先週のゴールド:小幅反発の展開

金相場は小幅に反発しました。週初は米ドル高を背景に下落しました。世界第2位の金消費国インドの新型コロナウイルス感染者数はブラジルを上回り、米国に次いで世界2位となりました。8月のインドの金輸入は堅調でしたが、最近の値動きは金の延べ棒や金貨への実需が要因ではなく、上場投資信託(ETF)によるものであることが判明し、これが材料視されました。

9月8日には一時1906.23ドルまで下落しました。その後は米ドル安が進んだことに加え、新型コロナウイルスのワクチンの開発停滞への懸念が投資家を安全資産に向かわせました。

また、欧州中央銀行(ECB)関係者のやや楽観的な見通しにより、ユーロ高・米ドル安が進みました。シュナーベルECB専務理事は先に、「6月以降の経済動向はおおむねECBの予想に沿っており、ECBの「ベースライン」はまだ維持されている」としました。

金相場は9月10日には1%超の上昇となりました。この日開催された定例理事会で、ECBが政策を維持したほか、米国の新規失業保険申請件数が高止まりしたことを受けて買われました。新型コロナウイルス感染拡大により打撃を受けた経済の早期回復に対する期待が薄れたことも、安全資産としての買いを誘いました。一時、2019年9月2日以来の高値水準となる1,965.93ドルを付ける場面もありました。

また、米ドル指数が0.1%下落したことも材料視されました。ラガルドECB総裁が「為替レートを注意深く監視している」としたことを受け、ユーロ高が進行したことも、金相場を押し上げました。週末は小幅に下落し、1,939.69ドルで引けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、9月4日の1,250.04トンから、11日には1,248.00トンに小幅減少しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の9月8日時点のポジションは23万6473枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が5,677枚拡大しました。買いポジションが7,055枚増加し、売りポジションが1,378枚増加しました。投機家の買い姿勢が継続しています。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて、小幅に水準を切り上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:レンジを抜けるのを待つ状況

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米ドル安基調の継続
・投資家の金買い動向
・円建て金相場は底値固めの動き

金相場は徐々に値動きが狭くなってきています。これまで短期間で上昇したこともあり、今はそのあとの日柄調整的な動きにあるように見えます。

コロナショック後に金相場はこれまでの高値を更新し、6月中旬までは1,750ドル前後をレジスタンスとした動きにありましたが、これを上抜けるとわずか1ヶ月半程度で史上最高値となる2,072.50ドルまで上昇しました。この間の上昇幅は300ドルを超えており、金市場でも過去に見たことのない値幅での上昇となりました。このような動きになったこともあり、その後は買い疲れの動きから、上値が重くなっていると言えそうです。

次のトレンドが出るためには、何かしらの材料が必要でしょう。市場では、今週は「中央銀行ウィーク」と言われています。日米の金融当局の最新の金融政策および経済・金利見通しが示されます。当局者が将来に対してどのような見方をしているのかが判明します。これが市場にどのような影響を与えるのかを確認することになりそうです。

先週にはECBが理事会を実施しましたが、特段の大きな政策変更はありませんでした。また、最近のユーロ高に対するけん制的な発言も聞かれず、金市場にとってネガティブな材料は出てきませんでした。

市場は9月15、16日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明と、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の会見を待つ状況にあります。政策の変更はない見通しですが、8月27日にパウエル議長が表明した、FRBの新戦略に関する追加的な説明や、FRB関係者により経済及び金利見通しなどで、市場の想定を超えるものが出てくるようだと、米ドル相場が変動し、それにつれて金相場も大きく動く可能性があります。

ただし、現在のコロナ禍で市場を混乱させるような決定が行われる可能性は極めて低いと考えられます。

また、11月の米大統領選も視野に入ってきており、今回のFOMCは市場に対して中立からややポジティブな内容になりそうです。そうであれば、金相場が大きく下落する可能性は低いものと考えられます。まずは、FOMCの結果を見極めたいところです。目先は1,900ドルを下値に、上値は1,945ドルのレンジ相場を抜け出すことができるかを確認したいところです。

