先週のゴールド:節目の1,900ドルを突破

金相場は上昇し、節目の1,900ドルを超え、2011年9月以来の高値をつけました。米国内で1日に報告された新規感染者数が過去最多となるなど、新型コロナウイルスの急拡大が意識されています。また、今後の景気回復への不透明感に対する懸念が高まっていることや、為替市場でドル安が進んでいることも、ドル建て金相場を押し上げています。実質金利がマイナス圏で推移していることに加え、中央銀行のバランスシートの膨張も引き続き金相場の上昇要因として意識されています。

さらに、米新規失業保険申請件数が141万6000件と、前週から10万9000件増加しました。一部の州での新型コロナウイルスの感染急拡大を反映し、16週間ぶりに増加に転じたことで、労働市場の回復が遅れるとの懸念から、米国株が下落したことも金買いに拍車をかけました。

また、米中対立の悪化も材料視され、一時は1,905.99ドルを付けました。米政府が中国に対し、テキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じる一方、中国政府が米国に対し、四川省成都市にある総領事館を閉鎖するよう命じる対抗措置をとるなど、両国の関係悪化への懸念が一気に高まったことも、安全資産である金を買う動きにつながっています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、7月17日の1,206.89トンから、24日には1,228.81トンに増加しました。投資家の金買いの動きが止まりません。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の7月21日時点のポジションは26万6436枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が4,008枚拡大しました。買いポジションが4,032枚増加し、売りポジションが24枚増加しました。投機家は高水準の買いポジションを維持しています。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて大幅続伸となりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:買い一色の展開

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米中関係の悪化に伴う安全資産としての金買いの高まり
・投資家による持続的な資金流入は変わらず
・円建て金相場は高値を更新する展開に

金相場はとうとう節目の1,900ドルを回復し、いよいよ史上最高値の1,920.30ドルが視野に入ってきました。早ければ今週中にも到達しそうな勢いです。マスコミなどの報道を見ていると、様々なところで金に関する記事が掲載されています。歴史的な高値圏にあることから、当然のことなのかもしれませんが、そのわりに金ブームが高まっているようには見えません。日本国内ではまだまだ金投資の広がりがないことが背景にあるのでしょう。

実際、筆者の周りにも、金投資に興味を持つ投資家は少なくありません。中には、「価格が高い」「買い方がわからない」などの声も聞かれます。それだけ、金投資はまだまだ一般の人にとって身近ではないといえそうです。その意味でも、金投資に関する啓蒙活動が必要だと感じます。

金相場は今まさに歴史的な動きにあるわけですが、私は2016年の安値のときから金投資の重要性を説いてきました。そして、買い続けていれば、株式よりも高いリターンを得ることができると言い続けてきました私は金投資について話すときに、2つの重要なポイントを話すようにしています。

1つは、購入価格をあまり気にする必要はないということです。極論に聞こえるかもしれませんが、これは株式・債券などを中心とした投資信託の積立投資をイメージすればよいでしょう。金投資の目的は、株式投資で積み上げた資産を保全するためです。

そのため、2つ目のポイントとして、「株式投資をする際には、必ず同額あるいは同等額の金も買う」ということをお話ししています。株式・債券の投信の積み立てと同じように、金も積み立てるという発想で金も株式などと同額に購入するのであれば、金相場が高かろうが安かろうが関係ないということになるわけです。さらに言えば、金の方が株式よりもパフォーマンスが良いわけですから、株式投資だけで資産運用するよりも、明らかにリターンが高くなります。

そうであれば、「金だけで運用すればよいのではないか」という話になります。しかし、さすがにそれも偏りすぎであるといえます。金は株式よりもボラティリティが低く、株価が下げたときに値動きが逆になりやすいという特性があります。これを生かすために、株式と金を同時に買います。そうすると、株式と金で運用するポートフォリオの資産価値のぶれを低減することができます。

つまり、株価の動きに一喜一憂せず、株式投資のみで運用する場合に比べて安定的に運用することができます。そうすれば、心理的にも負担が大幅に軽減できます。このことを一般投資家はあまり認知されていないようです。

一般の投資家の興味は、どうしても投資の技術的な話に向かいやすく、投資や運用の根本的な理論はあまり理解されていないように感じます。投資の技術的な話とは、チャート分析や投資のタイミングについてです。しかし、上記のような根本的な考え方を理解すれば、運用でリターンを上げる方法についての理解も深まっていくのではないかと思います。そうなれば、投資の技術的な話よりも重要なことがあることも理解されていくのではないかと思います。

