先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発しました。新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響を抑えるため、世界中で実施された大規模の景気刺激策は、インフレや通貨安に対する保険と考えられている金の下値を支えました。

また、6月9~10日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、実質的なゼロ金利政策を2022年末まで据え置く方針が示されたことが買い材料視されました。また、新型コロナウイルス感染第2波への警戒感も、安全資産である金を支えたといえます。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、6月12日に1,136.22トンに増加しました。これは2013年4月16日の1,145.92トン以来の高水準です。直近はやや頭打ちになっていましたが、再び増加に転じています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における6月9日時点の大口投機筋のポジションは20万8613枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万421枚縮小しました。買いポジションが8,224枚減少し、売りポジションが2,197枚増加しました。前週と同様に、買い方の手仕舞い売りが進む一方、新規売りが増えています。

円建て金相場はドル建て金相場の下落を受けて値を下げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:押し目買い意欲が下値を支える

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・不安定な株価動向
・投資家の安全資産である金への注目
・円建て金相場は底堅い展開

金相場は下値の堅い展開にあります。前週末から週初にかけては節目の1,700ドルを割り込む場面が見られましたが、この水準では押し目買いが入っており、やはり下値は堅いといえそうです。

買い手は長期的な視点で金保有を継続している投資家であると考えられます。ひとまず下げ止まったことで、現在は1,670ドルから1,750ドルのレンジを形成していると考えられます。したがって、このレンジを抜ける動きになれば、相応のトレンドが形成されることになりそうです。

金市場を取り巻く環境に大きな変化はありません。FOMCは、長期的な低金利の維持を明言しました。具体的には、2022年まで現在の実質的なゼロ金利を維持するとしています。したがって、金利面で金相場が押し下げられる可能性はほとんどないといってもよいでしょう。この点では、投資家は金利の負担を気にせず、あらゆるリスク資産に投資しやすい環境にあるといえます。

先週は株式市場が一時的に大きく崩れましたが、投資家が米連邦準備制度理事会(FRB)の政策を材料に、リスク資産に投資するスタンスを継続すれば、株価も早期に持ち直す可能性もあるでしょう。しかし、その場合でも、金を売る動きは限定的になりそうです。投資家は、米政府とFRBによる資金供給を背景に、株式と債券を同時に買っています。これは、機関投資家のマネーフローからも確認できます。

このような状況ですので、金利がほとんどない状態の中での債券投資は、金投資に代替することができます。また、現金保有の代わりに、キャピタルゲイン狙いの金投資を選択する投資家もいるでしょう。金利が付かない現金を保有するメリットは以前に比べると大きく低下しています。

また、特にドルについては、価値の目減りが進むことを考慮すれば、主要通貨の中で最も保有しづらい通貨であるといえます。その対極にあるのが金になるわけですから、金の相対的な価値が今後はさらに高まることは必至です。

新型コロナウイルスの感染拡大による経済の落ち込みを抑えるため、米政府は空前絶後の財政支出を行っています。また、FRBも巨額の資金供給を行っています。この状況がすぐに改善されることがないことはほぼ確定的であり、ドル安に向かうのは必至の情勢です。

しかし、市場はまだまだこの状況を完全には織り込んでいないようです。市場参加者の大半が目先の株価や金利の動きに一喜一憂しています。しかし、いまは歴史的変革の時であるといえます。2020年は後世に「大きな歴史の転換点」と評価されるでしょう。そして、その結果がドル安と金高騰という形で示されることになるといえます。

将来のことはわかりませんが、はっきりしていることは、現在の米国の政策が変わらない限り、ドルが下落し、金の価値が高まっていく可能性が高いということです。目先の動きに振り回されることなく、いまは金を資産に組み込み、将来に備えておくことがいま最もやるべきことであると考えています。

資産運用の軸は米国株を中心としたグローバル株式に置きながらも、それと同等の位置づけで金への投資も怠らないようにしたいものです。そうすれば、数年後あるいは十数年後に資産は安定的かつ大いに成長していくものと考えています。

今後も市場が不安定な動きになることがあるでしょう。そのときには金投資を行っていたことが、資産を助けてくれることになるでしょう。以前にも解説したように、直近20年間の金投資のリターンは米国株を上回っています。この実績にも目を向け、いまこそ長期的な目線で金投資を始めることを検討したいところです。

円建て金相場は節目の6,000円を挟んだ推移となっています。5,900円は維持されており、崩れてはいません。一方で上値は6,100円で抑えられています。つまり、5,900円と6,100円のレンジでの推移になっています。このレンジを抜けたほうに動きそうです。

もっとも、下値は堅いでしょう。徐々に買いを検討したいところです。そのうえで、6,100円を明確に超えていけば、大きな上昇につながりそうです。その動きに乗り遅れないことが肝要です。もっとも、金投資を行ううえで重要なことは、価格変動をあまり気にしすぎないことも大切です。そのうえで、できるだけ分散して押し目を買っていくようにしたいところです。

金は現金の代わりになりますが、相場変動がリスクといえます。したがって、時間と価格を分散して買うことが重要です。さらに、株式を購入する際には、その半分程度の金額の金を買うことも有効です。金額的に多いように感じますが、リスク分散を考える上では、その程度でちょうどよいくらいです。金を保有しておけば、株安リスクに対応することができます。金相場の大きな押し目の局面では、その機会を逃さずに徐々に買いを積み上げたいところです。

プラチナ:続落の推移

プラチナは続落しました。先週までの動きを踏襲し、徐々に上値が切り下がる展開になりました。また、株価が急落した6月11日には大きく値下がりし、週末6月12日も続落、安値圏で引けました。ただし、辛うじて節目の800ドルは維持しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における6月9日時点の大口投機筋のポジションは1万9715枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,877枚縮小しました。買いポジションが1,275枚減少し、売りポジションが602枚増加しました。これは前週と同じパターンです。

