりやすい特徴がありますが、今回はまさにその典型的な上昇相場になっていました。しかし、買い上がり続ける材料もなく、買いが途絶えると大きく調整することとなりました。今回の上昇相場の起点が18ドル水準ですので、このあたりでの下げになる可能性も否定できません。

もっとも、目先はすでに売られすぎ感が強まっており、さらに22.50ドルには重要なサポートレベルがあることから、目先はこの水準で下げ止まり、短期的には反発が見込めます。そのような値動きになった場合でも戻りは限定的になりそうです。

いったん大相場が終わった後だけに、投資家が銀を買うインセンティブはあまりないように思われます。そうであれば、短期的に上昇したとしても、戻りは25ドル前後にとどまる可能性もありそうです。逆に22.50ドルを明確に下抜けると、20ドル割れの水準にまで調整する可能性が高そうです。銀相場も独自の材料がないことから、当面は金相場や株価動向を見極めることになりそうです。

円建て銀相場は急落しました。93円水準が直近のサポートでしたが、これを割り込んだことで大きく下げています。いかにこの水準が意識されていたかがわかります。まずは75円を維持できるかを確認し、その上で反発基調に転じるようであれば、その時点で買いを検討したいところです。

新規の買いは、80円から85円を明確に上抜けたことを確認してからでも遅くないでしょう。ただし、75円を割り込んだ場合には、安易な買いは避け、まずは下げ止まるのを確認したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券