先週のゴールド:大幅下落の展開

金相場は大きく調整しました。前週(8月3日~7日)までは連日のように史上最高値を更新する展開でしたが、8月10日の週明けから地合いが急速に悪化しました。ロシア政府による新型コロナウイルスのワクチン承認の報道などをきっかけに利益確定売りが殺到し、急反落して2,000ドルの大台を割り込みました。

米欧などの株価が上昇する中で、安全資産とされる金はじりじりと値を下げました。また、追加の新型コロナ経済対策をめぐる米政権と議会の協議が近くまとまるとの期待も金相場を下押しし、8月11日には最大で6.2%安となり、1日の下げ幅としては2013年4月以来の最大の水準となりました。

さらに8月12日には一時1,863.66ドルまで下落しました。その後は根強い先高感などを背景に節目の1,900ドルの水準を回復しました。米ドルがユーロに対して下落したことも材料視されました。新型コロナウイルス追加経済対策をめぐるトランプ米政権と議会の協議の難航が伝えられたことや、大規模な金融緩和に伴う低金利環境が金利を生まない資産である金への資金流入を支援しました。

週末は反落し、週間ベースでは2020年3月以来の下落率となりました。米国債利回りの上昇や、新型コロナウイルスにより打撃を受けた経済支援のための米追加経済対策の行き詰まりが金の魅力を押し下げ、1,943.75ドルで引けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、8月14日時点で1248.29トンとなりました。5日には1267.96トンまで増加していましたが、その後は金相場の下落につれる形で減少しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の8月11日時点のポジションは22万4053枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が1万4693枚縮小しました。買いポジションが1万4980枚減少し、売りポジションが287枚減少しました。投機家は手仕舞い売りを進めているのがわかります。

円建て金相場はドル建て金相場の大幅安を受けて急落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:押し目買いが入るかに注目

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・ドル相場の動向
・投資家の金買いは継続
・円建て金相場も持ち直しへ

金相場は急落しました。先週(8月10日~14日)は米10年債利回りが約7週間ぶりに上昇したほか、米国の新型コロナ追加経済対策の新たな協議への期待も議会が中断したことで、期待が後退しました。金利が上昇すると、利子を生まない金を保有する機会費用が意識され、売りが出やすくなります。一方で実現可能性の高い米追加経済対策や米大統領選挙の混乱の可能性から、安全な投資先としての金は選好されやすく、金相場は再び過去最高値を更新するとの見方も少なくありません。今は金市場に対して様々な見方が交錯しているようです。

いずれにしても、これまでの金相場の急ピッチの上昇に対する調整は不可欠であり、今がその期間にあるといえます。しかし、それでもいずれ金相場は息を吹き返すと考えています。金市場を取り巻く環境はきわめてポジティブであり、金相場は上げやすい状況にあります。したがって、ある程度の値幅調整は進んでいるとみられ、あとは日柄調整をこなせば再び上げていく可能性は十分にありそうです。

ただし、一時的に1,850ドル程度まで調整する可能性も念頭に入れておきたいと考えています。特に株価が下げたときに、同時に換金売りの対象になる可能性があるためです。ここまで念頭に置いておけば、市場変動に慌てる必要もないでしょう。

金相場は米金利が上げてきており、これが圧迫要因になる可能性があります。一方で、米CPI(消費者物価指数)が上昇しており、インフレ率の上昇が米実質金利を低下させています。これは金にはきわめて強いポジティブ材料です。

したがって、名目金利とインフレ率のどちらの上昇が速く、大きいかがポイントになってきます。米連邦準備制度理事会(FRB)は債券買い入れで金利を抑制しようとするでしょう。そうすれば、名目金利は抑制されることになります。

一方で原油相場が上昇したり、米政府の給付金などがインフレ率の上昇につながるとの見方が高まれば、CPIの上昇に伴って期待インフレ率が上がる可能性があります。そうなれば、金相場は理論的に高くても問題ないことになります。この点は、金相場の水準を理論的に説明するうえで重要なポイントです。引き続き、名目金利とインフレ率の動向に注目しておきたいと考えます。