このような話をすると、「金相場が上がってきたから、そのような話をしているのだろう」といわれます。しかし、私はコモディティ市場を30年間見続けています。現在は1グラム当たり6,000円を超える相場ですが、1,000円以下のときも知っています。当時も今も、基本的に同じことを言い続けています。その結果が出ていることが、私が上記のようなことを言い続けている根拠になっているわけです。この点においては、金相場が高かろうが、安かろうが、まさに関係なく投資をしたほうが良いということになります。

したがって、私は今のような歴史的な高値水準でも、金を買い続けたほうが良いと考えています。なぜなら、金相場の天井を予測することはできませんし、する意味もないからです。金は現金の代わりであり、株式投資のリスクヘッジです。株式投資で一攫千金を狙うのも楽しいでしょうが、それは資金の3割を超えない範囲で行うべきでしょう。

やはり、7割は株式と金で安定した運用を行うのが良いと考えています。これが私が唱える「株式・金・現金」の3分割法です。現金を持っていれば、株価や金価格が急落したときに買い増しができます。現金がないと、それができません。そのために、現金を保有し、多少の時間は眠らせておきながら、チャンスが来た時に投入できるように準備をしておくわけです。

さて、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が7月24日公表した恒例の週間調査によると、投資家は現金と投資適格級債券、金に資金を移す一方、株式からは引き揚げ、高リスク資産を避けているようです。現金への資金流入は409億ドルと、5月6日以来の大幅なプラスでした。債券には245億ドルが流入し、史上3番目の大きさでした。金には38億ドルが流入し、史上2番目に多かったようです。

一方、株式からは38億ドルが流出してます。バンカメは、現在の金融市場で見られる主要な動きとして、金利の大幅な抑制とドルの大幅安を指摘しています。これにより、物価はデフレからインフレへ転換するとの見方を示しています。バンカメは、中央銀行が先に資産買い入れという形で8兆ドルの刺激策を導入したことで金利が大幅に下がったほか、社債スプレッドは大きく縮小し、ボラティリティが急低下したとしています。

いずれにしても、投資家のリスク回避姿勢はかなり鮮明になってきています。これまで上記のような単位で金に資金が流入することはありませんでした。それだけ投資家が、金への興味を高めており、実際に投資しているわけです。

このように、歴史が変わったのは、金相場の値動きだけではありません。投資家行動も大きく変わっています。しかし、日本ではまだまだ金投資のすそ野が広がっていないといえます。世界的な金投資の潮流が日本にも浸透してくれば、大きなうねりとなり、金相場はさらに一段高になる可能性があります。結果としてキャピタルゲインを得ることもできるでしょう。

しかし、それはあくまで結果です。繰り返すように、金投資の目的は株式投資との関係でポートフォリオの資産価値の変動を抑制することです。しかし、そうやっていれば、結果としてリターンも得られることになります。リスクヘッジといいながら、実際にはキャピタルゲインも狙えるのが金投資のユニークなところであるといえます。金投資を始めるには、キロバー(1キロの金塊)を買う必要はありません。一般的な人たちは、このような基本的なことも知らないのが実態です。

私は日本にもっと金投資を広げていかなければならないと考えています。まだ日本では私のような金を使ったファンド運用の経験者が多くないので、その意味でも、私の役割は大きいと感じています。もっと金投資が日本で広がるように、啓蒙に力を入れていきたいと考えています。

円建て金相場は史上最高値圏での推移が続いています。先週も解説しましたが、高値を買うのは躊躇する水準です。しかし、上記のように、金投資の目的は「保有する」ことであり、値幅をとることではないことを理解できていれば、高い水準でも躊躇なく買うことができます。その結果、キャピタルゲインも得ることができます。

しかし、これはあくまで付随的なリターンであり、本質的に狙っているものではありません。株式と同時に投資し、トータルでのリターンを狙う中で、資産の増大化ができればよいわけです。そのためには、高値でも買い進めていく必要があると考えています。

無論、金市場を利用して、短期的なリターンを狙うことももちろん可能です。いまは上昇基調にあるため、まずは買いを先行させ、ある程度のところでリターンを確保できれば、短期的なトレードで収益を上げることは可能でしょう。これはまさに、前述の投資の技術的な話、つまり「投資タイミング」になります。

これまで本欄でも、この点を強調して投資のタイミングを解説してきました。継続して購読されている方は、おおむね上手くいっていることをご理解いただけるでしょう。いまは買い持ちを維持して、利益を伸ばす期間です。下げに転じるまで、しつこく上昇相場についていくことを考えたいところです。

