先週のゴールド:続落の展開

金相場は続落しました。週初は米中対立激化と人種差別をめぐる米国でのデモが材料視され、1,744.19ドルの高値を付けました。米中貿易協議の第1段階合意が破談になりそうだとの懸念が高まったことが材料視されました。さらに、米国では街頭デモが広がり、新型コロナウイルス感染第2波への警戒感が強まっていることも下値を支えました。

米政府が香港に対する優遇措置撤廃について発言したことを受け、中国政府は国営企業に対し、米主要企業の製品購入を中止するよう求めたとされています。一方、米政府は黒人男性が警察による拘束時に死亡した事件を受け、発生した抗議デモ鎮圧のため、15州と首都ワシントンに州兵を派遣するなど、混乱が続いていることも金が買われる要因となりました。

しかし、その後は週末にかけて下落しました。株高を背景に利益確定売りに押されました。新型コロナウイルスの感染拡大で停滞した経済活動を再開する動きが世界的に広がっており、安全資産とされる金に売りが出ました。

週末には一時2%超下落しました。米雇用統計が予想に反して改善したことから、世界的な経済再建期待が広がり、安全資産としての金需要が減退しました。また、金利上昇や小幅なドル高からも圧迫されました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、6月5日に1,128.11トンとなりました。6月3日には1,133.37トンに増加しましたが、そこからは減少しています。投資家の金ETF買いは根強いものの、直近2日間は売りが出ており、今後の動向に注目が集まります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における6月2日時点の大口投機筋のポジションは21万9034枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万8880枚縮小しました。買いポジションが1万5952枚縮小し、売りポジションが2,928枚増加しました。買い方の手仕舞い売りが進む一方、下落を見込んだ新規売りが入っていることが確認できます。

円建て金相場はドル建て金相場の下落を受けて値を下げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:株高基調の継続と投資家の買い意欲を確認する

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株高基調の継続
・投資家の金ETF買いの動向
・円建て金相場は底堅い展開を継続へ

金相場は値を下げています。節目の1,700ドルを割り込み、基調は弱いといえます。株高基調が続いていることで投資家のマネーが現金から株式に移行しており、金市場への関心はやや低下しているようです。

この状況の中、週末には米雇用統計の驚くべき内容を受けて株価が急騰し、金市場への関心はさらに低下した感があります。これまでは、過去の学習効果もあったのか、株価が上昇している最中でも金が買われていました。しかし、株高基調があまりに鮮明になってきたことから、このような投資姿勢には変化の兆しが見られます。

バンク・オブ・アメリカのデータによると、6月3日までの週は、社債ファンドに過去最高の325億ドルの資金が流入しました。新型コロナウイルス危機に対して各国政府・中銀が前例のない景気支援策を打ち出したことを受け、リスク資産はここ数週間上昇しています。

また、リスクオンムードとなる中、株式ファンドには62億ドルが流入し、欧州株ファンドは8週間ぶりに流入超となりました。さらに、投資適格級債券ファンドには過去最高の208億ドルが流入し、ジャンク債ファンドにも102億ドルが流入しています。

投資資金がリスク資産にシフトした結果、キャッシュの比率が低下しました。マネー・マーケット・ファンド(MMF)からは1月以来、最高となる167億ドルが流出しました。このように、最近の株高基調の継続で投資家は株式に資金を移し始めているようです。

こうなると、これまでのように金を買う考えは後退し、リスク資産への注目度をさらに上げる可能性があります。つまり、株高基調が続くうちは、金市場への資金流入は限定的となり、価格も頭打ちになるといえます。

しかし、このような展開が一定期間続くと、株式市場は過熱することになります。投資マネーの向かう先がリスク資産だけになれば、これは危険な状況であるといえます。いずれ市場は調整を強いられることになるでしょう。その際の受け皿になるのが金であると考えられます。