金価格の水準や方向性に対する考察も重要ですが、より重要なのは「金投資の目的」であると考えます。この点はこれまでも本欄で繰り返したことです。金相場の日々の上げ下げに気をとられず、長期ベースで押し目を利用して買い増していくことが重要です。

株式を購入すると同時に金も買うという方針を継続しておけば、株価の上下動に翻弄されることもなくなります。資産運用は今日・明日で終わりではありません。現金が必要になり、引き出しを始めるまで続くでしょう。資産ポートフォリオに一定量の金を組み込み、株式投資により企業の成長性を収益に変える作業を行うと同時に、リスクヘッジのために金も同時に粛々と買い続けることが大切です。

私は「株式・金・現金」の3分割法を推奨しています。個人投資家にはシンプルでよいと考えています。株式は米国を中心とした株式指数ETFで十分でしょう。金は現物・ETFで保有することができます。現金は株価や金が下げたときに買い増すときに利用します。いまは債券投資にはあまり妙味がありません。そのため、株価変動のリスクヘッジには金を利用したほうが良いでしょう。株式投資の際に同額の金を買うというのは、きわめて理にかなっていることは、過去データからも明白です。

金相場は連日のように史上最高値を更新する展開から、一転して反落しています。こうなると、「金バブルの崩壊」などを騒ぐ人たちが必ず出てきます。しかし、金保有の目的を理解していれば、2,000ドルでも1,800ドルでも対処の仕方は変わりません。最近の金相場の急騰は、過去に見たこともないペースでの上昇だったこともあり、調整は仕方がないでしょう。

もともと金投資でキャピタルゲインを狙っているわけではありません。保有することが最大の目的であり、キャピタルゲインはあくまで結果です。したがって、下げても慌てて売る必要もないのです。年金や機関投資家、ヘッジファンドなどには、金をポートフォリオに組み込むことが有効と判断したところが増えているように感じます。その結果が、直近までの上昇の直接的な要因でしょう。

そうであれば、株価が下げるまで彼らは買い続けることになるでしょう。今は焦って売っている向きがいますが、それはあくまで短期的な判断をする投資家でしょう。今回の調整の底値がいくらになるかは誰にもわかりません。株式投資でも同じでしょう。そうであれば、これまで通りに押し目を粛々と買い、保有量を積み上げていくだけです。

今回の金相場の上昇において重要なポイントは、投機筋が先物市場でほとんど買い増しを行っていなかった点です。かつては、COMEX金先物市場における投機筋の動きが金相場を決めていましたが、今はもはやそのような時代ではないようです。

つまり、今の金相場の上昇をけん引しているのは、これまであまり金に投資を行ってこなかった腰の据わった投資家です。こうなると、投資家の株式や債券から金への資金移動の動きは長期化することになるでしょう。つまり、いったん資金が流入し始めると、その期間が続くことになります。そして、それが大きな波となり、相場を押し上げることになります。

今の金市場にはまさにこれが起きていると言えるでしょう。このように考えれば、資産ポートフォリオに一定量の金を組み込むことを決め、その水準に達するまで粛々と金を買う投資家が下値を支えることになります。このような買いは、金保有量を一定の比率に引き上げることが目的であり、相場水準を気にせず機械的に買うことになります。したがって、相場水準は押し上げられざるを得なくなるわけです。もちろん、下値も限られてくるでしょう。最大のリスクはむしろ、株安といえます。株価が下げたときの金の現金化の動きに注意が必要となります。

先週は非常に興味深い報道がありました。著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイは8月14日、米証券取引委員会(SEC)に6月末の保有状況を報告し、米銀行株の保有を削減したことが判明しました。ゴールドマン・サックスの株式はすべて売却し、ウェルズ・ファーゴやJPモルガン・チェース、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンなどの保有株式も減らし、米経済や米銀の先行きを悲観した可能性が高いとみられています。

