先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落しました。週初は上昇しました。米連邦準備制度理事会(FRB)がハト派的な政策を継続するとしたことで、米ドルが2年ぶり安値をつけたことが材料視されました。

ただし、8月は月間ベースでは0.3%安となり、5ヶ月ぶりの下落となりました。9月7日には2072.50ドルの史上最高値を記録しましたが、その後は徐々に上値が重くなっています。

9月1日には一時8月19日以来の高値となる1991.91ドルを付けましたが、米ドル相場の上昇に加え、米製造業関連指標が予想を上回る改善を示したことで景気回復期待が強まり、上値を抑えられました。

その後も、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済の急速な回復への期待が高まり、金は下落基調が続きました。週末9月4日は一時上昇する場面が見られたものの、8月の米雇用統計が予想を上回ったことから米ドルが上昇し、金相場は下げに転じました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、8月28日の1251.50トンから、9月4日には1250.04トンへ小幅減少しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の9月1日時点のポジションは23万0796枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が9,758枚拡大しました。買いポジションが4,559枚増加し、売りポジションが5,199枚減少しました。投機家は久しぶりに買い姿勢を見せています。

円建て金相場はドル建て金相場の下落を受けて、水準を切り下げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:底値固めの完了を待つ

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米ドル相場の動向
・投資家の金買い動向
・円建て金相場は底値固めを継続

金相場は史上最高値をつけたあとはもみ合いが続いており、徐々にレンジが狭くなってきています。これは、いずれ上昇あるいは下落のいずれかの方向に動く可能性が高まっていることを示しています。

今のところ、上値は切り下がっており、すぐに上昇しづらい地合いにあるように見えます。したがって、まずは節目の1,900ドルを維持できるかを確認することになりそうです。この水準を割り込むと、一時的に売り圧力が強まりそうです。

そうなると、1,875ドルが下値の目途になりそうです。さらにこれも割り込むと、節目の1,800ドル、さらに1,775ドルといった具合に下げていきそうです。その間に、底値がどこになるのかを確認することになるでしょう。

今の金市場で起きていることは、史上最高値を付けるまでのスピードがあまりに速すぎたことに対する調整であると考えられます。したがって、年内に史上最高値の2072.50ドルを超えるかは不透明であると考えています。

もっとも、FRBの追加刺激策や物価上昇容認の姿勢は維持されるでしょう。先週末に発表された米雇用統計の内容も、FRBの姿勢を変えるものではなく、FRBの政策は金相場を長期的に支援することになるでしょう。

金利が世界的にゼロ近辺となっている環境や、FRBによる金融緩和政策、さらに新型コロナウイルス感染拡大による経済の先行き不透明感を背景に、安全資産とされる金の需要が相場を支える構図は当面の間、変わらないでしょう。

最近の金市場は、金融の側面に目が向いています。米財政赤字の拡大とFRBによる緩和姿勢の継続は、確かに金にとっては好材料といえます。その一方で、価格高騰などから実需が大きく減少しています。

特に金の二大消費国である中国とインドの宝飾品需要の低下は著しいものがあります。その傾向が特に顕著なのはインドです。インドルピー安でインドルピー建ての金価格が高騰し、きわめて買いづらい状況になってます。また、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、これも需要低迷につながっていると言えそうです。

ただし、最近は徐々に状況が変わってきているようです。インドの金輸入量は4月と5月は壊滅的な状況でしたが、6月に入ると輸入が再開され、7月に入るとその傾向がさらに明確になっています。少なからず現物を買う人がいると思われ、業者はそれに合わせて輸入しているものと思われます。また、海外相場と国内相場の差も収益になるため、これを狙った輸入が実施されている可能性もありそうです。

さらに、インドでも金上場投資信託(ETF)の購入量が明らかに増加してきています。これも最近の大きな特徴でしょう。

これまでインドといえば、親が娘を嫁がせるときに現金の代わりに金を持たせるといった風習があります。これが金需要を支えていたとの指摘もあります。しかし、コロナ禍の今、結婚式の開催などはかなり厳しいものと思われます。このような事情もインドの金需要を抑制してきた可能性は否定できないでしょう。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着けば、インドでの金需要は確実に回復するでしょう。今のインドの宝飾品需要が劇的に改善するとは考えにくい面がありますが、少なからず回復し、それが実需面から金相場を支えることになりそうです。

円建て金相場は6,600円から6,500円の水準を維持できるかが目先のポイントになりそうです。しばらくは底値固めの動きが続きそうです。実際にそのような動きになり、底割れせずに反転上昇するようであれば買いやすいでしょう。今はそのような動きになるのを辛抱強く待つときであると考えます。

その上で、直近で上値を抑えられた6,800円を超えていくと上昇に勢いがつき、再び7,000円超えを試す動きになることも十分に想定されます。そのため、押し目の場面では時間・資金を分散しながら、しっかりと買うことが肝要です。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。9月1日には一時960.11ドルの高値を付けました。しかし、買いが続かず、3日には一時882.80ドルまで下落しました。週末は894.50ドルまで戻しましたが、節目の900ドルを下回って引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の9月1日時点のポジションは1万9455枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が458枚縮小しました。買いポジションが266枚増加し、売りポジションが724枚増加しました。投機家の売り姿勢が確認できます。

