先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発しました。週初は下落しました。米保健当局による新型コロナウイルスの治療法承認で楽観ムードが広がり、米国株は史上最高値を更新したことが売り材料視されました。また、米中貿易協議をめぐる楽観ムードが広がり、安全資産としての金の魅力が低下しました。

一方、新型コロナウイルス感染拡大の経済への打撃緩和を目的とした追加経済対策への期待が高まり、米ドルが下落したことで金相場は押し上げられました。

8月27日には一時2%超下落しました。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、「インフレ率2%目標の達成」に向けた積極的な新方針を打ち出したことを受けて、米国債利回りが上昇したことが売りにつながりました。ただし、パウエル議長の講演の間に一時1.1%上昇する場面もありました。週末には反発しました。米ドル安に加え、FRBが低金利政策の長期化を示唆したことが相場を押し上げました。週間ベースでは約1.3%上昇しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、8月21日の1,252.38トンから、28日には1,251.50トンへ小幅減少しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の8月25日時点のポジションは22万1038枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が2,480枚縮小しました。買いポジションが810枚減少し、売りポジションが1,670枚増加しました。投機家はやや売り姿勢を強めているように見えます。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて、水準を小幅に切り上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:底値固めから反発をうかがう展開

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米ドル相場の下落継続
・投資家の金買い動向
・円建て金相場は反発へ

金相場は底固い動きにあります。売りが出ても下値が限られる展開になっており、節目の1,900ドルは維持されています。ただし、8月7日につけた史上最高値の2,072.50ドルからの下落トレンドを上抜けていません。したがって、短期的な目線でいえば、今週は1,970ドルを明確に上抜けるかが最大の焦点になるでしょう。1,970ドルを超える状況になれば、短期間でもう一度節目の2,000ドルを超え、さらに史上最高値を狙う動きになる可能性は十分にあるでしょう。

今、株式市場を含む金融市場を支えているのは、大量の米ドル資金の供給です。その結果、米ドルが下落しており、これが相対的な金相場の強さにつながっています。先週は、FRBがインフレ率が目標の2%を一時的に上回ることを容認する新戦略を発表しました。この政策を発表したことで、米ドルは約1週間ぶりの安値を付け、週間ベースでは7月末以来の下げ幅となりました。その結果、ドル安により金は他の通貨保有者によって割安になっています。

FRBが8月27日に示したインフレ目標は、長期的に平均2%を目指す方針を採用するというものです。これは、FRBがきわめて緩和的な金融政策を長期的に継続する可能性が高いことを示しています。これにより、インフレ率が今後わずかに上昇しても、低金利が維持される可能性が高いことになります。

無論、この政策が金相場を長期的に支援すると考えるのが妥当でしょう。FRBは新型コロナウイルス感染拡大によって打撃を受けた米国経済を立て直すため、大規模な景気刺激策を講じ、政策金利をゼロ近辺で据え置いてきました。今回のパウエル議長の講演には、コロナ禍からの経済回復は長期的かつ段階的なものになり、後戻りを避けるためには、中央銀行による手厚い支援が必要との考えが反映されていると言えます。こうしたことは、結果として引き続き金相場の下支え要因となるでしょう。

一方、各国中央銀行や政府は新型コロナウイルスによって打撃を受けた経済を支援するため、大規模な景気刺激策を実施しています。こうした状況を背景に、金相場は年初来で28%超上昇しています。米財政悪化、FRBによる資金供給の継続は、米ドルの価値を押し下げ、結果的に金相場の上昇を促すことになるでしょう。これは歴史的な動きであり、目先の話ではありません。より長期的に見ていけば、金の価値はまだまだ安い可能性があります。長期的には3,000ドルから4,000ドル、さらに5,000ドルと水準を大きく切り上げても驚きません。

FRBが今のペースで資金供給を続けると、2032年には1万2000ドル前後になると試算できます。また、米財政の悪化を考慮すれば、現時点でも3,000ドルを超えていてもおかしくはないと計算できます。さらに、金と株価との関係から見れば、1980年の金価格/S&P500レシオを使うと、金の価値はは株価に対して10分の1の価値にとどまっています。つまり、最大で10倍になってもよいことになります。これはやや無理があるかもしれませが、少なくとも、株価との対比では金価格はきわめて割安に放置されていることだけは確かです。

