先週のゴールド:史上最高値を更新

金相場は続伸し、史上最高値を更新しました。新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた世界経済に米中対立の激化が追い打ちをかける可能性が懸念され、ドルが下落する一方、資産の安全な逃避先として金が買われています。

ドルは安全資産としての魅力を失いつつあり、ドル指数が2年ぶりの安値を付ける中、金の急伸は続くとの見方が強まりました。米中間の緊張に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に減速の兆候が見られない米国経済が懸念されたことも材料視されました。さらに、中国政府が7月27日、四川省成都の米総領事館を閉鎖し、接収しました。米政府が7月22日にテキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じたことへの報復とみられています。

これらを受けて、金相場は7月28日に一時史上最高値の1,980.57ドルまで上昇しました。米連邦準備制度理事会(FRB)は7月28・29日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ゼロ金利政策の維持を決定しました。新型コロナウイルス感染者数の急増で景気回復期待が後退していることが背景にあります。

パウエルFRB議長は、現在の景気低迷は深刻で、回復には財政や金融支援を必要としており、FRBは引き続き「あらゆる手段」を使って経済を支え、景気が回復するまでゼロ金利政策を維持する姿勢を示しました。その後はやや上値が重くなりました。買いポジションを抱えている投資家が、それまでの9日続伸を受けて利益確定の動きを強めた可能性が指摘されました。金相場は月間ベースでは2016年2月以来の上げ幅となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、7月24日の1,228.81トンから、7月31日に1,241.96トンに増加しました。7月28日には1,243.12トンまで増加する場面がありました。投資家の金買いは継続しています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の7月28日時点のポジションは23万6801枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が2万9635枚縮小しました。買いポジションが2万1649枚減少し、売りポジションが7,986枚増加しました。投機家は高値圏で手仕舞い売りを出しているといえます。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて続伸しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:高値もみ合いの展開

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・ドル相場の動向
・持続的な金市場への資金流入は継続
・円建て金相場は高値更新の展開に

金相場は今週も堅調さを維持しそうです。あらゆる市場に関する要因が金市場の追い風になっています。先週のFOMCでは、FRBが経済対策を強化する可能性を示唆する一方、新型コロナウイルスをめぐる不確実性もあり、安全資産としての買いが入りやすい地合いです。

さらに、米政府による追加的な景気刺激策への期待もあり、これらがドル安を誘う中で金が買われやすくなるとの見方は根強いようです。一方、これまでの投資家の金投資もかなり際立っています。今年の上半期の資金流入は、債券ETFが約978億ドル、株式ETFが約702億ドルとなる中、金を中心としたコモディティETFは約349億ドルに膨らんでおり、債券や株式に対する比率がこれまでに比較してきわめて大きくなっているとの指摘があります。

投資家の金投資の判断における着目点は、ドル安、新型コロナウイルスの感染拡大継続、米中対立、米経済への不安、米大統領選の行方などでしょう。基本的に米国やドルに対する不透明要因が買い材料になっているといえます。

また、一部には将来のインフレ懸念も買いを誘っている面があるでしょう。米財政出動の規模拡大がいずれインフレにつながるとの見立てです。このように、金市場を取り巻く環境は、金相場にはポジティブなものばかりです。

投資家もその辺りを十分に理解しているようで、買い姿勢を全く緩める気配がありません。米実質金利から見れば、金相場の理論値は1,480ドル程度と試算されるため、金相場は割高に見えます。しかし、いまは歴史的な大相場にあるため、いまの段階で弱気な見方をする向きは少ないようです。

ただし、注意が必要なのは、上記のように強気な見方が多く示されるようになったときでしょう。米金融大手ゴールドマン・サックスは7月28日、金価格の12ヶ月見通しを2,300ドルに引き上げました。従来は2,000ドルでした。安全資産である金にとって好環境が続くほか、米実質金利が一段と低下する見方が追い風になるとしています。

ゴールドマン・サックスによると、金価格の急騰はFRBが政治的緊張を考慮してインフレバイアスにシフトする可能性があるとの見方や新型コロナウイルス感染が拡大するという予想で引き起こされているといいます。さらに、「各国政府がそれぞれの不換通貨を切り下げ、実質金利を過去最低水準に押し下げている現在のような環境下では特に、金は最後の投資先になるとの見方を長らく主張してきた」と指摘し、基軸通貨としてのドルを巡る懸念が表面化し始めているとしています。

また、「経済回復に向けインフレ懸念が引き続き高まっており、ドルが構造的に弱体化する中で金の上場投資信託(ETF)にヘッジ資金が引き続き流入していることから、金はファンドマネジャーによってドルヘッジとして利用されていると見ている」としています。

一方、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)は、政策金利が既にゼロかそれを下回り推移する中、金相場を支えるには物価上昇の高まりが必要となるとし、その上で、今後18ヶ月で3,000ドルを付けるとの予測を示しています。

このように、いまは強気見通しが増える傾向にありますが、このようなパターンになったとき、過去には多くのケースで価格がピークアウトしています。相場水準が切り上がると、金融機関は市場に合わせて見通しを引き上げる傾向があります。これがさらに相場を押し上げるといったことも起きやすいといえます。

