先週のゴールド:堅調な推移が続く

金相場は上昇し、再び1,800ドルを回復しました。米国での新型コロナウイルスの新規感染者数の急増により、FRB(米連邦準備制度理事会)が新型コロナウイルスの経済への影響を和らげるための追加刺激策を講じるとの期待が高まったことで、低金利状態が続くとの見方が金相場を支えています。

世界の新型コロナウイルスの感染者数は7月13日に1,300万人を超えました。米国では感染者が急増し、フロリダ州では24時間で新規感染者1万5,000人超の増加が報告されるなど、増加ペースに歯止めがかかっていません。

一方、米政府が中国の新疆ウイグル自治区のウイグル族の扱いをめぐり、中国高官らを制裁対象に指定したことを受けて、中国が7月13日付で「米国に相応の制裁を実施する」と発表したことも、安全資産とされる金への資金流入を一段と加速させました。

また、ドル指数が下落していることも、ドル建て金相場の押し上げにつながっています。さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)が現在の刺激策を続けるだけでなく、場合によっては追加措置を行う可能性があるとの見方や、欧州連合(EU)による刺激策の可能性に関する楽観的な見方でユーロは上昇し、さらに米CPIの上昇で米実質金利が低下したことも、ドル建て金相場の上昇につながりました。

一方、南シナ海地域をめぐる米中対立にも注視が集まりました。中国政府は、米国から台湾への武器売却に関与したとして米ロッキード・マーチンに制裁を科すと発表しています。一方、トランプ米大統領は7月14日、香港に認めてきた優遇措置の廃止を指示しました。中国はこれに対し、報復を警告するなど、米中関係の悪化懸念も買い材料になっているもようです。これらを受けて、週間ベースで金相場は6週連続で上昇しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、7月10日の1200.46トンから17日には1206.89トンにさらに増加しました。投資家の金買いの動きは極めて安定しています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の7月14日時点のポジションは26万2428枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が4930枚減少しました。買いポジションが6825枚減少し、売りポジションが1895枚減少しました。

投機家は手仕舞い売りを入れる一方、売り方も買い戻しを行っており、売り買いが交錯する状況にあります。売り手・買い手ともにやや迷いがみられます。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて値を上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:投資家の根強い買い姿勢は不変

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・金投資の世界的な広がり、注意すべき点は
・短期的には高値圏でのもみ合い商状
・円建て金相場は高値圏を維持

金投資の世界的な広がりのなか、注意すべき点は

金相場はきわめて堅調に推移しています。米実質金利がマイナス圏で推移していることに加え、中央銀行のバランスシートの膨張、弱含みのドル相場、そして依然として拡大し続ける新型コロナウイルス感染症の患者数などが材料視されており、金の安全資産としての魅力はさらに高まっています。これだけの材料がそろうことも珍しいでしょう。

本コラムで繰り返し述べているように、金は本来リスク資産に対する分散効果を狙って保有するものです。上記のような材料を見て投資判断するものではないといえます。しかし、結果的に金相場は上昇しやすい市場環境が過去にないほど整ってしまっていることが、金相場そのものを押し上げることになっています。したがって、注意しておきたいのは、「値上がりしそうだから買う」という考えを強く持ちすぎないことです。

繰り返すように、金を保有する意味は、あくまで株式などのリスク資産に対するヘッジ効果です。これは過去にも解説したように、株式投資の際に金を保有すれば、明確にリスクが抑えられ、資産価値のぶれを抑制しながらトータルで安定したリターンを得ることができることがわかっています。

金の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金を10%前後など一定程度保有すれば、リスクを抑制することができるとしています。私は、過去50年の金相場のリターンから、資産における金の保有比率は30%でもよいと考えており、そのように勧めています。過去の長期的なリターンを見れば、金は米国株を凌駕しています。この事実を理解しておくことが肝要です。