その一方で新規で買ったのが、カナダの産金大手バリック・ゴールド株です。同社株を約2090万株、56億ドル相当を新たに取得したのです。これは間接的な金投資と考えることができます。バフェット氏はかねてから、「金利も配当もつかない金への投資は無駄」と公言してきました。私はこの考えに関しては、バフェット氏と全く考え方が違いますが、今回バリック・ゴールド株を取得したのは、その考えが変わったことがわからないように、株式で金のエクスポージャーを取得する意図があったとも言えるのではないかと考えています。

これは非常に興味深い投資行動の変化といえます。産金会社の収益は金価格の変動に大きく左右されます。つまり、金価格が上昇すると考えなければ、金鉱株に投資する意味は全くありません。金そのものに投資したくないと考えても、それは金に間接的に投資しているのと同じです。バフェット氏に本音を聞いてみたいものです。

バフェット氏は5月の株主総会で、米経済の先行きについて長期的には強気の見方を示していました。銀行株は、経済成長の恩恵を受けやすく、同氏が好むことで知られています。

ただし、米銀は新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化で、貸し倒れに備えた引当金を大幅に積み増し、業績は悪化しています。FRBによる低金利政策で利ざやが縮小し、中長期的な収益力の低下も懸念されているため、これを嫌気して銀行株を売却し、逆に金相場の上昇の恩恵を受けやすいバリック株を取得した可能性が高いといえそうです。今後のバフェット氏の金に対する発言にも注目しておきたいです。

円建て金相場も急落していますが、史上最高値圏に達する前の水準を依然として維持してます。この急落を利用して、徐々に保有量を増やすことを考えたいところです。金投資の目的を「保有する」ことに向けると、どのような水準でも買えます。株式を保有しているのに金を保有していないというのであれば、直ちに買いを検討すべきと考えます。そして、保有している株式のエクスポージャーと同額になるまで金保有額を積み増すとよいでしょう。

もちろん、現金の比率も確保したいところです。それぞれ3分の1ずつになるようにしておけば、どのような局面にも慌てる必要はなくなります。時間分散を図りながら、粛々とポジションの調整を行えば、気づいた時には「株式・金・現金」の3分割法が完成していることでしょう。現金比率を落として、投資額を増やしたいというのであれば、それでもよいでしょう。

ただし、その場合でも株式に偏重するのではなく、金投資も同時に行うことを強くお勧めします。金投資の本質的な目的は、あくまで株式のリスクヘッジです。株式と同時に金に投資し、トータルでのリターンを狙う中で、資産の増大化ができればよいわけです。そのためには、株式投資を継続する限り、高値でも金も買い進めていく必要があります。そうすれば、安定して資産を増やすことができることが、過去データからも実証されています。

金は株式とは違う値動きをします。その結果、資産価値の変動を抑制することができます。さらに、実際に金投資のパフォーマンスが良いことも、金投資を進める理由の1つです。株式投資と同時に少額でも徐々に積み立てていけば、金投資の重要性への理解も進むでしょう。最初は金融資産の5%程度から金投資をはじめ、その後は10%。15%、20%などと徐々に増やしていくとよいでしょう。そうすれば、いずれ金投資の重要性を理解できるようになると思います。そして、「早く金投資を始めておけばよかった」と感じることになるでしょう。

今からでも始めるには遅いことはありません。今すぐにでも始めればよいのです。私のところにも、多くの方から「早く始めていればよかった」との問い合わせが増えています。

私は以前から金投資を勧めているのですが、一般の投資家にはなかなか理解されなかったのは大変残念です。しかし、現実的にはきわめて高い成果が出ています。始めるべきと感じたときに、すぐに始めることが肝要です。日本でも多くの投資家が金投資の重要性に気づき、実行に移していただきたいと考えています。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。8月10日には一時1,002.25ドルまで上昇し、節目の1,000ドルを超える場面もありましたが、その後は金相場の下落などもあり、プラチナにも手仕舞い売りが出ました。8月12日には一時910.58ドルまで下げましたが、その後は持ち直し、週末は936ドルちょうどで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の8月11日時点のポジションは2万2272枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2766枚拡大しました。買いポジションが1407枚増加し、売りポジションが1359枚減少しました。

