先週のゴールド:小幅続落の展開

金相場は小幅に続落しました。週明け8月17日には2%超上昇しました。米ドル安や米国債利回りの低下に加え、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが産金大手の株式を購入したことが投資家心理を押し上げました。

前週(8月10日~14日)は3月以来の大幅下落を記録しました。8月7日に付けた史上最高値の2,072.50ドルから大幅下落した後で、投資家がポジションの見直しを行いました。8月18日も堅調で、2,000ドル台を回復しました。

米ドルが2年ぶりの低水準に下落し、米国債利回りも低下したことが買いにつながりました。しかし、8月19日には3%超の大幅安となりました。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)導入に慎重な意見が示され、追加金融緩和に関する市場の期待がやや後退しました。これを受けて、米ドルや米国債利回りが上昇し、売りが出ました。米ドル指数は0.8%上昇しました。米ドル指数は前日(8月18日)まで5日続落し、2年超ぶり安値を付けていました。

8月20日には反発しました。前日(8月19日)の急落の反動や、最新週の米新規失業保険申請件数が110万6000件と、3週ぶりに悪化し、米景気の先行きへの懸念から安全資産としての金が買われました。週末21日には一時1%超の下落となり、1,910.99ドルまで下落し、1週間ぶりの安値を付ける場面がありました。週間ベースでは0.3%安でした。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、8月14日時点で1,248.29トンから、17日には1,252.38トンに増加し、その後21日まで同水準で推移しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の8月18日時点のポジションは22万3518枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が535枚縮小しました。買いポジションが4,498枚減少し、売りポジションが3,963枚減少しました。投機家は買い手も売り手も引き続き手仕舞い売りを進めています。

円建て金相場はドル建て金相場の下落を受けて下げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:急落後の底値固めの展開

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米ドル相場の動向
・投資家の金買い動向
・円建て金相場は下値模索へ

金相場は引き続き高値からの調整場面にあります。いったんは戻したものの、上値を追い切れない状況にあります。米国株が堅調に推移していることも背景にあると考えられます。また、これまで続いてきた米ドル安傾向に一服感が出たことも、上値を抑えているといえます。

ただし、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨でも確認されたように、米連邦準備制度理事会(FRB)は今後も低金利政策を継続するとのスタンスを明確にしています。米経済を支えるうえで最も重要な株価を支えるためには、緩和的な政策を継続するスタンスを明確にしておく必要があります。また、多少の経済回復では緩和的な政策の方向性を変えることはまず考えられません。

これまでも平時にFRB議長が将来的な緩和策の解消に関して発言しただけで、株価が急落した経緯があります。ましてや今は、コロナ禍で株価が不安定になりやすい時期です。パウエルFRB議長は以前は失言により市場を不安定にさせることが多かったのですが、最近は市場との対話の仕方を学んだようです。したがって、過去のような失敗を繰り返すことはないでしょう。

そうであれば、政策面からの金相場の下落圧力がかかることはまずないと考えるのが妥当でしょう。あとは名目金利が低水準に維持される一方、インフレ率が上昇するかがポイントになります。しかし、最近のインフレ予想を見る限り、それほど高まっているわけではありません。原油価格も低位で推移しており、インフレ率を押し上げるような状況にはありません。

経済もまだまだ落ち込んだままであり、消費拡大が主導するインフレの高まりは想定しづらい状況です。そうなると、金相場の上昇を想起させる要因として、通貨の価値への疑問視が重視されるかがポイントになりそうです。

最近、これまで金投資を否定してきた著名人が「宗旨替え」をするようなケースが増えていますが、株式投資に関する著作でも有名で、株式市場に常に強気で知られるジェレミー・シーゲル教授が「金投資を始めるにはまだ遅くない」と発言し始めています。これもまた非常に興味深い変化です。

シーゲル教授は「株式投資に関する過去の書籍を通して、私は金のファンではなかった。ファンになったのはこの数ヶ月である。今は、金(ゴールド)は良い持ち物になると信じている」としています。まさに「宗旨替え」と言うにふさわしい発言でしょう。