プラチナ相場は徐々に上値が重くなっています。これで節目の800ドルを割り込むと、いったん下落基調に入りそうです。株価が不安定になっているだけに、株価が戻さなければ、プラチナ相場の下値が切り下がる可能性が高そうです。

World Platinum Investment Council(WPIC)がプラチナに関する四半期レポートを発表しました。これによると、新型コロナウイルスの拡大が世界経済や市場に与える影響はまだ明確ではないとしながらも、懸念されたほどの悪影響はないだろうとしています。

そのうえで、2020年の供給見通しは224トン、需要が216トンとし、7.7トンの供給過剰になるとしています。供給は前年比13%(33.1トン)の減少を予想。需要は18%(46トン)の減少を予想しています。

内訳を見ると、自動車触媒、宝飾品、工業需要、投資需要とすべての分野で減少が予想されています。また、2020年第1四半期は、供給がアングロ・アメリカン・プラチナムの製錬所の事故や、南アで新型コロナウイルス対策のロックダウンによる鉱山閉鎖があり、前年比6%減となりました。

一方、需要は38%の大幅減となりました。特に大きく落ち込んだのが投資需要で、90%減となりました。また、自動車触媒が17%、宝飾品は26%と、第1四半期の需要は大きく落ち込みました。新型コロナウイルスによるロックダウンで、世界経済が落ち込んだことが影響したといえます。この結果、第1四半期は3.9トンの供給過剰となりました。

需要の減退は気になる材料ですが、むしろ供給にも新型コロナウイルスの影響が出ている点も見逃せません。世界のプラチナ生産の7割以上を生産する南アでは、新型コロナによる鉱山生産の継続ができない可能性が指摘されています。すでに一部の鉱山が閉鎖され、さらに生産を行っている鉱山でも生産量が減少しており、南アの鉱山供給は23.4トンの減産が予想されています。

一方、需要面では、中国での宝飾品需要の減少が懸念されます。他の国に比べていち早くロックダウンが解除され、経済活動が再開されたものの、消費活動が戻るには時間がかかると考えられます。

また、投資需要の減退も顕著です。プラチナETFへの投資は3月20日の85トンから5月下旬には75トンへ、2ヶ月間で10トンも減少しています。米国と日本では、プラチナ価格の急落で押し目買いが入り、両国で9.7トンの買いが入りましたが、ETF売りをカバーすることはできていません。今後はこのような逆張り投資家が下値を支えるかにも注目しておきたいところです。

現在のプラチナの生産コストは900ドル前後といわれています。現在の価格水準はこれを下回っています。したがって、800ドルを大きく下回る状況が長期化する可能性は低いとも言えます。株安の状況になれば、一時的に大きく売られる可能性がありますが、そのようなタイミングで安値を拾えば、その後の反発時に利益を上げることができる可能性はありそうです。

現在の新型コロナウイルスを受けた経済状況を考慮すれば、プラチナ相場が一段高になるには、経済が大きく回復し、株価が大きく上昇する、あるいは金相場が一段高になるなどの外部要因が不可欠でしょう。そのような動きを視野に入れつつ、いまは大きな押し目を待つようにしたいところです。750ドル前後から下の水準であれば、長期的に見て買い安心感がありそうです。

円建てプラチナ相場は下落しました。3,100円が重くなり、徐々に上値を切り下げています。ひとまず2,900円で下値は支えられていますが、これを割り込むと下げが加速しそうです。

その場合には、2,800円から2,700円程度で下げ止まるかを確認することになりそうです。サポートを確認できれば、その時点で買いを検討したいところです。また、3,100円を超えるような上昇になれば、その流れに乗って買いたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅反発の展開

シルバーは小幅に反発しました。10日には18.28ドルまで上昇する場面がありましたが、直近高値である6月1日につけた18.36ドルを超えることができず、週末にかけて下落しました。ただし、辛うじて前週末の水準を上回りました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における6月9日時点の大口投機筋のポジションは3万3365枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,859枚縮小しました。買いポジションが663枚増加し、売りポジションが4,522枚増加しました。前週と同じパターンとなり、上昇を見込んだ新規の買いが入る一方、下落を見込んだ新規売りが入っています。

一時的に銀市場への関心が高まりましたが、短期的にはダブルトップをつけたようなチャート形状になっており、上昇の勢いが徐々に弱まっている印象です。株価も不安定であり、買いづらくなっているように感じます。

金相場が盛り返せば、銀相場も一定の上昇は見込めそうです。しかし、いまはその勢いはなさそうです。したがって、直近安値の17.19ドルを割り込むと、下げが一時的に加速しそうです。下げた場合には、16.70ドル前後までの調整になりそうです。この水準を割り込めば、15ドル台前半までの下げになる可能性がありそうですので注意が必要です。

一時112倍にまで拡大した金/銀レシオは、一時97倍まで低下しましたが、直近では99倍に戻しています。過去との比較ではまだかなり高い水準ではありますが、金相場の相対的な水準が上に切り上がっており、あまり参考にならないものと思われます。したがって、まずは銀相場独自の値動きと材料に着目すべきと考えます。

円建て銀相場は続落。66円を天井に徐々に上値が切り下がっており、まずは62円程度で下げ止まるかを確認することになりそうです。そのうえで、サポートが形成されれば、その時点で買いを検討したいところです。62円を割り込むと、当面は下げ基調が続きそうです。

その場合には、まずはサポートの確認を優先したいところです。もっとも、66円を超えてくれば、その動きに追随する形で買い上がっていけばよいでしょう。いずれにしても、いまは慎重に値動きを見極めたほうがよさそうです。
 

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券