プラチナ相場は金相場の乱高下に比べると比較的変動は小さいように見えます。また、上昇トレンドも崩れておらず、再び上向く可能性を残しています。ただし、プラチナ相場の方向性は引き続き金相場に大きく影響を受けることになるでしょう。したがって、今後も金相場の動向から目が離せません。金相場が再び高値を目指すような展開になれば、プラチナ相場も再び節目の1,000ドルを試し、さらに上値を追う可能性も出てくるでしょう。

その結果、2020年1月につけた高値の1,041ドルを超えるようだと、2016年8月の高値1,193ドルを試す可能性も出てきそうです。ただし、そのような動きになるには、投資家の買いだけでなく、需給ファンダメンタルズ材料がついてくることも不可欠でしょう。

ドイツ連邦自動車局(KBA)が8月5日発表したところによると、7月の新車登録台数は前年同月比5.4%減の31万4938台となりました。減少幅は4月の61.1%、5月の49.5%、6月の32.3%から急激に縮小しています。7月もホテルを敬遠する消費者行動を反映してキャンピングカーの人気が高く、登録がほぼ倍増しました。自動車販売が回復してくれば、プラチナの自動車触媒向け需要の回復期待が高まり、これがプラチナ相場を押し上げる材料になる可能性もあるでしょう。

円建てプラチナ相場も反落しました。ただし、大きく崩れているわけではありません。再び3,500円を超える動きになれば高値更新となり、一段高からさらに上値を試す可能性が高まりそうです。下値は3,300円が重要と言えそうです。ここを維持できれば、押し目買いの好機になる可能性がありそうです。下値が確認されれば、買いを検討できるでしょう。ただし、3,300円を割り込んだ場合には、3,000円程度まで下げる可能性もありますので要注意です。その場合には、急落リスクに注意したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅調整の展開

シルバーは大幅調整となりました。8月7日につけた29.83ドルの高値から8月12日には23.42ドルまで急落するなど、きわめて激しい値動きとなりました。ただし、その後は値を戻し、先週末は26.41ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の8月11日時点のポジションは2万3568枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が6321枚縮小しました。買いポジションが8070枚減少し、売りポジションが1749枚減少しました。投機筋は下落局面でこれまでの上昇で積み上げてきた買いポジションを縮小させる一方、売り方も買い戻しを進めていることがわかります。

銀相場はまさに投機的な動きにあります。値動き自体は金相場につれていると言えそうです。銀は投機家好みの銘柄ですが、依然として注目度は引き続き高いようです。先週末までの値動きを見る限り、25ドルを維持できていれば、まだまだ上昇の可能性は残りそうです。

もちろん、さらに上値を伸ばすには金相場の反発や、直近高値の29.83ドルを超えることが不可欠になります。以前から繰り返すように、銀独自のファンダメンタルズ材料にポジティブなものがあるというわけではありません。したがって、金相場が一段安になった場合には、銀相場はさらに下げる可能性高いため、要注意と言えます。

25ドルを割り込んだ場合には相応に注意が必要でしょう。さらに23ドルを割り込んだ場合にはトレンドが崩れることになるため要注意と言えます。繰り返すように、銀相場には明確なフェアバリューがありません。したがって、とにかく明確に下げに転じるまではポジションを維持して利を伸ばすことが重要です。

依然として銀相場はトレンドが維持されていることを重視し、2012年10月の35.36ドルの高値を目指すかどうかに注目しておきます。ここまで上げるようであれば、大相場となります。金相場の動向を注視しながら、慎重に高値を追いかけていきたいところです。

円建て銀相場は反落しました。ただし、安値から戻しており、下げ幅は小幅にとどまっています。節目の100円超えを達成しましたが、その後は85円を割り込むなど、非常に激しい動きにあります。しかし、これは銀相場に特徴的な動きであり、これを前提に見ていくしかありません。

95円を回復してくれば、再び100円を目指す可能性がありそうです。そのような動きになれば、上値を買っていきたいと考えます。ただし、85円を割り込んだ場合には、いったん手仕舞い売りを行い、サポートを確認したほうがよさそうです。銀相場はとにかく乱高下しやすい銘柄です。この点をよく理解したうえで、自身が取ることができるリスクの範囲内で投資することを強くお勧めします。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券