先週のゴールド:続伸の展開

金相場は上昇しました。世界的に新型コロナウイルスの新規感染者数が急増する中、安全資産である金に対する高い需要が維持されています。堅調な米国株や、経済指標などが上値を抑えたものの、米国やインド、オーストラリア、メキシコで新型コロナウイルスの新規感染者数が急増を続けており、これが金相場の下値を支えています。

また、新規感染者数の急増で一段の金融緩和策への期待が高まったことも、金需要を高めています。この結果、金相場は節目の1,800ドルを超え、8日には1,920.30ドルの過去最高値を付けた11年9月以来の高値となる1817.71ドルを付けました。その後は週末にかけて、やや上値の重い展開となりました。米国株高が金市場への資金流入を抑えたようです。ただし、週間ベースで5週続伸となり、年初来で18%超の上昇となっています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、7月2日の1191.47トンから、7月10日に1200.46トンに増加しました。7月8日には一時1202.57トンまで増加するなど、投資家の買いに勢いがついています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋の7月7日時点のポジションは26万7358枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が688枚拡大しました。買いポジションが8088枚増加し、売りポジションが7400枚増加しました。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて値を上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:投資家の買いが押し上げる構図は、やはり不変

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・金投資の幅広い層への浸透
・持続的な資金流入
・円建て金相場は堅調さを維持

金投資の幅広い層への浸透

金相場はきわめて堅調に推移しています。投資マネーの流入が続いており、世界的に金への注目度が高まっているように見えます。最近は様々なところで金に関する記事やコメントを目にすることが多くなりました。こうなると、高値を警戒したくなるところです。

このようなときには、「今回は違う」という声が聞かれることが多くなります。しかし、実際にはそのようなことは少ないように思います。多くの注目が集まり、大量の資金が流入して価格が高騰すると、そこが天井の場合が多いといえるでしょう。

では、今回の金市場もそのようになるのでしょうか。「今回は違う」と言いたいところですが、それは後になってみなければわかりません。ただし、これまでとは違う市場構造になっていることは確かでしょう。つまり、歴史的な低金利状態と、幅広い投資家層が金市場に資金を振り向け始めているという事実です。さらに加えるとすれば、それらの資金が短期的な値上がり益を狙ったものではなく、資産の分散の一環で買うというスタンスで金市場に振り向けられている可能性が高いです。

いま金を買っている人々が、何を目的として買い、それをどのような状況になれば売るつもりなのかを聞いてみなければ、本当のところは分かりません。しかし、今ほど歴史的に幅広い層に金が買われることはかつてなかったことでしょう。

持続的な資金流入

金の購入者の層が広がることは、金相場が大きく下がりづらくなることを意味します。2011年に金相場が1,920ドルまで上昇した際には、かなり投機的な動きになり、短期間で上昇しました。その反動もあり、その後は急落しました。今の状況は、それに近いようにも見えますが、上昇の角度が違うでしょう。

また、いまは投機的な動きになっているとも言えず、むしろ息の長い上昇相場に入ったように見えます。最近は、株価が上昇してもあまり売りが出ず、株価が下げるとしっかりと買われる傾向が鮮明になっているように思います。

そのため、金投資が根雪のように積み上がっているといえます。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金ETFの現物保有残高は年初来の半年間で734トン増と、2019年通年における増加になったとしています。財政刺激策と金融刺激策が金相場の支援材料の柱になり、金ETFやその他の金関連投資商品を経由して資金が金市場に流入しているわけです。金投資需要の伸びは、現物市場の弱さを補って余りある状況にあるようです。また、現物の裏付けがある上場取引型金融商品(ETP)は過去最高水準を更新し続けています。

このように考えると、金市場への資金流入の動きが、短期間で劇的に変わることはなさそうです。金相場はやや頭打ちになっていますが、株価が上昇したことも背景にあるでしょう。株式を買うために金を売却するような動きになれば、それは株価に対して強気な見方をする投資家が増えていることを意味します。しかし、そのような動きになったときには、往々にして株価はピークアウトしています。なんでも行き過ぎると調整が入るものです。そうなった場合には、株価の調整リスクを意識せざるを得ません。そして、金相場のさらなる上昇の可能性も意識することになります。