今後の金価格が上昇するには、理論的にはインフレ率が急騰することが条件になるでしょう。FRBが将来のインフレ率の上昇を当面は抑制しない姿勢を示したことは、金相場には好材料です。しかし、問題はインフレになるのか、ということです。経済が拡大し、原油相場が上昇するなどの支援材料がないと、インフレ率は上昇しないでしょう。米経済成長率は低迷していますが、すでに米国の潜在成長率は2%を切っている可能性があります。成長率の低下はインフレ昂進には悪材料になるでしょう。これらの経済状況にも目を向けておくことが重要です。

これまでの金相場の上昇を支えてきたのは、投資需要の急増です。代表的な金投資商品である金ETFに1-7月に流入した資金は、過去最高の約900トンとなり、金額ベースでは5兆円超に達しています。投資家がさまざまなリスクに対してヘッジ機能を持つ金を保有することを決め、着実に残高を増やしていることが、金相場の上昇につながったといえます。この姿勢は今後も続くことになるでしょう。

現在の米ドル安基調は目先のものではなく、かなり長期間、大きな幅で米ドル安が進む可能性があると考えられます。そうであれば、金相場はきわめて大きく押し上げられる可能性があると言えます。それも、かなりの期間、上昇が続く可能性があります。

とは言え、金投資の最大の目的をしっかりと理解しておくことも重要でしょう。金には、資産運用におけるリスクヘッジの機能があります。これまでも繰り返し述べてきたように、特に株価が下げたときには、金価格は逆に動きます。したがって、資産運用を行う際には、株式投資と同時に金を買い、資産価格の変動を抑制するようにしておくことが大切です。この考えを忘れなければ、目先の株価の下落にも慌てる必要はなくなり、資産価値の大幅な減少を防ぐことができます。

このような運用スタイルが身につくと、市場に何が起きても驚かなくなります。私が推奨している「株式・金・現金3分割法」を実行していれば、株式や金が大きく下落したときに、保有している現金を利用して、下げた資産を買い増すことができるようになります。このような運用ができるようになると、資産は長期的に増えていきます。ぜひトライしていただきたいと思います。

円建て金相場もドル建て金相場の上昇につれる形で上げていくでしょう。円高は上値を抑える要因になりますが、あまり気にする必要はありません。目先は6,600円でサポートされた格好です。これを下回らなければ、6,800円を超えていくと、再び7,000円を試す動きになるでしょう。時間・資金を分散しながら、押し目でしっかりと買っておくことが重要です。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。先週の安値893.87ドルを割り込まずに推移しましたが、上値の重い展開が続きました。ただし、週末は931ドルと、小幅に反発して引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の8月25日時点のポジションは1万9913枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,899枚縮小しました。買いポジションが864枚減少し、売りポジションが1,035枚増加しました。投機家の売り姿勢が確認できます。

プラチナ相場は金相場のこう着状態に連れる展開となり、引き続き主体性のない展開が続いています。上値も重く、次の方向性が出るのを待つ状態にあります。今後も金相場の動き次第になる可能性が高いため、まずは金相場の動きを確認することになるでしょう。そのうえで、プラチナ独自の材料が出てくれば、その材料がより重視されることになるでしょう。

GFMS(ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ社)が発表した「世界のプラチナ需給見通し」では、プラチナ需要が落ち込み、特に需要の多くを占める自動車用触媒の減少が指摘されました。2020年の自動車触媒向け需要は80トンにとどまり、前年比で16トン、16.7%減と予想しました。特に最大の消費地である欧州では23.7%減の29トンとなり、16年との比較では37.0%も減少するとの見通しが示されました。フォルクスワーゲン(VW)の燃費不正発覚以降、欧州ではディーゼル車の大幅減産計画が相次いで打ち出され、2020年からその生産縮小が始まっています。

さらに、将来的にはディーゼル車の生産を終了する自動車メーカーも多く、プラチナの自動車触媒向け需要の減少は不可避の情勢にあります。これに新型コロナウイルスによる景気悪化も加わり、自動車販売が減少する中、触媒向け需要はさらに落ち込んでいます。