これまで金投資を否定し続けてきた著名投資家のウォーレン・バフェット氏に続いて、同じく金投資を否定し続けてきたシーゲル教授までもが、金投資を推奨し始めているのです。

シーゲル教授の金に対する強気な見方は、どうやらインフレや金利の見通しに根差したもののようです。シーゲル教授は、「金がまだ上昇し得る」と予想する一方、それがいつ終わるかについても予想しています。シーゲル教授は「債券利回りの上昇の初期は、間違いなく金価格は上昇する。しかし、FRBが金融緩和を十分と考え、金融引き締めや利上げを言い出したら、金の強気局面は終わる」としています。

この点は私もこれまで各所で指摘しているポイントであり、きわめてセオリカルな説明であると言えます。FRBが政策を転換し、市場金利が上昇すれば、よほどのインフレにならない限り、金価格は上がらなくなります。

私も金に対して万年強気ではありません。強気なのは市場環境がそのような予測に仕向けている時だけです。これは株式に対しても同じでしょう。常に株価が上がり続けるわけではありません。時折大きなショックがあります。また、バブル化して数年間株価が戻らないこともあります。そうであれば、株式と金を同額保有していれば、それぞれのリスクが相殺し合うことで、資産価格の変動リスクを抑制できることになります。

上げる相場もいずれ下げ、下げ続ける相場もまた存在しません。私が言い続けている「株式と金を同額で同時に保有しておく」意味はそこにあると言えます。

いずれにしても、市場における大ベテランのバフェット氏もシーゲル教授も否定してきた金投資を、今になって認めたことは非常に興味深いことです。私が指摘し続けてきたことを彼らがようやく認めたわけです。これは私にとっても非常に嬉しい出来事です。やはり金投資が必要不可欠であるということが、彼らによって認定されたといってよいでしょう。金投資家にとって、これほど心強い援軍はいないのではないでしょうか。粛々と株式と金を同時に買い続けるというこれまでの私の信念は、彼らの言葉でさらに強化されたとも言えます。

目先の金相場は上値が重い状況にあります。それでも1,900ドル台を維持し、それまでの史上最高値を超えています。その事実を忘れてはなりません。短期的には米ドルの下落がやや止まったことが圧迫要因になっているようですが、これはあくまで目先の話であり、長期投資家にとっては、ほとんど無視し得る動きでしょう。

金は高値圏でもみ合っていますが、現段階で投資判断を変える必要はないと考えています。もちろん慌てて手仕舞い売りを出す必要もないでしょう。前述の大ベテランのお墨付きがあることからも、一般の投資家や機関投資家などは金投資を始めやすいと言えます。

金投資はすでに欧米では一般的ですが、それはあくまでプロの投資家や富裕層だけでしょう。まして日本では、まだまだ広がっていないのが実態です。金融資産が少しでも金に向かえば、金相場は下がりにくくなるだけでなく、一定程度の水準の押し上げも見られるでしょう。投資家の大半はさらに金投資を増やすべき層です。彼らが買い始めれば、そこが本格的な上昇相場の始まりになるでしょう。

ちなみに、現在のFRBによる資金供給が続けば、金相場は上がらざるを得ないという計算が成り立ちます。この点は、シーゲル教授も指摘している通りです。米マネタリーベースは、リーマン・ショック直前から現在までの月次の伸びが1.3%であり、これを当てはめると、金相場は5年後には4,000ドルを超える計算になります。さらに、12年後には12,000ドル近くに達してもおかしくない計算になります。

そこまで上昇するかは誰にもわかりませんが、少なくとも金融緩和策が継続し、資金が市場に供給され続ければ、上記のような水準に達する可能性があることは念頭に置いておきたいと考えています。

また、金価格を米国のウィルシャー5000で割ったレシオの推移をみた場合、レシオが1980年の水準に達するには金相場が現在の10倍の水準になる必要があります。逆に言えば、金は当時と比べて株式に対して10分の1の価値に落ち込んでいるということになります。つまり、10倍の上昇の可能性を秘めているということになります。これを現在の金価格に単純に当てはめると2万ドルになります。馬鹿げた水準に見えますが、それをどのように判断するかはそれぞれでしょう。