現在の株高は、米政府と米連邦準備制度理事会(FRB)による財政出動・量的緩和策の効果がかなり効いている結果であると考えられます。コロナ危機を回避するための緊急的な措置とはいえ、過去最大級の経済支援策をごく短期間で決定し、実施したことは確かに市場に大きなインパクトを与えました。

また、経済活動の再開で、経済の落ち込みは4月が底で、すでに回復基調に転じたとの声も聞かれ始めています。それを先取りする形で株価は3月を底に大きく戻しています。この基調が続くかどうかは、これまでの政策の継続ではなく、実体経済や企業業績の結果次第になるでしょう。

将来への期待もかなり織り込まれた感があります。そのため、短期的な調整には注意が必要であり、そのような展開になった場合に選好されるのが金になると考えます。このように、シンプルに考えれば、長期的に投資マネーが金市場に向かうと流れが見えてくるでしょう。

長期的な視点で見れば、米政府の財政支出の拡大はいずれドル安を招くでしょう。また、株高を維持しなければ経済が維持できないこともあり、金利の引き上げも困難であり、当面は低金利状態が続かざるを得ないでしょう。このような背景も金相場を支えることになります。

短期的には下げ基調ですが、これまで買いのチャンスを逃した投資家に対して、押し目買いの機会を与えてくれることになりそうです。株高基調の一段の上昇があれば、金相場は1,650ドルから1,600ドル程度まで下押す可能性もあるでしょう。しかし、そこは買い遅れていた向きに買い場を提供することになりそうです。

円建て金相場は節目の6,000円を維持する展開にあります。ドル建て金相場は下げていますが、ドル高・円安が下値を支えているといえます。いまは6,000円と6,100円のレンジ内での取引になっており、抜けたほうに行きやすいといえます。

しかし、ドル建て金相場が軟調な地合いにあるだけに、下落リスクは想定しておく必要があるでしょう。ただし、それは長期的な資産運用の観点からみれば、金投資を行う上で格好の機会になるでしょう。とにかく、資産保全を行うには、金投資を継続することが肝要です。

株式を購入する際には、金もその半分から同金額を購入するとリスク分散につながるでしょう。金を保有しておけば、株安リスクにも対応できます。金相場に大きな押し目が来た場合には、その押し目を逃さずに徐々に買いを積み上げておきたいところです。

プラチナ:小幅下落の推移

プラチナは小幅に下落しました。週初は856ドルまで上昇する場面がありましたが、そこが高値となり、週末にかけて上値の重い展開となりました。6月5日には一時803ドルまで下げる場面もありましたが、引けでは大きく値を戻し、836ドルで週末の取引を終えました。60ドルという直近のレンジでの推移になりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における6月2日時点の大口投機筋のポジションは2万1592枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,431枚縮小しました。買いポジションが1,279枚減少し、売りポジションが152枚増加しました。上値の重さから徐々に買いポジションを手仕舞いする動きがみられます。

プラチナ相場は徐々に上値が重くなってきました。金相場の下落も影響しているものと思われます。プラチナは需要の半分以上が自動車触媒向けであり、金と比較して工業品としての色合いが濃いメタルです。新型コロナウイルスからの経済回復への期待や、それを受けた株価上昇はプラチナ相場に対する支援材料のようにみえますが、市場はこれらの材料を好感していないようです。

米国株は3月の安値から大きく値を戻していますが、プラチナ相場の戻りは1月の高値と3月の安値の半値程度にとどまっています。その意味では、他のリスク資産に比べて戻りはかなり鈍いように感じます。投資家の関心が株式市場に向かっていることが、プラチナへの資金流入を抑制していると考えるのが自然でしょう。

今年は過去の供給過剰感が改善されるとみられていますが、自動車触媒向け需要が増加する可能性はきわめて低く、需給バランスの改善は困難な見通しです。その意味では、需給改善には供給サイドの調整が必要になるでしょう。生産者の動向に注目しておきたいと考えます。

