先週のゴールド:続伸の展開

金相場は上昇しました。月間ベースでは3カ月連続の上昇となり、四半期でも13%超の上昇で、4年超ぶりの上昇率となりました。米国の大部分で新型コロナウイルスの感染者数の増加が広がっていることに市場は神経をとがらせている模様で、これが金相場の下支えとなっています。

特に感染者数が増加しているカリフォルニア州はバーの閉鎖を要請。ワシントン州も経済活動再開の計画をいったん停止しています。また、主要中央銀行が相次いで刺激策を打ち出し、感染拡大による経済的打撃を緩和するため低金利を維持したことが相場を押し上げています。

一方、6月の米雇用統計では、非農業部門就業者数が過去最大の増加となりました。これを受けて経済の先行き見通しが改善し、前日に付けた8年ぶり高値を下回る場面もありました。6月の米非農業部門就業者数は480万人増加となり、記録を取り始めた1939年以来最大の増加となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、6月26日の1178.90トンから、7月2日には1191.47トンに増加しました。投資家の金買いが止まらない状況です。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における大口投機筋のポジションは、3日が米国市場の休場のため、発表は今週になります。6月23日時点では、投機筋のポジションは25万1957枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が2万7609枚拡大していました。買いポジションが3万1064枚増加し、売りポジションが3455枚増加しました。

円建て金相場は米ドル建て金相場の上昇を受けて値を上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:投資家の買いが下値を支える構図は不変

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・金投資の世界的な広がり
・将来的な米ドルの下落リスクへの懸念
・円建て金相場は底堅い展開

金投資の世界的な広がり

金相場は底堅さを維持しながら、高値圏を維持しています。ここまで高くなると、一度は大きな下げに見舞われてもおかしくなさそうですが、潜在的な金需要が下値を支えているようです。

いまの金市場を支えているのは投資家の買いです。前回のコラムでも解説したように、富裕層が金の保有比率を増やす動きを見せる中、個人ベースでも金投資が増えてきている可能性がありそうです。今のような不透明な世界情勢の中では、資産を「増やすこと」を志向しながらも、「減らさないこと」も検討する必要があると考える投資家が世界的に増えているのかもしれません。

もっとも、資産運用とはそのような発想が必要です。つまり、「増やすこと」だけを考えていると、リスクをとりすぎ、市場が混乱したときに資産を大きく減らす可能性があります。資産運用の基本は株式投資になると思われますが、今のような時代ではそれだけではリスクが高いといえます。この点をよく理解している富裕層が金投資を増やそうとしているとの報道は、一般の投資家にとっても傾聴に値するでしょう。

このような状況の変化の影響もあり、金相場は一時下げても下値が買われる展開にあります。そして押し目を待っている投資家が多いといえそうです。テクニカル面ではいったん調整が欲しいところではありますが、それも起きそうにないくらいに金相場はしっかりとしている印象があります。

いずれ上げるにしても、いまの上げ方はやや強すぎるように見えます。息の長い上昇相場を形成するには、ゆっくりと上げていくのが良いといえます。上昇と調整を繰り返しながら上げていくことができれば、いずれ2011年の高値1,920米ドルを超えていくと考えています。

市場では金への関心が高まっており、金に関してコメントする向きが増えている印象があります。こうなると、相場はいったん頭打ちしやすいといえます。「誰もかれもが株価の話をすれば、そこが株価の天井である」いう話があります。いわゆる「靴磨きの少年」の話です。いまの金市場はまさにそのパターンになっているようにも見えなくはありません。したがって、金相場の急落には注意したほうが良いのかもしれません。

もっとも、金はインフレや通貨価値の低下に対するヘッジ効果があるとみなされています。さらに新型コロナウイルスで打撃を受けた経済をてこ入れするための刺激策に支えられています。強気のファンダメンタルズがしっかりしており、新型コロナウイルスに伴う安全資産としての需要は引き続き旺盛です。

将来的な米ドルの下落リスクへの懸念

主要中央銀行の緩和策も過去最大規模で行われており、これも金相場を支えています。今の金市場には文句なしの強気材料が並んでいます。投資家の注目が高まるのも当然といえます。なにより、米国の凋落が激しいといえます。覇権国家の地位もかなり怪しくなっています。中国にそれを譲るタイミングが近づいていると考えていますが、その中国も問題を抱えています。一方で、すぐに戦争状態になるような時代でもありません。

