先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸しました。週初は米国株が上昇したものの、新型コロナウイルスの新規感染者数の増加に対する懸念が高まる中、買いが優勢となりました。

新型コロナウイルスに関し、世界保健機関(WHO)は6月21日、世界の1日あたりの新規感染者数が過去最大の18万3,000人に上ったと発表。また、韓国防疫当局は6月22日、集団感染が発生した首都圏の状況について、第2波の渦中との認識を示しました。

これらを受け、投資家のリスク選好意欲は弱まり、安全資産とされる金に質への逃避買いが入りました。また、イングランド銀行(英中銀、BOE)が前週、新型コロナウイルス感染拡大を背景に量的金融緩和策を1,000億ポンド増強すると発表したことも、金相場の支援材料となっているもようです。

新型コロナウイルス感染者数の急増が景気見通しを悪化させる中、米ドル安や世界中の主要中央銀行による景気刺激策を受けて金に買いが集まり、6月24日には1,779.06ドルまで上昇し、2012年10月以来の高値を付けました。

その後は投資家が資産を現金へと換金させたことから売りが出ましたが、週末には再び上昇しました。

米国で新型コロナウイルスの感染者が記録的に増加するなど、新型コロナウイルスの感染が世界的に広がり、リスク選好が後退し、金への関心が再び高まりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、6月19日の1159.31トンから、26日には1178.9トンに増加しました。投資家の金買いがさらに加速しており、これまでとは違う動きになっています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における6月23日時点の大口投機筋のポジションは25万1957枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2万7609枚拡大しました。買いポジションが3万1064枚増加し、売りポジションが3455枚増加しました。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて値を上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:投資家の買いが止まらない状況

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・金投資の世界的な広がり
・新型コロナウイルス感染拡大によるリスク資産の下落リスク
・円建て金相場は底堅い展開

金相場は底堅さを維持しながら、徐々に上値を試す展開にあります。急騰するわけでもなく、また急落することもありません。じっくりと大相場が形成されているように見えます。

このような値動きになっている背景には、やはり投資家の金に対する考え方の大きな変化があると思われます。これまで金に注目する投資家は富裕層が中心でした。彼らは資産を守るという重要な目的のために、いかに資産を減らさずに安全に運用するかを考えています。彼らにとって、資産は「増やすもの」ではなく、「守るものである」との意識が強いのです。しかし、スイスのプライベートバンカーでさえも、重要な顧客の資産を守るために金を利用することはあまりなく、ポートフォリオに占める金の割合はせいぜい5%程度です。

それが最近では、この比率を引き上げ、10%程度にする向きも出始めています。コンサバティブな運用を行う富裕層がこの程度しか金を有していないことに驚きますが、おそらく今後はこの比率は徐々に高まっていくことになるでしょう。もっとも、ひとつの資産に集中させることはありませんので、10%くらいが彼らからすれば限界なのかもしれません。

もっとも、一般の投資家であれば、この比率を自由に変動させることができます。資産を守るより、増やすことを考える必要があるわけですから、リスクを抑制しながらもリターンを得ることを考えなければなりません。

そのうえで、実は金は最も適している可能性があるというのが私の持論です。資産運用における中心的な資産は株式になるでしょう。しかし、リターンという側面から見れば、金は株式に劣ることはありません。まして、この20年間のリターンは米国株を上回っています。

この事実を知らない投資家は世界的にもまだまだ多いようです。キャピタルゲインを狙いながらも資産を守ることができるのは、金以外にはないと考えています。また現金も重要であると考えますが、いまは金利がありませんので、現金も無価値です。ただし、米ドルは価値が目減りしていきます。米ドル以外もユーロや、英ポンド、豪ドルなどの主要通貨も価値が減少し続けています。

その意味では、保有すべき現金は実は円なのです。この事実もまたほとんど知られていません。その意味では、外貨預金もほとんどリターンを産まなくなっていきます。また、債券は金利が歴史的低水準ですので、いまから投資するにはタイミングとしては賢明ではないでしょう。

このように考えると、投資家が考えるべきことは、株式投資を資産運用の中心に据えながらも、ポートフォリオに占める金の割合を増やすことであると考えています。金に投資する意味は、今後ドルの価値がさらに低下し、相対的な金の価値が着実に上昇するからです。

私は米ドルの価値が回復することはまずないと考えています。米政府の膨大な財政赤字に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)が実質的なゼロ金利政策を継続することをコミットしています。したがって、米ドルを保有する理由がなくなっています。

米国債を保有する国が減少し、米ドル資産への投資や、新興国を中心とした米ドルによる借り入れが減少するようになれば、米ドルの価値はさらに低下することになります。いまは基軸通貨として認識されていることから、米ドル資金の需要がありますが、この米ドル資金を借りる国が徐々に減ることになれば、米ドルの価値がさらに低下することになります。

いずれそうなることは確実と考えていますが、いまはまだそのような認識を持った投資家が少ないようです。

短期的には株安の際の受け皿になることで、金価格は堅調に推移するでしょうが、それはあくまで短期的な話です。いまの金市場は「歴史的転換点」を迎えている可能性が高いと考えています。これにいかに早く気づくかが、今後数十年の資産運用における重要なポイントになると考えています。