しかし、ゴールドマン・サックスは2011年9月に金価格が当時の高値である1,920.30ドルを付けた際に、「金価格は2,500ドルに上昇する」として、そのタイミングが高値になった経緯があります。したがって、このような見通しについては、中立に見ておくことが肝要です。

金相場は史上最高値を更新しましたが、いずれ更新するとみていました。これまで金投資の重要性を説明し、買いを推奨し続けてきた立場からすれば、ようやく高値を更新したということで、感慨深いものがあります。マスコミでも金に関する話題が増えているようで、私のところにも原稿執筆や取材の依頼が急増しています。こうなると、相場の天井の可能性もありそうですが、いまはそのようなことは気にせず、これまでの金に対するスタンスを維持したいと考えています。

高値圏にあるだけに、手仕舞い売りを出したくなるところですが、これまでそれを我慢して耐えてきたからこそ、いまのリターンがあるといえます。押しても買い、上げても買いのスタンスを貫いたからこそ、収益が獲得できているわけです。

今後もこれまで継続してきた運用方針を変える理由はないと考えています。なぜなら、金保有の目的はあくまで株式投資とのリスクバランスをとるためです。資産管理上の必要性・重要性の観点から私は金の保有を勧めています。したがって、史上最高値を抜けてもスタンスは変わらないわけです。株式投資を続けるのであれば、金も粛々と買い続けるだけです。

金相場を相場として見るのではなく、あくまで資産の一部として考えることが肝要でしょう。株式を買うときには必ず金も買う。そうすれば、資産はリスクから守られることになります。このスタンスを変えないことが重要なのです。

したがって、長期的に株式の積立投資などを行っているのであれば、同時に同金額の金を積み立てるのがよいといえます。私自身も株式や債券を中心とした投信を毎日買い、それに合わせて金も同額買っています。その結果、資産価値の変動を抑制しながら、資産の増加を図ることができています。

金の継続的な買いは、資産形成の一部であり、これが実は最も安定して資産を増やすことができる方法であると考えています。日本ではあまり知られていない方法ですが、欧米や富裕層の間では常識的な方法です。

さて、金相場は史上最高値をさらに更新していますが、節目の2,000ドルには届いていません。したがって、超えられないと判断されれば、一時的に短期筋などが手仕舞い売りを出し、急落する場面もあるかもしれません。しかし、それは買い場になっていくでしょう。

上記で解説したスタンスで考えれば、これまでの運用方針を変える必要はないと考えます。無論、いつ高値を付け、急落するかなどについては誰にもわかりません。わからないからこそ、これまでのスタンスを維持し、金を保有し続ける一方、買いを継続すべきであると考えています。資産運用は今日明日で終わるわけではありません。したがって、これからも金の積み立てを続けるのがよいでしょう。

著名投資家のジョージ・ソロス氏は「良い運用は退屈なものである」といいます。金投資はまさにこれに当てはまるでしょう。粛々と退屈な運用を継続していくことが、最終的には資産拡大につながると考えています。

一方、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は2020年4-6月期の世界の金需要が、前年同期比11%減の1,016トンになったとしています。コロナ禍でのロックダウンの影響で、各国の宝飾品需要が軒並み落ち込んだとしています。ただし、金を裏付け資産に持つ上場投資信託(ETF)が大きく伸び、需要減を補っています。

宝飾品需要は53%減の251トンと、2四半期連続で過去最低を更新しました。金価格の高騰もあり、消費者の購入意欲が鈍化しています。また、各国中銀の金購入量も減少しています。これも価格高騰の影響がありそうです。購入量から売却量を差し引いた純購入量は同50%減の115トンにとどまっています。また、工業用需要も67トンと18%減少しました。

一方で、金への投資は大きく伸びています。ETFや地金・コインなどを含む金への投資需要の累計は98%増の583トンとなりました。ETFを通じた金需要は434トンと、5.7倍の規模に拡大しています。経済の先行き不透明感が強まる中、投資家の安全資産への需要が高まっています。WGCは、今後も宝飾品などの消費者需要が抑えられるとみています。ただし、経済の不確実性や新型コロナウイルス感染再拡大などのリスクにより、安全資産としての金には今後も投資家の注目が集まりやすいとしています。

円建て金相場は史上最高値圏での推移が続いています。毎週の繰り返しで恐縮ですが、新規で買うには躊躇するような高値水準です。しかし、上記のように、金投資の目的を「保有する」ことに向けると、高い水準でも躊躇なく買うことができます。時間分散を図りながら、粛々と買いを積み上げていけば、その結果、キャピタルゲインも得ることができるでしょう。

ただし、金投資の本質的な目的は、あくまで株式のリスクヘッジです。株式と同時に金に投資し、トータルでのリターンを狙う中で、資産の増大化ができればよいわけです。そのためには、株式投資を継続する限り、高値でも金も買い進めていく必要があると考えています。

金は株式とは違う値動きをします。その結果、資産価値の変動を抑制することができます。さらに、実際に金投資のパフォーマンスが良いことも、金投資を進める理由の1つです。株式投資と同時に少額でも徐々に積み立てていけば、金投資の重要性への理解も進むでしょう。