プラチナ相場は金相場と同様に上値を試すものの、下落トレンドから抜け出すことができず、逆にトレンドがさらに大きく崩れる可能性が高まっています。

890ドルを明確に下抜けるようであれば、下げ基調が強まる可能性があるため十分な注意が必要と考えます。プラチナ相場がなかなか反転しない理由として、プラチナ独自の良い材料が出てこないことがあります。

特に最大の需要先である自動車触媒向け需要の低迷は、プラチナ相場の抑制要因にならざるを得ないでしょう。

ドイツ自動車工業会(VDA)が発表した乗用車統計によると、8月の生産台数は前年同月比35%減の20万3100台となりました。4月は97%減、5月は66%減、6月は20%減、7月は6%減と回復軌道をたどっていた生産は、8月になって再び落ち込みました。また、国内の販売台数(新車登録台数)は20%減の25万1100台、輸出は31%減の15万4300台といずれも不振でした。

また、ドイツ連邦自動車局(KBA)によると、8月は販売台数全体の半数近くを占めるガソリン車の登録が38.8%、ディーゼル車が26.7%それぞれ落ち込んでおり、需要の低迷は顕著のようです。

ドイツで補助金の対象となる電気自動車(EV)の需要が約3.2倍、プラグインハイブリッド(PHV)が約5.5倍と旺盛な需要を見せたのと比較すると、大きな違いがあります。このような需要の低迷は、プラチナ相場の上値を抑えることになりそうです。

これまでも繰り返し述べているように、プラチナには需要面で強い材料がほとんど聞かれません。したがって、金相場の上昇に劣後するのも当然と言えるでしょう。

もっとも、金相場が上昇する場面では、それにつれてある程度はプラチナも上昇することがあるでしょう。しかし、それが本質的な材料ではないことは明白です。

したがって、金相場が上昇した場合でも、プラチナ市場が同じように上げていくことはないとみています。引き続き、プラチナ独自の新たな強気なファンダメンタルズ材料が確認され、それが価格を押し上げるような構図になるのを待つことになるでしょう。

目先は860ドルを割り込むとかなり厳しい下げになりそうです。その場合には再び780ドル程度まで下げる可能性もありそうです。

世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドが対米ドルで堅調に推移していることも、ドル建てプラチナ相場の押し下げにつながりやすいと言えます。

南アのプラチナ生産コストは620ドル台にまで低下しているもようであり、これもプラチナ相場の抑制につながる可能性があります。これらの点を理解したうえで、プラチナには引き続き慎重な姿勢で臨みたいと考えています。

円建てプラチナ相場は続落しました。チャート上の節目になっている3,100円を割り込むと、下げが加速する可能性がありそうです。その場合には、3,000円程度までの下げになる可能性がありそうです。下落し始めた場合には、すぐに押し目買いをするのではなく、下げ止まり、底値を確認することを優先したいところです。

3,000円を割り込むと、2,900円から2,800円近くまで下げることも想定されます。逆に3,200円を超えるようであれば、上昇基調への回帰が想定されます。その場合には、その流れに乗る形で買いを検討するとよいでしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーは反落しました。9月1日に一時27.69ドルまで上昇する場面もありましたが、その後は買いが続かず下げに転じ、週末は26.93ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の9月1日時点のポジションは3万3472枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が2,135枚拡大しました。買いポジションが2,035枚増加し、売りポジションが100枚減少しました。投機筋は先週に続いて新規の買いを増やしており、上昇を見込んだ取引を続けていると言えます。

銀相場は高値圏を維持していますが、金相場の動向次第という状況は変わっていないと言えそうです。今は辛うじて節目の26ドルを維持していますが、9月7日に29.83ドルの高値をつけたあとの調整基調は変わっていません。

まずは26ドルでのサポートを確認し、その上でさらに買いが入ってくれば、上値を試す可能性が出てきそうです。しかし、26ドルを割り込んでしまうと、大きく下げる可能性もありそうです。その場合には、24ドル、さらに20ドルといった具合に下げていくことも想定されます。

したがって、とにかく今は26ドルのサポートを維持し、反転するかを注視することになるでしょう。金相場の上値が重くなっているだけに、銀相場に積極的な買いが入りづらくなっていると言えます。

ただし、COMEX銀先物市場における投機筋の買いは、それほど膨らんでいるわけではありません。現在の買い越し幅は3万枚程度の水準であり、2020年2月に銀相場が18ドル台だった時につけた7万7000枚水準と比較すると、買いの余地はかなり大きいとも言えます。

相場水準自体は確かに高いと言えますが、金相場の動向次第では再び投機筋が買いを入れてくる余地がある点に注目しておきたいところです。

円建て銀相場は反落しました。節目の100円を超えられずに下げており、さらに直近高値も上回ることができなかったことから、ダブルトップのようなチャート形状になっています。

これで直近安値の90円水準を割り込むと下げが加速する可能性もありそうです。その場合には、押し目買いを控え、まずは底値を確認したいところです。90円を割り込むと、85円程度までの急落となる可能性もありそうです。

もっとも、海外相場が反転し、100円を回復すれば、大相場に発展する可能性もあります。

繰り返すように、銀相場は投機的な動きになりやすい特徴があります。短期間で乱高下しやすいことから、短期間で収益が上がるときもあれば、逆に損失を被ることもあります。金やプラチナに比べて明らかに投資リスクが大きいことは明白ですので、この点を理解したうえで、許容できるリスクの範囲内で取引を行いたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券