いずれにしても、これまで解説してきたように、金はポートフォリオ運用に組み込みながら、金の特性を生かすようにしていただきたいと考えています。株式とは違う値動きをするだけでなく、実際にパフォーマンスも良い金への投資は、資産拡大に寄与してくれると考えています。株式投資と同時に少額でも徐々に積み立てていけば、金投資の重要性への理解も進むでしょう。そのうえで、大きく下げたときに買い増しを行うのが良いでしょう。

このような方法は、トレーディングの一部とも言えるかもしれません。先週は円相場が円高に向かったことで、円建て金価格は上値を抑えられる可能性があります。それでも、ドル建て金相場の上昇が大きく、これが円建て金相場を支えるでしょう。当面は買い姿勢を継続することが良いと考えています。

プラチナ:急伸の展開

プラチナは急伸し、一時930ドルまで上昇しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の7月21日時点のポジションは2万0412枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が4,108枚拡大しました。買いポジションが4,143枚増加し、売りポジションが35枚増加しました。

プラチナ相場は金相場の上昇につれる形で上げているように見えます。プラチナを取り巻く市場環境に大きな変化はないため、投資マネーが出遅れ感を材料に買い上がってきたように思われます。プラチナそのものに独自の買い材料がないことはすでに何度も繰り返し解説してきたとおりであり、この状況は今も変わっていません。

したがって、金相場が崩れると、プラチナ相場はいち早く、それも大きく崩れる可能性があります。この点は常に念頭に置いておく必要があります。もっとも、金相場が史上最高値を狙う展開にあります。そのような動きになれば、プラチナ相場も節目の1,000ドルを試す可能性がありそうです。

ただし、注意すべき点を繰り返して解説しておきます。投資家の中には、プラチナ価格が金価格に対して割安との判断からプラチナを買う行為を行っている人もいるかもしれません。しかし、金とプラチナには代替性がありません。したがって、単純な価格差だけで投資判断することは正しくないありません。あくまで、プラチナの価値そのものを理解したうえで投資判断をすべきであると考えます。

円建てプラチナ相場も急伸しました。円高基調ですが、ドル建てプラチナ相場がこれだけ上昇すれば、さすがに円建てプラチナ相場も上昇します。直近高値の3,050円水準を超え、3,100円も上抜けてきました。前回コラムでは「3,050円を明確に超えて上昇に勢いがつけば、その流れに乗ってさらに買いを検討できるでしょう」とお伝えしましたが、この流れに乗れていれば、現段階では買い持ちを維持して上昇の流れに乗っておきたいところです。

もっとも、下げに転じた際には早めに手仕舞い売りを出すことも必要と考えます。3,050円を下回った際には、そのような対処も視野に入れたうえで、市場動向を見ておきたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅急伸の展開

シルバーは大幅急伸しました。昨年9月の高値である19.64ドルを超えると急伸し、7月23日には23.23ドルまで上昇する場面がありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の7月21日時点のポジションは4万6755枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が2,886枚拡大しました。買いポジションが4,331枚増加し、売りポジションが1,445枚増加しました。

銀相場はまさに投機的な動きになっています。本コラムで繰り返し解説してきたように、銀相場はこのような値動きになりやすい傾向があります。つまり、短期間で大幅な上昇になるという傾向です。今の動きはまさに銀相場特有の典型的なパターンです。

このような動きになると、急落が心配になります。銀独自のファンダメンタルズ材料を背景に買われているわけではありませんので、常に急落リスクを念頭に置いておく必要があると考えます。このような展開になると、高値がどこになるかもわかりません。

ターゲットを探すとすれば、2013年8月の高値25.08ドルになるでしょう。これも抜けると、2012年10月の35.36ドルの高値がターゲットになるでしょう。ここまで上げるようであれば、まさに大相場となります。念のため、ここまで頭に入れたうえで、投機的な動きが続くかを注視しておきたいと考えます。

円建て銀相場も急伸しました。節目の80円まで上昇してきています。先週は68円を超えるかどうかを見ていましたが、そこから大きく値を上げています。このような相場になると、急落が心配になります。

あらかじめ高値を予測し、天井で売ることはできませんので、下げた場合にどの水準で手仕舞いするかをあらかじめ決めておくとよいでしょう。そうすれば、得た利益を確保することができます。その水準はそれぞれの利益目標などに照らし合わせて決めるとよいでしょう。もっとも、上昇基調が続けば、それに追随して利益を伸ばしていきたいところです。収益が上がる限り、それを拡大させていきたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券