円建て金相場は6,700円を中心に、6,600円から6,800円のレンジでの推移が続いています。米ドル建て金相場も同様にレンジ相場になっており、まずはこの動きを確認することになりそうです。そのうえで、上記のレンジを抜けたほうについていくのがよさそうです。

もっとも、金は常にポートフォリオに入れておくべき資産と考えられます。したがって、6,600円を割り込んだ場合には、6,500円での下げ止まりが確認できれば、押し目買いを行いたいところです。また、6,800円を超えてくると、再び節目の7,000円を超える場面も見られそうです。

いずれにしても、株式を購入する際には、同額の金を購入し、リスク分散を図りたいところです。これを行うことで、長期的な資産価格の変動リスクを大きく低減させることができます。金はキャピタルゲインを狙って投資するものではありませんが、現在の米国を取り巻く環境を考慮すれば、金相場は今後も上昇する可能性が高いと考えられます。

この点も念頭に置きながら、長期的な視点で金に投資することを検討したいところです。特に押し目の場面では、時間と資金を分散しながら、ゆっくりと買いポジションを構築していくことが肝要です。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。9月4日につけた安値の884.95ドルを割り込まずに、徐々に下値を切り上げ、週末9月11日には942.05ドルまで値を上げる場面がありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の9月8日時点のポジションは1万5271枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が4,184枚縮小しました。買いポジションが2,500枚減少し、売りポジションが1,684枚増加しました。投機家の売り姿勢が継続しています。

プラチナ相場は辛うじて崩れるのを回避し、再び上値を試そうとしています。チャートを見る限り、950ドルを超えると、上値を試す可能性が高まりそうです。しかし、そのためには金相場の上昇に加え、プラチナ独自の材料も不可欠でしょう。

その意味では、2020年のプラチナ需給に関するポジティブな見通しが出たことは好材料でしょう。プラチナの国際調査機関ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)は、2020年のプラチナ市場について、供給の見通しを過剰から不足に修正しました。新型コロナウイルスの流行が需要より供給に大きな影響を与えるとの見方です。

最新の四半期リポートでは、2020年は33万6000オンスの供給不足で、供給不足は2年連続となる見通しです。5月時点の予想は、24万7000オンスの供給過剰でした。世界最大のプラチナ生産国である南アフリカを中心とした鉱山の閉鎖が予想以上に供給に影響したことや、投資家による投資需要の見通しが好調なことが予想の変更につながりました。2020年のプラチナ供給は前年比14%減の710万オンスとなる見込みです。

コロナ対策で厳しいロックダウンが導入された南アフリカの生産量は20%減少すると予想されています。一方、消費は11%減の740万オンスと予想されています。ガラス製造会社の使用は拡大するとみられています。ただし、これまでの需要の中心だった、自動車の排ガス浄化に使用される触媒向け需要は大きく減少することが想定されています。

一方、2020年4-6月の世界のプラチナ需要は前年同期比19%減でした。コロナ禍に伴う工場閉鎖の影響で、自動車や石油・化学など産業用が落ち込みました。宝飾品も減少しましたが、地金やコイン、上場投資信託(ETF)などは大幅に伸びました。自動車触媒向け需要は同48%減、自動車を除く工業用途が同25%減となり、宝飾品の需要も同27%減でした。

一方、プラチナを裏付けとするETFや地金、コインを含む投資需要は3倍超に膨らみました。経済の先行き不透明感の高まりや各国の財政・金融緩和の拡大を背景に、プラチナを含む貴金属全体に買いが入ったと言えます。供給量は同35%減と、需要の落ち込みを上回る減少幅でした。ロックダウンに伴い南アフリカ鉱山の生産が大幅に落ち込みました。

このように、プラチナ需給には非常に興味深い変化が見られます。今後の需要は自動車触媒向けが伸び悩む可能性が高い一方で、生産・供給がロックダウンから回復するかがポイントになりそうです。