いずれにしても、株高を見込んで現在保有している金を売却し、それを株式投資に回すことは、もっともやってはいけない行為でしょう。このようなことをすれば、金がリスク分散や資産保全の役割を果たすことができなくなります。このような行為だけは避けるべきでしょう。

一方、先週は米金融大手ゴールドマン・サックスの見通しに注目が集まりました。ゴールドルマン・サックスは、中国が米国よりも新型コロナウイルスの感染第2波から力強く回復すれば、金相場にプラスと指摘しています。これは、最近購入量が低迷している中国の金購入が、景気の回復で余裕が生まれ、金に資金が向かう可能性があるという意味でしょう。

またゴールドマン・サックスは、銅・銀・鉄・金の買い持ち維持を推奨しています。新型コロナウイルスの新規感染者数の増加や、感染が増加している地域からの影響が少ないことを理由としています。ゴールドマン・サックスは20年の金価格を平均1,740ドル、21年は1,988ドルと予想。インフレ率の上昇とドルの下落が金価格の押し上げに寄与するとしています。市場の動きが予想通りになることはほとんどありませんが、注目だけはしておきたいところです。

円建て金相場は堅調さを維持

円建て金相場は引き続き過去最高値圏にあります。このような高値を買うのは非常にリスクがあるようにみえます。しかし、これまでも資産運用におけるリスク管理の面から、金を保有すべきとお伝えしてきました。現在の円建てベースの金は過去最高値ですので、保有していれば収益が確実に出ている計算です。

重要なことは、世界的に資産運用において、金が常識的になっているという点です。金は株価の動きとは逆相関の関係にあり、さらにリターンも株式と遜色がありません。このような投資対象は必ずポートフォリオに入れておくべき対象といえます。

このように考えると、価格水準を気にするのではなく、保有することの重要性を重視すべきとの結論になります。投資家の多くは、資産運用の観点で株式に投資をすることを優先しますが、その際にはリスクが相対的に小さく、リターンが遜色ない金を入れることで、ポートフォリオをさらに強化することができます。しかし、このような投資行動をとっている投資家は、それほど多くないように思います。機関投資家やヘッジファンドでもそれは同じといえます。

今後、将来がますます見通しづらい状況になるでしょう。投資対象の分散の意味でも、金投資を粛々と行うべきと考えています。特に、株式を購入する際には、金も同時に同額あるいはそれに近い金額で買うことが肝要であると考えます。極端なように思われますが、そのほうが今後は運用結果が良くなると考えています。今一度、現在のポートフォリオを見直し、ぜひ金に目を向けるようにしてほしいところです。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸しました。辛うじて節目の800ドルを維持しました。7月9日には一時858.65ドルまで上昇する場面がありましたが、上昇は続きませんでした。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋の7月7日時点のポジションは1万7315枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1467枚拡大しました。買いポジションが955枚増加し、売りポジションが512枚減少しました。

プラチナ相場は800ドルを維持していますが、一方で上値の重い展開でもあります。5月後半から850ドルを大きく超える動きは見られず、下値も800ドル程度で下げ止まっており、約2か月間、50ドルの狭いレンジでの推移が続いていることになります。いずれ大きく動きそうですが、先週末には高値更新に失敗したことから急落するなど、上値を抜けきれない状況にあります。

一方で、プラチナ相場の金に対する割安感を指摘する向きもあります。しかし、以前にも解説したように、金とプラチナには実需面での代替性がありません。したがって、両者を比較して現在のプラチナが相対的に安いことを理由に、プラチナを買うという発想や行為は危険です。投資家が、金の通貨や安全資産としての価値をプラチナに見い出し、それを市場が評価するのであれば、プラチナ価格が上昇することがあるかもしれません。しかし、現実的にはそれはないといえます。したがって、プラチナが上昇しない時によく聞かれる「金に対して割安」という言葉には注意が必要です。あくまでプラチナそのものの価値を見ていくようにしたいところです。

