先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸しました。週を通して軟調な展開でしたが、週末に大きく上昇し、週間ベースでは上昇しました。週初はFRB(米連邦準備制度理事会)の社債購入を受けた株高を受けて、リスク回避の金買いが停滞しました。また、米小売の売上高が過去最高の伸び率を記録したことを背景に、米国株高となったものの、中国での新型コロナウイルスの感染再拡大に対する懸念が材料視されました。さらに、インド軍と中国軍との国境地帯での衝突や、北朝鮮が韓国との国境にある南北共同連絡事務所を爆破したことを受け、世界的な緊張の高まりも安全資産としての金の魅力を高めました。

一方、パウエルFRB議長が「当面はいかなる利上げも予想していない」としたことも、金利のつかない金への投資を促しました。その後は、米国での新規失業保険申請件数の減少や、北京市政府が「新型コロナウイルスの感染は制御できている」と発表したことが弱材料となりました。週末には、新型コロナウイルスの感染第2波に対する懸念が材料視され、大きく上昇しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、6月12日の1136.22トンから、19日には1159.31トンに増加しました。投資家の金買いがさらに加速しています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における6月16日時点の大口投機筋のポジションは22万4348枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万5735枚拡大しました。買いポジションが1万3423枚増加し、売りポジションが2312枚減少しました。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて小幅に値を下げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:投資家の買いが下値を支える構図

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・FRBによる低金利政策の長期化
・投資家の金投資の拡大
・円建て金相場は底堅い展開

金相場はやはり下値が堅いといえます。投資家の買いが着実に入っており、構造的に下げにくくなってきています。株高の状況でも売りが出ず、むしろ買われているところに、これまでの金投資のパターンとは明らかに異なる潮流を感じます。

金市場を取り巻く環境は、これまでのものとは明らかに違うといえます。先物市場における投機筋が主導するような、いわゆる表面的な値動きではなく、投資家という長期目線の市場参加者が断続的に金を買っているという構図は、これまでの金市場の歴史でも初めてのように思います。それだけ、金市場では新しいことが起きているわけです。こうなった以上、金相場は下げにくくなると考えるのがきわめて常識的な考えでしょう。

投資マネーという観点で注目したいのは、世界の富裕層の動向です。富裕層に投資を助言するプライベートバンク(PB)は、現在、金のポジションをさらに増やすよう勧めているそうです。これは非常に興味深いことです。その背景には、株式市場がコロナ危機を受けた暴落から急速に持ち直しているにも関わらず、世界の中央銀行による大量の資金供給の長期化に対する懐疑的な見方であると言われています。

コロナ危機の前には、大半のPBは顧客に推奨する金の保有比率はゼロか、ほんのわずかでした。しかし、いまは一部のPBは顧客のポートフォリオの最大10%を金に向かわせているといいます。中央銀行の大規模な資金供給による債券利回り低下で、利息を生まないはずの金の魅力が相対的に向上したほか、中央銀行の資金供給がインフレリスクにつながり、金以外の資産や通貨の価値が減退する可能性があるからです。

金相場は既に1,700ドル台に入っているものの、PBの多くは金の一段の値上がりを見込んでいるようです。金はインフレとデフレの両方のヘッジに使えるのが魅力でもあります。大手PBの多くは顧客に金への配分増加を助言しており、一部のPBは今年末の金相場は現時点を上回ると予測しているようで、かなり強気です。また、PB世界最大手のUBSは、年末までに1,800ドルを付ける可能性を基本シナリオとしているようです。その上で、超低金利に加え、投資家がヘッジ目的で金を選好するため、新型コロナウイルス感染第2波が起きれば、2,000ドルの過去最高値もあり得るとしています。

一方、モルガン・スタンレーは3月末に、同社の全ての投資モデルで金を含むコモディティの比率を5%引き上げたといいます。同社は「コモディティの推奨比率が10%を超えることは考えにくいが、可能性はゼロではなく、特にインフレ率が実質的に上昇した場合はそうなるかもしれない」としています。債券と株式の市場規模は合わせて最大200兆ドルと推定されており、ここから金市場へのいかなる資産配分の変更も、より小さな金市場にとって影響は大きなものになるでしょう。

また、ウェルズ・ファーゴ・インベストメントは、これまで金についての顧客からの電話の問い合わせは、2019年は1週間に2件ほどだったものの、今では1日に2件のペースになっているといいます。また、金相場が上昇した日には10件もの電話が来ることがあるといいます。それだけ、投資家が金を「安全な資産」とみているからでしょう。

金に資金を移す際には、一般的に4つの選択肢があると考えられます。
その4つとは、
(1)産金会社の株購入
(2)金ETF
(3)金のオプションや先物
(4)金地金や金貨などの現物です。

資産のヘッジが目的であれば、最初の3つを選択すればよいでしょう。リスクへの警戒感がより強ければ、投資家は通常は現物を選びます。大半のPB大手は金地金の保管サービスを提供していますが、最近ではスイスとシンガポールでそのような需要が高まっているようです。

一部の顧客は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年初めに金現物を買い増し始めていましたが、この流れが今もなお続いているといいます。また、3月と4月は大手の金地金製造業者が操業を休止し、国際的な出荷能力も不足したため、金現物の供給が混乱し、これが新たな顧客の興味をかき立てたとされています。

このように、投資家の金への興味は当面の間、高い状態が続きそうです。そのため、これまで比較的金に関心が低かった日本の投資家も、金への関心をこれまで以上に高める必要がありそうです。短期的には1,750ドルを上抜くと、一気に高値更新に向けて動き出す可能性があります。株価が不安定でもあり、これも金相場の押し上げにつながりそうです。いずれにしても、長期的な目線で金市場を見ていくことが重要です。

