ポストコロナ時代の豊かさは、お互いに助け合う「共助」、そして競争ではなく「共創」によって育まれるという考え方がスタンダードになりそうです。個人や企業も持続可能な社会への意識が高まる中、物やサービス、場所などを多くの人と共有・交換して利用する「シェアリングエコノミー」が注目されはじめています。今回は、「#ため活」に賛同コメントも頂いているシェアリングエコノミー活動家の石山アンジュ氏にお話を伺いました。

ミレニアル世代は所有から共創へ、変わりゆく豊かさとは

石山 アンジュ氏 シェアリングエコノミー活動家

———石山さんがシェアエコの考え方に至った原体験やきっかけを教えて下さい。

父は歌手で作家、母はデザイナーで両親ともに自営業。父はシェアハウスも経営していて、多世代・多国籍の人たちが常に滞在していました。一人っ子でしたが、毎日いろんなバックグラウンドの人たちと交流して友達になり、一緒にホームパーティをするようなにぎやかな家庭で育ちました。

父は旅することが趣味で、今でも一緒に旅行に行きます。実家に滞在していた人が母国に帰り、私達がその国に旅行するときは、逆に部屋を貸してくれるなんてことはよくありますね。世界中に家がある感覚です。

———石山さんはさまざまな人達とシェアをする、という経験を幼少の頃から当たり前のように行ってきたのですね。いわゆる「ミレニアル世代」(1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代)と呼ばれる人や石山さんの周りの方は、お金に関してどのような考え方を持っていますか?

これまでの時代は、例えばブランドバッグを持つ、マイホームを建てる、高級車に乗るなど、所有して世間に見せられるものがアイデンティティの象徴でした。年収も人を評価する一つの軸でした。○千万円も稼いでいるから、何が買えるとか。でも私の世代や下の世代は、「所有する」ことにあまり興味がありません。不確実性の高い今の世の中、価値変動するお金そのものに依存する生き方はもはやリスクでしかないからです。

単純にお金そのものよりも、資産に価値がシフトしていくと思います。それはどういうことかというと、複数の家や拠点を持つ、共同所有する……そういった資産の考え方に変わっていくと思います。また人とのつながりやコミュニティも資産の一つとして大事になっていくでしょう。別荘やプライベートジェットを所有するなど、これまでは複数の選択肢を持てるのは富裕層だけでした。でもシェアリングエコノミーがインフラ化していけば、渋谷にシェアハウスを借り、地方でも家を借りて2拠点で仕事や生活をするという選択ができます。場所に制限がない人、時間にしばられない、より多くの頼れるつながりがある人が、豊かで羨ましがられるような時代に入っていくのではないでしょうか。

“ため活”は、誰でも実践できる新しい豊かさのひとつ

———お金や豊かさの価値が変化する中、社会を応援する手段として石山さんが注目していることはありますか?

クラウドファンディングは特に若者世代に定着した応援手段です。自分が作りたいサービスや商品など、先に実現してくれる人にお金を払って支援する。これは「共感」によって成り立っています。私の世代であるミレニアル世代は、自分自身や、他の誰かにとって必要だと思うものに対して「共感」してくれる人がどのくらいいるのか可視化される時代に生きています。それはシェアリングエコノミーやクラウドファンディングをする動機にもつながっています。アマゾンのウィッシュリストの公開もそうです。インターネットのプラットホームによって、共感する企業や人を応援しやすい社会になったと思います。

———誰かを応援することが、めぐりめぐって自分のためになる投資が「#ため活」です。石山さんは、株式投資での企業への応援に対してどう感じますか?

投資企業の人事やガバナンスへの意思決定に関与するだけではなくて、プロダクトの改善策やパッケージのアイディアなど、自分が株を持っている会社の社員と同じように、色々な企画に参加できるようになれば嬉しい。そういった個人投資家の関わり方が多様な企業なら、応援したくなる人は増えると思います。

これまで資本主義を動かすエンジンは、競争と成長でした。でもこれからは、限られた資源と不確実性の高い時代の中での持続可能なモデルが求められていきます。そのような時代では、企業と個人の関係性も多様化し、お互いの得意をシェアしながら共創・共生できる社会があるべき姿だと思います。


———ありがとうございました。(インタビュー実施日:2020年7月30日)

インタビュー先:石山 アンジュ氏
シェアリングエコノミー活動家、1989年生まれ。国際基督教大(ICU)卒業後、リクルート入社。その後、クラウドワークス経営企画室を経て現職。シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する活動家。政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。総務省地域情報化アドバイザー、厚生労働省「シェアリングエコノミーが雇用・労働に与える影響に関する研究会」構成委員、経済産業省「シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会」委員なども務める。著書に『シェアライフ-新しい社会の新しい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)がある。