また、宝飾用需要の落ち込みも大きく、最大の消費先である中国は前年比6トン減の26トンにとどまるとの予想になっています。宝飾品向け需要の減少は、新型コロナウイルスの影響が大きいと考えられますが、将来的な回復も厳しいとみられており、今後はさらなる下方修正の可能性もありそうです。

一方、金市場では増えている投資需要ですが、プラチナでもわずかに増加する見通しで、4トン増の10トンと予想しています。ただし、投資需要の多くが日本であり、世界的にはプラチナを安全資産として買う動きはほとんど見られません。したがって、世界的に投資需要が増える可能性は現時点では低いと考えられ、これがプラチナ価格の金に対する割安感につながっていると言えます。つまり、世界的にはプラチナ需要は工業用と認識されていることになります。

金が上昇すれば、いずれプラチナも上昇するといった安易な考えは持たないほうが賢明です。この点は、先週も解説した通りです。一方、GFMSは2020年の需給バランスを34トンの供給過剰と見込んでいます。このような弱気な見通しは、プラチナ相場の上値を抑える可能性がありますので注意が必要です。

このように、プラチナにはあまり強い材料がありません。したがって、金相場が上昇すれば、多少は上げるでしょうが、それ自体は本質的な材料ではありません。そのため、金相場の上昇と同じ比率で上げていくこともないでしょう。引き続き、プラチナ独自のファンダメンタルズ材料が出てきて、それが価格を押し上げるような構図になるのを待つことになりそうです。

目先は950ドルを超えると、一時的に上昇しやすくなりそうです。その場合でも、あくまでテクニカル主導での上げにとどまりそうです。950ドルを超えて1,000ドルを試す可能性もありそうですが、大きな期待を持たずに、冷静に見ておきたいところです。

円建てプラチナ相場は反発しました。節目の3,200円を維持して反発しましたので、目先は底割れを回避した格好です。そのため、3,300円を超えると上昇に勢いがつきそうです。その上で、節目の3,500円を超えるかに注目したいところです。逆に3,200円を割り込むような下げになった場合には、安易な買い下がりは避け、まずは底値を確認することを優先したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続伸の展開

シルバーは続伸しました。節目の26ドル割れを試す場面もありましたが、これを割り込まずに推移したことで売りが一巡し、週末にかけて上昇して27.49ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の8月25日時点のポジションは3万1337枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が4781枚拡大しました。買いポジションが3,028枚増加し、売りポジションが1,753枚減少しました。投機筋は新規の買いを増やす一方、売り方が買い戻しを行うなど、上昇に備える動きを見せています。

銀相場は辛うじて上昇基調を維持しました。そのため、最近の上値水準となっている28ドルを超えると一段高になりやすい地合いにあるといえます。下値も徐々に切り上がっており、その可能性が高まっています。したがって、今週は再度上値を試すことができるかに注目しておきたいと考えます。

終値ベースで28ドルを超えてくると、7日につけた高値の29.83ドルを試し、さらに節目の30ドルを試すことも考えられます。そのため、まずは28ドルを超えるかに注目しておきたところです。特に、金相場が上昇したときには、これを材料に買ってくる投機筋などが出てくる可能性があります。

繰り返すように、銀は短期間で大きく変動することが多いのが特徴です。短期筋もこの特徴をよく理解しており、金相場を見ながら仕掛けてくる可能性がありそうです。そうなった場合に備え、いつでもその動きに乗れるようにしておきたいところです。ただし、26ドルを割り込むような軟調な動きになった場合には、一気に24ドル割れまで下落する可能性もありそうです。どのような材料でそのような動きになるかは先読みするのは難しいところですが、常にそのような値動きになる可能性を念頭に置いておきたいところです。

円建て銀相場は上昇しました。節目の90円をサポートしており、底値を固めているように見えます。そのうえで、95円を超えるようだと、一気に水準を切り上げる可能性がありそうです。100円を試し、さらにそれを超える可能性もありそうです。一方、90円を割り込んだ場合には、大きく水準を切り下げる可能性があります。その場合には、すぐに押し目を買うのではなく、下値を確認するのを優先したいところです。

銀相場は短期間で乱高下しやすいのが特徴です。短期間で収益が上がるときもあれば、逆に損失を被ることもあります。金などに比べて明らかにリスクが高いことをよく理解したうえで、許容できるリスクの範囲内での取引を検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券