非常に複雑な時代ではありますが、米国が没落し、それがいずれ基軸通貨として君臨してきた米ドルの暴落を招き、金が相対的に強くならざるを得ないということは歴史的に言えることだと考えています。このような複雑な時代では、やはり金は先行されやすいといえそうです。

今後は、金のリターンが株式よりも高くなる可能性さえあるでしょう。株価は上昇・下落を繰り返しており、やや不安定になっていますが、金はかなりしっかりしている印象です。やはり金市場は新しい時代に入ったのだろうと思われます。

投資家の間では、現金の代わりに金を持つという根幹的な変化が起きつつあるようにみえます。米ドルはこれから減価する可能性が高いと考えていますが、このような見方が浸透すれば、米ドルを保有するよりも、金を保有したほうがメリットがあると考える投資家が今後増えることで、金相場は必然的に押し上げられそうです。

投資家の金への興味はこれまでとは質が変わってきているようです。最近の投資家の金投資の動きを見る限り、かなり長期的かつ本格的な買いが金市場に流入しているように思われます。そのため、今の金相場の上昇基調は、息の長い、長期的なものになる可能性があります。

もっとも、金も他の市場と同じで将来はどうなるかはわかりません。とはいえ、現状が変わらないかぎり、下げたときにも長期的な視点でとにかく粛々と買うことが肝要でしょう。

いずれにしても、金は今後の資産運用できわめて重要な位置を占めることになります。もはや金を無視することはできないでしょう。それは歴史が示しています。長期投資では米ドルを売り、金を買う方針が良いと考えています。ポートフォリオには金を必ず加えておきたいところです。個人的にはポートフォリオの3割程度を金にしたほうが良いと考えています。そうすれば、株安になったとき、金を保有しておいてよかったということになります。

この20年間の金のパフォーマンスは米国株を上回っているという実績もあります。株式投資を行う場合には、リスクを軽減するためにも、株式を買った際に金も同時に買うことが肝要です。

私は金相場が1,100米ドル台の時代から、「これからもっとも重要かつリターンが期待できるのは金である」と言い続けてきましたが、その見方は今も変わりません。米米ドルが失墜し、米国が凋落する過程で、金はさらに輝くことになるでしょう。

今般、新刊「金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり」(プレジデント社)を上梓しました。金投資の重要性や米中新冷戦の結末、基軸通貨米ドルと金の関係などについて解説していますので、ご興味のある方はぜひご購読いただければと思います。

一方、香港政府統計局が6月29日発表した統計によると、5月に中国が香港経由で輸入した金輸入量は前月比44.7%減の2.3トンでした。引き続き国内供給がだぶついているほか、需要見通しも低調なことが背景にあるようです。この結果、輸入から輸出を差し引いた純輸入量はマイナス1.5トンとなり、2カ月連続で輸入が輸出を下回りました。

ただし、純輸入量は4月のマイナス10.3トンから85%改善しました。4月は少なくとも11年以来で初めて輸入が輸出を下回っていました。5月はメーデーの祝日で需要が改善されましたが、国内供給量は依然として多く、中国国内の相場は国際指標に比べ依然としておおむね割安な水準で取引されています。

インド政府筋は、6月の金輸入が前年同月の77.7トンに比べて86%減の約11トンだったとしています。金相場が最高値水準まで高騰していることが背景にあるようです。インドでは、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため海外渡航が禁止され、多くの宝飾品店が休業しています。輸入額は6億880万米ドルと、前年同月の27億米ドルから大幅に減少しました。4-6月期の輸入量は前年同期比96%減の13トンにとどまりました。4月と5月に出荷が事実上、停止したためです。また、7月の金輸入量は15トン以下に落ち込み、前年同月の39.7トンを下回る可能性があるとみられています。

円建て金相場は底堅い展開

円建て金相場は過去最高値圏にあります。先週は6,200円を超える場面もありました。一般的に日本の個人は逆張り投資家ですので、高値圏では売りが出やすい傾向があります。しかし、いまは押し目を狙って買おうとしても、なかなか押し目が来ず、買いそびれてしまう可能性もありそうです。したがって、少しでも押し目があれば、徐々に買いを検討したいところです。

金投資を行ううえで重要なことは、価格変動をあまり気にしすぎないことです。そのうえで、分散して買っていくことが肝要です。相場の見通しは非常に難しい作業です。これは株式市場でも同じです。そうであれば、資産防衛のための金投資は粛々と行うべきでしょう。あまり相場水準を気にせず、時間と価格を分散し、徐々に金に振り向ける資金を増やしたいところです。そして、株式を購入する際には、同時に金にも投資することが重要です。