短期的には高値圏でのもみ合い商状

金相場は底堅さを維持していますが、短期的には高値圏でのもみ合い商状になっています。しかし、このような動きを見て、慌てて手仕舞い売りを出すことは避けたいと考えます。株式投資を継続するのであれば、金投資も同時に継続しておくべきです。それが、ポートフォリオ運用の基本です。

上がりそうな株式を見つけたとき、金を売却した資金でその株式を購入することは、もっともやってはいけない投資行動であると考えます。一時的に上手くいくときもあるでしょう。しかし、長期的に同じ投資行動がうまくいくとは考えられません。

投資運用は長期的な視点で、長期的に機能する方法で行うのが基本です。私が常に言っているのは、「株式を買うときには、必ず同時に金を買う」ということです。これを行うことで、株式投資というリスクをとる際に、金を買うことでリスク低減も図れることができます。

しかし、大半の投資家はこのようなことができません。この点、このような投資行動を数十年続けていれば、資産価値のぶれを抑制しながら、資産価値を高めることができていたことは、過去のデータが明確に証明しています。

投資家はどうしても近視眼的になりがちであり、目先の値動き一喜一憂しがちです。しかし、それは長期的な資産運用を行っていないことを意味します。資産価値の増加を図るには、正しい方法でやることが重要です。そのためには、金を保有しておくことが肝要です。

著名投資家であるウォーレン・バフェット氏は、「何に投資するのかわからなければ、S&P500のETFを購入しておけばよい」といいます。一方で、金には配当もなく、金利もつきませんので、金投資はすべきではないと明言しています。

しかし、米国株の過去20年のリターンは現在5%半ばであり、過去数十年の11%に比べて半減しています。一方、金のリターンは9%を超えています。歴史的な著名投資家に反論する意図は全くありませんが、事実は事実として理解しておきたいと考えます。

円建て金相場は高値圏を維持

円建て金相場は引き続き過去最高値圏にあります。上昇基調にあるため、新規で高値を買うのは躊躇する水準でしょう。過去と比較すればそのように感じるのは当然といえます。

しかし、上記にもあるように、金投資の目的は「保有する」ことであり、値幅をとることではないと考えています。結果として相場は上昇していますので、これまで金投資を行っている投資家は今、リターンが出ていることでしょう。もし、ここで利益を確定するのであれば、株式も同時に利益を確定すべきでしょう。それが資産運用です。

私は「株式4割、金3割、現金3割」というポートフォリオ運用を勧めています。現金は短期トレード用に利用しますが、株式や金の価値が低下したときには、上記の比率を合わせるために現金を利用して買いを進め、比率を整えることを進めています。このようにすれば、相場が戻した時に、自動的に資産が増えていきます。これがポートフォリオ運用の基本です。

したがって、円建て金相場が過去最高値にあるという理由で買わないというのは、運用ではなくなります。株式投資と同時に少額でも徐々に積み立てていくのが良いでしょう。そして、大きく下げたときに買い増すのが良いといえます。

円相場があまり動かず、ドル建て金相場は堅調さを維持しています。円建て金相場も堅調さを維持するでしょう。急騰すると買いづらくなります。徐々に保有額を増やしておきたいと考えています。時間と金額を分散して購入し続けることが肝要です。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸しました。先週は辛うじて節目の800ドルを維持しましたが、その後も800ドルを維持し、堅調さを維持しました。週末は838ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の7月14日時点のポジションは1万6304枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1011枚縮小しました。買いポジションが569枚減少し、売りポジションが442枚増加しました。

プラチナ相場は800ドルを維持して堅調さを維持しています。一方で850ドルが重くなっており、レンジ相場にあるといえます。したがって、850ドルを上抜くと、一気に上昇する可能性を秘めているように見えます。

ただし、そのような動きになる場合でも、プラチナ独自のファンダメンタルズ材料を背景にしたものではなく、あくまで金相場の上昇など外部要因の助けが理由になるでしょう。それでも、850ドルを超えると一定の勢いが出てきそうです。そのような動きになるかをまずは確認したいと考えます。