円建て金相場は過去最高値圏にあります。一般的に日本の個人は逆張り投資家ですので、金に売りが出てきます。過去を振り返ると、このような投資行動はおおむね成功してきたように思います。

したがって、現時点でも国内では売りたい投資家が多いのではないかと考えられます。逆張り投資家は下げたときを狙って買いますので、その押し目を虎視眈々と狙っていることでしょう。その押し目がこなければ、買いそびれてしまうということが起きます。

今回はそのようなリスクがあるように感じます。したがって、少しでも押し目があれば、徐々に買いを検討したいところです。

毎週繰り返しているように、金投資を行ううえで重要なことは、価格変動をあまり気にしすぎないことが肝要です。そのうえで、できるだけ分散して押し目を買っていくようにしたいところです。

いまの金市場は歴史的な相場に入っていく可能性が高まっています。その歴史的な動きに乗ることは、資産を増やすうえで重要であるといえます。時間と価格を分散し、徐々に金に振り向ける資金を増やしたいところです。そして、株式を購入する際には、同時に金にも投資することが重要です。リスク分散を行う際には、同時に買うことが不可欠です。

金を保有しておけば、株安リスクに対応することができます。これはリーマン・ショックの時もコロナ危機でも証明されました。金相場が株式よりも早く値を戻し、直近高値を更新しています。

また、2020年の主要資産の中で、金が最も高いリターンをあげています。米国株よりも高いリターンです。ここでも金投資の優位性が証明されています。

世界の多くの投資家にこのような事実が周知される前に、金投資を開始すれば、少しでも良いリターンを挙げることができそうです。このような機会を逃さないためにも、徐々に買いを積み上げたいところです。

プラチナ:下落の展開

プラチナは下落しました。徐々に上値が重くなる中、週末は790.98ドルと、節目の800ドルは割り込んで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における6月23日時点の大口投機筋のポジションは1万7763枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1348枚縮小しました。買いポジションが594枚減少し、売りポジションが754枚増加しました。

プラチナ相場は徐々に上値が切り下がっていましたが、とうとう節目の800ドルを割り込みました。5月20日につけた高値の862.60ドルから徐々に値を下げており、緩やかな下落トレンドに入っています。これで780ドルを割り込むと、下げが加速しそうな雰囲気があります。いまはプラチナ独自の材料がないため、買いも入りづらくなっています。また、需給面で劇的な改善がみられるような状況でもありません。現状では投資マネーが流入しなければ、価格が維持できない状況にあるように思われます。

チャートの形状もあまりよくありませんでの、当面は下値を探る展開を想定しておいた方がよさそうです。また、これまで堅調に推移してきた米国を中心とした株式市場が変調をきたすようであれば、工業向け需要が大半のプラチナ相場にはネガティブ材料になるでしょう。

この点にも注意が必要であると考えます。下落基調が強まり、780ドルを割り込んだ場合には、750ドルからさらに720ドル程度を試す可能性がありそうです。当面は慎重な見方をしておきたいと考えます。

円建てプラチナ相場は下落しました。節目の3,000円を超えることができず、2,900円を割り込みました。直近安値付近に下げていますが、これを下回るとさらに下値を試すことになりそうです。

その場合には、押し目買いは避け、まずは下値を確認することを優先したいところです。そのうえで、下値が固まったところで買いを検討したいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅に続伸しました。24日には一時18.05ドルまで上昇する場面がありましたが、上値を追う勢いはなく、週末は17.75ドルと小幅な上昇にとどまりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における6月23日時点の大口投機筋のポジションは3万7923枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1301枚拡大しました。買いポジションが5195枚増加し、売りポジションが3894枚増加しました。

銀相場は引き続き独自の材料に乏しい状況にあります。いまはおおむね17.30ドルから18.30ドルのレンジにあるといえます。やや上値の重い印象がありますが、金相場の上昇やこれまでの株価上昇に支えられてきたといえそうです。

しかし、株式市場がやや上値の重い展開になっており、警戒が必要な状況にあるように思われます。マクロ環境の変化に銀相場は比較的脆弱であることを考えると、株価が下げたときには相応に注意が必要と考えます。その場合、金相場は安全資産への買いというテーマで支えられる可能性がありますが、銀にはそのテーマは当てはまりません。このような点も、銀相場の金への相対的な弱さにつながる可能性があります。

投資家の中には、銀が内包する投機的な値動きを好む向きが少なくなく、一時的に大きく上昇することがあります。しかし、それはやはりマクロ環境がある程度安定しているときが多いといえます。新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に拡大しており、マクロ環境は再び不安定になる可能性があります。そのため、目先は慎重に見ていきたいと考えています。レンジ下限の17.30ドルを割り込むと16ドル台後半に値を下げる可能性もありそうですので注意深くみていきたいところです。

円建て銀相場はほぼ横ばいでした。高値圏を維持し、下値も堅い展開ですが、上値を追う動きではありません。64円が重くなっており、これを明確に超えるまでは買いを控えたいところです。上昇した場合には、64円を超えたところで上昇に乗る形で買う方がリスクは少ないように思われます。

一方で62円を明確に下回れば、下げやすい地合いは変わっていません。そのため、いまは下落リスクを想定しながら、下値を確認すること優先したいところです。そのうえで、60円で下げ止まるかを確認したうえで、押し目買いを検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券