また、米財政収支をGDPで割った債務率と金相場を比較すると、現時点で3,000ドル近くになっていてもおかしくないとの試算が可能です。このように、金相場の水準はもしかするとまだ相当割安なのかもしれないのです。そこまで想定しておけば、目先の値動きにとらわれる必要もないでしょう。

円建て金相場も高値から下げていますが、押し目をしっかりと拾っていくのが良いでしょう。円高になると、円建て金相場は上がりづらくなりますが、その場合にはドル建て金相場が大きく上昇しています。したがって、円高を気にする必要はありません。円建てで粛々と金投資を続けるとよいでしょう。

今回の金相場は長丁場になると考えています。これまでも買いを推奨してきましたが、金を保有し続けることが大前提であるとのスタンスをより明確にしておきたいと思います。これまでも繰り返してきたように、資産形成の主軸は株式投資になるでしょう。それも米国株が基本になるでしょう。その米国が発行する基軸通貨である米ドルの価値が今後は棄損する可能性があります。財政出動と緩和策で米ドルの価値は着実に低下しています。それを直接的に反映するのが金(ゴールド)です。米ドルの減価が進むにつれて、金価格は上昇していくでしょう。

この考えに基づき、金投資の目的を「保有する」ことに向けることが重要です。このような発想になると、どのような価格水準でも買えます。株式を保有しているのに金を保有していないというのであれば、直ちに買いを検討すべきでしょう。そして、保有している株式のエクスポージャーと同額になるまで金保有額を積み増すとよいでしょう。そして、現金も確保し、それぞれ3分の1ずつになるようにしておけば、どのような局面にも慌てる必要はなくなります。

時間分散を図りながら、粛々とポジションの調整を行えば、気づいた時には「株式・金・現金」の3分割法が完成していることでしょう。現金比率を落として、投資額を増やしたいというのであれば、それでもよいでしょう。ただし、その場合でも株式に偏重するのではなく、金投資も同時に行うことを強くお勧めします。

金投資の本質的な目的は、あくまで株式のリスクヘッジです。株式と同時に金に投資し、トータルでのリターンを狙う中で、資産の増大化ができればよいわけです。そのためには、株式投資を継続する限り、高値でも金も買い進めていく必要があります。そうすれば、安定して資産を増やすことができることが、過去データからも実証されています。

金は株式とは違う値動きをします。その結果、資産価値の変動を抑制することができるだけでなく、資産価値の向上にも成功しています。始めるべきと感じたときに、すぐに始めることが肝要です。日本でも多くの投資家が金投資の重要性に気づき、実行に移していただきたいと考えています。

プラチナ:続落の展開

プラチナは続落しました。8月18日には一時940.04ドルに反発する場面もありましたが、上値が重く、週末8月21日には一時893.87ドルまで下落しました。ただし、引けでは918.50ドルで引け、節目の900ドルを維持しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の8月18日時点のポジションは2万1812枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が460枚縮小しました。買いポジションが847枚増加し、売りポジションが1,307枚増加しました。強気と弱気な見方が交錯しているようです。

プラチナ相場は金相場の調整に連れる展開となり、引き続き主体性のない展開にあります。したがって、金相場が戻らないと、プラチナ相場の反発も期待しづらいでしょう。金相場に連動して動く銀相場が大きく上昇していますが、プラチナ相場の上昇は明らかに小さいといえます。

日本の貴金属市場関係者の中には、依然として金とプラチナのスプレッドが拡大しており、割安と指摘する向きがいるようです。しかし、この発想は間違っていると明確に否定しておきたいと思います。

現在の金とプラチナのスプレッドは1,000ドルを超えており、歴史上最大の水準に広がっています。2008年3月には金がプラチナよりも1,250ドル程度安い水準だったことを考慮すれば、今の状況は確かに奇妙にみえるでしょう。しかし、これは金とプラチナが抱える価格形成の背景が全く違うことが要因です。したがって、両者の価格差だけで何かを判断することは絶対に避けるべきです。

まして、プラチナを割安と判断し、プラチナを買い、金を空売りするような行為は根拠が全くありません。私はこのような投資行為は絶対にすべきではないと何年も前から指摘し続けてきましたが、やはりこの考え方が正しかったことが今の市場で証明されています。ぜひ注意したいところです。