円建て金相場は再び節目の6,000円を超えてきました。この水準を維持できていれば、いずれ大相場に発展するのではないかと考えています。6,100円のレジスタンスを超えることができれば、想定される大相場につながる可能性は高まりそうです。その動きに乗り遅れないように準備しておきたいところです。

もっとも、毎週コラムで繰り返しお伝えしているように、金投資を行う上で重要なことは、価格変動をあまり気にしすぎないことです。その上で、できるだけ分散して押し目を買っていきたいところです。金は現金の代わりになりますが、相場変動はリスクといえます。したがって、時間と価格を分散して買うことが重要です。

さらに、株式を購入する際には、その半分程度の金額の金を買うことも有効です。金額的に多いように感じますが、リスク分散を考える上では、その程度でちょうどよいくらいです。金を保有しておけば、株安リスクに対応することができます。金相場の大きな押し目の局面では、その機会を逃さず、徐々に買いを積み上げたいところです。

プラチナ:横ばいでの推移

プラチナはほぼ横ばいでの推移でした。週末は805ドルと、節目の800ドルは維持しました。ただし、徐々に上値が切り下がっており、重苦しい雰囲気だったといえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における6月16日時点の大口投機筋のポジションは1万9111枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が604枚縮小しました。買いポジションが1,002枚減少し、売りポジションが398枚減少しました。

プラチナ相場は徐々に上値が切り下がっており、明らかに上値が重くなってきています。そのため、節目の800ドルを割り込み、さらに重要なサポートレベルである790ドルを割り込むと、下げが厳しくなりそうです。今は株価が不安定なだけに、このまま株式市場が崩れ始めると、プラチナ相場にも売りが殺到しそうな雰囲気もあります。

あまり弱気な見方はしたくないのですが、下落リスクが高まりつつある転機は要注意と考えます。先週紹介した、World Platinum Investment Council(WPIC)によるプラチナに関する四半期レポートでは、新型コロナウイルスの拡大が世界経済や市場に与える影響はまだ明確ではないとしながらも、懸念されたほどの悪影響はないだろうとしています。この点で、WPICは楽観視しているといえます。しかし、実際の需給はそれほど楽観的にはなれないでしょう。

現在のプラチナの生産コストは900ドル前後といわれていますが、現在の価格水準はこれを下回っています。しかし、この水準をすぐに回復する雰囲気はまだ感じられません。その意味では、プラチナに対しては慎重な見方にならざるを得ません。割安感はあるように見えますが、以前の価格水準と比較して安いという理由だけで買うのは避けたいところです。

もっとも、価格が上昇し始めると大きく値を上げる可能性も秘めているだけに、まずは需給動向に関する報道に注意しながら、価格動向を見ていきたいと考えます。790ドルを割り込み、さらに750ドルを下回るようであれば、今年3月のような急落に見舞われる可能性があるだけに、注意が必要です。

円建てプラチナ相場は上昇しました。2,900円前後が重要なポイントでしたが、ひとまずこの水準を維持しています。この水準から上に放れた場合には、その流れに乗って買いを検討したいところです。一方で、2800円を割り込むような動きになれば、下げが加速しやすいと考えます。その場合には、押し目買いを控え、まずは底値を確認することを優先したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅に続伸しました。週初の6月15日には一時16.93ドルと、節目の17ドルを割り込む場面がありました。その後は徐々に水準を切り上げ、週末は17.60ドルで取引を終えました。ただし、全般的に動きに乏しい週になりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における6月16日時点の大口投機筋のポジションは3万6,622枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,257枚拡大しました。買いポジションが1,004枚増加し、売りポジションが2,253枚減少しました。

銀相場は引き続き独自の材料に乏しい状況にあり、値動きが小さくなっています。金相場は週末に上昇しましたが、銀相場の反応は乏しいといえます。そんな中、銀需給の調査を行っているTHE SILVER INSTITUTEが公表した需給統計では、2019年の太陽光発電向けの銀需要が14年比で約2倍に拡大していたことが示されました。太陽光発電向けの銀需要は、2019年時点で銀需要全体の9.9%を占めています。2014年には4.7%程度でした。太陽光発電向けの銀需要は、銀需給に大きな影響を与える可能性が高まってきています。

以前の需要の主流は写真フィルム向けでしたが、これがデジタルカメラやスマートフォンの普及で大きく減少しました。そのため、銀相場は上がりづらくなりました。しかし、太陽光発電向け需要という新しい分野が育てば、銀市場の需給構造の変化への関心が高まり、これが銀相場を押し上げる可能性があります。太陽光発電は環境にやさしいインフラでもあり、今後さらに注目されることが想定され、この観点から銀相場を見ていくのも面白いでしょう。

実際に需要が増加すれば、銀を取引する投資家や投機家もこの材料に飛びつき、相場の押し上げにつながる可能性もありそうです。一方、目先は17ドルと18ドルのレンジの抜けたほうに動きやすいといえます。金相場の動きを注視し、株価動向にも目を配りながら銀相場の動向を見ていきたいところです。

円建て銀相場は小幅に上昇しました。62円でサポートされた格好です。そのため、64円を超えていけば、上昇に勢いがつきそうです。その流れに乗って買いを検討したいところです。もっとも、62円を明確に下回れば、下げやすくなりそうです。その場合には、60円で下げ止まるかを確認したうえで、押し目買いを検討したいと思います。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券