リスク分散を行う際には、株式と金を同時に買うことが不可欠です。今後はこのような投資スタイルができる投資家が資産を安定的に増やすことができると考えています。

金を保有しておけば、株安リスクに対応することができます。これはリーマン・ショック時もコロナ危機でも証明されています。特に2020年前半の主要資産で最も高いリターンを示したのは金です。過去最高値を更新したナスダック指数よりも高いパフォーマンスになっているのです。この事実を理解できれば、金投資の重要性が容易に理解できるでしょう。

金融市場が混乱したときには、金相場は株価よりもいち早く値を戻す傾向が鮮明です。資産を守りながらも増やすうえで、金投資は不可欠なものになっています。このような考え方で、日本にも金投資が広がることになりそうです。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。800米ドルを挟んだ水準での推移が続きましたが、週末は799.85米ドルと、わずかに節目の800米ドルを割り込んで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における大口投機筋のポジションは、7月3日が米国市場の休場のため、発表は今週になります。6月23日時点では、投機筋のポジションは1万7763枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1348枚縮小していました。買いポジションが594枚減少し、売りポジションが754枚増加しました。

プラチナ相場は800米ドルを挟んだ水準での推移にあります。目立った材料もなく、方向感が出にくくなっている印象です。株式市場がやや不安定になっており、この影響を受けている可能性がありそうです。新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に止まらず、これが世界の自動車産業にも影響を与えるとの見方があります。

プラチナの最大の需要先は自動車触媒向けであり、自動車産業の動向はきわめて重要であるといえます。そのため、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、経済活動の自粛が再び行われるような状況になれば、プラチナ相場の上値が抑えられる可能性があります。

5月初めの高値から徐々に上値も切り下がっており、すぐに高値を更新する動きには見えません。逆に800米ドルを明確に下回り、安値を更新するような動きになると、売りが出やすい地合いにあるとも言えます。785米ドルを割り込むと、下げが加速しやすい点には要注意です。その場合、750米ドルから720米ドルを試す可能性がある点には注しておきたいところです。

円建てプラチナ相場はほぼ横ばいでした。節目の3,000円を超えることができず、2,900円前後での推移にあります。米ドル建て相場次第の面もありますが、今は2,850円前後を維持できれば、再び上昇に転じる可能性は残るでしょう。2,850円でのサポートを確認できれば、押し目買いを検討したいところです。

もっとも、2,850円を下回ると大きく下げる可能性があります。その場合には、買い下がりは避け、まずは下値を確認することを優先したいところです。そのうえで、下値が固まったところで買いを検討したいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅に続伸しました。7月1日には一時18.43米ドルまで上昇する場面がありましたが、上値を追う勢いはなく、週末は18.04米ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、7月3日が米国市場の休場のため、発表は今週になります。6月23日時点では、投機筋のポジションは3万7923枚のネット買い越しで、前週から買い越し幅が1301枚拡大していました。買いポジションが5195枚増加し、売りポジションが3894枚増加しました。

銀相場も引き続き独自の材料に乏しい状況にあります。とはいえ、下値が徐々に切り上がっており、底固い展開にあります。金相場が堅調に推移しており、これに連れている面もありそうです。そのため、18.30米ドルを明確に上抜けば、上昇基調を強める可能性はあるといえます。そうなれば、やや投機的な動きになり、短期筋の資金が流入することで相場が押し上げられる可能性もありそうです。

もっとも、株価が調整した場合には要注意です。銀独自の材料がないため、マクロ環境が悪化すれば売られやすくなります。その場合には、金相場が安全資産として買われた場合でも下げる可能性があります。この点には常に注意が必要です。短期的には17.35米ドルが重要なサポートと考えています。これを割り込み、レンジ下限の17.30米ドルを割り込むと、16米ドル台後半に値を下げる可能性がありますので、その場合には注意深くみていきたいところです。

円建て銀相場は小幅に上昇しました。高値圏での推移にあり、徐々に下値を切り上げています。そのため、66円を超える動きになるとかなり強い展開になりそうです。その場合には、その動きに追随する形で買いを検討したいところです。

もっとも、64円を明確に下回ってくると、下値リスクが高まる可能性があります。その場合には、62円で下げ止まるかを確認したうえで押し目買いを検討したいところです。銀相場は大きく変動しやすい特徴があります。

したがって、リスク管理の面では押し目買いよりもトレンド追随で上昇相場で買っていくほうがリスクは低減できると考えています。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券