プラチナには金と違い、通貨の価値を想起させる要因がありません。この点は、現在の市場環境ではきわめて大きい影響を与えていると言えます。また、FRB等の金融当局による緩和政策や各国政府の財政出動で、通貨価値の下落が想起されます。通貨価値の低下は金価格を直接的に押し上げますが、これはプラチナには関係のない材料です。

今の金相場がこの材料で上昇していることを考えると、金とプラチナのスプレッドが拡大するのは当然といえます。そして、そのプラチナは、主要な需要項目である自動車触媒向けが、自動車販売の低迷で需要減となっており、むしろファンダメンタルズ面からは売られやすくなっています。

もっとも、将来的には水素社会がプラチナ需要を押し上げるのではないかとの期待があります。燃料電池車では、水素を利用する燃料電池におけるプラチナが触媒として重要な役割を果たすことになるようです。この場合、プラチナを触媒として使うディーゼル社向けの触媒の使用量の10倍の量を使用するとさえ言われています。化石燃料からの脱却が加速し、水素社会の浸透が進めば、プラチナの新たな需要に目が向き、価格が押し上げられることも想定されます。今後の需要構造の転換に注目しておきたいところです。

とは言え、目先はこれまでの需給構造を前提に見ていくことになるでしょう。金相場の動向次第で変動するパターンも続くでしょう。金相場が再び2,000ドルを試す展開になれば、プラチナ相場も再び節目の1,000ドルを試し、さらに上値を追う可能性も出てくるとの見方は変わりません。まずは、金相場の動向を見たうえで、次の動きを見極めたいと考えます。

円建てプラチナ相場は大きく続落しました。高値からの下げが大きくなっており、節目の3,100円を割り込むと下げが大きくなりそうです。今は押し目買いは避け、まずは3,100円で下げ止まるかを確認したほうがよさそうです。そのうえで、反発基調に入れば、その時点で買いを検討できるでしょう。3,100円を割り込んだ場合には、さらに下げ幅が大きくなりそうです。安易な買い下がりは避けたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅反発の展開

シルバーは小幅反発しました。8月18日には一時28.44ドルまで上昇する場面がありましたが、上昇の勢いは強まりませんでした。週末は26.68ドルで引けました。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表する

COMEX銀先物市場における大口投機筋の8月18日時点のポジションは2万6556枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が2,988枚拡大しました。買いポジションが3,855枚増加し、売りポジションが867枚増加しました。投機筋は売り方も買い方もポジションを増やしていますが、まだ買い意欲の方が上回っているようです。

銀相場は8月7日に29.83ドルまで上昇した後は、調整含みの展開にあります。とは言え、下値を試した後は崩れておらず、今は三角持ち合いの状況にあります。こうなると、いずれレンジが小さくなり、上下のどちらかに大きく放れることになります。

銀独自の材料があるわけではないため、まずは26.25ドルの下値と28ドルの上値のどちらに抜けるかを見極めることになるでしょう。そのうえで、抜けたほうについていくような展開になりそうです。もちろん、そのきっかけはやはり金相場になるでしょう。今は調整色の強い展開にありますが、調整期間が終わった後の値動きに注目しておきたいところです。調整した場合でも、23ドルを維持できれば、再び上向く可能性は残りそうです。

円建て銀相場も上値の重い展開にあります。このまま調整基調が強まるのか、または反発に転じるのかを確認したいところです。節目の100円が重くなるようだと、しばらくは調整ムードが強まりそうです。その場合には、節目の90円から85円で下げ止まるかを確認したいところです。この水準で下げ止まれば、反発に転じる可能性は残ると考えられます。85円での下げ止まりが確認できれば、押し目買いを検討できるでしょう。逆に再び95円を超える動きなれば、再び100円を目指す展開になりそうです。その場合には、上昇についていく形で買いを検討できるでしょう。

銀相場はとにかく乱高下しやすいのが特徴です。短期的に収益が上がる可能性もありますが、逆に損失を被るリスクも高いと言えます。この点をよく理解したうえで、許容できるリスクの範囲内で買いを検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券