850ドルを超えていくと、節目の900ドルを試すことになりそうです。一方、投資家の中には、プラチナ価格が金価格に対して割安との判断からプラチナを買う行為を行っている人もいるかもしれません。しかし、繰り返すように、金とプラチナには代替性がありません。したがって、単純な価格差だけで投資判断することは正しくないと考えます。あくまで、プラチナの価値そのものを理解したうえで投資判断をすべきであると考えます。

ファンダメンタルズ面は依然として芳しくないといえます。1つの例が、欧州の自動車市場です。欧州の主流はディーゼル車ですが、これに搭載されているのがプラチナを原料とする触媒です。欧州の自動車産業が低迷していると、プラチナ需要が伸びないとの連想から、上値が重くなるのがプラチナ相場の特徴です。

欧州自動車工業会(ACEA)が7月16日公表した6月のEUの新車販売台数(マルタを除く26カ国、乗用車)は前年同月比22.3%減の94万9722台となりました。各国の新型コロナウイルス対策の封鎖措置緩和に伴い、販売店が営業を再開したことが影響しているようです。前月の52.3%減からは持ち直しましたが、完全回復には至っていません。国別では、スペインが36.7%減、ドイツが32.3%減、イタリアが23.1%減。一方、フランスは1.2%増となりました。このように、欧州の自動車産業も新型コロナウイルスの影響を直接的に受けています。この点には常に注意が必要です。

円建てプラチナ相場は低迷しています。辛うじて節目の2,900円を維持しています。ここで下げ止まり、反発できれば買いを検討したいと考えます。上昇した場合には、直近高値で過去何度も打たれている3,050円を超えられるかが、きわめて重要になりそうです。これを超えると、大きな動きに発展する可能性がありそうです。そのような動きになるかを確認したいと考えます。3,050円を明確に超えて上昇に勢いがつけば、その流れに乗ってさらに買いを検討できるでしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅続伸の展開

シルバーは大幅続伸しました。直近高値を上回り、19.46ドルまで上昇し、2019年9月の高値19.64ドルに迫る値動きとなりました。週末は19.31ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の7月14日時点のポジションは4万3869枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が6044枚拡大しました。買いポジションが4938枚増加し、売りポジションが1106枚減少しました。

銀相場はきわめて強い動きになっています。銀相場特有の投機的な上げを見せています。こうなると、高値を超えると、さらに買いが入って急騰につながる可能性があります。その一方で、抜けきれないと急落するリスクも常に念頭に置いておく必要があります。このような展開になると、材料ではなく、投機筋がどのように行動するかによって相場が決まります。

ファンダメンタルズなどはほとんど関係なくなります。相場の勢いが上昇サイドに向いていれば、上げ続ける流れに乗る形でさらに買いが入ってくる可能性があります。短期的にも投機筋は買いポジションを積み上げている可能性があります。まずは、いまの上昇にさらに勢いがつくかどうかに注目しておきます。

また、金相場の動向にも左右される可能性がありますので、金相場の動きも引き続き合わせてみておきたいところです。ちなみに、2019年9月の高値19.64ドルを超えると、2016年7月の21.10ドルが視野に入ることになります。そうなると、まさに大相場につながる可能性があります。

円建て銀相場は続伸しました。高値からは小幅に下げていますが、上昇基調は維持されています。直近高値を超えると、さらに勢いがつきそうです。ドル建て銀相場の値動きを注視しながら、トレンドが維持されるかを注視したいところです。上昇基調にありますので、66円を割り込むまではポジションを維持してついていきたいところです。

押し目買いは66円までと考えておきたいところです。66円を下抜けると、下げ基調が強まる可能性があります。その場合には、押し目買いは避け、下値をまずは確認するようにしたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券