世界最大のプラチナ生産国である南アフリカでは、資源大手アングロ・アメリカン傘下のプラチナ生産大手アングロ・アメリカン・プラチナム(アムプラッツ)が、ルステンブルク鉱山にある加工施設の一部を閉鎖したと発表しています。高圧冷却部門で水漏れが確認されたとしています。

アムプラッツは5月に、爆発で閉鎖された同施設の修理を終え、コンセントレート供給に対する不可抗力条項を解除していました。アムプラッツは「今回の閉鎖は、最近終えた修理とは別のものであり、前の修理箇所や溶鉱炉に影響はない」としています。今回は大きな問題にはならなかったようですが、南アは電力供給が不安定でもあり、生産施設への不安が付きまといます。生産に影響が出るようだとプラチナ相場のポジティブ要因になるだけに、今後も南アの生産に関する報道に注意しておきたいところです。

プラチナ相場は、短期的には820ドルにあるサポートレベルを維持できるかがポイントになると考えます。上値が切り下がっているだけに、調整含みの展開になりやすい点は念頭に置いておきたいところです。

下値が切り下がった場合には、770ドルがサポートになりそうです。一方で上昇に転じるには880ドルを明確に超えることは不可欠でしょう。800ドルと880ドルのレンジのどちらに抜けるかを確認したうえで対処することになりそうです。また、米国を中心とした株価動向にも注目しておきたいところです。

円建てプラチナ相場は小動きでした。3,000円と3,100円のレンジでの推移になっています。どちらか抜けたほうに動きやすいでしょう。いまは大きく動く前の状況にあるように感じます。まずはこのレンジをどちらに抜けるかを見極めたいと考えます。上抜けるようであれば、その動きに追随する形で上値を買いたいところです。

もっとも、3,000円を割り込み、さらに直前のサポートの2,900円を割り込んだ場合には、すぐに押し目買いを行うのではなく、まずは下値の確認を優先したいところです。無論、2,900円で下げ止まり、反発すれば、その時点で買いを検討するのもよいでしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーは反落しました。週初には18.36ドルまで上昇するなど、ここ最近の堅調な動きが続きましたが、その後は伸びきれず、週末にかけて上値を切り下げ、6月5日には一時17.19ドルまで値を下げるなど、軟調な値動きになりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における6月2日時点の大口投機筋のポジションは3万7224枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が35枚拡大しました。買いポジションが3,472枚増加し、売りポジションが3,437枚増加しました。

この動きを見る限り、上昇を見込んだ新規の買いが入る一方、下落を見込んだ新規売りが入っていることがわかります。ただし、週末にかけて大きく下げており、今週末発表のデータでは売りポジションの積み上がり方に注目しておきたいところです。

銀相場は週初に直近高値を上抜いたことから、さらに上値を追うとの期待が高まりましたが、続きませんでした。株価が堅調に推移していましたが、金相場の上値が重くなったことが材料視された可能性が高そうです。

調整基調が続き、節目の17ドルを割り込むと、下げの基調に転じる可能性が高まりそうです。17ドルを割り込むと、15.70ドル前後程度までの調整になる可能性もありそうです。もっとも、17ドルで下げ止まり反発できれば、再び18ドル台後半を試す可能性も残ります。
まずは調整が短期間で終了するかを確認したいところです。

一方、一時112倍にまで拡大した金/銀レシオは、直近では97倍で推移しています。過去と比較すれば、依然として銀相場の金相場に対する割安感は残っています。これが銀相場の相対的な堅調さにつながるかにも注目しておきたいところです。

円建て銀相場は反落しました。円安が下値を支えましたが、ドル建て銀相場の下落が上値を押さえました。64円を中心としたレンジから放れたほうに動きやすい地合いにあるといえそうです。まずはどちらに放れてくるかを確認したいところです。

64円から上放れた場合には、その流れに乗って買いを検討したいところです。逆に下抜けてくれば、押し目の水準を確認することになるでしょう。62円で下げ止まれば、その時点で買いを検討したいところです。ただし、62円を下抜けた場合には、急落する可能性もありますので、買いは慎重に検討したいと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券