最初は金融資産の5%程度から金投資をはじめ、その後は10%。15%、20%などと徐々に増やしていくとよいでしょう。そうすれば、いずれ金投資の重要性を理解できるようになると思います。そして、「早く金投資を始めておけばよかった」と感じることになるでしょう。しかし、それでも始めるには遅いことはありません。今すぐにでも始めればよいのです。

私のところにも、多くの方が「早く始めていればよかった」と問い合わせをしてきます。私は以前から進めているのですが、一般の投資家にはなかなか理解されなかったのが実態です。しかし、今回の状況を確認するまでもなく、きわめて高い成果が出ています。始めるべきと感じたときに、すぐに始めることが肝要です。日本でも多くの投資家が金投資の重要性に気づき、実行に移していただきたいと考えています。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。7月28日には一時961.52ドルまで上昇しましたが、その後は手仕舞い売りが出たもようで、週末は908.15ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の7月28日時点のポジションは2万2412枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,000枚拡大しました。買いポジションが2,088枚増加し、売りポジションが88枚増加しました。

プラチナ相場は上値が重くなっています。金相場が史上最高値を更新するなど、歴史的な高値水準にありますが、プラチナ相場はその動きについていけない状況にあります。この背景には、やはりファンダメンタルズの違いがありそうです。したがって、金相場の動向に注目しながらも、これまで解説してきたように、プラチナ独自の値動きに注目しておきたいと考えます。

過去の水準を見ると、先週の高値水準である960ドルは重要な節目になっているようです。したがって、ここを上抜けきれなかったことは、テクニカル面での上値の限界を感じさせる展開だったといえます。

これまでは、投資マネーが出遅れ感を材料にプラチナに買いが入ってきた面がありますが、買い続けるにはファンダメンタルズ面のサポートは弱いといえます。このような環境では、投資姿勢にも慎重さが求められそうです。

金と違い、プラチナには通貨の代替としての価値が認められないこともあり、現在のドル安傾向がプラチナ相場を押し上げる構図にはなりづらいといえます。このように、プラチナには金の代替性はありません。したがって、プラチナ価格が金価格に対して割安との判断からプラチナを買うことは避けるべきというのが私の明確なスタンスです。引き続き、プラチナの価値そのものを理解したうえで投資判断をすべきであると考えます。

円建てプラチナ相場も反落しました。ドル建てプラチナ相場が下げており、これに連れる展開です。3,300円水準まで上昇しましたが、下げてきていますので、まずは3,100円をサポートできるかに注目します。そのうえで、下値が確認されれば、買いを検討できると考えます。ただし、割り込んだ場合には、3,000円程度まで下げる可能性もありますので、下落リスクには注意したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅上昇の展開

シルバーは大幅上昇となりました。一時26.18ドルまで上昇し、2013年4月以来の高値水準を付けました。週末は24.37ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の7月28日時点のポジションは2万7308枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が1万9447枚縮小しました。買いポジションが1万5609枚減少し、売りポジションが3,838枚増加しました。投機筋がこれまでの上昇に対して積み上げてきたポジションを大幅に縮小させています。

これまでの銀相場は、まさに投機的な動きといえます。高値圏での乱高下が見られ始めており、クライマックスのようにも見えます。しかし、このような相場になると、高値のターゲットを設定することも難しく、見方が非常に難しくなっています。まさに高値波乱の様相ですが、いまの状況で相場は崩れたとは判断できません。

現在の銀相場がどの水準まで上げていくのか、非常に興味深いところです。30ドルなのか、あるいは50ドルなのか、フェアバリューが明確ではないだけに、どの価格水準でもおかしくないといえそうです。乱暴な言い方になりますが、とにかく下げるまではポジションを維持して利を伸ばすことが重要になりそうな雰囲気です。

いまのように、貴金属への関心が高まっているからこそ、安易な売りで収益機会を逃さないことが重要になりそうです。また、ゴールドマン・サックスは、銀価格の見通しについて、3・6・12ヶ月見通しを30ドルに引き上げました。ゴールドマン・サックスは、「金価格の上昇と太陽エネルギーを中心とする産業需要の改善見込みが価格上昇の背景」としています。

理由はともかく、相場は上げているという事実を念頭に置きつつ、2012年10月の35.36ドルの高値を目指すかどうかに注目しておきます。ここまで上げるようであれば、まさに大相場となります。無論、急反落のリスクを常に抱えながらの展開になるでしょう。金相場の動向を注視しながら、慎重に高値を追いかけていきたいところです。

円建て銀相場は上昇しました。円高でやや上値は重かったといえます。節目の90円まで上昇しましたが、その後は80円程度まで調整しています。このように、非常に値動きが大きくなっており、注意が必要といえます。

ただし、基調が上向いている限り、できるだけ買いポジションを維持しながら上値を追いかけていきたいと考えます。もっとも、80円を割り込んだ場合には、手仕舞い売りなども検討すべきでしょう。急落につながるリスクがありますので、注意が必要と考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券