モトリーフール米国本社、2020年7月2日投稿記事より

 運輸業の将来は、使用する化石燃料を大幅削減できるかどうかに懸かっていると言っても過言ではないでしょう。

費用全体に占める燃料費の割合が極めて大きいトラック運送業にとって、これは特に重要な問題で、法人顧客各社もカーボンフットプリント(業務に関わる二酸化炭素排出量)の削減に取り組んでいます。

その中でトラック運送事業に革命を起こすと期待されている企業の一つが、新興大型車メーカーのニコラ(NASDAQ:NKLA)です。

同社が開発中の大型トラックは水素燃料電池搭載の電動車で、現在圧倒的に主流のディーゼルエンジントラックとの代替を目指すものです。

今年6月に合併を介して上場して以来、株価は既に2倍に跳ね上がっています。

しかし、まだ製造を始めておらず、本格的な生産開始までにあと1年は必要ともされる同社株に、これ以上の上値余地はあるのでしょうか?

一部の投資家が信じているようにニコラ株で富を築くことは本当に可能なのか、以下で考察します。

難攻不落の牙城

ディーゼルエンジン車が中型・大型トラックの主流を占めているのは、どこでも給油可能で燃費に優れていることに加え、事業運営する上では修理整備コストを考慮する必要があるためです。

技術的に全く異なるエンジンを搭載したトラックを採用すれば、多数台を保有する事業者は修理整備体制の再構築を迫られます。

具体的には、在庫部品が増え、従業員の訓練や施設の改修が必要になります。

従って、費用面で明らかなメリットが無い限り新技術が導入されることはなく、特に大型トラックではディーゼルエンジンが主流に君臨し続けているわけです。

この業界でディーゼルの牙城を最も大きく揺るがせたのは、今のところクリーン・エナジー・フューエルズ(NASDAQ:CLNE)でしょう。

天然ガスおよび再生可能天然ガス(RNG)をトラックユーザーに供給する同社は、2桁またはそれに近い伸び率で供給量を増やしており、年間4億ガロンの水準も見えてきました。

ただし、北米で大型トラックが消費する軽油は年間400億ガロン以上で、それに比べればまだ微々たる供給量です。

そんな業界にニコラがもたらすことのできるメリットとして、同社は燃料の軽さと燃費に加え、トータルコストがディーゼルトラックよりも低くなることを挙げています。

それによってディーゼルの牙城を本当に崩すことができれば、画期的な成功と言えるでしょう。

ハイリスクである理由

ニコラが採用している技術のいずれもが、この十年間で大きな進歩を遂げましたが、それを使って新しい大型トラックを開発しようとするメーカーは、これまで現れませんでした。

その流れを変えようとしている同社は、1万5,000台の燃料電池電動トラックを計102億ドルで受注済みであることを発表しています。

注文主の大半は、800台を正式発注したビールメーカーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(NYSE:BUD)をはじめとする大型車両の大量保有会社で、65%は投資適格クラスの法人顧客です。

重要なポイントとして、注文に占める割合が大きいのはトラック運送業者ではなく、温室効果ガスの削減を目指してディーゼル車からの買い換えを決めた大企業です。

環境への配慮を求める株主の声が高まるにつれ、カーボンフットプリントの削減は設備投資の決定をする上で重要性を増していくものと思われます。

これはニコラやテスラ(NASDAQ:TSLA)など、温室効果ガスの排出量が少ないエネルギー源を動力とした商用輸送車を開発するメーカーにとって、大きな追い風です。

それでもリスクが極めて高いのは、その新技術が各種環境および用途で年間10万マイルの輸送需要に耐え得るものであることを、ニコラやテスラや大手トラックメーカーも含め、まだ誰も証明できていないからです。

さらに、ニコラについての最大のリスクは、100億ドル以上の注文を抱えながら、約束する製品を顧客に届けられるとまだ実証できておらず、できるとしても1年以上先になる公算が大きいことです。

もっと言えば、ゼロエミッション(排気ガスゼロ)トラックを量産するのは同社が最初で、かつ唯一のメーカーとは限らないことです。

大手のトラックメーカーやエンジンメーカーが黙って見ているとは考えられず、競争は激しくなるでしょう。

魅力的な筋書きだが極めてリスキー

既にフォードを超えた時価総額を、同社はまだ正当化できていません。

ディーゼル車をゼロエミッション大型トラックに置き換えるという構想は、確かに魅力的です。

同社はバッテリー式電動トラックや水素式電動トラックの開発にも乗り出す可能性が高く、カーボンフットプリントを減らしたい企業からの要望にも変化が起こりつつあります。

とはいえ、現在のバリュエーションはあまりにも高く、同社株は富を築く手段となるより、今後3年間で投資家に損失をもたらす可能性の方が高いように思われます。

現在の同社は、事業を継続していけるかも証明できておらず、魅力的に見える技術と素晴らしい構想を持つ会社にすぎません。

莫大な期待を織り込み、既に世界トップレベルのトラックメーカーやエンジメーカーと肩を並べるに至った現在のバリュエーションでは、同社が期待に完璧に応えたとしても、ハイリターンを得られる保証はありません。

 

転載元:モトリーフール

 

免責事項と開示事項

記事は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Jason Hallは、クリーン・エナジー・フューエルズ株、ニコラ株を保有しています。モトリーフール米国本社は、テスラ株を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、アンハイザー・ブッシュ・インベブ株、クリーン・エナジー・フューエルズ株、カミンズ株を保有し、推奨しています。