繰り返すように、プラチナの最大の需要先は自動車触媒向けです。今は新型コロナウイルスの影響で、自動車産業は冴えない状況です。したがって、当面はプラチナの実需が増える可能性は低そうです。この点もプラチナ相場の上値を抑制することになるでしょう。

このように、現在のプラチナにはあまり良い材料がありませんが、将来的には燃料電池向けの需要の増加が期待されているようです。燃料電池は水素を燃料とし、広範囲の乗り物に使用できることから、将来的には乗り物向けの化石燃料を凌駕する可能性が指摘できます。

再生可能エネルギーから取り出された水素を燃料としたFCV(燃料電池車)では、触媒としてプラチナが使われるため、燃料電池の使用量が増えるとプラチナ需要は爆発的に増加する可能性があります。ちなみに、燃料電池におけるプラチナの使用量は、ディーゼルエンジンの10倍とのことです。したがって、水素社会が加速し、燃料電池向けのプラチナ需要が増加すれば、プラチナ相場が盛り返す可能性があります。新しい需要という観点から、この動きに注目しておきたいところです。

円建てプラチナ相場は上昇しましたが、直近高値を超えられていません。3,100円を前に上値を打たれる動きが続いており、今後もこの水準を超えるかがポイントになりそうです。

一方、下値は2,850円前後と考えられ、ここを維持できれば、再び上昇に転じる可能性は残るでしょう。調整後に2,850円でのサポートを確認できれば、押し目買いを検討したいところです。

もっとも、2,850円を下回ると大きく下げる可能性がある状況もかわりません。その場合には、買い下がりは避け、まずは下値を確認することを優先したいところです。そのうえで、下値が固まったところで買いを検討したいと考えます。逆に3,100円を超えて上昇に勢いがつけば、その流れに乗って買いを検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続伸の展開

シルバーは続伸しました。直近高値を上回り、7月9日には19.02ドルまで上昇しました。2020年1月及び2月の高値水準にまで上昇し、週末は18.67ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋の7月7日時点のポジションは3万7825枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が224枚拡大しました。買いポジションが1995枚増加し、売りポジションが1771枚増加しました。

銀相場は高値を上抜けると、さらに上値を試しそうです。19ドル台前半は、過去に何度も打たれており、明確な上値抵抗があります。これを上抜けると、2019年9月の高値19.64ドルがあり、これが目先の目標になるでしょう。さらにこれを超えると、次のターゲットは2016年7月の高値21.10ドルになります。ここまで上昇するような動きになれば、大相場に発展することになりそうです。

銀相場への注目度が高まるには、金相場の上昇が不可欠でしょう。その場合、市場参加者は銀相場の出遅れ感と投機的な動きに注目するでしょう。銀相場は上がり始めると短期間で上昇する傾向があり、投機的な動きになる傾向があります。このことを知っている投機筋は、上昇への転換のタイミングを計っているものと思われます。金/銀レシオも96倍と、過去との比較では依然として高水準であり、この点に着目した買いが入りやすいといえます。

もっとも、マクロ環境が悪化すれば、銀は売られやすくなります。その場合には、金が安全資産として買われた場合でも、銀は下げる可能性があります。この点には常に注意が必要です。ただし、下げた場合でも、17ドル台前半で下げ止まれば、基調は維持していると判断できそうです。

円建て銀相場は上昇しました。直近高値を超えており、基調は上向きです。このまま高値を超えるようであれば、その流れに乗って買いを検討できるでしょう。一方で、上昇トレンドを下抜けた場合には、下値の確認を優先したいところです。上昇トレンドの起点である62円程度で下げ止まれば、その時点で買いを検討したいところです。

繰り返すように、銀相場は大きく変動しやすい特徴があります。したがって、リスク管理の面では押し目買いよりもトレンド追随で上昇相場で買っていくほうがリスクは低減できると考えています。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券