実需の回復が期待しづらいことから、需給バランスの改善にはプラチナETF買いの拡大も不可欠になるでしょう。いずれにしても、需給が劇的に改善する可能性はそれほど高いとは思えません。

したがって、上記のようなファンダメンタルズ材料が市場に与える影響を見ながら、引き続き金相場の動向に注意しながらの対応になるでしょう。目先は950ドル超えが重要なポイントになります。一方で、915ドルを割り込むと、下げが加速しやすいと言えます。支えられれば、底固い動きと判断できますので、これらのレンジを意識したうえで相場動向を見ていきたいところです。

円建てプラチナ相場は反発しました。3,100円を維持したことで、下値は堅くなった印象です。したがって、3,300円を超えるとさらに上値を試しそうです。そのような動きになれば、上昇に追随する形で買いを検討したいところです。逆に3,100円を割り込むようであれば、押し目買いはいったん取り下げ、下げ止まるのを確認したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続落の展開

シルバーは小幅に続落しました。9月8日に一時25.84ドルまで下落する場面もありましたが、その後は下げ渋り、ほぼ横ばいでの推移が続き、週末は26.71ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の9月8日時点のポジションは3万3480枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が8枚拡大しました。買いポジションが3327枚減少し、売りポジションが3335枚減少しました。投機筋は売り・買いともにポジションを縮小させており、相場の方向性に対して迷っているように見えます。

銀相場は高値圏を維持しているものの、方向感を失っているように見えます。当面は独自の材料不足もあり、金相場の動向次第の展開がこれまで以上に強まりそうです。目先は26ドルを下値に、上値は28ドルのレンジの中で推移しそうです。その間に新しい材料が出てくれば、投機筋が主導する形で相場の方向性が出てくるものと思われます。

これまでの動きを振り返ると、7月半ばにそれまでのレジスタンスだった18ドル台半ばを超えたあたりから買いの勢いが強まりました。7月中旬から8月前半までの1ヶ月以内に銀相場は12ドル以上も上昇しており、年初来からの上昇率も5割を超え、主要な資産の中でトップの騰落率を示しています。

このような動きもあり、銀相場は当面は上値が重くなりそうですが、投機的に変動する特徴があることを知っている投資家は、動きだすとさらに資金を投じて短期的なリターンを得ようとする可能性があります。そのような動きも念頭に置きつつ、動きだしたときについていけるように準備しておくことが肝要でしょう。

もっとも、先物市場では買いポジションが積み上がっていることも事実です。逆に相場が下げに転じれば、損失覚悟の売りも出やすい地合いにあります。現在のレンジの下限である26ドルを割り込ん場合には、短期間で大きく下落するリスクが常にあることも併せて理解しておきたいところです。その場合には、24ドル近くまでの下落が想定されます。さらにこれも下回ると、22ドルまでの下落になりそうです。いずれにしても、レンジ相場を抜けだしたときの動きには細心の注意が必要と考えます。

円建て銀相場は横ばいでの推移となりました。ドル建て銀相場に動きがない中、円建て銀相場も動きづらい展開になったといえます。今は90円と95円のレンジに入っており、これを抜けたときに大きく変動しそうです。

90円を割り込むと85円程度までの急落になりそうですので、まずは下値を確認することになるでしょう。そのうえで、下げ止まりが確認できれば、その時点で押し目買いを検討したいところです。逆に95円を超えるようであれば、再び100円を目指す展開が想定されます。その場合でも、100円で打たれる可能性もあります。上昇した場合には、100円超えを確認してから買いを検討しても遅くはなさそうです。

いずれにしても、レンジから抜ける動きを注視したうえで、取引のタイミングを計ることが重要と言えそうです。繰り返しですが、銀は金やプラチナに比べて明らかに投資リスクが大きいと言えます。この点を理解したうえで、許容できるリスクの範囲内で取引を行いたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券